いざかや　末（すえ）コミュの指切りゲンマン

先日は私は指を切った。
人差し指。それから中指。
同時に二本切った。
私の指を切る法則は、正しい抑え方と正しい包丁の動かし方で
指を切ることはない。だった。

その裏づけとして、人差し指のほうが大きく削いでいて、中指はカスル程度に
指を切った。
本当だったら包丁は中指に一番大きな面積で
当たっているはずで、人差し指が大きく削げるということは
間違った抑え方になっているからだった。

そして、治りかけた頃、私はまた、指を切った。
人差し指。それから中指。
今回も同時に二本。
前回と違うのは削いだ面積。
治りかけの傷口を２回り大きく上回って削いだ。


また、正しい抑え方が出来ていないから、指を切った。

私の中で、正しい抑え方さえしていれば指は切らない。
そう思い込んでいた。

そして、それを兄貴に話した。
　
「いいえ、違います。正しく抑えていても指は切ります」

兄貴の指を見た。
すると見事に中指が大きく変形していた。
そこを何度も削いだんだねと見てすぐにわかる。

要は、包丁が自分の指の高さより高く上がってしまったら
切るものは切るんです。と言われた。

「僕も昔、理江さんみたいに人差し指ばっかり切ってて、先輩にその切り方は
おかしいって言われたんですよ。」

私はまだまだ見習い中の見習いなので、
指を切ることに関しても、まさに序の口のドアに手をかけたみたいなもんだ。
人差し指を切る旅はまだまだ続き、そしてその後には
中指を切る旅に出る。

考えただけで痛いが、兄貴レベルになると、指を切っても痛くないらしい。

私はもう二度と指を切りたくない。


先日、エースが自動車学校に通い始めたと聞いた。

私は褒めてあげた。
女の子をデートに誘うときにはやっぱり車があったほうがかなり
有利だ。
電車のおデートも素敵だが、免許を持っていても電車のおデートは出来るが
免許を持っていなければ、ドライブのおデートはできない。

女の子は車の運転の仕草でも、なんだかかっこいいと感じるらしい。

私にはさっぱり理解できないが。

というわけで、とにかく免許はメンズに必要だ。
絶対ではないけど、あったほうがいい。
「これでエースもついに男だな！！！よくやった！！」

後、残すは亘店長だ。亘店長が中型免許を取れば
いざかや末改めモテメンズクラブにしてもいいくらいだ。

・・・それは言いすぎか。

というくらい私は免許は必要だと思っている。

「あんまり言わないでください。僕だって免許取ったの最近なんですから」
と恥ずかしそうに兄貴がいう。
兄貴は危険人物に認定されているので、自爆でものすごい事故を起こしている。
しかも、当のご自分はかすり傷程度だ。
でも、ケンシロウ並みの筋肉があるのでそれが命を救ってくれたのかもしれない。

殺しても死なないタイプは堤ゴルゴ１３に続き二人目となった。

それが・・・何年前って言ったかな。

私の伯母は３０年前の話を平気で昨日の出来事みたいな顔をして話す。
比較的、お姉さま、お兄さまには歴史があるのでそういった思い出話を
キラキラした目で当時の顔つきで話してくれることが多い。
その目に惑わされてはいけないことを私は知っている。

私は考えた。
確か兄貴は２７で免許を取った。
そして来年で兄貴は４０になる。
１２年のスパンを最近でくくってしまうあたり、兄貴もそろそろか、と
思わずにはいられない。
多分自分を相当若者だと勘違いしているのか。
もしくわ、年齢がわからなくなる年頃か。

おそらく、後者だ。
　
よく兄貴は年齢を聞かれる。
私は空かさず「来年４０です」と答える。
すると兄貴は一瞬ムッとした顔をする。
そして「違いますよ！！」と言いかける。
しかし、気が付くのだ。
来年４０になることに間違いはないことに。
そして、その言葉をぐっと飲み込み
「ああ、そうか」という。

この光景を何度か目にしている。
年を取ると自分の年齢がわからなくなることがたまにある。
聖母やマイパパあたりは毎回考えている。

私も年を聞かれて「サンジュウウ・・・」の「サ」を言わなければいけないのに「ニジュウウ・・・」の「ニ」を図々しく言っているときがある。

毎回毎回兄貴のその姿を見ていると、それも含めてそろそろかと
思わずにはいられないのだ。