したり映画帖コミュの２０１４年４月上半期①

４月１日（火）
『ワールド・オブ・ライズ』０８
前半寝てしまって起きたらストーリーが判らなくなった、それぐらいストーリーが複雑に入り組んでいる。スパイを題材にしているので当然か。
リアルスパイものだ。アメリカ本国から指令を出す冷酷・非情なＣＩＡ上官のラッセル・クロウに対して現地中東で四苦八苦奮闘する情報員レオナルド・ディカプリオとの対比をメインに描く。
なので、シーンによってはあざとく図式性が表現され現場のディカプリオの活躍をこれみよがしに盛り立てる。
『ブラックホーク・ダウン』でもそうだったが、リドリー・スコットが随時気になる題材を取り扱えるのは、アカデミー監督の特権で企画も選び放題という理由があるのかもしれない。
本作もシリアスで硬派にＣＩＡの恥部を暴く。
酷くアカデミーの冠を意識しているように感じる。
だけれど、何故か浅薄なのだ。
尻軽監督の感が否めない。
八方美人？
目的や意図がほどよく優等生ぶりながらエンターテイメント性を散りばめる上品さも忘れない。
そのスノッブ感が否めない。
こちらが余りに穿っているのか？妬みしとみ？
上述したように半分は寝ていたので、これ以上の情報はネット検索でお願いします。
偏見の誹りを覚悟の上で述べるなら、回教徒の女性を無理くりディカプリオとくっつけるのは相当強引な気がする。
中東での特派員経験を活かしたフィクションとしても。
…………（上記理由の為採点不能）。

４月２日（水）
『アナライズ・ミー』９９
ハロルド・ライミスが監督とあって期待大で鑑賞。
こちらの勝手に想定したハードルを軽々と飛び越え、期待に違わず傑作となった。
ハワード・ショアがアレンジの軽快なジャズに乗せて、ギャング、マフィアの歴史がプロローグで綴られる。
ただの市民、バツイチの精神科医がひょんな事から、最近不眠症に悩まされているマフィアのボスから相談を受ける。気のいい再婚間近の精神科医にビリー・クリスタル、カウンセリングのような男らしくない（らしい）診療を拒むマフィアのボスにデ・ニーロが貫禄の凄味で演じ切る。
演技巧者のふたりの丁々発止も余技のようにゆったりと落ち着いて楽しんでいられる。
襲撃を受けて銃撃戦の最中にトラウマの記憶が甦り、ワンワン泣きだすデ・ニーロには大笑い。
臍で茶が沸いた。
デ・ニーロの不眠症には父親へのコンプレックスが原因だと見抜いたクリスタルが敵方マフィアの暗殺の目に遭うシーンを夢想してしまう場面は、『ゴッドファーザー』の完コピで一人抱腹絶倒の大笑い。
目配せというよりパロディなんだろうけど、小ネタも含めセンスがいい。
現代では夭折と呼んでいい若さで亡くなってしまったハロルド・ライミスを悼み、『ボールズ・ボールズ』や『ホリデーロード４０００キロ』でも観よう。
『恋はデ・ジャ・ブ』もいいぞ。（８６点）

４月３日（木）
『アウト・フォー・ジャスティス』９１
スティーブン・セガール史上の最高傑作をジョン・フリンが監督。
って言うよりジョン・フリンが監督したからセガールの最高となったのか（当たり前）。
ウィリアム・フォーサイスの狂犬ぶりが凄まじい。
簡単に人を射殺するヤク中ぶり。
『シャーキーズ・マシーン』のヘンリー・シルヴァに匹敵する暴れよう。
セガールはイタリア系の刑事でマフィアとも繋がりがある。
初期セガールのいつものパターンだ。
知人や幼馴染もマフィアの一員。それが作品のアヤとなる。
結局、フォーサイスはただの噛ませ犬的存在でセガールと一対一の対決になると、もちろん歯が立たない、総入れ歯状態だ。
もはや、ドルフ・ラングレンぐらいが必要なのか。
もしくはプレデターのような異性物を用意しないとセガールには張り合わない。
『沈黙のエイリアン』とか『沈黙のトレマーズ』みたいな喋れない相手ばっかりになっちゃうな。（６７点）

４月４日（金）
『僕の初恋をキミに捧げる』
タイトルも相当なもんだけど、このうすら寒い感じは何だろう。
観ていて辛い。
難病という題材を利用してお涙頂戴を目指した製作者側のゲスな意図が見え見えである。
こんなストーリー、誰が信じてやるものか。
本作に関わった全ての人々を調伏せずにはいられない。
こんな安易な企画で何かを得ようとする賎しさは呪われるべし。
反吐が出る。
岡田くんの綺麗さに――（９点）

『パーフェクト・ストーム』００
観測史上究極の嵐と呼べるような超絶体験をした船舶乗務員たちの実話をウリにしたヴォルフガング・ペーターゼンの大作。
先述したように実話をウリにしているが、その船舶乗務員たち全員が死亡する。
じゃあ、誰の手記やねん！
間接的関係者の情緒的感想を基に映画化したと言い直せ。
最近、実際に起きた事件を題材にして“実話”をウリにする映画が多すぎる。
“フィクション”という言葉が一語でも紛れ込むとその作品の結構が崩壊するかのような強迫観念に囚われているようだ。
嵐の中に孤立した船の乗務員の心情なぞ生存者がいない今、誰が代弁できるというのだ。
実話を基に描くが、話法はフィクションなのだから。
『ウィンターズ・ボーン』のジョン・ホークスが端役で出とったぞ。（４４点）

『ワイルド・スピード』０１
ロブ・コーエン監督。弱脳な中坊たちに合わせて漫画チックにカッチョよくスピーディーに描く。
「走り屋」たちのたむろする夜の街角にヴィン・ディーゼル率いる「スピード狂軍団」が彩り鮮やかな車で登場。
その辺から弱脳ぶりを露呈させる。
ヴィン・ディーゼルは中坊と相性がよく合っている。
電線にぶらさがったスニーカーからパン・ダウンして走行する車を捉える何でもないショットがいい。
電線にスニーカーというモチーフは、悪ガキたちの悪戯が横行する地域といった演出意図があったのだろうが、それ以上に地域の風紀や階層までを思わず描きこむ。
どうやら冴える細部には気づいていない弱脳の大人代表のロブ・コーエンはとっても中坊に合っているようだ。（４９点）

４月５日（土）
『ＡＶＰ２　エイリアンズＶＳ．プレデター』０７
今流行の兄弟監督の新入りどころストラウス兄弟監督の作品。
冒頭から何のこけおどしもなく残念にもプレデターとエイリアンが顔出しで登場。
視点はプレデターたち地球外生物にも及ぶ。
嘘でも物語として人間側の視点で描かないと物語の結構が揺らぐ。
何故なら、プレデターやエイリアンの心理・心情等こちらでは想像がつかないから。
当たり前である。
それでも物語は推し進められる。
この２匹がキャラクター化しているのだ。
キャラ化するというのは利点もあるがデメリットも多い。
特に映画においては多大だ。
異生物をキャラ化する事で人間に近似値の心情を読み込めるが、当然、それは人間に程よく近づいてしまう。
これはモンスターにとってかなりのマイナスイメージとなるだろう。
『ジェイソンＶＳフレディ』でフレディが人間側に近いモンスターを演じさせられていた事を思いやられる。子供が惨殺される場面は衝撃的だったけどね。（４１点）

４月６日（日）
『ルパン三世　ルパンＶＳ複製人間（クローン）』７８
大人のルパンとして「ファースト・ルパン」を意識したエロデでグロな作りがウリだった本作は、当時『ナイル殺人事件』の併映作品だった。
ウチの兄貴とふたりで鑑賞にいった初の映画だった。
目的は『ルパン』ではなくてもう一方のジョン・ギラーミン監督作品の方だったが、面白かったのは当時でも『ルパン』の圧勝だった。
それは、あれから何度観ても色褪せない。
ルパンが処刑されるシーンで始まり、矢継ぎ早にアクションが展開する。
ガードレールを片輪走行するアクションはアニメならではの描写。
不条理さと不安感を煽る不気味な演出、トラックのカーチェイス演出もスピルバーグの『激突！』よろしく、運転手の顔がまったく出ないという不穏さ。
怪人マモーに至っては、白木みのるのような侏儒の子供体型、そのくせ容貌は長髪白髪に皺くちゃ顔、声は西村晃という素晴らしい怪奇趣味、雰囲気が揃っている。
かの有名なルパンの一気脱ぎの名シーンもお色気雰囲気を盛り立てエロ場面に笑いを注入する。
不二子の位置も、本作以降は存在感を薄くさせるが、蠱惑的な存在として怪人マモーをも惹きつける。ラストのビーチクポチは粋である。
感動すら覚える。
脚本に大和屋竺の名があるも、ほとんどは監督兼任の吉川惣司が担当したらしい。
焼死するマモーのイメージや脳ミサイル等のダリ風のシュールなイマジネーションの横溢は特筆に値する。
『２００１年宇宙の旅』から『マニトゥ』までＳＦ映画（？）の研究成果が散見できる。
ニヒルな五右衛門が愛用の斬鉄剣が折れた事に落胆し、その折れた刃先がクライマックスを締めるのに役立つ。
このシナリオの上手さ。
オリジナルのキャラに忠実にそれでいてスケールアップした物語を絡めさせる。
駿とはまた違った良質のルパンがここにある。（９９点）

『バイオ・ハザードⅣ　アフターライフ』１０
渋谷の地下にアンブレラ社の本社がある！って、一番地下鉄が走っていて造りにくい場所を選んだね。ジョヴォヴィッチは正しいと呼べる程美しい。
クローンでいいから一度お相手して欲しい。
もういい加減、二丁拳銃は止めにしてよ。
恥ずかしいぜ、ポール・トーマス・アンダーソンよ。
カッコつけているだけのポーズで何のご利益もない。
ＴＶゲームや漫画だけに見合ったサブカルの幼児的表現だ。
時限爆弾にあわてふためく沢山のジョヴォヴィッチはかわいいのに、ロングショットだけで済ましてしまうのはチト寂しい。
予算の関係だろうけど、この辺は足し算・引き算のセンスが出てしまう。
『Ⅰ』や『Ⅱ』にはあったはずのジョヴォヴィッチへのドスケベな視点が皆無だ。
監督は旦那のポール・トーマス・アンダーソン。
妻への倒錯した視点が映画監督にあるまじき正常性欲。
オタクのくせにあっさりした作風。
淡泊な性欲に残念。
元々才能の有無を疑われるような作品ばかりだったから『イヴェント・ホライズン』みたいなオタクらしいオマージュばかりしとけば良かったんだろけど、このままじゃただのオタクどまりだな。（４１点）

４月７日（月）
『ラスト・アクション・ヒーロー』９３
人質解放の交渉シーンでの武器を捨てるよう命じられたシュワルツネッガーが『シティヒート』の銃身の長さを競っていた場面の如く、これでもかと武器を捨ててゆくシーンがジャブとして響く。
クリシェを活用したメタ映画の結構で色々遊ぶ。
『カイロの紫のバラ』のアクション・ヴァージョンだ。
『第七の封印』の死神がスクリーン外に出現するネタは大笑いした。死神は『ビルとテッドの大冒険』～『地獄旅行』へと経由して大活躍する。
シュワルツネッガーも本人役で登場する。
このムチャクチャぶりがどこまでパロディ化できるか期待したが、ファミリー映画の側面を持つ本作ではここまでが限界だった。
ヒットしたならば続編も期待できたのだけれど……。（６９点）

『ターミネーター』８４
公開当時、休憩時間に小用に向かった若年のこちらに、聞こえよがしに観終えたばかりの初老のオヤジふたりがクライマックスのオチに言及していた記憶が甦る。
「ロボットみたいな骸骨にビックリしたわ～（実際は逆の表現が正しい）」とオヤジの無邪気さでこれから鑑賞しようとするわれわれを萎えさせたものだった。
だから、こちらは展開のオチを未知のまっさらな状態で接した事がない。
苦い思い出を胸に本作には今までも一度も純な気持ち観た事がなかったのだ。
それを数年ぶりかに経過した今、新しい気持ちで臨んでみる。
アクションと思いきや後にＳＦだと判る脚本が上手くできている。
ＡＩＰ出身のジェームス・キャメロンがノリに乗っているＢ級映画であるが、アクションにつぐアクションという展開で一向に飽きさせない。
前半から飛ばして全体の８割をアクションで仕上げている。
サスペンスの出し入れも上手い。
マイケル・ビーンを一見殺し屋だと観客に思わせて、実は助っ人だと判明する辺りで最強のシュワルツネッガーが奮闘して警察機構をぶっ潰す。
どんだけ手強い敵かと認識させる。
回想入り・明けも手際はスムーズだ。
主題の一つが女性というのも『エイリアン２』へと引き継がれてゆく。
そしてラスト・アクションへと一気呵成となる。
ビーンが常に所持しているゴリラ女リンダ・ハミルトンの写真が撮影された経緯をラスト・シーンとして示す。
このＢ級感が素晴らしいのに『２』は妙なスケベ心が渦巻いてツマラない。
あと『エイリアン２』は傑作な。（８９点）

４月８日（火）
『漫才ギャング』
よくできている。
上池くんも頑張っている。
東野圭吾原作の映画『手紙』がそうだったように、お笑いをよく知らない監督が漫才やコントシーンを演出すると大抵寒い。
絵描きが主人公の絵画や音楽家等の専門職に手を出すのは正直辛い場合が多いのと同様だ。
スポーツものもそうだ。
上手く吹き替え等で対応するしかない。
その危険性を本作では陥穽に陥らずに済んでいる。
それだけでも職業監督を脅かすものだと評価する。
借金取りの宮川大輔が小窓から顔を出して上池くんとやりとりする場面は光っている。（４１点）

４月９日（水）
『コナン・ザ・バーバリアン』１１
マーカス・ニスペル監督。
敵の王が、魔女の才がある娘とともに侵略を欲しいがままにするのだが、この父娘の関係が近親相姦的に邪悪な象徴となれば面白かったのに。
獣（けだもの）と同じ関係として描く方が、図式が鮮やかになった。
映画は原作通りなんだろうけど。（３４点）

『荒野の七人』６０
豪華脚本家陣を揃えながらそんなに面白くない点が味噌のオリジナル版『七人の侍』を、アダプテーションした作品というのは有名、監督が無才ジョン・ギラーミンというのも同じ味つけとなる要素満載。
イーライ・ウォラックが敵役で出演していたのには驚き。
本作が遠因となって『続・夕陽のガンマン』に出演したか。
アメリカ本国では自由に撃ち殺す敵が見当たらなくなった為お隣さんの発展途上国メキシコに舞台を移植し心置きなく撃ち合いして暴れ廻る。
だから元々オリジナル版とはコンセプトが違う。
余りのもアメリカンな発想だ。
西部劇は、エルマー・バーンステインの音楽が盛り上げるフロンティア・スピリットを謳歌するのに有効なジャンルであったが、６０年代ともなるとその主題も時代遅れで全く古臭いものだという空気を読み取った制作側が目を付けたのが、おそらくまだアメリカのようにすれっからしの蓮っ葉になっていないだろうメキシコだったのだ。
まだメキシコならフロンティア・スピリットが残っていると信じたのだろう。
果たして、余りにナイーヴで貧乏臭いメキシコ国民が描かれてしまった。
元々、貧しい愚民たちを、浪人になったとはいえ特権階級出身の立派な侍たちが助け守り抜くという差別的な主題を含有する構成のオリジナル・アイディアの援用には正しい選択だったのかも知れない。
後に様々な影響受けた作品群を生み出したオリジナルのポテンシャルは認めるが、本作は至って凡作と言わざるをえない。
黒シャツに黒ハットのユル・ブリナーは恰好いい。
眼光鋭すぎ。
オリジナル版よりキャラ分けは上手くできている。
様々にアレンジされた理由の一つに単純化されたストーリーという美点はある。
だが、それは山谷に囲まれた日本風土の特色が活かされて発揮できるものだ。
それを本作のように、だだっ広い平原で展開してしまうならそれを補う長所が必要となるだろう。
ただそれは皆無に等しく、神話性ばかりが強調されてゆく。
それぞれのキャラが役割を振られた駒のような存在になってしまうのだ。
平坦な荒野で視覚変化も乏しいアクションが続くばかりで浮き立つのは凡庸さばかりである。（４８点）

４月１０日（木）
『クローズＺＥＲＯⅡ』
本シリーズを貫く主題をエンケンこと遠藤憲一の口からいみじくも漏れて出る。「ヤクザになれなかったヤツがカタギになっている」という理屈を額面通りに受け取るなら、ヤクザはカタギより上位者で特権階級だという事になる。
その世界観は絶対に承服できない。
映画が倫理・道徳的に正しくなくてもいいが、より強力な武器を持った者が勝つ、もしくは強い、といった考えは不快でしかない。
現実的に力が強い者が勝つのは当然である。
フィクションにおいて当然はつまらない。
だからこそ、人は現実とは違う世界を映画に求める。
リアリティはフィクションを成立させる為の手段でしかない。
だからリアル（現実）とはまた違う事を忘れてはいけない。
百歩譲って、作家の意図がヤクザ礼賛にあるのではなく、既成概念への挑戦だったとするならば、ヤクザもつらいよ、といった一般観客が感情移入する瞬間が必要である。
カッコつけたヤツがカッコつけた台詞を吐いて、カッコつけたまま死ぬなんてカタルシスがあるはずない。弱脳映画の日本代表の一本。（２０点）