したり映画帖コミュの２０１４年２月下半期①

２月２３（日）
『シェイド』０８
ダミアン・ニーマン監督。　
スタローンがカメオ出演と思ったら、しっかりラストでトリックの仕掛人として顔をだす。
オシャレだと勘違いしているのか、奇妙な中飛ばし編集を続ける。
しがない詐欺師をガブリエル・バーンが演じるが、本来ならこの人物に花を持たせるのがセオリーだろ。伝説のギャンブラーのスタローンに泡を吹かせるというストーリーでなければ観客は溜飲を下げない。設定にミスあり。
練り直せ。（３０点）

２月２５日（火）
『アウトブレイク』９５
ヴォルフガング・ペーターゼン監督、ミヒャエル・バルハウス撮影。
いくらドイツ組とはいえ、バルハウスを起用する意味がない。
活用できていない。
ハリウッドの橋爪功ことダスティン・ホフマンは意味なく大活躍。
保健所の公務員のくせにヘリに乗ったり、船に飛び移ったりと大忙し。
ヴォリューム的にアクションシーンが不足していると判断したのかヘリチェイスのシーンまで強引に導入。
どうしてもドナルド・サザーランドを悪役に仕立てたい様子。
そこで光りだす存在となるのは、モーガン・フリーマン。
軍人役のよく似合う男だ。
この監督はパターンがいつも同じ。
『エアフォース・ワン』でもそうだったが、特殊な人間が活躍する世界観が好きなようだ。
特殊な人間というより特別な（能力ある）人間で世界は構成できているらしい。
同じドイツ出身のエメリッヒにも似て、やや右傾化している。
元々『Ｕ・ボート』の人だから愛国精神旺盛なのかも。
それでも、ジョン・ウェインに対してのゴダールの言葉のように感動させてくれればいいんですが。（４３点）

２月２６日（水）
『陰陽師』０１
滝田洋二郎監督作品。
監督は今では巨匠になりつつあるベテランである。
それにも拘わらず、タイトルロールにもなっている主人公の登場シーンのカット割りにいささか疑問が残る。
市井の庶民を撮っている訳じゃないのだから、もう少し工夫してプロ意識を持って欲しい。
全体的に動きがない演出も平板で面白味がない。
主人公晴明はストーンフェイスがウリで、その心情の動きが謎めいているのはいいとして、伊藤英明演じる語り部役に強い友情を感じている場面は、その晴明の激情ぶりが納得できない。
理解できない。
小泉今日子が復活する場面も、鈴の音が聴こえてから復活したという事実を示せばいいものを、復活したところから優しく画で見せるＴＶ的丁寧説明ぶりである。
この鈴の音というモチーフは映画の主題と密接に関係しているのだから大事に演出したい。
元々映画的感性の有無は疑わしい人だけど、ここまで徹底して無能さを証明している。
萩原聖人の復讐心を利用して都を支配しようする道尊の狂気には盛り上がった。
荒俣宏の『帝都物語』に繋がる菊池秀行の伝奇ロマン。（３４点）

『陰陽師Ⅱ』０３
パチもんのＯＶ『陰陽師　呪詛返し』の方が傑作。
前作に続き、本作も滝田洋二郎が監督。
野村萬斎は表現者としての一流ぶりが、演技にも威厳と呼べる堂々としたオーラを放つ。
伊藤英明も木偶の棒ぶりが初々しい。
映画として難があるのは、続編にも拘わらず、前作同様の物語構造となっている新味のなさにある。“陰陽師”という役職が何故現代は存在しないのか、とか不在になった理由等が描ければ面白くなっただろう。
ちなみに先述の『～呪詛返し』では消滅した陰陽師（又は、その技術）が連綿と現代に生きている、という主題である。（３４点）

２月２７日（木）
『ホット・ロック』
ピーター・イエーツ監督、ウィリアム・ゴールドマン脚本、クインシー・ジョーンズ音楽。
個人的に犯罪集団が軽妙に活躍するという作風は今一つ乗れない。
犯罪に対する不真面目な姿勢を感じるからだ。
道徳的・倫理的な問題ではない。
フィクションとして結構が弱くなるのだ。
犯罪計画が成功成就するならまだいいが、失敗に終わる場合その理由がコミカルさや軽妙さに起因するよう言い訳じみて見えてしまう。
それが問題なのだ。
今回も腕利きとして登場したレッドフォードがその兆しを見せることなく金庫破りの犯罪に取り組む。
それも集まったのは間抜けなメンバーばかり。
本当に大丈夫か、レッドフォード？と心配する間もなく、やはりと言うか当然というか、ミスが出て計画はてんやわんや。
本来なら少しでもプロフェッショナルな瞬間があってこその犯罪計画のはずなのに、それも見せないままミスによって罠に陥るのだ。
そんな主人公はどうなってもよい、とこちらなら見捨ててしまうだろう。
音楽はいいんだけどな。（４９点）