したり映画帖コミュの２０１３年１２月上半期④

１２月８日（日）
『エアポート　ユナイテッド９３』０６
たぶんポール・グリーングラスの『ユナイテッド９３』より先に制作されたのだろうＴＶムーヴィー。
そこがＴＶ本来の良さのはず。
映画よりニュースな題材をいち早く映像にできるというメディアなのだから。
実話の常で、誰もが知っている話をどう料理するかは脚本と監督の腕の見せ所と言える。
だが、どうも最近はわざと素人風のズームや手持ちがブームのようでじつにつまらない。ウザい。
今作もグリーングラス並みに手持ちキャメラを多用して辟易させる。
手持ちによる緊迫感や迫真性を活用したいのだろうが、ルーティンになってしまった瞬間この技法は単なる遊戯になる。
実話なんだからフィクショナルをどうそぎ落とすかに勝負して欲しかった。
グリーングラス版は好きなんだけどな。（３０点）

１２月９日
『愛の残像』０８
まだ画面に登場していない人物のナレーションが入る。
この辺りのぶっきらぼう加減がハリウッドから遠く離れている。
今回は、いつもの女性への愛の讃辞とともに、死んだ女性があちらの世界から主人公を求めてくる。
フランス版耳なし芳市である。
だから、ラストの主人公の死は必然となる。
この作風を続ければ、ガレルは何本も撮れてしまう。
どこかで牽制球が欲しい。（６２点）

『できごと』６７
脚本のＨ・ピンターとＪ・ロージーは、性格の悪さで、よっぽど相性がいいのか、野心的な作品を連作している。主演のＤ・ボガードの演じて見せるように作風は冷たく粘着質だ。時折、挿入される彫像や馬牛、太陽などのショットが作品の混乱を誘う。いつものように歪んだ情念や欲望がＤ・ボガードの男色系演技でねっとりと描かれる。
女性に残酷なのもヒステリックの理解者のなせる業なのか。（８５点）

『デビル』９７
アラン・Ｊ・パクラ。
この監督の社会派な点は好感を持っている。
野心的問題作を娯楽作品として処理する手際は見事だ。
ただ今回はＩＲＡの問題がテーマなのだが、ドラマはＩＲＡ工作員の青年を追うアイルランド系アメリカ人刑事の苦悩となる。
制作年にもよるが、現代のアメリカ人刑事がＩＲＡにシンパを感じて苦悩するというのは、いくら何でも説得力に欠ける。
アフリカに対してアメリカとの間で苦悩するアフリカ系アメリカ人なぞ信じられないという事である。（６５点）

１２月１０日
『オーシャンズ１３』０７
前２作は犯罪のプロであるメンバーのひとりが必ず恋愛がらみで問題を起こす、という点が共通の妙だったのだが、今回はそういった問題は絡まない。
きっとマット・デイモンが今度は恋愛沙汰に巻き込まれると予想したがあっさり裏切られた。
やっぱりというか、当然というか、意外にシリーズ物というジャンルに執着していないのね。
ソダーバーグの限界か。（４５点）

『幻の薔薇』０９
アモス・ギタイ。
フランスの世相史を背景にその時代に生きたひとりの女性の半生を描く。
この企画は何を目的に制作されたのか不明だ。
恐らく監督の世界的（ヨーロッパ的）ネームヴァリューで作られたものに違いないという勘繰りを催す程つまらない。
物語が動き出すのは１時間経過したあたりからだ。前半は思わせぶりなイメージの連鎖が続く。
原題の『薔薇たち』の薔薇もほんの少しだけ象徴的に登場するが、そのオチははぐらかせたままである。（２１点）