ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

T, H, Cコミュのものづくりがシックス・シグマでも顧客サービスレベルはどうなんだ?

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「シックス・シグマ」というのは、製造業から発展した経営概念である。当初は生産工程の品質向上の管理手法として発展してきたが、現在では非製造業などへの適用事例も少なくない。品質を上げるために、工程内で発生するばらつきを徹底的に抑制していく。これによって品質向上を達成していくものだ。
 ここでいう「シグマ」(σ)とは、元々、標準偏差のことだ。偏差値で言い換えれば、+2σが偏差値70に相当するのに対して、シックス・シグマ──つまり+6σは偏差値110に相当することになる。一言でいえば「きわめてすごい成績」なのだ。
 偏差値70を超える秀才は、正規分布の母集団を仮定すすると、全体の2.3%の人数しか存在しない。シックス・シグマの場合はもっと数が少ない。偏差値110を超える“シックス・シグマな状態”では、仮に100万個の製品を作っても、99.999…%は正常品で、不良品はわずかに3.4個以内になる。

 シックス・シグマ運動では、工程の中で発生する不良品がそれくらい少ない状態に持っていこうと目標を設定し、ばらつきを抑えるための品質管理の対策を徹底する。
 1980年代に米モトローラで誕生し、米GEで完成したといわれるシックス・シグマは、日本でも東芝、ソニーなどが導入してきた。それ以外のメーカーを見ても、シックス・シグマと呼ぶかどうかは別にして、同様の考え方は浸透している。
 世界に誇る我が国の製造業では、この品質管理に対する長年の取り組みが功を奏して、「シックス・シグマ」と呼ぶのか、「ファイブ・シグマ」などと呼ぶのかは別にして、非常に低い不良率が達成できている。それでもまだ足りないと考える経営者は多く、“ものづくり日本”のさらなる次元への到達を経営上の課題としているメーカーは少なくない。
 そのこと自体は良いことなのだが、顧客(消費者)の視点で見てみると、何が起きているのかということを今回は考えてみたい。
 日本製品の不良率が減少したことで、消費者からメーカーに対する不満が激減しているのかというと、実はそうではない。相変わらずメーカーに対する消費者の不満は低くない。なぜそうなのかというと、メーカーへの不満は、実は工場以外の“場所”が原因で起きているのである。
 例えば、ほとんどの製造物は他社パーツに依存している。これが自動車のようにある程度自社系列の部品メーカーの裾野が大きい産業であれば、まだ他社パーツであっても品質のコントロールは効く。しかし、家電やパソコンの世界のように、東南アジアで製造された他社パーツをスペックと価格をもとに購入して使うような世界では、どうしてもパーツの不具合を減らすには限界がある。最近、問題になっている電池の不良の問題も同様である。
 消費者が、こういった不具合をパーツメーカーに対する不満へ向けてくれるかというと、必ずしもそうではない。あくまでパーツが原因の不良でも、それはメーカーへの不満なのである。
 また、昨今のいわゆる「ハイテク商品」に関していうと、元々“不完全な商品”を市場に出しているという別の事情もある。「不完全戦略」という領域の話で、要は新製品をベータ版の段階で市場に出していきながら、消費者の反応を見つつ製品を改良していくという方法をメーカーとして意図的に取る戦略が登場してきている。
 不完全戦略はソフトウエア企業などを中心とする世界で盛んになった商品戦略ともいえ、中にはWeb2.0系のサービスのように“永遠のベータ版”を標榜するものも、この世界では正当化されている。
 このような考え方が徐々に家電の世界にも浸透していき、特に昨今のデジタル家電では、製品設計自体に多少の不具合があるのが“当たり前”といった状況が発生してきている。例えば、デジタル放送対応のハードディスクレコーダーが、録画やムーブがうまくできないといった症状や、デジカメのソフトウエアにアップデートが必要だといった状態などは、先に製品を出しながら不具合はソフトウエアの部分の更新や次期バージョンで除々に直していけばいいといった対応を行う。つまりメーカーの世界にも、不完全戦略を容認する時代が到来しているのだ。
 一方で消費者はというと、これは逆に完全なものに“慣れて”しまっている。
 昭和の時代であれば、メーカーから買ってきた商品が壊れるとか、動かなくなるといったことは、いわば日常茶飯事だった。だから、修理に来てくれる電気屋さんが壊れた商品を苦労して直してくれる行為に、消費者は感謝の気持ちを感じたものだ。
 ところが、アナログ製品の最盛期である1990年前後に、日本製品は壊れないものだという“神話的な体験”を通じて、「壊れない世界」をわれわれ日本人は当たり前のように感じるようになってしまった。いったん、そのような状況に慣れた後で、また「モノが壊れやすい時代」に戻ってきてしまった。
 一度「壊れない世界」や「壊れない状況」を体験した人間は、今度は修理をしてくれるサービスマンに対して、感謝の気持ちよりも、逆に不満の気持ちをぶつけるようになる。
さて、このような環境において、シックス・シグマにどのような意味があるのだろうか。
 消費者から見れば、他社パーツの電池でも、自社工場でのアセンブリの本体でも、製品には変わりはない。製造プロセスにおいて生じる不良はきわめて少なくとも、仮に設計プロセスに不良がある(というか、最初から不完全な部分がある)のであれば、それは最終製品を購入して使う消費者から見れば、不良そのものである。


 いくら工場における品質が高くても、クレームに対応するサービスマンの対応が悪ければ、それも消費者から見れば、メーカーの品質の低下の一部に見える。だからこそ、工場内のシックス・シグマ単独の重要性は、90年代に比べて相対的に落ちてきている。
 「メーカーの製品とは、一体何か?」ということをここで再定義すれば、パーツの購買から加工・製造、出荷・販売、そしてアフターサービスまでのトータルのバリューチェーンすべてで構成されているモノということになる。バリューチェーンは鎖と同じで、全体の強度は、一番弱い鎖の一部の輪の強度に依存してしまう。つまり、トータルのバリューチェーンの中で一番弱いところの強度が、メーカーへのCS(顧客満足、消費者満足)になるのだ。
 そう考えると、現在の日本メーカーを総じていえば、営業、サービス、コールセンター(コンタクトセンター)といった顧客接点(消費者と直接のつながり)が、バリューチェーンの中で一番弱いのではないだろうか。もちろん、会社ごと、業界ごとに、この弱点の位置は様々なのかもしれないが、顧客接点が弱点のひとつという状況は、かなり多くのメーカーに当てはまるはずだ。
 なぜか。それは顧客接点という、バリューチェーンにおける一部の鎖の輪の部分だけは、相変わらず個人の能力に依存しすぎているのだ。
 製品を組み立て加工するだけであれば、作業を標準化したり、不良の生じやすい工程を改良することなどで、不良の発生率を下げる対応策は取りやすい。ばらつきを抑える施策を導入しやすいのだ。
 ところが顧客接点で起きる「不具合」は、相手が人間なだけに、実に様々なことが起きる。言葉足らずで消費者を怒らせることもあれば、サービス担当者やコールセンターで受け付けた人間が「(不具合に)対応します」と言ったまま、その対応を忘れてしまい、さらなるクレームにつながることもあるだろう。
 このような消費者相手の「不具合」が起きないようにするのに、ある程度はITツールを導入、利用することによって、現場プロセスを改善することは可能である、しかし、それだけでは、ばらつきを抑える施策としては不十分だ。最終的には、現場での実際の教育が必要なのである。
 例えば、サービス業、小売業の現場では、毎日毎日、しつこいぐらいの現場教育を行っている。イトーヨーカ堂でもリクルートでも、優良企業と呼ばれる企業では、「これでもか、これでもか」というぐらい、上司と部下はコミュニケーションを繰り返す。「小売業は教育事業だ」といわれるぐらいである。
 しかしそれでも、現場の品質はシックス・シグマにはなりえない。人が(顧客接点という)現場においてサービスを行っている以上、担当者全員を偏差値70に引き上げることはしょせん無理なのである。
 だから優秀なサービス業・小売業においては、+1σの状態を“IT武装”と繰り返しの現場教育を通じて、+2σに引き上げることがせいぜいできることだろう。
 +1σ──つまり偏差値でいえば60の水準では、15%強の担当者は顧客接点において消費者に不満を抱かせるかもしれない。これを+2σに引き上げれば、顧客接点での不満は2%程度に減らせるであろう。ここまでは出来るかもしれない。
 しかし、顧客接点における消費者とのトラブルを100万分の3.4に減らすことは、どう考えても無理である。「顧客接点のクレームを限りなくゼロにするのは無理。もし顧客満足度を引き上げることができても、担当者の98%までが限度かもしれない…」といった考え方を、一般の消費者を相手とする企業としては採らなければならないのだ。
 このようなことを考えれば、メーカーにとってはものづくりは大切だが、一方でこれ以上、ものづくりだけを追求しても消費者にはあまり“関係がない”。
 顧客接点という人(消費者)を相手とする、バリューチェーンの一部の鎖において、その品質向上が伴わなければ、全体のCSは上がらないのだ。少々古いが青島刑事流に言い換えれば、「メーカーの欠陥は工場で起きているんではない。『顧客接点』という現場で起きているんだ」なのである。

コメント(1)

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

T, H, C 更新情報

T, H, Cのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング