●ホッキョクグマ ★ホッキョクグマ Ursus maritimus (北極熊、英名:Polar Bear)は、ネコ目(食肉目)クマ科に属する哺乳類である。全身が白い(正確には内部が空洞になった透明な)体毛に覆われているため、シロクマ(白熊)とも呼ばれる。★ヒグマと並び、クマ科では最大のサイズを誇る。また、分岐分類学的には、ホッキョクグマはヒグマに極めて近い位置にあり、互いに交配して生殖能力のある子孫を残せる。野生でも稀にこのような個体が存在している。このためヒグマとホッキョクグマの生殖隔離は不完全である。種小名の maritimus はラテン語で「海にすむ」という意味である。アラスカ、グリーンランド、シベリアなど、北極周辺の陸地および氷上に生息している。オスの成獣で頭胴長200 〜250 cm 、体重は350 kg 程度だが、季節によって食糧事情が変わるので、その分体重も大きく変化し得るものであり、800 kg を超えた例もある。その為、しばしば「地上最大の肉食獣」と呼ばれる事もあるが、ホッキョクグマに限らずクマは厳密には草や果実、野菜やコケも食す雑食獣である。また、南極でも北極と同じように生息出来ることが、ワシントン条約可決前の実験によってわかっている。★食性は雑食で、アザラシなどの鰭足哺乳類、魚のほか、海鳥、イチゴなどの果実、コンブや貝なども食べる。泳ぎが得意で、時速6.5 km ほどで65 km 程度の距離を泳ぐことができると言われる。しかし、あまり深く潜ることはできない。また、嗅覚、聴覚も非常によく、ことに嗅覚においては氷の下を泳いでいるアザラシの臭いを判別することができるため、これらの能力を駆使して狩りをする。粗食、絶食にも耐え、アザラシ1頭で半年以上生き延びられる。子供のセイウチにも襲い掛かる事はあるが、狩りの成功率は低い。エスキモーや動物学者達はホッキョクグマとセイウチが雄同士なら陸でいい勝負と見ている。繁殖期やメスが仔育てをしているとき以外は、単独で行動する。繁殖期は3〜6月ごろ。このとき交尾相手のメスをめぐり、オス同士が戦いを繰り広げる。妊娠したメスは地中に作った巣穴にこもり冬眠をし、11月〜1月に通常2頭の仔を出産する(まれに1または3頭の場合もあり、4頭の出産記録もある。[1])。出生時の仔の体重は1kg程度と、成獣に比べ非常に小さい。その後、2年ほど仔は親と行動を共にする。オスや妊娠をしていないメスは冬眠をしない。なお、仔の2頭に1頭は生後1年以内に死亡し、この中にはホッキョクグマのオスの成獣に捕食される個体も含まれる。上記の通り、本来の体毛は透明で、これによって太陽の光を効率的に吸収し、身体を保温する事が出来る。この事とホッキョクグマに天敵がいない事から、「これは保護色でない」と断定調で紹介される事もあるが、白く見える体毛が狩りの際にターゲットから気付かれにくいという利点があるのは事実で、特にブリザード発生時にはその特性が顕著となる。ジャコウ牛がホッキョクギツネを警戒してブリザード時に見晴らしの良い高台に移動しようとする事からも、極地において白い体毛を持った捕食者が他の動物から危険視されていると分かる。そもそも「保護色」という語は『弱い者の特徴』のみを指す言葉ではなく、純粋に迷彩を指す事もある中立的な語であって、天敵の有無は関係無い。野生時の寿命は25〜30年だが、飼育下では34年7か月の記録がある。愛媛県立とべ動物園では母親に育児放棄された雌の「ピース」が国内での人工飼育の個体の生存記録が更新され、公式WEBサイト上で映像資料が公開されている(2007年3月現在満7歳)。「ピース」は人工飼育された影響からか、けいれんやひきつけを起こしていた(現在は手術を受け解消している)。ほかにも、ドイツで同様に2006年末に母親に育児放棄されたものの、無事に人工飼育されている「クヌート」がいる。ホッキョクグマは肝臓に高濃度のビタミンAを含有しており、これを人間が口にすると死亡することもある。そのため、北極圏に住むイヌイット達の間では、ホッキョクグマの肝臓は食べてはならないと伝えられている。★保護:地球温暖化の影響によって絶滅の危機が高まり、IUCNレッドリスト2006年版では、それまでの「保護対策依存種」(LR/cd)から、さらに絶滅のおそれの高い「危急種」(VU)に変更された。