●ゾウ ゾウ(象)とは哺乳綱ゾウ目(長鼻類・長鼻目)に属する動物の総称である。陸棲哺乳類では最大の大きさを誇る。★概要:長い鼻、大きな耳が特徴。首が短いため、立ったままでは口を地面につけることが出来ず、筋肉質の長い鼻を使って、食べ物や水などを口に運ぶ。水を体にかけ、水浴をすることもある。この鼻は上唇と鼻に相当する部分が発達したものであり、先端にある指のような突起でピーナッツのような小さな物から、豆腐といった掴みにくい物までを器用に掴むことができる。また嗅覚も優れており、鼻を高く掲げることで、遠方より風に乗って運ばれてくる匂いを嗅ぎ取ることができる。第2切歯が巨大化した「牙」を持ち、オスのアフリカゾウでは牙の長さが3.5mにまで達することもある。牙は象牙として珍重され、密猟の対象となる。巨大な板状の臼歯が上下に1本ずつの計4本しかない。英語で、象の鼻は trunk、象が鳴く事は trumpet という(The elephant has a long trunk. An elephant is trumpeting.)★生態:雌を中心とした群れを単位として生活し、高度な社会を作っている。巨大なため特に成体のゾウを襲う動物は少ない。象の最大の天敵は人間である。人間には聞こえない低周波音(人間の可聴周波数帯域は約20Hz以上なので、それ以下)を使用し会話していると言われ、その鳴き声は最大約112dBもの音圧があり(自動車のクラクション程度)、最長で約10km先まで届いた例もある。加えて、象は足を通して低周波をキャッチすることができることも、最近発見された。ゾウの足の裏は非常に繊細にできていて、そこからの刺激が耳まで伝達される。かれらはこの音を、30Km〜40Km離れたところでもキャッチすることができる。この領域はまだ研究が始められたばかりだが、雷の音をキャッチしたり、遠く離れた地域で雨が降っていると認知できるのはこのためではないかと考えられている。 高い認知能力も持ち、例えばサファリの車の中に乗っているドライバーを見分けて、以前に象の群れに危害を与えるようなことをした人物には、そのずっと後にも攻撃的になることがある。人々が違う言語を話しているのを聞き分けることができ、象を殺すこともあったマサイ族のことを非常に恐れる。ただし、同じマサイ族でも女性には攻撃をされないことを分かっているので、男性だけを避けようとする。草・葉・果実・野菜などを食べる草食動物だが、1日に150kgの植物や100lの水を必要とし、野生個体の場合はほぼ一日中食事をしている。体が大きいため必要な食物も並大抵のものではないため、森林伐採などの環境破壊の影響を受けやすく、またゾウの食欲と個体数増加に周囲の植生回復が追いつかず、ゾウ自身が環境破壊の元凶になってしまう事もある。また、ゾウは群れの仲間が死んだ場合に葬式ともとれる行動をとる。死んだゾウの亡骸の周りに集まり、鼻をあげて死んだゾウのにおいをかぐような動作を取る。そして、亡骸を労わるように鼻で撫でる。このように、ゾウは濃やかな心遣いも持っているといえる。★歴史:長鼻類でもっとも進化したグループであるゾウは、新生代の第四紀にはオーストラリアと南極大陸以外の総ての大陸に分布していたが、自然環境の変化や人類の狩猟などによりやがて衰退し、現在はサハラ砂漠以南のアフリカに生息するアフリカゾウと、インドおよび東南アジアに生息するアジアゾウのわずかに2種が残るのみであり、滅亡へ向かいつつあるグループといえる。動物園の定番ではあるが、共に絶滅危惧IB類(IUCN)に指定されている。また最近ではアフリカゾウの亜種と考えられてきたマルミミゾウだが、別種であるという考え方が一般的になりつつある。地質時代に生息していたゾウではマンモスなどが有名。かつて日本にもナウマンゾウ (Palaeoloxodon naumanni) と呼ばれるゾウの一種が生息していた。日本に人的に初渡来したのは1408年6月22日に東南アジア方面からの南蛮船で、足利義持への献上品として、現在の福井県小浜市に入港した記録がある。