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たのしい特別支援教育研究室コミュの【仮説実験授業】授業記録 〈ドライアイスであそぼう〉

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授業記録 〈ドライアイスであそぼう〉

この授業記録は私が前任校の中学部を担当していた時に実際に行った全授業記録です。
仮説実験授業の雰囲気を見て頂けるのではないかと思い掲載させて頂くことにしました。


ミニ授業書〈ドライアイスであそぼう〉について
この〈ドライアイスであそぼう〉は、板倉聖宣氏の書かれた授業書〈見えない気体をつかまえよう〉をもとに藤沢千之氏が書き改め、新たな実験・作業を加えたものである。藤沢氏は、その際、低学年の子どもたちや知恵遅れ等の障害をもった子どもたちが楽しめるように表現やイラストも配慮したと述べている。

藤沢氏は「ドライアイスの多様な不思議さ、おもしろさを徹底的に楽しむ」ということをこのミニ授業書の目標として掲げているが、この授業プランによって授業を受けた多くの子どもたちから「楽しくて楽しくてたまらない。こんなのまたやりたい。」という絶大な評価を得ている。そして、このプランが『たのしい授業 ?105』 (仮説社)に掲載され、その後『ものづくりハンドブック3』(仮説社1994年)に再録されるにいたり爆発的に全国の学校を中心に授業が実践され子どもから大人まで十分に楽しむことができる授業プランとしての評価を確かなものとしている。
 このミニ授業書〈ドライアイスであそぼう〉は知的障害を持つ子どもたちでも十分に科学を楽しめることを、また特別有能な教師でなくともこの授業プランとそこに示された実験に必要なものをそろえさえすれば知的障害を持つ子どもたちのクラスでも再現が可能であることを示したものとして特筆に値するものであろう。このミニ授業書〈ドライアイスであそぼう〉によって、それぞれのクラスによって非常に子どもたちの実態の違いが大きい障害児学級においても追試の可能なプランが存在しうることを証明したとも言えるのではないだろうか。

授業記録「ドライアイスであそぼう」  
                (1995年9月実施)
                    (※・・・登場する生徒名は仮名です)
○○○○養護学校は知的障害の子どもたちと肢体不自由の子どもたちが共に学ぶ学校である。私は主として知的障害の中学部・高等部で「理科・社会」といったグループ学習の時間やクラブ活動の時間などに、「仮説実験授業」を通して子どもたちと共にたのしく科学を勉強してきた。中でも〈ドライアイスであそぼう〉(「ミニ授業書 ドライアイスであそぼう」藤沢千之『ものづくりハンドブック3』(仮説社)に収録)は何度やっても子どもたちから大歓迎されるミニ授業書でる。この記録は中学部のクラブ活動の時間に行ったものである。なお生徒の発達段階は言語を持たない1歳レベルから小学校高学年の教材を使って学習している生徒まで多様な集団である。なお生徒の氏名は仮名である。



私 今日は〈ドライアイスであそぼう〉という勉強をします。みんなはドライアイスを見たことがありますか。
水上さん アイスクリームを買った時に箱の中に入ってた。
私 そうですね。アイスクリームを持って帰る時に箱の中に入れてくれる時がありますね。今日はドライアイスの大きなかたまりを持ってきました。
 (レンガ大のドライアイスを机の上に出す)
奥村君 先生、そのドライアイスどこでこうて(買って)きたん?
私 実は、このドライアイスは葬儀屋さんで買ってきました。それでは、このドライアイスのかたまりをかなづちでたたいて小さくします。

軍手をはめて、タオルにくるんだドライアイスをかなづちでガンガンたたいて小石ぐらいの大きさに小さくする。ガンガンとたたく音に「何が始まるんだろう」といった様子で教室のうしろにいた上田さんがそばによってくる。

私 大きなドライアイスを持つ時は軍手をして持つけど、小さいやつだったらすぐに手をはなせるように転がすようにしてもつなら危険なことはありません。でも、ふざけて友達の服の中に入れたりはしないで下さいね。

子どもたちはサブの先生たちと一緒に手の平の上でおっかなびっくりといった様子で「つめたい!」といいながらドライアイスを転がしている。

私 机の上にドライアイスを置いて押してごらん。
 ドライアイスのかけらじゅうから二酸化炭素のガスが出ているので、そのかけらは少しうきあがってよくすべる。机の上をすべっていくドライアイスのかけらを使ってキャーキャーいいながらホッケー遊びが始まった。


〔もんだい1〕

ドライアイスのちいさなかけらを、つくえのうえにおいておくと、どうなるでしょう

・よそう
(あ)とけて水のようになる。
(い)きえてしまう。

自分で予想を立てられる人に予想を聞いてみた。浅野君が(あ)、水上さんと奥村君と松本さんが(い)の予想である。まず浅野君に(あ)を選んだ理由を聞いてみた。

浅野君 つめたいから氷と同じようにとけると思う。
私 なるほどね。氷と同じような気がするんだね。(い)の人はどんな理由ですか。
水上さん アイスクリームの箱の中のドライアイスは知らないうちになくなっていたからそう思った。
奥村君 なんとなくそんな気がした。
松本さん きえてしまうと思う。

 実験は小さなかけらをわら半紙の上に置いて観察した。(あ)が正解ならわら半紙は濡れるはずである。だんだんとドライアイスは小さくなってきましたが濡れずに消えてしまいまった。浅野君が不思議そうな顔をしているのでもう一度小さいかけらで観察させた。




〔もんだい2〕

ドライアイスを、水のなかにいれたら、どうなるでしょう
・ よそう

(あ)しずかにとけて、なくなる。
(い)ぶくぶくあわがでてくる。
(う)ドライアイスはとけない。
 松本さんが(あ)、浅野君と水上さんと奥村君と(い)の予想である。理由を聞いてみた。

松本さん とけてなくなるとおもう。
水上さん 前にドライアイスを水の中に入れたらぶくぶくとあわが出た。

 浅野君と奥村君もやったことがあると言う。さて、実験である。

私 それではやりますよ。(みんなが私のコップに注目している)

 コップの水の中にドライアイスを入れるとぶくぶくとあわが出てきた。教師実験のあと一人ひとりのコップの中に小石ぐらいのドライアイスを入れてやった。
 古田君や上田さんも不思議そうにぶくぶくとあわの出るコップを見つめている。この実験は何度やっても楽しいものである。


          「サイダーをつくろう」

〔もんだい2〕の水を、のんでみましょう。どんなあじがするでしょう か。
こんどは、さとうをとかしてのんでみましょう。

まずは私が子どもたちの前でさとうをとかして「ああ、おいしい」といいながらコップの水を飲みほした。「先生だけずっこいわ」という子どもたち。そのあと子どもたちも自分のコップのドライアイスがとけた水に砂糖を溶かして「ほんまにサイダーの味がするわ」といいながらおいしそうに飲んでいた。


「シャーベットもできます」

さとう水に、ちいさなドライアイスをたくさんいれてかきまぜてみま しょう。ジュー
スをさとう水のかわりにしてもいいですよ。

炭酸の入っていないオレンジジュースとはちみつレモンの2種類を用意しておいた。シャーベット作りの目安はジュースがコップ1/4、 ドライアイスの粉がスプーン3倍ぐらいである。ドライアイスはタオルにつつんでかなづちでたたいて細かくしたものを金ざるでふるって粉状にしたものを使った。 
生徒のコップに「オレンジとはちみつレモンのどっちがいい?」とききながらジュースとドライアイスの粉を入れて回った。「あっ、もうシャーベットになってきた」と浅野君。かきまぜていると白いけむりのようなものが出てきてあっというまに固まってきてシャーベットのできあがりである。
「先生、ぼくのシャーベットになれへん」と奥村君。どうやら欲張ってジュースをたくさん入れすぎたようである。ドライアイスの粉を足してやって、再度挑戦。「やったー、シャーベットになってきた!」奥村君も成功したようである。
「おいしいわ、先生もう一回作ってもいい?」と大喜びは松本さん。いつもは教室から授業中に何度も出ていく上田さんは今日は一度も教室から出ていかない。シャーベットをサブの先生と一緒に作っておいしそうに食べている。
「シャーベットを食べられる」というだけでなく、ドライアイスであっという間にジュースがぶくぶくとあわを立てながら変化する楽しさが子どもたちを引きつけたようである。

〔もんだい3〕
 
ドライアイスのかけらをビニールぶくろに入れて、とじこめてしまうと、ふくろはど
うなるでしょう。

・ よそう

(あ)ふくろはかわらない。
(い)ふくろはふくらむ。

 まだ、奥村君はシャーベットを作っている。もう3度目である。

私 シャーベット食べながらでもいいから、次の問題見てね。
松本さんが(あ)、浅野君と水上さんと奥村君と(い)の予想である。理由を聞いてみた。

松本さん なんとなくふくらまないと思った。
水上さん 水の中にドライアイスを入れた時にブクブク出てきたからふくらむと思った。
浅野君 水上さんと同じ。
奥村君 ドライアイスから何かガスが出ていると思うからふくらむと思う。
私 そうしたら予想を変えたい人はいませんか。実験していいですか。
松本さん (い)に変える。
私 どうして変える気になったの。
松本さん 水上さんの意見を聞いて。
私 水上さんの意見が松本さんの気持ちを動かしたみたいですね。
水上さん (うれしそうな様子)
私 それでは、実験します。

 ビニール袋に親指ぐらいの大きさのドライアイスの固まりを入れて、袋の口をギュッとしばって黒板にセロテープでみんなの見えやすいところにはっておいた。少しずつふくらんできた。

私 正解は(い)です。全員正解です。松本さん予想変えておいてよかったね。(松本さんも水上さんの方をちらっと見てニッコリしている。)
私 そうしたら、次のお話を読んでみましょう。

    「ドライアイスからは、ガスが出ている」

 ドライアイスからは、どんどん「ガス(気体)」がでているのです。
だから、ビニールぶくろはふくらむのです。水にいれたときにでる、ぶくぶくのあわ
が「ガス」です。
 こんどは、ごむふうせんの中にドライアイスを、とじこめてやりましょう。
 ガスが、どんどんでているのが、よくわかります。

私 マジックのキャップにドライアイスの粉を入れて、ふうせんの口のところからいれます。

風船をふくらますのにはけっこう力がいるのに、ドライアイスを入れたふうせんはすぐにふくらみはじめる。ドライアイスの入っているあたりが冷たい様子で白くなっている。
奥村君 先生、ビニール袋爆発しそうやで。

 黒板にはっておいたビニール袋が見るとパンパンに膨らんでいる。「ほんまにすごい膨らんだなあ。もうすぐ爆発しそうやな。」といいながら、黒板からビニール袋をはずし、子どもたちの近くに持っていくと逃げていく子もいる。1周して、もう一度黒板にはって様子を見ていると「バーン」と音を立てて爆発してしまった。
水上さん ああ、びっくりした。

 吉田君や上田さんもびっくりしたような顔をしている。さっきドライアイスを入れたゴムふうせんもけっこう大きくなってきている。さて、つぎの問題に進むことにする。

ドライアイスのはいったコップに、ろうそくの火をいれたら、どうなるでしょう。
 ドライアイスからは、ガスが出ています。コップには、そのガスがたまっています

・よそう

(あ)火は、きえてしまう。
(い)火は、はげしくもえる。
(う)火は、ふつうにもえる。

私 (ドライアイスの入っていないコップを持って)今、このコップの中にはドライアイスは入っていません。ろうそくに火をつけてこの中で燃やします。(実際にやってみせる)ずっと燃えたままですね。次にドライアイスをこのコップの中に入れます。(実際にドライアイスをいれる)さっきビニール袋をふくらましたように、ドライアイスが気体になったガスがコップの中にたまっています。この中に燃えているろうそくをいれたらどうなるでしょう。さあ、予想を立てて下さい。

 松本さん、水上さん、奥村君が(あ)、浅野君が(い)の予想である。どのような理由で選んだのか聞いてみる。

奥村君 なんかドライアイスのガスやからつめたいような気がして火がきえると思った。
松本さん 水上さんは「なんとなく」という理由です。
浅野君 燃えると思う。
私 予想を変えるという人はいませんか。(だれも手をあげません)そうしたら実験をしますよ。
 ドライアイスの入っているコップの中にろうそくの火を入れてみるとあっという間に火は消えてしまう。

浅野君 なんで〜。
私 浅野君、やってみるか。

 浅野君に前に出てきてやってもらった。やっぱりろうそくの火はあっという間にきえまった。

私 正解は、(あ)です。

 水上さんと松本さんはパチパチと手をたたいて喜んでいる。次のお話のプリントを読む。


     「にさんかたんそガス(二酸化炭素ガス)」

 ドライアイスからでてきた「ガス」は、「にさんかたんそガス」といいます。ドラ
イアイスは、「にさんかたんそガス」をとてもつめたくひやして、かためたものです
(−79℃)
 「にさんかたんそガス」は火をけすガスです。だから、しょうかきにもつかわれて
います。
 「にさんかたんそガス」はくうきよりもおもたいので、コップにためることができ
ます。
 たっているろうそくの火に、コップの「にさんかたんそガス」をかけて、けすこと
ができますか。
 火をけせたらなんかいもやってみましょう。


私 ろうそくの火の根もとのところにかけるようにするとうまく消すことができますよ。(やってみせる)そうしたら、みんなにもやってもらいましょう。

いくつかのコップにドライアイスを入れて二酸化炭素をためておいて順番にろうそくの火をけしてもらった。「見えない気体」が火を消している様子がうかぶようで不思議な感じがする実験である。吉田君や上田さんもサブの先生と一緒にろうそくの火を消すことができた。
私 さあ、最後のプリントです。

        「ドライアイスのガスでっぽう」

 ドライアイスをフィルムケースのなかにいれて、ふたをしておきましょう。しばら
くするとおもしろいことがおきますよ。
 *ちゅうい:かならずこのじっけんは、ふたをしたらはなれてみましょう。

 ドライアイスをフィルムケースに入れてふたをして、さらに紙コップをかぶせて、「みんなうしろに下がって!」といって様子をみる。しばらく何も変わった様子はない。「あれ、おかしいな」と言って様子を見にいこうとしたその時、「ポーン」と大きな音がして紙コップが吹き飛ばされた。この実験はフィルムケースのふたがかなり勢いよく飛ぶので紙コップを使わない時は上に蛍光灯などがこない位置でやるようにするなどの注意が必要である。紙コップをかぶせる方が安全で大きな音もするので効果的である。
 奥村君と浅野君はこの実験が気にいったようで、屋上にフィルムケースとドライアイスを持っていって紙コップのかわりに教室にあった空き缶などをかぶせたりして「ガスでっぽう」を楽しんでいた。

 あっという間の2時間でだったが、どの子もこの〈ドライアイスであそぼう〉を楽しんでくれたようだ。時間の都合で感想文を書いてもらうことができなかったが、奥村君は、「先生、次のクラブの時間もドライアイスやろう」と言ってくれた。また、サブの先生からは、「今日は上田さん、一回も教室出ていけへんだなあ。すごいわー。」というような感想を聞くことができた。改めてこの〈ドライアイスであそぼう〉は、子どもたちをそして大人をも引きつけるおもしろさを持っている教材なのだということを実感した。
 この授業が終わったあとで水上さんが、「先生、まだドライアイス残ってる?」と聞いてきた。どうやら高等部の気になる男の子に自分が食べておいしかったシャーベットを作って持っていきたいようである。まだ、ジュースもドライアイスも残っていたので作らせてあげた。出来上がったシャーベットを持っていそいそと高等部の教室に走っていく姿がとてもかわいいなあと思った。
 しばらくしてニコニコしながら帰ってきた水上さんに、「どうやった?」と聞くと、「おいしいって言って食べてくれた」とうれしそうに報告してくれた。自分がおいしかった以上に喜んで食べてくれたのがうれしい様子であった。「他人の喜びを自分の喜びとする」ってとても素敵なことだなあと思った私であった。こんなおまけまでついた〈ドライアイスであそぼう〉を本当にやってよかったなあとしみじみと感じ、また機会があればやってみたいと思った。

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