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日記ロワイアルコミュの霊能者『富士とき子』の来訪者

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霊能力なんて信じたことがない。

ブラウン管の中で中年女性が芸能人に向かって強い口調で説教をしている。
「あなた、芸能界辞めたら転落するわよ!」
そりゃそうだろ、その芸能人は中卒の漫才師だもの、他に能なんてありゃしないだろうし。そもそも芸能界辞めるなんて一言も言ってないじゃないか。

『富士とき子』
今をときめく霊能力者、らしい。
出す本はバカ売れ、週刊誌で悩み相談のコラムも連載し、たまのテレビ出演も本業である鑑定の宣伝にもなってるんだろう。


そんな俺が富士とき子のところに行かなければならないなんて…。


まずは電話で予約を入れてみた。
インターネットで見たところ『3ヶ月先まで予約でいっぱい』みたいに書かれてたんだけどあっさりと三日後に予約が取れた。俺は青森県の奥深い村にある中世のお城のような館に入った。受付カウンターに行き
「3時から予約していた袴田と申しますが…」
というと
「あちらでお待ちください。鑑定料は前金で1万5千円になります。」
高いな。人気の霊能者だからなのか?相場なのか?わからないけど俺は支払った。

待合のソファーには10人ほどが待っており皆俯いて黙っている。
耐え難い空気の中、辺りのインテリアや装飾品に目を配っていると高価そうなものばかりが目に付く。
結局鑑定が始まったのは4時過ぎだった。
「袴田さんね?」
部屋に入るなり、とき子は優しい母のような口調で俺を確認した。
「ずいぶん待ちましたが、大盛況なんですね。」
「ごめんなさい。今日は特別なのよ。性質の悪い霊の憑いた方が多くてね。」
「へえ、そんな日もあるんですね。」
「悪霊が引き合って今日という日に引き寄せる、てこともあるのよ。怖いでしょ?」
「へえ、いつも一日に何人ぐらい鑑定されるんですか?」
「最低でも15人ぐらいかしらね。」
「そりゃ大変ですね。」
「私にしかできないことですからね。世の中にいる霊能者なんてほとんどがインチキよ。」
「そう聞いて東京から来ました。ぼちぼち見てもらっていいですか?」
「そうね、今日は何を?」
「恋愛と仕事について。この先近い将来どうなるのかを見てください。」
「わかったわ。じゃあ目を瞑ってできるだけ頭の中を空っぽにしてちょうだい。」

俺は目を瞑り3分ほど経つととき子は言った。
「さ、目を開けてちょうだい。」
目を開けるととき子は眉をしかめて話し始めた。

「やっぱり、さっき言った通りだわ。あなたも悪霊に取り付かれている。今日来たのはその悪霊に引き寄せられたのよ。

あなたの仕事は、、、食べ物にかかわる仕事ね?
上司との相性が悪いわね。
それから将来の目標が明確でないわね。目標はもっと具体化しないと駄目よ。」

上司との相性のいい奴なんて皆無だろ。それにこの不景気に将来の目標が明確な奴なんているのならお目にかかりたいよ。
でもこいつはきっと…
「先生、俺は将来の目標ありますよ。結婚して子供二人の家庭を作って一軒家に住みたいんです。」

「それよ!その目標が漠然とし過ぎているのよ。」
そう言うと思ったよ。

とき子は続けた。
「そのあなたにしっかりした将来像を描かせないのが悪霊ね。
あなたが子供の頃に飼っていたペット、なにか小さい動物はいなかった?」

「ペットは亀がいましたけど…」
「それね!その亀は不幸な死に方をしなかった?」

幸福な死に方をした亀って…
そもそも小さいペットなんて、何かしらいたのが普通だろ。仮にいなかったとしても家に住み着いてたゴキブリが、、、なんて言い出すに違いない。

「あなたここ三ヶ月以内にすっぽんを食べなかった?それで亀の怨霊を宿したのよ。」

さすがに吹き出しそうになった。すっぽん食って亀の怨霊って!あまりにも滑稽なこじつけ!
なんとか吹くのをこらえて頷いたが、とき子は続けた。
「その亀の霊があなたの背中に憑いているわ。そのせいであなたの頭と心が支配されてるのよ。」

ぶふっ!!
亀に?しかも死んだ亀に???俺どんだけ安物の人間だよ!

吹いてしまった俺を不機嫌そうに見据えてとき子は続けた。

「そういえば、、、、、あなた最近、彼女ができたわね。ん?今はケンカしているのね?
わたしには見えるわ。」
亀の話で俺の評価を下げたことを挽回しようとしているかに見えた。

「え?よくわかりましたね。」
と返事した瞬間、とき子はわが意を得たり、という表情に変わった。

「あなたの霊から見えるのよ。」
とき子の話は結局霊に帰結する。亀だけど。

「悪霊には種類がたくさんあるのね。
大きいものは竜、ドラゴンのものから、あなたのように亀などの小さい動物。
除霊にもランクがあって竜の霊の除霊なんかだと十年ぐらいかかってしまうの。料金も総額では何千万円とかかるケースもあるわ。」

「そんなに?」
わざと困惑した表情の俺に

「でもあなたの場合は亀でしょ?
ここでお祓いを一回やって、あとは除霊のアクセサリー、例えばネックレスね、身につけていれば大丈夫よ。」

「え?そのネックレスっていくらぐらいするんですか?」

「40万円よ。もちろん分割支払いでいいわ。」
「そりゃ竜の除霊に比べりゃずいぶん安いですね!買います!」
「それが無難ね。」
とき子は満足げな表情を浮かべた。



さて、仕事だ。

「あ!やっぱり買うのはやめます!」
一気にとき子の表情が曇った。

「よく考えたら俺が小さい頃飼ってたのは亀じゃなくてインコでした。
生まれていままですっぽん食ったことないし、それから彼女もいません。
職業は公務員です。」

とき子は唖然とした表情で俺を見ていたが俺は続けた。

「富士とき子さん。あなたはやっぱりインチキ霊能者だ。
亀のペットや上司と相性が悪い話はコールドリーディング。
すっぽん食った話や彼女の話はホットリーディング。俺がフェイスブックで呟いてた内容を見透かしたように言ってたけど全部インチキさ。食事に関わる仕事って事のも嘘。
ついでに言うと竜のアクセサリーの値段はドアインザフェイスだかって言う心理学のやつ。
つまりあんたは世間にありふれた二流以下の詐欺師さ。」

眉を吊り上げ般若のような形相でとき子は
「あんた!あたしを騙しに来たのね!きっと罰があたるわよ!見てらっしゃい!」
と叫んだが俺はいたって冷静に言った。

「別にあんたが詐欺師だからって告訴したりはしないよ。俺の目的は罪を暴くことじゃない。」

「じゃ、あんたはなんなのよ!脅迫するの?お金が目的?」


「いや、脱税の下見。
あんたが鑑定してる人数と単価。除霊に使う道具なんかの推定の収入だけでも十分所得隠しをしてると判断できる。
近いうちに国税の査察が来るから首でも洗っておくかい?」




仕事を終えた俺は飛行機で東京に戻るのだが、今朝読んだスポーツ新聞の占いに『今日は大凶。大きな災難があるかも』と書いてあったのを思い出してもう一泊することにしたのだが案の定、飛行機事故があった。
全くあのスポーツ新聞の占いはよく当たる。

コメント(54)

占いは 信じるも八卦 信じないのも八卦 っていいますもんねウインク 一票です(^^ゞ☆

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