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日記ロワイアルコミュの おばあちゃんの おにぎり

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私が幼い頃に両親は離婚しました。
父親が女を作って出ていくなんてパターンはありがちだけど、
私の場合は少し事情が違って…

私は母の顔を覚えていないんです。
それを不幸と据えて憎んだ時期も確かにありました。

でも、今となっては強がりでもなく、
それほど強く母の面影を求めることもありません。
きっと会おうと思えば会えるのでしょう。

父は仕事が忙しくて朝早く家を出て、
帰りはいつの頃かもわかりませんでした。

ひとつ屋根の下にいる時間は長かったかもしれないけれど、
そのほとんどは私の記憶から遠い時間帯の出来事でした。

祖父は母が家を出てからほどなく亡くなったそうで、
私と時間を共有してくれる存在は物心ついたときからずっとおばあちゃんでした。
心優しいおばあちゃんが、私にとっては母親のような存在でした。
私はおばあちゃんが大好きでした。


私の小学校時代は地元の小さな町立学校だったんですが、
週に2回くらいおにぎりを持参する日があって、
その度におばあちゃんはそれを私に持たせてくれました。

ただ…おばあちゃんの作るおにぎりがどうしても好きになれなかったんです。

シャケの切り身が半分入ったまんまるおにぎり。
時間が経つともうそれを覆う焼き海苔はもうパリパリしない。


子供心の周りのみんなよりずっとおっきなおにぎりが私は少し恥ずかしかったんです。



そんな折り、私はコンビニのおにぎりと出会いました。
三角形のスタイリッシュな形。
時間が経ってもノリがパリパリ。
シャケだっておっきな切り身が入ってるんじゃなくて、
食べやすくフレークにしてあるし、
ごはんも今まで食べてきた田舎くさい塩味じゃなくて、
どこか都会的な味がするような気がしました。

ある日、私はおばあちゃんからもらったおこづかいで、
おにぎりを買って学校に持っていきました。
そして、おばあちゃんのおにぎりを学校のゴミ箱にこっそり捨てたんです。

最初はせっかく作ってくれたおばあちゃんに悪い気がしたけど、
だんだん罪悪感は薄れていって日常の中に溶けていってしまいました。

そんな事を重ねていくうちに私は小さなミスをしました。

ランドセルの中に残ったままのおにぎりを見つけると、
おばあちゃんは心配そうに尋ねてきました。

「さっちゃん…今日はおにぎり食べなかったのかい?」

私は少し口ごもりながら

「う、うん、その…なんかあんまりおなか減ってなくて…」

取ってつけたような嘘。



ある日、おばあちゃんのおにぎりが変わっていました。

まんまるのおにぎりが三角になって、
海苔はサランラップで別に包んでありました。
シャケだって大きな切り身じゃなくてそれをほぐしたのが入っていたし、
サイズもずっと小さくなっていました。

「おばあちゃん…どうしたの?」

「いや、最近そうやって食べるのが流行ってるってテレビでやってたからね。真似してみたんだよ。」


私が…嘘をつくのが下手なのはきっとおばあちゃんの遺伝だと、そう思った瞬間でした。



いつも自分が作ったおにぎりが私に食べられることなく捨てられてしまっていたことにも薄々気づいていたんでしょう。

でも、それでも、おばあちゃんは私を叱責する事はありませんでした。
きっと悲しみとして心の中に仕舞い込んでいたんだと思います。



ごめんね。おばあちゃん…痛かったよね…
私は心の底から、ごめんなさいの気持ちでいっぱいになりました。
自分の悪意が、好意で返ってきてしまう不条理。
後悔の気持ちでいっぱいでした。

それから、小学校6年間は毎回、おばあちゃんの三角おにぎりでした。

「おばあちゃんのおにぎり大好き。」

「そうかい。そうかい。ありがとね。」

その度におばあちゃんはにっこり微笑んで優しい言葉をくれました。
感謝しなければいけないのは、いつだって私のほうだったのに。





あれから10年以上の月日が経って、
どういう因果か…高校生になってはじめてバイトをしたコンビニで、
私は今、店長をしています。

最近になってコンビニのおにぎりでも高級嗜好なんてのが出てきて、
おばあちゃんが初めの頃に作ってくれたような、大きなシャケの切り身が入ったおにぎりが、店頭に並んでいます。

購買層は私より、ずっと年上のお客様が多いのですが、
きっとそこに高級感より懐かしさを感じている方なんてのもいるんじゃないかな?
なんて、一瞬の出会いの中で想像を巡らせます。


おばあちゃんはまだまだ元気で、ひ孫の顔を見るまでは死にゃあしないよ。
なんて、笑顔でほんのちょっぴりの催促をしてきます。

「おばあちゃんのおにぎりが食べたい。」

私も負けじと催促をします。


「はいよ。いつものだね。」


出てくるおにぎりは、シャケの切り身が半分入った大きなまんまるおにぎり。


「やっぱりおばあちゃんのおにぎりが一番おいしいや。」

口いっぱいに頬張ってにっこり笑う私におばあちゃんはいつものように笑いかけてくれます。

「そうかい。そうかい。ありがとね。」

って。

コメント(86)

一票(^_^)v俺もおばあちゃんのおにぎり大好きやったぁ\(^ー^)/めちゃくちゃ塩辛いんやけどめちゃうまい(^_^)vもう食べれんけどなぁ(^_^;)
切り身のおにぎり美味しいですよね。
一票。

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