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日記ロワイアルコミュの叩いても響かないなら壊れるまで叩けばいいどうせ壊れないから

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先日、出張の際に羽田空港であった話。
第一ターミナルの出発ロビー、保安検査場でおかしな光景を目にした。

すでにキャリーバッグはカウンターに預けていた為、金属探知機の手前に並べられたかごに、ポケットから財布、携帯電話、ipod等の金属類を出し、手提げ鞄と一緒にX線検査の係員に預ける。

そのまま搭乗案内のレシートを係員に見せ、自分は金属探知機を通過する。

金属探知機を抜けると、鞄の中にペットボトルが入っているので検査させて欲しいと係員に申し入れられ、鞄からペットボトルを出して渡した。


その時、隣の列だろうか、大声で怒鳴っている人がいた。
「責任者を呼べ!」だの、「殺す気か!」だの。
何やら物騒な話だなーと、、曲がりなりにも“保安検査場”と銘打たれたこんな場所でこんな言葉を聞くことなんて滅多にないし、思わずそちらに視線を投げる。

中年の男性が、見たところ手荷物検査にひっかかったことに難癖をつけていたようだった。
男性の所持品と思われるものを前にして係員があたふたと対応しているが、とにかく荷物が散乱していて酷い。どうしてこれから飛行機に乗るのにあんなことになるのだろう。


「こちら、問題なかったのでお返しします、ありがとうございました」

「ああ、ありがとう」

係員からペットボトルを受け取り、預けた荷物をポケットに戻す。

そうしていると、また叫び声、いや、怒鳴り声というべきか。
聞きなれない単語が多く、男性のテンションも高くて何を言っているのかはっきりは理解できなかったが、どうやら男性は障害者であるらしかった。見た目からは分からないけれど。
声を荒げて「お前らは知っているのか!」等と繰り返している。



恥ずかしい人だな、と思う。



―そうして、何年か前に俺の下について半年だけ仕事をした新入社員の事を思い出す。
大学を卒業し入社してきた彼は、とにかくだらしない青年・・・いや、少年だった。
何度言っても長い髪の毛は切ってこない、結果チャラい、敬語が使えない、叩いても響かない。

「主任だって髪長いじゃないっすかー」

と、にやにやした表情で言っていた彼の余裕は即打ち砕かれる。
厳しく仕事を教える俺に、上司は「求めるレベルが高過ぎるんじゃないか」「もっとゆっくり育ててあげた方がいい」等と口だけ出してきたが、当時の俺は忙しくしていてそんな余裕はなかった。

そのうち、彼は無断欠勤を繰り返すようになった。

こちらから連絡するとやっと欠勤の訳を話すのだが、その内容というのが毎度決まって、入院している祖母の世話をしなければならない、というものだった。
分かったと、それならそれで連絡して有休申請を出せと、そう言っていたのも束の間、あっという間に有休を使い果たしてしまった彼と、最後に面と向かって話をした。

「お前、嘘ついてんだろ、やめんならもうやめろ、邪魔だから」

「・・・いえ、嘘はついてないです、おばあちゃんが」

彼の家は、両親とも健在だった。
なぜ大学を出て社会に出たばかりの彼が、自分の未来を削っておばあちゃんの世話をしなければならないのだろう。両親はそれで何も思わないのか。
そもそも入院しているのかどうなのかって、そこから怪しいわけだけど。

「分かった、でも覚えとけな、おばあさんの話を引き合いに出そうが、病気だの家庭だのを引き合いに出そうが、会社も、社会も、お前のそんな事情は一切汲んでくれないからな。今すぐ長期休暇の申請書作って持ってこい、受理されないだろうからそしたら辞めろ、お疲れさん」

「主任、一つ、聞いてもいいっすか?」

「なに?」

「“くんでくれない”ってどういう意味っすか?」

「・・・死ね、ってことだよ、よく就職したなお前」


あいつ、今頃どうしてるんだろうか。
敬語、使えるようになったかな。
人懐っこくて、悪い奴じゃなかった、適性が無かったんだろう。



―いつまでも突っ立って見ているのも気が引けて、17番搭乗口を目指して歩く。

障害を抱えた男性も、敬語の使えない失礼な青年も、もちろん俺だって、大なり小なり問題や矛盾を抱え、それでも自分の世界で生きていかなければならない。だってそれしか自分にはないのだから。

障害があるから?

おばあちゃんが病気だから?

天然パーマだから?

全部関係無い。

自分の事情、とりわけ込み入った根の深いそれがあったとしても、そんなものは周りに必要以上の理解を望むべきじゃない。
引き合いに出せば、盾にすれば、自分の品を落とすことにしかならないのだと思うから。
悲しくなるばかりじゃないか。
残念ながら、自分は“こう”だからって、そんな押し付けがまかり通るほどこの世界に愛は溢れていない。

だから人は、誇りを持っているんだ。

世界が優しくないから。

人は自分を守る為に誇りを持っているんだよ。

多分。

俺は捨てない、忘れない、弱いから。
そう思うとなんとなく背筋が伸びた、動く歩道の上。

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