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日記ロワイアルコミュのカンダタになれなかった人のために

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夏休み、高速道路を走っていたときのこと。

お盆で渋滞の高速道路で尿意を催し、
PAでトイレに入って、小便をしていた。

ここのトイレの小便器は、赤外線タイプだ。
便器の前に立つとセンサーが作動し、便器を離れると勝手に水が流れる。
子供のときおもしろがって便器の前を行ったり来たりしたことがある。
親父に殴られた。

で、なんとなく赤いライトから目をそらし、便器の中に目を落とすと、

便器の中に小さなハエトリグモがいた。

おれの小便の放物線をよけ、必死に左右に跳ねている。

おれの祖母は尼さんだったので、
お盆に虫取りかごを手に走り回っていたおれは、
「お盆に殺生をしたらあきまへんえ!」と毎夏のように説教をされていた。

偶然そんなことを思い出したので、
これはなんとか死なさないようにしてやらねばなるまい、
と、蜘蛛をよけて小便をするように心がけた。

蜘蛛は何とか白い壁にへばりつき、おれの小便のナイアガラから逃れて小休止をしている。

なんとなくおれもほっとして、便器を離れた。

便器を

離れた



だめえええええええええええ!!



慌てて便器に戻る。

蜘蛛が・・・流されていた。


やっちまった。
かわいそうに。


水流の中を必死にもがく蜘蛛。


あーあ、と思って目をそらすと、便器の白い壁にもう一匹蜘蛛を発見した。

もしかしたらこいつら夫婦で、

「あんたーーーーー」
「クモ美ぃぃぃぃぃ!!!」

とかやってるのかもしれないと思うと、ますますばつが悪い気分になる。


便器の中の水流はおさまっていた。
だめだろうな、と思って中を覗き込むと、

蜘蛛は必死に、
水の流れと戦っていた。


八本の足を懸命に動かし、
愛する彼女(ということにしておこう)に向かって、一心不乱に泳いでいる。

そう、泳いでいるとしか形容のしようがない。
水たまりの中を必死に、もがき、白い岸辺を目指す蜘蛛。


おれは思った。


おれはあんなに必死に生きたことがあるだろうか?
周囲に流され、易きにおぼれ、唯々諾々と人に従い、
水の中でぶくぶく沈んでいくおれには、

この蜘蛛はまぶしすぎる。


気がつくと、もう一匹の蜘蛛も便器の壁にへばりついていた。

「あなた!がんばって!」

とエールを送っているかに見える。


そして、便器の中で小さな奇跡が起きた。


水の中にいた蜘蛛が、なんとか便器の壁にへばりついたのだ。
そのままするすると、白い陶器の壁を這っていく。

「やれやれ・・・酷い目にあったぜ」

とでもいわんばかりに、体を震わせて。

クモ美(仮名)も心なしかうれしそうにはねて、
夫(?)である蜘蛛を迎えにいくように跳んだ。


おれは目頭が熱くなった。

蜘蛛ですらこんなにがんばっているんだ。

おれも明日からがんばろう、と思った。

夏休みだったけど。


おれは二匹の蜘蛛に心の中で

ありがとう

と告げて、車に戻るためにその場を離れた。


離れた





同時に、センサーが作動して、二匹の蜘蛛はトイレの便器の中に流されていった。
わずか数秒の出来事だった。

コメント(167)

一票



……だって、一票入れないって言うと


『そんなこと言うなよ!な?な?』

と、『はい』と言うまでエンドレスなんだろ……?(笑)

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