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日記ロワイアルコミュのなつねづみ

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「旦那、来月こっちに戻ってくるんだって」

電気を消して二人並んで目を閉じてすぐのことだった。
真っ暗の中、リカさんがいつもと同じ淡々とした口調で話す。

「ふうん。出張?いつ頃?」

目を閉じたまま、気のない返事をする。

壁際はリカさんのもの。寝返りを打っても落ちないように。

「盆明け。出張じゃなく、完全にこっちに戻ってくる」

目を開け、勢いよく上半身を起こす。

「じゃあ」

「うん、そう。私達の終わりが来たってこと」

どこを向いても見えるは闇ばかり。


初めて会ったのは二年前。
この部屋にリカさんが来るようになったのは一年前。
いつの間にか増えた彼女の私物、彼女がここに居る事が当たり前の生活。
仕事の関係上、毎日一緒にいるわけではないが、それでもほぼずっと一緒にいた。
どこに出かけることもなく、ただここで生活だけをしていた。
外界と一切の遮断をした、オレとリカさんだけの空間。


「終わりって」

「言葉の通りだよ。もうここに私が来ることはない」

「ずいぶんと淡々と言うんだな。動揺してるのはオレだけかよ」

溜息をつきながら頭を掻く。

いつかはやってくる終わり。分かってはいたこと。
元々そういう約束だった。旦那が戻ってくるまでの関係だと初めに言われていた。
それを承知で付き合っていたんだから、オレに何も言う権利はない。
それでも二年も付き合っていれば情も沸く。未来だって考える。

リカさんは返事をせず、オレをまたいでベッドを降りた。
シーツの擦れる音がして、床に足をついた音がする。
小さな炎が見え、うっすらとリカさんの顔が浮かび上がる。
煙草の匂いがする。

「私が動揺するのは卑怯だろう?」

大した美人でもなければスタイルが良いわけでもない。
貢がれているわけでもない。年齢だって随分と上だ。
それでもこの人と居る時がどんな時よりも大切だった。


突然、リカさんのケータイのアラームが鳴りだす。

「ああ、12時だ」

ガラステーブルの上でガタガタと震える携帯電話がボタン音の後、静かになる。

「音積(ねづみ)、20歳の誕生日おめでとう」

電気がつく。

急に明るくなった目の前にいたのは、
全裸で咥え煙草をしながらオレにプレゼントを突き出しているどこかの家の妻だった。



畜生、一生消えない傷を作りやがって。



http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1765657475&owner_id=24383800

コメント(110)

情景描写、心理描写、会話のすべてが凄くて、それ以上の表現ができません。

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