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日記ロワイアルコミュのつよいひかり

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「結婚して、もう子供もいるって」

こないだ二十年ぶりくらいに会った地元の友達から
彼のことを聞いた。

なんつう書き出し方すると

「あーはいはい、昔の男との思い出話ね」って、

書いてる自分が思う。誰よりも思う。

違う。

彼ってのは、元気くん。

僕が生涯で一度だけ参加したボランティアで知り合った、当時六歳だった男の子。

高校出たばっかりのとき、そっち系の専門に通い始めた友達が
「12月に先天性四肢障害父母の会で、スキー合宿行くんだけど人手が足りない。 ボランティアで参加しろ」
と言うので

「うん」と答えた。
そしてその後に
「センテンセイシシショーガイ?」と聞き返した。

「そう。生まれつき、手の指や腕や足が、一部無いこと」

「はあ」

「じゃあ、12月な」

話は逸れるが、当時僕らの年代では
「A=キス」
「B=ペッティング(今で言うと何?濃厚ボディータッチ・・・とか?)」
んでもって
「C=セックス」
なんつう言い方がギリギリ生きてた。なのでたまたま近所にあった「ABC公園」という公園は僕の中ではハレンチの権化だった。

男子校だったし、彼女いなくてもキスくらいはしたことあってもそっからノープランフォーエバーな感じだったので、

「ささ参加したら、福祉系は女子多いと聞いてるし、なんつうかきっと優しいだろうし、さらに合宿ってことは間違いが起こりやすいシチュエーションに違いなくて、アレ?もしかしてその日、Bとか経験しちゃうの俺?」

みたく突っ走った。

いや実際は人見知りするほうだったから、何もないとは思ってた。

しかしB=ペッティング略して立ちバック(ウソゴメン)に対する並々ならない期待があったことだけは白状します。

そんでその日はやってきた。
新宿駅前のターミナルに行くと、すでにたくさんの人が集まっていた。

子供たちの親達やきょうだい、僕らのような「ボランティア」。
バスに乗り込む前に、班分けすることになり
僕もいちおう、六人グループの班長に任命された。

これまでの自分の生活では関わったことの無い、手や、足の一部が無い子供たちに
元気よく挨拶されて、なんだか面食らった。

そして、目のやり場に困った。

怖気づきそうな気持ちと、自分の軽薄さに対する後悔が入り混じった気持ちで、
まずは誰かに謝りたい思いだった。


「遅れたー」

声に振り向くと、ぼさぼさの長髪でヒゲ面。

さらに、これからスキーに行こうってのに、ペナペナのジャージの下に着ているのは、
夏に、かき氷屋さんにかかる例のマーク「氷」のプリント。

彼は、左腕の肩から少し下からが無かった。

うわっとその場でみんなのテンションが揚がるのがわかる。

「浅野さーん」「にいちゃーん」「ちこくだよー」「ばーかばーか」

周りのほとんどの人たちが、彼の登場に歓迎の声をあげる。
そのまま、なだれ込むようにみんなでバスに乗り込んだ。
僕を誘った友達が、その浅野さんという人と仲良しだったので
興奮した子供たちに混ざって、すぐ近くの席に座る。

浅野さんは遅刻の理由を「ひでえ二日酔い」と説明した。

「こないだオランダ行って刺青足して来てから、悪酔いすんだよな」と
体中に入れたタトゥーを見せてくれた。

「うぇ!かっけええ!」
僕はその頃、勝手に一人で日本画を勉強していたので
構図やデザイン、何よりも岩絵の具のような鮮烈な色にびっくりした。

「だべ?この青は日本ではまだ許可されてないのよ」

浅野さんはニヤリと笑い、まるで昔からの知り合いのように僕にもいろんなことを話して聞かせてくれた。

小学校のときに、根性試しで「日本縦断自転車旅行」をやったら

新聞やテレビが追っかけてきて、うっとおしかったこと。

だけどそのおかげで引っ込みがつかなくなって、結局は完走できたこと。

老けてるけど、まだ21歳なんだ、という力説。

大麻が大好きな浅野さんにとって、合法であるオランダは天国だったこと。

天国にはチューリップがいっぱい咲いてて、風車がクルクル回っていること。

障害者であるので、税関がほぼスルーなことを利用して
大好きなサムシングをいっぱいいっぱい持って帰ってきちゃったこと。

こんど行くときは一緒にイこうねって、バスがスキー場に着くまで僕らは子供たちと同じレベルではしゃぎ続けた。

旅館にバスが着いて、宴会場に集合して部屋割り。
僕らの班と、浅野さんが班長の班は同じ部屋になった。
荷物をおろして、交代でお風呂行って布団敷いてから宴会場でご飯。からのレクリエーション大会。
詰まるところ、僕ら「ボランティア」の役回りは、それら一連の予定をスムーズに進行させるための
「子供たちのまとめ役」だと理解した。
ので
僕は自分の班の子供たちを集めて

「今から班長ではなくアニキ、と呼ぶように」と指示をした。

「アニキィィー!」

素直な子供たちは、その場で声をそろえて従った。

しかし、逆にそのことで子供たちのスイッチを入れてしまったらしく
「アニキ」と叫べば、僕の股間にパンチしても、うずくまっている背中の上で
妙なステップを踏みながらバランスをとっても、ジャージのズボンを下ろしても
ゲラゲラ笑いながら顔を近づけてきて、

「べろおおおーり」

と言いながら、とってもジューシィな舌で僕のほっぺたをなめ上げてもいいことにも
なった。

「ねえ、こないだウチの壁と屋根、全部緑色に塗ったんだぜ」

「やめろー、やめてー、やめてくださいい!」とか言いながら悶えている僕に
男の子が顔を近づけて言った。

「え、元気くんだっけ。なんでまた?」

2、3人の子供たちが執拗に僕の脇腹をくすぐっている。

「大工の親方なんだ!俺の父さん。すごいだろ!」

その顔があまりにも嬉しそうで自慢げだったので、思わずこっちも笑ってしまう。
いや、とっくに笑ってたけど、子供たちを落ち着かせて
みんなで話を聞いた。

「大工さん?塗装屋さんじゃなくて?」

「うん。大工。家つくる人!」

「どうして緑色にしたの?」

「俺が緑がいいって言ったから!」

なんか無茶苦茶簡単で、やたら元気のいい子だなと。
名前も元気だし。

そんなことしてる間に、僕ら班と浅野さんの班に「お風呂の順番」がまわってきた。

部屋中の子が再び興奮して、バッグから着替えを取り出したり
はやくもパンツ一丁になったりしはじめた。

僕らの部屋には浅尾さんの班に、一人だけ四肢障害ではなくて
知的障害のふとしくんと言う子がいた。
ふとしくんも、ずっとみんなに交じって騒いだり奇声をあげたり楽しそうにしていたのだけど
これからどこかへ移動するということに、急に緊張したようで

「わーっ!わあああっ!」と大声をあげて

自分で壁に頭を打ちつけはじめた。

すぐに浅野さんが駆け寄り、背中から抱きしめてなだめようとしたけど
ふとしくんはものすごい力で振りほどき、再び頭を打ち付けるというのが
何度か繰り返された。

僕も半ビビりで浅野さんに「どうすればいい?なんかできることある?」と聞くが
二人して無理やり押さえつけちゃうのも、かえって良くない気がして
おろおろしていた。
逆に子供たちは
「またはじまっちゃったー」みたいな感じでシラッとしてはいるのだけど

全員が
「どうすんの?お風呂行くの?なんだったら落ち着くまでみんなで待つよ」

という態度で対応していたのには、ドキリとさせられて
とても恥ずかしい気持ちになった。

「いいよ、みんなで先行ってて。おととしも俺が一人でこいつみてたんだ。
たぶん二人になれば落ち着くと思うし」

「大丈夫?」

「うん、慣れてる。かえってみんなが周りにいると緊張しちゃうみたい」



僕は自分の「なにも出来なさ」をこれ以上みんなに見られたくなくて
「子分ども、準備はいっかー?」と恥ずかしいくらい元気に言った。
そこで子供たちがすぐに
「おー!」と手にした着替えやタオルを頭上に掲げて合わせてくれたのが
なんだかとてもありがたかった。

みんなでふざけ合いながら大浴場へ行き
脱衣所で全員が裸になった。

障害をもつ子の兄弟が二人と、僕。

五体満足な体をしているのは3人だけだった。

子供たちは大騒ぎして体を洗いっこしたり、湯船で泳いだりして
とても楽しそうだった。

でも、僕が隣にいた両腕のないヤスくんに

「背中流そっか?」と言ったのは

はじめて裸で隣に座る、両腕のない子供に触れるということが
まるで大怪我した人の傷口に触ることのように思ってしまったことが
自分でもびっくりするくらい恥ずかしくて、ひどいことのように思えて
それをヤスくんに絶対に悟られたくないと思ったから。

「ん?なんで?大丈夫だよ」

ヤスくんは笑いながら、足を器用に使ってタオルで体を洗っている。

「フフフ、スキだらけなんだな」
僕ははわざとおどけて、ヤスくんの腰のあたりをくすぐった。


走り回る子供をつかまえたり、お尻をたたいたり
まだ小さい子の体や頭を順番にタオルで拭いていたら、トータルで1時間近くになり
部屋に戻るころには、僕はすっかりのぼせたようになっていた。

「1時間したら宴会場でご飯だからねー」と他の班のリーダーが廊下で叫んでいる。

浅野さんたちも部屋にいなかったので
僕らと入れ替わりにお風呂に行ったんだと思った。

僕もジャージに着替えて、ちょっと一休みするかなんて思い
座布団を二つに折って、ごろんと横になった時、
視界の端っこに見たことのないものがあるのに気づいた。

「なんだありゃ」

ハイハイして近づくと、それは屑かごに山と積まれたバンドエイドの包装だった。
一瞬全く状況が読めなくなり

「誰か怪我したの?」
そんなずないのに、僕は裏返った声で叫んだ。

同時に、部屋の床に血痕があるかどうか注意深く見まわした。

まるまる3箱は空にしたのではないかと思われるほど大量のバンドエイドが使われていたから。









すんません続きます

「つよいひかり 2」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1621779868&owner_id=801210

コメント(255)

一票!

なんだか、必死になって読みました。
ありがとうございます
一票〜☆素敵なお話しありがとうございました!

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