日記ロワイアルコミュのおみかん

小学校３年生のクリスマス
サンタクロースはこの世に居ないと知った

毎年、目が覚めると
枕元にあるサンタさんからのプレゼント

　　　サンタさんは靴下を置いて眠ると
　　　プレゼントを届けてくれるんだよ

オカンが、そう教えてくれたから
毎年一番長い靴下を選んで枕元に置いた

目が覚めて、クリスマスの朝
靴下は毎年きれいにたたんであって
そのかわりに
いつも（ともちゃんへ）
と書かれた紙袋が置いてあった

欲しい物が必ず入っている
願ったものが間違いなく入っている紙袋

　　　
　　　サンタさんてすごい！！

去年はバービー人形やった
おねーちゃんは新しい手袋とマフラー
のりちゃんはヒーローもののフィギア・・・

今年は決めてあんねん
バービーのドレッサー
これでお部屋が出来上がんねん

なかなか寝付けなかったイヴの夜

朝目覚めたら紙袋はなかった

　
　　　　。。。なんで？サンタさん、けーひんかったん？？

その代わり、
いつも脇にたたまれている靴下に
おみかんが入っていた

おねーちゃんは４こ
のりちゃんは２こ
アタシは３こ

　　　「こんなん、おみかんてなんやねん！！
　　　　頼んでひんわーーーーー」

大泣きして縁側から庭に投げた
バービーのドレッサー、言うたやん！！！

のりちゃんとおねーちゃんは
ソレをボーっと見てた

オカンが台所から走ってきた
何も言わんと平手を喰らった

平手を喰らってから
オカンはアタシを抱きしめて
黙って泣いた
声を立てんと泣いた
オカンの涙の粒は大きかった

ビックリし過ぎて声も出ーひんかった
オカンの顔がホンマに怖くて
でも何で泣いてるんかワカランくて

そっからは記憶がない

・・・多分、コレが最後の両親からのクリスマスプレゼント

時は経ち
去年の夏、久しぶりに家族が集まって
ものすごい久しぶりに食卓を囲んだ
オトンの実家、そしてこれから
両親の終の棲家、鹿児島で

おとーちゃんは個人事業で一旗上げて
今では悠々自適の老後や
言うてもまだまだ５０代、
学生結婚の彼らは、これからが第二の青春なんやろう

家族全員が集まったのは本当に久しぶりやった

懐かしい思い出話に花を咲かせ
その内、笑い話のように
このクリスマスプレゼントの話題になった

　　　「そうや、あれからサンタさんはおらんて
　　　　知ったんや（苦笑）」

おねーちゃんも
のりちゃんも

　　　　「そーや、そーや」

と笑ったけど
オカンは申し訳なさそうに話出した

　　　　

おとーちゃんが友達の保証人になって
あの年は大変やってん
毎日、電話がかかってきて
もうあたし等ではどうにもならんくて
田舎のおじいちゃんが助けてくれはったから
借金取りこそ来ーひんかったけど
ホンマにギリギリの生活やってん
せやけどクリスマスは毎年
みんなが楽しみにしてるさかい
何とかせな、と思っててんけどな
やっぱりオモチャ買う余裕はなかってん
家の物で誤魔化そ思たら
なーんも無かって困っとったら
隣のおばちゃんが和歌山から送ってきた
おみかん、くれはって
「コレや！」
そう思て、年の順で数入れたんや

ともちゃん、アレ投げよったな
アタシ、カチン来て打ってまったけど
ごめんな、覚えてるんか？
もう、時効やから言うたけど
ホンマ、ごめんなーー
笑い話やなあ（苦笑）

・・・笑い話には取れんかった

知らんかった
そんなん知らんかったで

普通に生活してたやん
家が貧乏なんてイッコも思ったこと無いで

あの頃の母が
黙って怖い顔でアタシを打ったのは
怒っていたのではなく
悲しかったんや
ココロが痛かったんや

悲しくて
くやしくて
もどかしくて

わかってほしくて・・・・

そんでついアタシを打ったんや

切なくなって泣いてしもた
おねーちゃんも
のりちゃんも
おとーちゃんも黙ってしもた

　　　「そんなん、昔話でよかったわー
　　　　今おとうちゃん、よーさん稼いではるから
　　　　もう何でも買うてくれはるんちゃう？？（笑）」

そう笑ったオカンの目から
大きな涙の粒が、ぽろぽろ落ちた

今更ながら両親の愛を知る
今更ながらその存在に感服する
この家族に生まれてきてよかった
この家族やったから
こんなにも愛されて育ったんやと・・・

最近、
おみかんを見る度　両親を想う。。。。。