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日記ロワイアルコミュのようじょ

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―前置き―


私は洋服屋さんをしています。明日にでもやめたいです。

店内には極稀に値段の張るものもあるため、調子に乗って各商品に盗難防止用のタグをつけています。

そしてまた、その盗難防止用のタグを外す際に使う銀色の器具があります。

器具の正式名称は存じないので、私は「あのタグ外すやつ、銀色の」と呼んでいます。

金属製、手のひらサイズのそれは、大きさの割りに重量感があり、さながら麦わら帽子のようなシルエットです(写真)。


―――


ある顧客様のお子様に もねちゃん という5歳の女の子がいます。上司がお母様の接客をしている間、私がもねちゃんの相手をします。

初めて御来店された時の私ともねちゃんの会話はこんな感じでした。



私「こんにちわ」

もね『こんちはー!』

私「お名前は?」

もね『もねちゃん!』

私「あれだね、有名な画家さんと一緒だね」

もね『・・・?』

私「いるんだよ。クロード・モネ。印象派でさ。睡蓮とか描いてるの。」

もね『・・・』

私「・・・」

私「もねちゃん、お絵描き好き?」

もね『うん!すきぃー!』

私「ふーん」

もね『・・・』

私「もねちゃん、アンパンマンとか好き?」

もね『うん!すきぃー!』

私「そっかー」

もね『・・・』



とまあ、びっくりするくらい全っ然盛り上がらないんです。

私、子供はすごい好きで、可愛いなーいいなーと思うんですが、接し方がまるで分かりません。



しかも、愛想笑いが苦手なので子供相手でも真顔で淡々と話してしまいます。

結果的にあまり好かれません。



そんな感じで、これまで私ともねちゃんはつかず離れずの微妙な関係を保っていたのですが、前回、私たちの距離をぐぐんと縮める出来事が起きたんです。




その日もお母さんが洋服を選んでいる間手持ち無沙汰になってしまったもねちゃんは、懲りずに私のところにやってきました。

私は軽くもねちゃん恐怖症になっていたのでカウンター内に引っ込んでいたのですが、もねちゃんはそんなのお構い無しにずんずんと入ってきました。


カウンター内にはセロテープやらなんやらがこちょこちょと置いてあるので、もねちゃんは興味津々。

しばらくそこらを探検していたもねちゃんは、ついに見つけてしまったんです。


「あのタグ外すやつ、銀色の」を!


もねちゃんはキラッキラした眼差しで銀色のを指差して私に問いかけました。




もね『これなにー?キラキラキラキラ』




これ程までに眩しい夢と希望に遭遇したのは久しぶりです。


裏切ってはいけない、裏切ってはいけない…


自分自身に言い聞かせ絞り出した言葉が…




私「これね、UFOなんだよね…」




言いながら私自身絶賛ワッツ顔でしたが、もねちゃんは更に上を行く絶賛ホワッツ顔でした。




もね『ゆーふぉー?!!』

私「しっ!もねちゃん、声おっきい!」



私の樹木希林ばりの見事な演技力に圧倒されたもねちゃんは、人差し指を口に当てながら小さな声で囁きます。




もね『ほんとにゆーふぉーなの?』

私「うん、本当だよ。壊れちゃったみたいでね、ここに不時着したんだよ」

もね『もねちゃん、はじめてみたー!』

私「あ、ほんと?私は2回目かな」

もね『…!うちゅーじんわ?』

私「部品探してくるって言って出掛けたよ」

もね『かえってくるの?』

私「夕飯までには戻るって言ってたかな」

もね『…!おねーちゃん、ゆーふぉーのった?』

私「うん、1回だけ乗せて貰ったよ」

もね『もねちゃんものりたいー!』




言い終わらない内にもぞもぞと靴を脱ぎ始めるもねちゃん。

UFOに乗るのに靴を脱ごうとするもねちゃんの育ちの良さに目頭を熱くしながらも、慌てて止めに入りました。




私「もねちゃんもねちゃん!宇宙人がいないと乗れないんだよ。宇宙人に小さくしてもらわないと入らないの。」



苦しい私の言葉にしかしもねちゃんは、えらく合点がいきました顔でいそいそと靴を履き直しました。

丁度このタイミングでお母様のお買い物が終わり、もねちゃんも帰ることに。




もね『また見に来てもいい?』

私「いいよ。UFOのこと、お母さんには内緒だよ。」




私の耳元に口を寄せ、小さな声で囁くもねちゃん。私も得意の真顔で囁き返しました。

神妙な面持ちで頷いたもねちゃんは、そのままお母様に手を引かれお店を後にしました。





なんて出来事をすっかりさっぱり忘れていた今日、もねちゃんが再びやってきたんです。

幼稚園の友達3人を引き連れて。




例に漏れず、お母様方の接客に上司が向かったため、必然的に私がもねちゃんずの遊び相手に。



もね『おねーちゃん、きたよー』

私「うん来たねー、やたらいっぱい来たねー」

ゆうひ・しょうた・まゆき『『『こんちはー』』』

しょうた『ねえねえ、ゆーふぉーどこ?まじであるの?』




早々に繰り出されたしょうた君の右ストレートに「は?UFO?なんの?」となりかけましたが、寸でのところで前回のやり取りを思い出しました。

キラキラした四人組に詰め寄られ、仕方なく銀色のを差し出しました。

さすがに4人は騙せないだろうと踏み、もねちゃんには申し訳ないけれど潔く嘘を認めようと腹を決めて。


し か し




しょうた『うおぉー!すげー!』

ゆうひ『ほんものだー!ゆーふぉーだー!』

もね『ね?もねちゃんいったとおりでしょー!』




誰一人として疑いません。

5歳児の純粋純情パワーにあてられた私は危うく干からびそうになりました。



もね『きょーわ、うちゅーじんわー?』



ぱりっぱりになりかけていた私に、もねちゃんが追い討ちをかけます。



私「また部品探しにいっちゃったよ…昼間はいつもいないんだ…」

もね『そっかあ…』

ゆうひ『おねーさん』

私「はい…」

ゆうひ『おねーさんはうちゅーじんに会ったんでしょ?』

私「うん、そだね…」

ゆうひ『にがおえかいてみてよ!』

もね『もねもみたい!』

しょーた『おれもおれも!』












まさかの似顔絵コースです。

しかし、ちびっこ4人に囲まれた私の無力さといったらありません。

言われるがままに紙とペンを持って宇宙人の似顔絵を書き始めました。




私「こんな感じかなー」

しょーた『もっとくわしく!』

私「これは?」

もね『かおがわかんない!』

私「こう?」

ゆうひ『うすい!』

私「ごめんなさい…」



そんなこんなで5歳児に半ば脅されながら、なんとか完成した宇宙人の似顔絵。(画像)



ばれる、嘘がばれる、子供達の夢を踏みにじってしまう…



罪悪感、無力感、そしてほんの少しの解放感に包まれながら、私はおずおずと似顔絵を差し出しました。




し か し




しょーた・ゆうひ・もね『『『おおおぉー!』』』

ゆうひ『ちょーうちゅーじんだね!』

しょーた『すげー!まじですげえー!』














超宇宙人の根拠は分かりませんが、とりあえず奇跡的に子供たちの夢を壊さずに済んだんです。

エフエフとかスターウォーズとか好きで良かったなと自身の趣味に賛辞を送りました。




もね『すごいねー!ねっ、まゆきちゃん!』



興奮覚めやらぬもねちゃんが、傍らのまゆきちゃんを小突きながらにこにこしました。

小突かれたまゆきちゃん。

もねちゃんと私の顔を交互に見比べ、ちょっと照れたような感じで一言。







まゆき『おしりかじり虫みたいだね』






もねちゃん達を取り巻く空気が凍りついたのを、私は肌で感じました。

なんとなくピシッとなりました。



直後にお母様方のお声がかかり、もねちゃん達はピシッとした空気をまとったまま帰っていきました。

もねちゃん達がどう受けとめ、最終的にどう結論付けたのかはわかりません。



ただ1つ言えることは、私は洋服屋さんです。

かじってなんぼの商売だ、じゃねぇです。



コメント(269)

おしりかじり虫よりは
餓えた顔をしてらっしゃいますね
こういうの大好きです
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