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日記ロワイアルコミュの元彼女からの手紙

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今自分がどこにいるのか、見当もつかなかった。


三人の男に押さえつけられたまま、黒いワンボックスカーに乗せられている。
どうやら手足をロープか何かでがっちり縛られているようだった。車内の固いカーペットに、顔が押し当てられて冷たい。男達はさっきから何一つ声を発しない。異様な空気が流れる車内のなかで、カーラジオの音だけがリアルだった。口に貼られたガムテープのにおいで、気を、失いそうに、なる。




彼女から手紙が届いたのは、先週金曜日のことだった。



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春になっちゃったね。


郵便で急に連絡するなんて、
びっくりさせてごめんなさい。

久し振りぶりだね、ほんと…
ざっと五年ぶりくらいじゃない?



独り暮らしの大学時代から、
実家暮らしに戻って四年。

離れて住んで改めて、
名古屋での当たり前の毎日が
満ち足りてたことに気付いたよ。

未練が無いって言ったら嘘になる。
めちゃめちゃカバヤが好きでした。

だけど今は結婚もして、
まあまあ幸せな生活も送ってます。

すごいでしょ?



べつに何がしたい訳でもないけど、
てゆーか話がしたいだけなんだけど、
都合が合えば久し振りに会いたいです。
ぶしつけなお願いでごめんなさい。


新栄の駅前のコメダ珈琲に水曜12時。
天気が良ければ店の前で待ってるから。



こんな滅茶苦茶な内容でごめんね。
ろくでもない女だよね、ほんと。




鈴木由美子






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郵便受けにぽつんとあった、飾り気のない封筒。
中には便せんに丁寧に書かれた手紙と、しおりのような赤い紙が入っていた。「ごめん」の三文字がやたら多い手書きの文字は、姓は違っても間違い無く由美子のものだった。

由美子とは大学入学当初、半年だけ付き合って、愛して、別れた。原因は「性格の不一致」。プライドが高い彼女にぼくがついていけなかった。一重の強い目をした、華奢な女の子だった。別れ際に涙をいっぱいにためて、ぼくの方をずっと睨んでいたのを覚えている。一度は心から愛した、強い、強い目。

それだけに、「会いたい」とゆう手紙の内容は意外だった。



あれ以来会ってないけど、
どうしてるんやろ。


ぼくは結婚後の彼女への好奇心もあって、翌週水曜日、新栄のコメダへ行ってみることにした。まあ、下心は、正直ちょっとあった。









水曜日。


「嬉しい…カバヤ、ほんとに来てくれたんだ」

待ち合わせ場所に現れた由美子は、素朴だった大学時代とは違い、ブランド品できらきらと輝いていて、最近離婚した某女優のような上品さがあった。なんだか変われば変わるもんやなあ、と、ぼくはひどく関心した。

由美子との会話は弾んだ。
ふたりが会った学生時代のこと、
仕事がいま軌道に乗っていること、
結婚後の生活のこと…
話すことはいくらでもあった。

コーヒーをすっかり飲み干した頃、
ぼくは手紙のことを聞いてみた。

「手紙、ほんま久々でびっくりしたで」

「ごめんね」

「いや謝らんでええよ。会えて良かったし。」

「うん、来てくれてありがとう」

「ほいでこの赤い紙のことなんやけどな」
ぼくはそうゆうて、封筒に入ってたしおりのような赤い紙を取り出した。

「これってなんやったん?」

その瞬間、由美子の目の色が、すうっ、と深くなったような気がした。

「字」

「え、なに?」
字?よくよく見ると、しおりには赤いペンで文字が書かれていた。



【ヒントはあげるよ。私は西洋被れした連中よりも、日本文学の方がずっと好き。横書きの文章じゃ、真意は伝わらない。でしょ?】



「はは、なんやこれ」
訳が分からずたてよこ、とぶつぶつゆうているうちに、突如視界が揺れた。ジクジクと頭の奥がしびれるような感覚に襲われ、ぼくは喫茶店の冷たい机に突っ伏した。


「愚鈍な男」
遠くの方で、由美子の冷たい声が聞こえた気がした。






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どれぐらい走っただろう。

車は右折左折を繰り返し、がたんと乱暴に止まった。


土と草の湿ったにおいがする。
そこは、どこかの山にあるプレハブのようだった。
ぼくは3人の男に引きずられながら、そのプレハブの中にある青いシートの上にどすんと叩き付けられた。身動きが取れない。声も出せない。急激に現実感が襲ってきたぼくの目の前にいたのは、狡猾な顔をした3人の男と、美しい由美子の笑顔だった。


「訳がわかんない、って顔ね」

由美子は笑顔のままそう言った。
ぼくが言葉を発せないのをわかった上で。


「8年間、ずっと忘れなかった」

プレハブの奥で、男達が何やら準備をしている音が聞こえる。


「あの時の屈辱は、お前が、くれた、屈辱は、お前みたいな、」

由美子はぼくの鼻先を力任せに蹴り飛ばした。
激痛とともに鼻血と涙がとめどなく溢れてきたが、くぐもった声しか出すことができない。

「あた、あたしはね、生涯であんな、屈辱を、ふられるだなんて、そんな、屈辱を、味わったことは、なくてずっとどうやって復讐してやろうかとどうやって傷つけてやろうかってそればっかりそんなことばっかり考えて生きて生きてた」

みるみる目が、変わっていく
男達が、手に持っているのは何だ。

「だから小躍りしたわお前がマンションに入ってくのを見つけた時でもせっかくせっかく見つけた楽しみじゃない何かしらゲームとゆうか遊び心って必要よねだからあたしは手紙を書いた書いてみた昔よくやったでしょ言葉遊びふたりでねえ覚えてないとは言わせないお前お前が」

ぐるぐる混乱で視界がまわる

「ヒントに気づくかなと思ったんだけどねまあ気づいてても力づくのつもり、だった、けど、ね」


由美子はそこまで一気に言い切ると、例の手紙のコピーをひらひらと捨てて、あひゃひゃ、と甲高い声で笑い始めた。


日本文学。
言葉遊び。
僕は捨てられた手紙を改めて目にして、
愕然とした。

そんな。
待って。



そんなぼくの表情を見て、由美子はいっそう甲高く笑った。

笑う笑う由美子が笑う。
一度は心から愛した、強い、強い目。
ぼくはこんな状況にも関わらず、その目が、美しいと、思った。

コメント(136)

しおりの文章ばっか見てましたげっそり
ナルホド そっちか電球
一票です人差し指
携帯から見てるんですけどどこをどう見るのですか?台風
うぉーーーー!怖い!

ユミコって名前が一気にキライになりそうでしたw

一票。
> チョモランマ@Bフラさん

たてよみ
春になっちゃったねの手紙の1文字目をひらがなに変換して、すべてたて読み。

はゆび・・・・ってなる。

歯、指、、、、殺す

となる。

やっとわかってスッキリしましたわーい(嬉しい顔)電球電球


怖いぃー(長音記号2)走る人走る人走る人

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