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日記ロワイアルコミュの【商品レビュー】カビキラー(本体)紹介

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「カビキラー(本体)の奴ふざけてやがる!」

わなわなと怒りに奮え、俺はビールのグラスを乱暴に置いた。


妻の真紀子がビクリとする。

「あ、あなた疲れてるのよ。明日から私がカビ取りをする…わ、…ね?」

俺の機嫌を損ねまいと無理に作った笑い顔にカチンと来た。

「おい、その言い草はなんだ。俺が疲れてるのとカビキラー(本体)が嫌がらせをしてくんるのと何の関係があるんだよ。
男の世界に口出しするな!」

真紀子は黙り、うつむく。

ああ、苛々する。畜生め!
俺はビールをぐいっと飲み干した。














カビキラー(本体)のスプレーが、風呂場の隅々まで行き届かなくなったのは、三ヶ月前ころからだった。

俺がスプレーをすると決まって命中しないのだ。

最初はカビキラー(本体)の調子が悪い時もあるさと鷹揚に構えていたが、
毎日毎日スプレーは的を外し、段々と風呂場の隅々を黒く、汚くしていった。

前はこんなじゃなかった。
しかも妻が見るに見兼ねてカビ取りをするとスプレーは素直に言う事を聞いている!


三ヶ月前と言えば俺の昇進が決まった頃。
不景気にもかかわらず俺の成績は伸び続け、同期の中でも異例の昇進をした。


さては、カビキラー(本体)の奴、俺に嫉妬しているな?


自分より強い者への反発心やライバル心は、人間なら誰でもある。
そのライバル心や悔しさをバネにして努力する者

または、その反発心を嫉みというケチな奴
その二つに分かれる。

カビキラー(本体)は明らかに後者だ。


『強力』に『キラー』する、という直接的な効能をアプローチしているカビキラー(本体)だから自信家なんだろう。
そんな自信家が、大胆な効能をうたった手前、俺に負けるのが悔しいのだう。

だったら自分が努力すればいいものを、カビキラー(本体)の奴は、ねちねちと嫌がらせをしてくる。
清潔をうたいながら腐った奴だ。





―――――――――――――――






「みなさーん、描けたらお父さんに見て頂きましょうね〜!」

暖かな光が差し込む学校の、今日は父親参観日だった。

一年一組の教室で、息子の太郎は熱心にクレヨンと格闘している。


黒板に大きく大きく書かれた今日の絵のテーマは

『おとうさんとカビキラー(ほんたい)』

小さい子供ならだれもが描いた事があるお決まりのテーマだ。
ほのぼのとして頬がゆるむ。

しばらくして絵が完成し、みんながお互いの絵を鑑賞し始めた。
カビキラーを持つ父親の絵は多種多様だが
子供達の自慢の父親なんだろう。
全ての父親がみんな堂々とカビキラー(本体)を持ち、輝いていた。
ふと、教室がざわつき始めた。
みんなが太郎の絵の回りに集まっている。


「太郎くんのお父さん真っ赤っか!!」

「腰が曲がってておじいちゃんみたい!」

「猿みたい!」

「いやまるでエビだよ!」
「そうだエビだエビだ〜!」

子供達が爆笑する。

「先生!太郎くんの絵の中の太郎くんのお父さんがエビみたいにカビキラーしてます。良くないと思います!」

言い付ける者まででた。

太郎の机に近付き絵を見た時、俺は凍りついた。

絵の中の俺は腰が引け、顔を真っ赤にしながらカビキラー(本体)をまるで遠ざけるように持っていた。

腕は曲がり、肘が上がり「正しい姿勢」とは真逆の情けない男の姿がそこにあった。


これが…これが俺の姿?

動悸がして油汗が吹き出した。立っているのがやっとだ。

「海老みたいだー!変だー変だー、ぜってー変だー!」
と囃し立てる男の子の父親が
「シッ!」
っと口を塞いだ。



俺はいたたまれなくなって教室を飛び出した。

泥の中を走るように不格好にもがき、逃げた。
早くここから立ち去りたい。それしか考えていなかった。







夜、太郎が寝静まると俺は真紀子に聞いた。

「あの格好、知ってたのか?」

「ええ…。ただ、隠してた訳じゃないの。」

「ふん、知ってて笑ってたって訳だ。」

皮肉に笑う俺をキッと睨み真紀子は言った。
「違う!あなた、昇進してから人の意見を全く聞かなくなったわ。
口を開けば他人の愚痴ばかり。
太郎だって近づかないくらいピリピリして怒鳴り散らしてプライドばかり高くなった。
そんな時に何を言ばいいの?」

真紀子は泣いていた。



図星だった。

昇進が決まってからというもの俺はビクビクしてばかりだった。

仕事の引き継ぎ
沢山の書類
飲む機会も更に増え、疲労も抜けなかった。
部下がミスをしないか目を光らせ、自分の成績も下げたくなかった。
ここで期待に応えなければ自分の評価は下がる。
休んだら代わりはいくらでもいる。
「たいしたことない奴だな」と言われたくなかった。

本当は嫉妬していたのは自分のほうだ。
カビキラー(本体)なんか、と軽視しながら奴がうらやましかった。
いつでも自信たっぷりに効能をうたい、仕事をやり遂げる。
「カビキラー(本体)が出来ないなら無理だなぁ。」などと、絶大な信頼を受けている彼に嫉妬した。憎かった。そして怖かった。


俺は自分の心の闇に目を背けるかのように、風呂場の隅を見ないようにしていた。

まさに的外れだった…。

嫌がらせをされていたんじゃない。俺の中に問題があったのだ。
回りのあら捜しばかりして人を平気で傷つけてしまった、俺は愚か者だ。

カビキラー(本体)にケチをつけ、その実心が貧しかったのは俺。

俺は風呂場へ走るとカビキラー(本体)に語りかけた。


「俺に原因があったんだ。俺が悪かった。もう一度やり直してくれないか。」

そしてカビキラーを握りしめ、腰に手をあて胸を張った。

もう後悔はしない。
誰も傷つけない。

そんな決意を込めて、風呂場の隅を見据えて薬液をスプレーする。

少し手が震えたが、薬液はまっすぐに、まるで吸い込まれるように綺麗な直線で命中した。


「出来た!」

これだこの感覚だ。
踊り出したくなる気分だ。

ふと、鼻を啜る音がして振り向くと、妻の真由美が泣きながら笑っていた。



馬鹿な自分のせいで妻には苦労をかけてしまった。
妻に謝ろう。
太郎にも謝ろう。
正直に言うのだ。

「お父さん、カビ取り下手になっちゃった。」と。

そして一から努力しよう。
真新しいスーツをまとった新入社員のように。
嫉妬する暇もないくらい、がむしゃらに真剣に。

そう決心すると気持ちが明るく力が沸いて来た。


息を胸一杯に吸い込むと鼻の奥がツンとした。

これは涙じゃない、刺激臭のせいさ。
と強がろうとしたが止めた

俺はカビキラー(本体)を抱きしめ、こちらを向かせると

「今回ばっかりは俺の負けだよ。」

と呟き、カビキラー(本体)の吹出し口にキスをした。













【エンディングテーマ】

KOH+  KISSして
http://www.youtube.com/watch?v=RXWNAQC7acQ



【キャスト】

お父さん:さかなクン

お母さん:細木数子

息子:岸部一徳

学校の先生:深田恭子

カビキラー(本体):浅野温子

ビール: 愛川欽也

グラス:うつみ宮土理

風呂場:和田アキ子

クレヨン:ガッツ石松

画用紙:泉ピン子

囃し立てる子供:石田一成

たしなめる父親:石田純一

コメント(102)

さかなクンと浅野温子のkissは危険すぎると思います( ̄▽ ̄)

一票w
いい話www
そして最後ひどいwww

一票!
息子がいwっwとwくwにwいwさwんwだと、、、!!


一票
きゃ、…キャスティングが……( ̄∀ ̄)内容にやられた!って思ったらエンドロールでやられるなんて…面白過ぎです!!
一票!!(*^o^*)

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