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日記ロワイアルコミュのあたしのオヤジ

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あたしのオヤジってもう78になるんだけど、それって日本人男性の平均寿命を超えてるわけで、あ、いつ死んでもおかしくないんだなーってことに気づいたの。

遅いよね、気づくのが。

でもね、オヤジは歳のわりに元気だし、そもそも親ってやつは歳とらないし死なないもんだってどこかで思い込んでるようなとこがあってさ、なんせあたしはまだ親の死を経験したことがないから、それがどういうものなのか、はっきりいってわからない。
想像すらできないんだ。

あ。オヤジが死にましたって話をしようとしてるわけじゃないからね。
家族愛で泣かそうとしてるわけでもないから。
そういうの、あたし、大っ嫌いだから。
安心して。(きゃは☆)

今年のお正月は、実家に帰って、オヤジと酒を飲みながら、この人とあと何回会えるのかなーなんて縁起でもないこと考えちゃった。
長生きしてね♪って思うのは当然だけど、いくらなんでもそろそろ現実を受け入れるための、心の準備くらいはしといたほうがいいんじゃないかしら。
それに、あたしももういい歳だし、オヤジもボケかかってきたみたいだし、もはやこの人から学べることなんてないって、ようやく言えるようになったと思うわけ。
だから、安心して死んでいいよ、ってさ。
そう思えるほうが、子として健全なんじゃないかな。
まだまだあなたの知恵が必要です、あたしを置いて死なないでください・・・なーんて思うのは変だよね。子より親が先に死ぬほうが自然なわけだし。

あたしとオヤジって相性最悪でね、あたしが実家に帰るたびに大喧嘩になっちゃうの。
でも、姉貴も兄貴もさ、あたしが帰省するとオヤジの生きる張りが出ていい、なんて笑ってる。子と本気でケンカできるのは元気がいい証拠だし、あたしとさえケンカしなくなっちゃったら、一気にボケちゃうよ、ってさ。
ただ最近は、あたしがオヤジとケンカすると、兄貴が「いい加減オヤジの歳考えろよ。バカじゃねーの?オマエたち」って苦笑いしてる。

今年のお正月もまたやっちゃったんだ。
オヤジがいつ死んでもおかしくないって気づいたとき、死ぬ前に言いたいことは言っておこう、なんて思ったわけ。
で、あたしがオヤジに一番言いたかったことは、「母さんをもっと大切にしてあげて」ってことだった。子が父親より母親の味方だってのは、古今東西同じだと思うんだけど、うちもやっぱりそうなんだ。
オヤジはとんでもない暴君で、母さんはその暴君に文句ひとつ言わず仕えてきた奴隷のような、ある意味でかわいそうな人。
「母さんをもっと大切にしてあげて」と言っても、50年間の夫婦生活を今さらやり直せとは言えないよね。だったら、せめてオヤジが死ぬまでの何年かは、母さんのために生きてくださいって言いたかった。
べつに難しいことを要求してるわけじゃないよ。
自分のことは自分でするとか、旅行に付き合ってあげるとか、感謝の気持ちを言葉にあらわすとか。
そう、あたしが一番言いたかったのは、母さんへの感謝の気持ちを持ちなさいってことだったんだと思う。
そんな話を、12月30日の夜に、酒を飲みながらオヤジに説教した。
もちろん、そんな話にまともに耳を傾けるオヤジじゃない。
「バカヤロー!テメェに言われることじゃねえ!!」
ってすごい剣幕でさ。

まあたしかにね、冷静に考えたら、そんなことを子から言われたら、誰に言うとんねん!!って逆上するだろうね。
でも、こっちも飲んでるから、売り言葉に買い言葉になっちゃう。
「母さんはあんたのために自分の人生を犠牲にしてきたようなもんじゃん!!あんたは母さんに何をしてあげたのよ!!母さんがかわいそうじゃんよーっ!!」みたいなさ。
そしたらオヤジ、さらに大音響で、
「他人の知ったことかっ!!」

他人て。
あたし、あんたの子なんですけど。

さらに、
「バツ3のテメェが言うなーーっ!!!」

あはは。
えーと・・・
いっそこの手で絞め殺したろかこのオヤジ。

78のオヤジと取っ組み合いのケンカになりそうだったので、ここはちょっと落ち着こう、と思って、妥協案を出してみた。

YOU「じゃあ、ひとつだけやってください。明日大晦日だから、姉貴も兄貴も、孫たちも集まるよね。みんなの前で、母さんに、『今年も1年ご苦労さまでした。ありがとう』って言うの。それくらいできるでしょ?」
オヤジ「そんなアホみたいなこと言えるかっ!」
YOU「アホでもいいから、言ってください」
オヤジ「あのな〜そういうことはなあ、言わないのが花なんだよ。バカだなオマエは。お母さんはな、俺が言わなくてもちゃーんとわかってんだよ」

・・・・・・。

YOU「わかった。そこは百歩譲って、オヤジが正しいとしよう。でもね、父親として、あるいは母さんの夫としての姿勢を、あたしら子供たちに見せなさい。孫たちにもね。これは教育なの」

あーあ、こいつとは話にならんな、って態度で、オヤジはウィスキーをあおった。

オヤジ「オマエはまだまだガキだなー・・・。学芸会でもしたいんか?ほななにか?花束贈呈でもするんか?」

・・・・・・。
ん?
ちょっと待て。
それ、いいアイデアじゃね?

YOU「それいいねえ。花束贈呈やろうよ」
オヤジ「バーカ。冗談だよ」
YOU「いや、冗談じゃなくて。本当にやろう。あたしが明日買ってくるから、花束。大晦日の夜、みんなの前で、オヤジから母さんに渡すの」
オヤジ「そんなかっこ悪いことできるかっ」
YOU「かっこ悪いことでもいいから、死ぬ前に、一回くらいやっときなさい。お膳立てはあたしがするから」

・・・・・・。

オヤジ「・・・。それでオマエの気がすむのか?」
YOU「すむ」

翌日、あたしは近くのイオンにあるお花屋さんに行った。
てか、大晦日に営業してるイオンってすごいね。
お花屋のオバちゃんに、「予算は決めてません。一番ゴージャスなお花でアレンジしてください」って言ったら、オバちゃんが「どなたへのプレゼントですか?」って聞いたので、「私の母です」と答えた。
オバちゃんは、2秒ほど考えて、胡蝶蘭にしましょう、と即断。
30分後、胡蝶蘭をメインにしたシックでゴージャスな花束ができあがった。
祇園のクラブの開店祝いかよ、という気がしないでもなかったけど、まあ結婚50年にして初のイベントなんだと思えば、ふさわしくないこともないよね。

花束をそーっと持ち帰って、2階の部屋に隠した。

大晦日の夜、姉貴一家と兄貴一家が集まる。
その子供たちもいる。あたしにとっては甥と姪にあたるわけだけど、大学生、高校生、中学生、小学生、幼稚園児までいる。
オヤジはなんだかそわそわしていて、あたしに小声で「いつ渡すんだよ?」とか言ってきたりしてたけど、「黙ってろ。合図するから」と一蹴する。

甥、姪たちは、年齢が年齢だけに、廊下を走り回っている子や、ニンテンドーでずーっと遊んでる子や、ケータイをずーっといじっている子など様々だったけど、年越し蕎麦の用意ができたときには、全員がひとつの食卓についた。オヤジひとりを除いて。

そして、オヤジが胡蝶蘭の花束を抱えてリビングに入ってきた。
すごーく嫌そうな顔をしている。その顔を見て、ちょっとやりすぎたかな、と罪悪感を覚えたくらい。
姉貴と兄貴は、「はあ?」と呆気にとられている。
そりゃそうだ。オヤジを知る子からすると、ありえない光景だもの。
甥、姪たちは、「わーすっごいお花〜」「じぃじぃ、どうしちゃったの〜?」などと、キャッキャッ騒いでいる。お子ちゃまは柔軟だなあ。
ともあれ、にぎやかなムードになってよかった、と思った。

オヤジが、母さんに無造作に花束を渡した。
そしてオヤジは、今年も一家が揃ってお正月を迎えられることは喜ばしいことだ・・・的などーでもいいスピーチをして、最後に、「ありがとう」と言った。
母さんは、普段どおりニコニコしながら、冗談っぽく、「それ誰に言っとるの」と、おどけてみせた。
そしたらオヤジがごく自然に言ったんだ。

「お前に言ってんだよ」

にぎやかなムードを、あたしも無防備に楽しんでいたのだけれど、オヤジのこの一言は、仕掛人のあたしにとってもサプライズだったんだよね。

高校生の甥が、
「じぃじぃ、かっけーじゃん」
と言った。

あたしはもう、そのにぎやかな場にいれなかったよ。

そっと2階に行って、思いっきり泣いた。

あなたからは、まだまだ学ぶことがいっぱいあります。
だから・・・。
オヤジ。
まだ死なないで。

 

コメント(183)

長年連れ添った夫婦にしかわからないことがあるんだよね。
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涙出た。私も昨年79才の父を亡くしました。親は死なないもの!そう思っていましたが…現実は違いました。親孝行、したい時には親は無し …
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