日記ロワイアルコミュのカレンダーズ・ハイ

事の発端は、ほんのささいなことでした。

地元の公民館に貼る為の、カレンダーの買い出しを頼まれた先輩。

何を思ったのか、完全に個人の趣味で新垣結衣のカレンダーを買ってきてしまったのだ。

このカレンダー、新垣結衣の屈託の無い魅力が余すことなく凝縮されているのはとても良いのだが、日付部分が小さすぎて予定の書き込みができないという点が、公の場で使う物として最大のネックとなった。

一応は地区の経費なので、役に立たないものを買ってしまったとあれば大騒ぎになってしまう。

今日は、たまたま地区の集まりがあり、その話題が出たのだが会長の悪ふざけが過ぎ、思わぬ展開となっていった。

『このカレンダーの代わりに、自分たちで写真を撮って、オリジナルのカレンダー作ろうぜ！パソコン使えば簡単にできそうじゃん。』

そんな一言から、一時間に及ぶオリジナルカレンダーの企画会議が始まった。

まず、写真を撮るにあたって、１月なら１月生まれの人、２月なら２月生まれの人という風に、自分の誕生月に被写体になるように決めた。

そして各月ごとに、それぞれの月にあったテーマで写真を撮る事になった。

正式なカレンダーの順番とは違うが、４月から決めていくことになり、みんなで知恵を出し合う。

とりあえず、入学シーズンということもあり、そっちの方向で話を進めていった。

【４月】小学校の校門前で、ランドセルを背負った、４月生まれの男(３０歳)が、はにかみながら、パシャリ。

なぜか全裸で。

【５月】

空を舞う鯉のぼりの口の中から、ひょっこり顔を出してパシャリ。

五月人形のポーズでパシャリ。

兜をかぶってパシャリ。

全裸で。

【６月】突然の雨にうたれ、透明なレインコートを着て路地裏で打ちひしがれている所をパシャリ。

レインコートの下はもちろん全裸。

不適切な部位には、そっと、アジサイを添えて。

【７月】テーマは海水浴。ビーチにいたワンちゃんに海パンをとられそうになってパシャリ。

あの有名なコパトーンのロゴデザインをイメージしました。

残念なのは被写体が、ロゴとは大きく違い、女の子ではなく尻毛も密林のおっさんだということ。

この有様では、日焼けどころか大ヤケドです。

【８月】先祖のお墓参りで、墓石の前で手を合わせてパシャリ。

長崎の平和祈念像の前で、同じポーズでパシャリ。

全裸で。

とても不謹慎です。謝るべきです。

【９月】地元のお祭りが九月なので、太鼓をたたきながらパシャリ。

獅子舞を持ってパシャリ。

笛を吹きながらパシャリ。

全裸で。

なぜか、全裸で獅子舞という組み合わせに目新しさを感じません。

デジャヴでしょうか。

【１０月】

運動会シーズンということもあり、組み体操の扇のポーズでパシャリ。

リレーのバトンパスの瞬間にパシャリ。

言わずもがな全裸なので、バトンと別のものを間違えないか心配です。

【１１月】七五三の子供たちに交じって、千歳飴を持った３５歳の男が頬を赤らめながらパシャリ。

七五三三十五だ。

大勢の子供たちに囲まれ、一人だけ全裸という名の晴れ着で。

【１２月】サンタクロースが、子供の枕元にある靴下にプレゼントを入れる瞬間にパシャリ。

画的には一年で一番汚なそうですが、もちろん全裸で。

子供が目を覚ましたとしたら、完全にトラウマとなる事でしょう。

【１月】初日の出を今か今かと待ちわびて、地平線の彼方から出てきた御来光が、

全裸の男の尻。

その瞬間をパシャリ。

一年の計が、元旦に無い事を願いたい。

【２月】

受験シーズンということで、合格発表の掲示板前でパシャリ。

合格者の胴上げの瞬間をパシャリ。

全裸で。

例え、大学に合格してたとしても、人間としては失格です。

【３月】おひなさまの様に、ひな壇の上で全員集合してパシャリ。

スーツで。

こんな一時間の会議が終わり、締めの言葉が会長の口から発せられた。

『やっぱり新垣結衣のにしましょう。お疲れ様でした。解散！』