このコンサートに影響を受けたミュージシャン、ボブ・ゲルドフは、イギリスでバンド・エイドを結成。1984年にチャリティCDである“Do They Know It’s Christmas?"をリリースしました。それに触発されたアメリカのミュージシャンたちは、US for Africaというユニットを結成し、こちらもチャリティCDとして有名な“We Are the World”を発表しました。両者のコラボレーションで実現したのが、1985年の世界同時中継チャリティライブ、「ライブ・エイド」でした。
近年では、ミュージシャンたちの活動もライブを行うことによる啓発だけに留まることなく、より大きく、継続的な市民連携の輪を促進する役割を果たそうとしています。“ap bank”がそのよい例です。ap bankは、「可能性ある新しい未来をつくろうとしている環境プロジェクトに融資を行う」ことを目的として、市民による環境に関するさまざまなプロジェクトに融資する市民バンクです。その代表である小林武史氏らが企画する“ap bank fes”は、ミュージシャンによる音楽ライブの会場であると同時に、エコについての学びの場でもあります。たくさんの市民団体の協力によるオーガニックフードの提供、ゴミの9分別、風力発電の活用などを実践している会場は、すべての来場者に身近な環境問題を考えてもらう工夫であふれています。ミュージシャンたちの有名性や一過性のプロジェクトだけに頼ることなく、エコ意識を拡大させて、より持続的な活動にしていくことがねらいです。
ap bankの“ap”の意味の1つには“artist’s power”があります。「経済的にも道徳的にも救える手段を知っている私たちは、これ以上貧困に苦しんでいる人々を放って置くことはできない。ギターを持ったミュージシャンたちが世界を動かす時が来た」とは、ゲルドフの言葉。音楽を通して、また音楽を求めて人々が集まる場所を通して、何が伝えられるのか。それぞれのミュージシャンはそのpowerを国際協力に生かす道を模索しています。メッセージを受ける私たちも、ただ音楽を楽しむだけではなく、彼らが何を伝えようとしているのかじっくりと考え、そこから感じたことを実践していきたいものです。