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せつなさは眠らないコミュの19th Night《もどかしさの行方》

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鮮やかな黄金色に染まる銀杏並木を見上げることもなくマコは肩を落とした
ままJR仙台駅へと向かっていた。小さい頃から人見知りだったマコは、自分の
気持ちを伝える事が何よりも苦手だった。その為に幾度と無く嫌な思いを重ね
もしたが、どうしても気持ちを発露する事が出来ないままでいた。

とくに相手に好意を抱いた時ほど自分の殻に閉じこもってしまい、マコの恋は
いつも蕾(つぼみ)のまま枯れる運命にあった。それはキャバ嬢となった今も変わ
ることなく、マコの心に色濃い陰を落としていた。

(やっぱりまた同じなのかな……)
歩みを進める度に落ち葉がカサッ、カサッと侘(わび)しげな音を立てていた
が、思案を巡らすマコの耳に届くことはなかった。

(マコが選んだのなら迷う事なんかないよ)
野分けが来る前の厚い雲に覆われたようなマコの暗澹(あんたん)たる心に、
ケンジの言葉がふいに蘇った。

(あの時……。何て言って欲しかったんだろう)
秋、と云う季節がそうさせているのか。いつにも増して人恋しさを感じている
自分にマコは苛立ちを覚えていた。

未練を残しながらも自らの役目を終えた事を諦観(ていかん)するが如く落ちて
くる黄金色の扇が、何故か自分を映しているようでマコは堪らなく寂しかった。

時を同じくして、マコを見送る為駅へと向かう道すがらの交差点で足を止めた
ケンジは、黄金に輝く銀杏並木に視線を投げていた。

(結局あの時も言えなかった……)
ケンジの脳裏にマコの誕生日を初めて二人で祝った夜のことが浮かんでいた。

あの夜……。ケンジは「好きだ」と云う気持ちをマコに伝える積もりでいた。その
為に、なかなか意思表示をしないマコからやっとの事で希望を聞き出し、似合わ
ないな、と思いながらも夜景の見えるレストランを予約していた。

「マコ誕生日おめでとう」
満足行くコースディナーを済ました後、ケンジはプレゼントを手渡した。
「ありがとう」
淡いブルーをたたえる包装紙の中には、三日月を象ったシルバーのネックレス
が入っていたが、マコは開ける事なく言葉を告げた。
「……あのね」

自分の気持ちを言い出す機会を伺っていたケンジは、機先を制された思いでマ
コの顔を見つめた。マコの横顔には、これまで一度として見た事の無い寂しさが
浮かんでいた。

「私ね。九州へ引っ越すことになったんだ」
「いつ?」
あまりにも意外なマコの言葉にケンジが応えられたのは、一言だけだった。

「来月の初め」
「それじゃあ……」
「うん。あと1週間もないの」
「……そうか」
「昼間の仕事の関係でね。急に決まっちゃったんだ」
マコは、言い訳でもするように言葉を続けた。

「すごく不安だけど私自身の為にもなると思うし……」
そう言いながらも、マコは内心迷っていたのかもしれない。何も言わないでい
るケンジを見つめる表情は哀しさで埋められていた。

「マコが選んだのなら迷う事なんかないよ」
しばしの沈黙を挟み、ケンジは言葉を継いだ。心の中で「本当は行かないで欲し
いんじゃないのか」と自問を重ねながら……。

それでもケンジは自分の気持ちを告げられなまま、その日のデートを終えた。

(ホント優柔不断だよな)
マコ同様、ケンジも又小さい頃から人に気持ちを伝える事が苦手だった。それゆ
えケンジも恋心を実らす事なく片思いを重ねてきた。そんなケンジが初めて本気
とも云える恋心を懐いたのが半年前国分町のキャバクラで出会ったマコだった。

(今度こそ気持ちを伝えよう)
店に通い何度か同伴を重ねながらケンジはそう思い続けてきた。マコも少なか
らず自分に対して好意を抱いている事も薄々は感じてはいた。ただどうしても、
「好き」と云う一言だけは、言えずにいた。マコもそんなケンジの気持ちを知りな
がら、意思表示を出来ない自分に苛立ちを覚えていた。

なのに……。お互いの気持ちが噛み合わないまま、二人は今、新幹線のホームに
立っていた。

(もう今しかない)
ケンジがそう思った瞬間、発車を知らせるベルが鳴り響いた。

「私、行くね」
マコを九州へと運ぶ新幹線のドアが微かな音を立てて閉まっていった。それ
でもなお、ケンジは自分の気持ちを告げる事を出来ずにいた。

(……マコ)
新幹線が南へと走り出し、ホームが彼方に遠ざかった時、マコのケータイから
聞き慣れたメロディが流れた。
(ケンジからだ)
着メロが告げるケンジからのメールをマコは急いで開いた。

(今度こそ……)
(そう今度こそ……)

マコとケンジの思いが、一つに重なろうとしていた。

『マコ頑張れよ!』
その後の文面には……。

コメント(6)

>絢花ーAyakaーサンへ

これはリドル・ストーリーという文体で、
結末は読者の想像に委ねてます。

ってコトで続きは無いです(笑)
>絢花ーAyakaーサンへ

わざとスッキリしないエンディングにするのが
リドル・ストーリーなんでご理解下さいペン
>ゆずさん

機会をいただければ是非グッド(上向き矢印)グッド(上向き矢印)

Platinumは高価なモノじゃなければ(苦笑)

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