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チェロを語るコミュのbachについて

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私管理人なのに放置しすぎました。 私のバッハの研究の一部を公開します。 


?.無伴奏チェロ組曲について
18世紀に入るまで組曲は、非常に一般的で広く知られた形式であった。組曲を構成するのは16世紀以降にヨーロッパの各地で生まれた様々な舞曲であった。舞踏の為の音楽と様式化された器楽曲とが実質的に分かれた後でも舞踏の特徴を維持しており、とりわけ舞踏のステップに関係するリズムとテンポにおいては顕著である。同じ舞曲でも国によって様々な違いがあり、例えばフランス起源の舞曲「クラント」(Courante)はイタリアでは「コレンテ」(Corrente)と呼ばれ両者はリズムパターンやテンポなどに大きな違いがある。本論文から考察するJ.Sバッハによる《無伴奏チェロ組曲》(アンナ・マクダレーナ・バッハによる筆写譜、リュート組曲)では、曲名はすべてフランス語で書かれているものの、各曲はイタリア、フランスなどの様々な国を起源とする特徴のある舞曲として作曲されている。バッハは、アルマンド(Allmande)、クラント(Courante)、サラバンド(Salabande)、ジーグ(Gigue)という4つの基本的な舞曲の前にプレリュード(Plèlude)を、そしてサラバンドとジーグの間にギャランテリー(Gallantry)と呼ばれる当世風の他の舞曲を追加した。ギャランテリーとは、組曲を構成する基本的な舞曲が17世紀までに誕生した比較的古い舞曲であるのとは異なり、17世紀後半以降に流行した当世風の舞曲のことである。バッハはこのギャランテリーを、フランスでの慣習に倣い2曲を一対とする形で作曲し、?番と?番にメヌエットを、?番と?番にブーレを、?番と?番にガヴォットを追加することによって組曲を拡大している。《無伴奏チェロ組曲》全体は順を追って演奏技巧上の難易度が高くなる様に構成されている。?番G-Dur、?番ⅾ-moll、?番C-Durは開放弦を多用することが出来るため演奏しすい調であるのに対し、?番Es-Durは開放弦の使用が制限されるため難易度が高い。?番c-mollはスコルダトゥーラScordatura(変則調弦) の指示があり、記譜が通常とは違い五線譜の第五線から上だけタブラトゥーラTabulatula で書かれている。通常の調弦C−G−D−Aの一番高い弦のAをGに一音下げて演奏することで、通常の調弦では演奏することの出来ない4和音の使用が可能となっている。スコルダトゥーラは現代のチェリストにとって演奏困難であるが、1680年代イタリアでチェロの名演奏家として活躍したドメニコ・ガブリエッリDomenico Gabrielli(1651−1690)の作曲したリチェルカーレはC−G−D−Gの調弦で書かれていて当時のイタリアでは珍しい事では無かった様である。
?番D-Durは、C−G−D−A−Eと5弦の調弦の指示が最初にある事と、プレリュードやアルマンドに見られる音形が極めて装飾的で、今日主な通常のチェロでは演奏が極端に困難なことから、より小型のヴィオロンチェロ・ピッコロやヴィオラ・ポンポーザの為に書かれた事が今日では定説となっている 。

プレリュード(Prelude)の一般的特色
プレリュードは,演奏する曲の前に弦楽器の調弦を確かめるためや、教会の典礼で歌われる曲のピッチと旋法を歌手に示すために行った短い即興演奏から発達した 。その為に舞曲を起源とする他の楽章とは異なり、決まった形式によって作られることはない。バッハの《フランス組曲》や《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》などはプレリュードを持たずアルマンドを最初の楽章にしているが、《イギリス組曲》や《無伴奏チェロ組曲》では、全ての組曲でプレリュードを導入楽章としている。初期のプレリュードに見られた即興性は最早これらの作品では見いだされない。《無伴奏チェロ組曲》のプレリュードもそのほとんどは、なんら定型に従うことなく作曲されているものの、?番のプレリュードのみはフランス風序曲(Französische Overtüre)の形式をとっている 。
フランス風序曲の起源は、ルイ14世に仕えた作曲家ジャン=バティスト・リュリJean-Baptiste Lully (1632‐1687)がバレエ曲《病の愛神 L’amore Ammalato 》(1657)と《アルシディアーヌAlcidiane 》(1658)において最終的な形式を確立したとされている。その後瞬く間にフランスのオペラとバレエの序曲における唯一の、用いられた形式となった。ルイ14世がリュリを大変寵愛したため、フランス風序曲は最初から大成功を収め、少なくとも60年間は隆盛を極め、1700年までには広範に使用されていた。コンサート用作品として演奏され、鍵盤楽器用に編曲され、また組曲にも取り入れられる様になった。形式は緩やかなテンポで付点のリズムに特徴を持つ荘重なグラーヴェGraveと、速いテンポでフーガ風のヴィヴァーチェVivaceの緩・急の2つの部分により構成される(譜例2)。ヴィヴァーチェのあとにグラーヴェを再現する緩・急・緩の3部形式もあるが、?番のプレリュードは緩・急の2部形式である 。

アルマンド(Allmande)の一般的特色
アルマンドとはフランス語で「ドイツの舞踏」の意味をもつ言葉である。アルマンドの起源は16世紀初期で、控えめなテンポの静かな2拍子の舞曲であった。アルマンドは、舞踏のための曲から徐々に組曲の中での楽曲として発展し、舞踏と密接に関係していた形式はバッハの時代にはもはや無く、独自の形式を持つようになった。17世紀のフランスのリュートや鍵盤楽器の作曲家は、複雑なテクスチュアの対位法の可能性を追求した。この様な傾向はドイツの作曲家にも受け継がれモティーフ操作など高度な作曲技法が駆使されたが、16分音符が連なるフレーズが多用されたために本来の舞曲としてのリズム的特徴が薄れてしまった。プレリュードが無い組曲の場合は、最初の舞曲として入念に作曲され、ポリフォニックな書法が多い 。

バッハの作曲した舞曲の研究書『舞曲とJ.S バッハの音楽Dance and the music of J.S.Bach』 の著者Little Meredith&Jenne Natalieも「バッハの時代には彼らが特定の舞曲形式を反映していなかった事と、明瞭な振り付けの起源も、特徴的なリズムパターンも見出すことが出来ない」と記している 。

b. 無伴奏チェロ組曲におけるアルマンドの特色
Schwemer&Woodfull-Harris(2000)によると、《無伴奏チェロ組曲》におけるアルマンドは、テンポによって2つのカテゴリーに分類され得るという。第1のカテゴリーは速いテンポのアルマンド、第2のカテゴリーは遅いテンポのアルマンドである。第1の速いテンポのアルマンドは、?番から?番までに使用され、第2の遅いテンポの形式は?番のみで使用されていると指摘されている 。
《無伴奏チェロ組曲》のアルマンドでは、テンポを表示する速度記号は一切書かれていない。?、?、?番の拍子記号はC(4分の4拍子)で、?、?、?番は アラ・ブレーヴェ(alla breve)が指示されている。アラ・ブレーヴェよりもCが速いとは考え難いため?,?,?番は速いテンポであり、?,?,?番のアルマンドは遅いテンポに分類されるべきである。
?番のアルマンドはバッハが楽譜を所有していたフランス人作曲家ガスパール・ル・ルー Gaspard Le Roux (1660?−1707)の組曲fis-mollから冒頭部分のパッセージが引用されている 。当時は著作権のある現代とは違い、他の作曲家のモティーフなどを引用すること、または自ら作曲したモティーフを違う曲に転用することは当たり前に行われていた。拍子記号は、アラ・ブレーヴェではなくCが用いられれGaye と表示されている。ル・ルーのアルマンドからモティーフを引用している事と、アラ・ ブレーヴェの指示があることから、?番のアルマンドは比較的速いテンポであると考えられる。

このことからテンポ設定の大きな手がかりになることが分かる。


続きもありますが読むのがとても大変なのでアルマンド以降はリクエストがあったらアップします。

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