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FFXI_NovelコミュのEpisode11 ”ジュノ落日” 後編

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「ヒメさん・・・」
突然のことに、エムニが驚いたように言う。
「無理です!」
ヒメが叫ぶ。
「ヒメ・・・?」
ゼロが怪訝そうに呼びかける。
「5人の騎士を相手にして、我々の正体を知られずに戦闘して、生きて帰すなんて無理ですよ・・・」
周りには5体に増えた亡骸が、そのまだ若い顔を晒している。
「な、、、涙ならこの戦いが終わったときに流します!私は、私は・・・!」
「ヒメ。いいのですよ。」
ファイフが後ろからそっとヒメの背中に手を置く。
「フィフェさん。。。」
「仕方が無いのです。仕方が無いのですよ。バストゥークは後悔するのです。」
ファイフが言うと、不思議とヒメは落ち着きを取り戻した。
「さて、さっさと片付けて団長に追いつくぞ」
エムニとゼロは戦闘の後始末にかかっていた。敵の亡骸を手早く道の脇に運んでいく。
「仕方ない、か。しかしこの重みは忘れられないな」
エムニがこぼした。彼らにとって、初めて同じ人間を相手にして戦い、勝利した日は甘美なものではなかった。

彼らは騎士たちの遺品をいくつかまとめ、ひとつの箱に収めた。後にこの箱は彼らから人の手を介してジュノのバストゥーク軍に届けられ、バストゥーク軍指導層の心胆を寒からしめることになる。

同じ頃カフィたちの一団は、既にソロムグの中央部まで進んでおり、そこでウィンダスの軍団と邂逅していた。
「ジュノは既にバストゥークの手に落ちたと?」
苦虫を噛み潰すような顔をしてアジドが言った。
「はい。冒険者の知らせによりますと、ジュノ全域がバストゥークの手に落ちたとのこと。すべての入り口はバストゥーク軍に制圧されているそうです。大使館は軒並み封鎖。大使以下は脱出したとのことです。」
「なんてこった。だからもっと早く動いていれば・・・」
「進むか、退くか、難しい事態になりましたね」
「セミ。退くことはないだろう」
セミ・ラフィーナが会話に混ざってくる。
「しかしジュノの防護は硬いです。大橋をそのままわたろうとしても手ぐすね引いたバストゥーク軍にやられるのは目に見えていますよ」
「ここまできて下がれるか!」
「冷静になって下さい。アジド。ここはまず精鋭をつのって敵情を偵察すべきです。それから動いても遅くはありません」
「今までお前が言うとおりにして毎回遅かったではないか!もう遅れることは許されない!」
「アジド・・・これは一人の意地の問題ではないのですよ。」
「もういい。俺が指揮を執る。明朝俺は必ずジュノの大橋を渡る!」
このやりとりはウィンダス軍の本営の中にいたものしか知らないが、こうしたやりとりを経て、この晩は過ぎていった。カフィたちは「ご苦労」の一言であしらわれ、ウィンダスの野営地の外にいた。その夜のうちにヒメたち4人が合流し、Pozのメンバーが揃ったところで今後の行動を決めるべく話し合いを持った。ここにとどまるのでなければ、目指すのはマウラだった。航路が閉鎖されているために逆に安全が確保されているウィンダスの支配圏内である。
 翌日の昼にはアジドがウィンダス軍の先鋒を率いてジュノに迫り、ウィンダス軍とバストゥーク軍の間に初の軍事衝突が起こった。衝突はしかし小規模なもので、アジドが率いるモンクの一隊がジュノの大橋に迫ったが、バストゥーク軍の弓隊の防御をどうにも突破できず、にらみあったまま半日を過ごした。
 それから何度か突撃を試みたが、毎回弓矢に阻まれ、少しの死傷者を出して退却することを繰り返した。
「アジド。やはりこれでは埒があきませんよ。一度退くべきです」
「くっそー!次は必ずここを渡るからな!」
腹いせに最後に高度のファイガを唱え、防衛隊の一部にひどいやけどを負わせ、アジドと先鋒隊は下がっていった。これから、誰も想像しなかったような長期間にわたってウィンダス軍とバストゥーク軍のにらみ合いが始まる。ジュノの中の様子は少し前とは一変し、これから来る重く暗い時間を予感させるようであった。夕方に町を彩っていたランプに明かりがともることはなくなり、競売所から人の気配が消えた。商店は軒並み閉まっており、港からルルデの庭まで、全域ががらんとしていた。
「あの中はどうなってんだろうな」
ジュノの中を知らないアジドがこぼす。
「冒険者たちはジュノの内情に詳しいでしょう。我々よりも」
「そりゃあ、こっちは何十年もウィンダスで暮らしてるしな」
「どうでしょう、彼らと一緒に戦ってみては。」
「冒険者たちと?彼らに何ができるって言うんだ?」
「ものによっては、モンスターたちを相手に熟達の戦闘経験をしています。全部が全部というわけではありませんが、ジュノなど色々な地域の地理に詳しいのも彼らです」
「それはいいが、彼らの食い扶持など用意できないぞ」
「それくらい、なんとかできないのですか。院長ともあろうお方が。」
「ふん。ウィンダスの国民に支えられて成り立っている我等がどうしてどこの馬の骨ともわからぬ冒険者に貴重な糧を与えられようか。あくまでウィンダスに勝手に協力している遊軍、という扱いならば使わんでもないが」
「アジド。そんなことでは誰もついてきませんよ。今はともかく、いずれは必ずウィンダスに迎えることを約束して下さい。」
「できん。できんよ!どうしてもというなら、守護天使がなんとかすればいい。」
「守護天使にそんな力はないことはご存知でしょう!」
「できないものはできない。それは変わらない」
「いいでしょう。私の責任で預かります。しかしいずれ必ず通してもらいますよ。」
「神子さまにでもかけあうことだ。」
水掛け論はここで終わった。セミは本営の外に待機しているという冒険者の一団に話を伝えるべく、アジドらとの会合の場を離れ、外に向かって歩き出した。
「天使長さま。ジュノでひと暴れしてきたよ。」
どうしていつも、このミスラは不意に話しかけてくるのだろうか。果たして、そこにいたのはナナー・ミーゴ。セミ・ラフィーナの古くからの知己にして泥棒ミスラの通り名を持つ彼女であった。
「ナナ。ご苦労でした。残念ながらジュノはバストゥークの手に落ちたようです。」
「知ってる。その場にいたからねえ。ところで、彼らはどうするんだい?」
「彼ら、とは?」
「とぼけてるねえ。さっきから外で待ってる彼らさ。」
「ウィンダスはまだ彼らを受け入れる体制が整っていません。しかし、この非常時です。皆が協力して事にあたらなければなりません。」
「どうしようってのさ。」
「ナナ・・・実は」
「まーったく、わが国のおエライさんたちは何もできないんだネェ。」
「すみません。。。またあなたの手を」
「おっと、それ以上はまずいでしょ。それに、あいつらにはジュノでちょっと世話になったしネェ。」
「あなたが冒険者に・・・?」
「いやさ、バストゥークの坊主たちとちょっとトラブっちゃってね。居合わせた彼らが助けてくれたのさ。そりゃあ見事な手際だったよ。手の院のカーディアンなんかよりよっぽど頼りになるネェ。」
「ふふ。あなたほどの人が、一人で抜け出せないわけがないでしょうけれど。」
セミが珍しく微笑を浮かべる。
「渡りに船だったわけさ。まあ、とにかく助かっちゃったよ。じゃ、彼らは私のほうで世話するから。」
そんな会話があり、ナナがセミのそばを離れ、Pozのメンバーたちのいるあたりに向かった。Pozのメンバーたちは思い思いの時間をすごしている。ロックとユータは相変わらずアリの数を数えているし、ユメジはどこからかつかまえてきたマンドラゴラの緑色の葉を抜いている。
「こないだは世話になったね、諸君!」
「泥棒ミスラ!」
「あなたのおかげでジュノを追い出されたのよ。それ相応の・・・」
ユリが迫る。明確に損得を勘定する人間というのはこういうときに役に立つ。
「それさ。実は私ぁね、ウィンダスのために動いているのさ。今はバストゥークとの間の揉め事をなんとかしたいと思ってる。」
「泥棒ミスラが?そんなこと信じられないないなあ」
「本当さ。これでもジュノじゃあちょっとした顔なんだよ。その証拠に、ほら」
ナナが差し出したのはトリビューン紙であった。
「ここを縦に読んでごらんなさいよ」

-トリビューン・生活欄
なつかしい顔ぶれが揃った。
ななつの罪を祓う任務を遂行するために揃ったのは
ミンストレルコートを羽織った詩人と
意志の強い白魔道士
強引なところのある戦士
・・・

「な、な、み、い、ご、、、あっ!」
「ほらね。私の力をもってすればこんなもの・・・」
「下らない・・・」
「なっ・・・なんてこというんだい!」
「で、その泥棒ミスラがなんの用なのですか?」
ファイフが問う。
「そうそう。でね、あんたたちには、私の手伝いをしてもらおうってわけさ。」
「・・・」
メンバーたちが、一気に興味が失われたような顔色になる。
「聞いて損したー」
「泥棒の手伝いはないよなぁ」
「う、ウィンダスがあなたたちを受け入れる準備をしてるんだよ!」
すっ、とメンバーたちの顔に熱気が戻る。
「ウィンダスが俺たちを?」
シキが前に乗り出す。
「そうさ。冒険者のあんたたちを、ウィンダス連邦が頼るってんだ。痛快じゃないか!」
「ふん・・・」
相変わらず興味なさそうなのはユリである。
「それで、私たちにどんなメリットがあるって?」
「そうさね。調理ギルドで食べ放題」
「はぅぅ〜魅力的ぃ〜」
キララとユメジが正気を失う。
「・・・下らないねっ」
他のメンバーが立ち去ろうとする。
「ちっ、地下道の通行を開放!地下図書館も通いたい放題!」
「・・・それはちょっと魅力的ですネェ」
「黒魔法の本もあるかな?」
ヒビキとエルが興味を示す。
「ハァ?ショボイねぇ、連邦政府ってのは。」
ユリはまったく興味を示していない。
「石の塔の窓口で優先レーン利用!各院スルーパス!」
誰も返事をしない。そもそもウィンダス国民ではない。
「ウィンダス国民の中でも最高のミッションランク10の権利と賞金」
ぴくっ、とユリの表情が動いた。
「賞金・・・ですって?」
「ミッションランクに応じて報奨金が設定されている。それのことで」
「団長、決まりね」
「えっ?」
カフィがびっくりして聞き返す
「やっとそれらしい仕事ができるわ!ウィンダスを飛び出してから*年、やっと国籍と仕事を手にいれられるのよ!」
両手を胸の前で組み、目線を宙に泳がせながらユリがまくしたてる。
「そ、そうか?」
その勢いに気おされるカフィである。
「なにボケッとしてんのよ!そうと決まったら早く契約してきなさいよ!」
カフィが肩をすくめた。
「ロック、、、。だ、そうだぞ」
「やれやれ。金に目がくらんだ年増ってのは、プギャ」
両手棍がロックの背中から打ち込まれ、小さなタルタルの体が、曲がってはいけない方向に曲がる。棍棒は返す刀でヘイキチの後頭部を強打した。
「むぐ・・・何故俺まで・・・」
ユリはなにごともなかったようにナナに向き直る。
「ナナー・ミーゴさん。こちらこそよろしくお願いします」
笑顔でユリが言う。
「あ、ああ。じゃ、そういうことで頼むよ。」
「今言っていたことは文書にしてくださいね♪」
「わ、わかったよ。すぐに用意させる。」
 こうしてPozの一行はウィンダスの遊軍として扱われることとなった。

 それから半年ほどの間、彼らはウィンダスとサンドリアの間を行き来し、記録によるとその間にウィンダス・サンドリアとバストゥークの間に何度かの中規模戦闘が発生している。しかし依然ジュノは堅固で敵を寄せ付けず、むしろ勢いに乗るバストゥーク軍は何度かサンドリアの都を脅かしていた。もちろん、記録に残らない戦闘も、主にバストゥークの手によって繰り返されている。その中で多くのタルタル、エルヴァーン、ミスラが犠牲になっていた。

 そして、明けて天晶暦1002年、時代は再び動き出す。

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