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FFXI_NovelコミュのEpisode7”はじまりの終わり” 後編

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後編

 3人がジュノに帰ったとき、ジュノは平穏そのものだった。皆の関心は競売所で取引されている装備品や貴金属の値段だったり、晩御飯のおかずだったりした。今日も変わらず境界の前にはPozのメンバーたちがたむろしている。面白いもので、長い間こうしてたまり場として使っていると居場所が決まってくる。今日もいつものようにカフィが石段の上、教会の入り口近くに腰を下ろし、その周囲にマツリ、ロック、ハルネ、エル、イセ、ムアラが座っている。一段下に鋭い目つきで腰掛けているのはユリ、その周りにヒメ、サトチ、シキ、シャイスター。シャイスターとサトチは気まぐれなミスラらしく、いつもふらふらしているのだが、今日はこの位置にいる。そこから少し右に目を移すとヘイキチ、トシム、ヒビキがいて、階段の下のほうにユメジ、キララ、ファイフのタルタル3人がおり、すぐ近くにアレヴィア、フォレス、ラルファ、エムニ、オプティ、ニャーニャがいる。階段に座らずに立ち話をしているのはトツ、アスカ、オグロバー。さらにこれを囲むように立ち話をしているメンバーが何人もおり、いつものように遠くに黙して座っているのがタクである。 いつもの場所を占領しているこの集団は、周囲の住民から見ても日常の景色のひとつとなっており、いまさらとやかく言うものもいなかった。むしろ自然と挨拶を交わす間柄から、いつのまにかそこにとどまるようになり、いつしかメンバーとして定着してしまうものもいた。

 3人の報告を聞くと、Pozのメンバーは思い思いに意見を言っていった。ここのところ変事が多いために「またか」という気持ちもあったが、ことが国と国との間の話だけに、皆の関心は高かった。メンバーにはウィンダス出身者も、バストゥーク出身者も、サンドリア出身者もいるので、受け取り方は様々だったが、彼らにとってセンセーショナルな出来事であることに変わりはなかった。
「なんだぁ?何か奇妙な話だなぁ。だいたい、何なの、その子供が大人だった・・・・ってのは?」
まったくちんぷんかんぷん、という風でロックが聞いた。
「なんでも、ウィンダスのお祭の景品で、子供に化けられるお餅が出たらしいよ。」
モンクのミヤモトが言った。ひそかにウィンダスで大食い大会に参加したかったらしいが、3人に出し抜かれてジュノに留守番になってしまっていた。
「へぇ、不思議なものがあるんだねえ。それを食べて変身・・・?したってことかな」
 分厚い本を読みながら、ヒビキが言った。また新しい召喚術を調べているのだろう。
「やはりバストゥークの動きが気になります。バストゥークの彼ら3人が何を求めてウィンダスに来たのかはわかりませんが、サンドリアとウィンダスが近づこうとしている時期に、今までウィンダスにはちょっかいを出してこなかったバストゥークが動いた、というのはあまり穏やかではありませんよね」
多くのメンバーが思っていることを代表してファイフが言う。
 コトは平時から非常時に移ろうとしている。サンドリアが領有していたザルカバードに大量の魔物が発生した。そしてサンドリアは征伐に失敗して多くの将兵を失った。この事実は表向きは伏せられている。しかし、そのタイミングでサンドリアからウィンダスに「親善」の使者が飛び、その使者が王子であったことはこの事実を裏付けていると判断できる。つまり、バストゥークとの勢力均衡が崩れてバストゥークに蹂躙されるのを恐れたサンドリアが、バストゥークの背後に脅威を作って牽制するためにウィンダスと結んだ、という読み方ができる。
 このままいけば勢力均衡はバストゥークに不利なほうに傾くだろう。ここでバストゥークが均衡を保つためには二つの選択肢がある。ひとつは内なる力を高めて、将来にわたって2国と対抗していけるようにすること。もうひとつは、今のうちにウィンダスとサンドリアのどちらか、あるいは両方を攻撃して成長を阻害すること。サンドリアの国力低下をバストゥークが読んでいるとするならば、こちらの手段をとらないとは限らない。
 バストゥークが国力を高める手を選べば、まず直近はウィンダスとサンドリアには危険が迫ることはない。しかし、そうでない手段をバストゥークが選んだとするならば。
 ここまで考えて、カフィが呟いた。
「バルクルム砂丘か。」
 果たして、語られた地名はバストゥークとサンドリアの国境にあたる地域である。バルクルム砂丘の一端はサンドリア領のラテーヌ高原に続き、反対側はバストゥーク領のコンシュタット高地に続いている。バルクルム砂丘は普段温暖湿潤な気候で、ヴァナディールの中でももっとも美しい砂浜の一つはこの地方にある。この地域の中央にはセルビナという町があり、いわばこの町はサンドリアとバストゥークの間に落とされた緩衝地帯であった。両国の手が及ばないために治安は決してよくないが冒険者は自由に行き来をしており、モンスターから町を守るのも冒険者たちの役割であった。
 カフィの発言を聞き取って、ヒメがはっとしたように目を見開き、一つ息をついてから小声で言った。
「そんなこと、、、。もし、今バストゥークがその選択肢をとったとしたら、、、。サンドリア、ウィンダス、そしてこのジュノだって、、、。」
 一部のメンバーは事の重大さに気づき始めていたが、あえて口にすることはなかった。今ここで何かを言っても仕方ない、という諦めが半分であり、このジュノまでは累が及ぶまい、と楽観しているのが半分。最悪の事態を想定したのはほんの数名だった。
「そうそう、話は変わるけど、あれからザルカバードが通行禁止になったらしいぜ」
ロックが言い、ハルネが続けた。
「何日か前に、調査の続きをしにいったんだ。そうしたらね、、、」

 数日前、ハルネは単独で氷河とザルカバードに調査に向かっていた。行方不明になっていたリシアンを捜索することと、その後のザルカバードの様子を見ることが目的だった。数日の道のりを超え、ようやく氷河の入り口にたどり着いたときには肉体は疲労していたが、これからようやく調査を始められるという気持ちが支えている状態だった。今まで氷河という地名が何度も出てきているが、そうジュノからそう近いところではない。ジュノから氷河に至るためにはサンドリアに移動し、そこからロンフォール草原を抜け、ラングモント峠を抜けていかなくてはならない。 
 ザルカバードの入り口で荷物を降ろして休憩しようとしたハルネの視界に、エルヴァーンの兵士が2人、近づいてきた。
「通行止め、だ」
 兵士のうちの一人が鋭い声で言った。
「通行止め?」
「ザルカバードは現在立ち入り禁止になっている。・・・禁止が解除されるまでは、誰もここを通れない。」
 もう一人の兵士が言った。見れば若いエルヴァーンで、寒冷地の勤務に慣れていないのであろう、手が震えていた。
 ハルネは聞き流しつつ、理由を考えてみた。やはりあのデーモンの大量発生のためか。サンドリアがここを通行禁止にするのは、それを隠したいがためだろうか。立ち上がって、たずねてみることにした。
「それは、ザルカバードに何か事故でもあったということ?」
「答えられることは何もない。」
 やはり何か隠したがっている。この向こうでは相変わらず大量のデーモンが暴れているのだろうか。しかし、せっかくここまで来たというのに、何も見ずに帰るわけにもいかない。なんとかして通ることはできないだろうか。。。
 ハルネは少々荒っぽい手段に出ることにした。承知した、と返事だけはして振り返り、歩きだす。兵士たちはこちらを見送る構えをしている。ハルネはここでおもむろに、バックパックからフルートを取り出した。瞬間、若い方の兵士がハルネの腕を掴んだ。
「ここでの戦闘行為は禁止されている」
 読まれていた。高位の吟遊詩人の楽器は時に凶器にもなりうる。ハルネは催眠の作用のあるララバイを奏でて2人の兵士を昏睡させて通ろうとしたが、その動きを先に封じられてしまった。
「べっ・・・別に何をしようってわけじゃない!」
 兵士の腕を振り払って、ハルネが叫んだ。少々大げさになってしまったかもしれない。
「とにかく、通行禁止だからなっ!」
 若い兵士が叫んだ。これではどうにも通りようがない。そのものの言い様に腹を立てたハルネは、無言で兵士から少し離れると、今度はすばやく弦楽器を取り出し、恐ろしい不協和音を奏でた。音楽がここまで耳に刺さるものか、とも思えるようなとげとげしい音色で、気の弱いものならば卒倒しそうな振動が空気を震わせた。
「・・・!」
 音にならない叫びを上げて耳を押さえる兵士2人。ハルネはそんな2人を尻目にその場を立ち去った。とりあえず鬱憤ははらしたものの、結局ザルカバードに入ることはできそうにない。
 仕方なく氷河地域を探索することにし、ボスディン氷河の崖道を歩いていると、向こうから黒魔道師と思しきヒュームとタルタルが何人かが歩いてくるのに気づいた。
「ハルネさん?」
 ブラッドリーという名前のヒュームが声をかけた。当時はまだあどけない青年であったが、後にPozwalkerの黒魔道師部隊の中枢として活躍する男である。
「通行止め、だってさ」
 何事もなかったかのようにハルネが言った。
「それは困ったなぁ。。。」
 ブラッドリーたち一行は、ある目的のためにザルカバードを目指していた。
 世界の冒険者たちには様々な職種があり、それぞれの職種の中でも初心者からベテランまで様々な経験のものがいた。しかし元来自由人である冒険者たちのこと、ぱっと見た目ではその経験を推し量ることはできない。一人ひとり語ってみないとその深さがわからない。そうなると、中には口だけの武勇伝でさも熟達の経験者ぶる者も中には出てきており、これを避けるために冒険者たちが自主的に設けている「試練」があるのだった。試練にはいくつかの種類があり、どの試練を超えたかによって、その冒険者の格、実力が知れるというのが通例となっていた。
 主な試練は、まず最初に「古墳、クロウラーの巣、要塞に潜入して貴重なアイテムを持ち帰る」
 次いで「ザルカバードの洞穴にいる凶暴な動物を倒して証拠を持ち帰る」、その後にも何度かの試練が課せられている。
 ブラッドリーの一団は、若手冒険者を率いて、この2番目の試練を受けにやってきたのである。
 ブラッドリーが事情を話すと、ハルネは少し考え込んだ。
「・・・手はなくはない。」
「ええっ?でもこの道しかザルカバードに入ることは。。。」
 ボスディン氷河を庭のように歩いているハルネである。彼女は雪の地面に図を描きながら説明をはじめた。
「氷河とザルカバードは隣り合う地域だ。今はこの道しか通じていないが、実は氷河側からは他にもザルカバードに近い場所がある。ただ、そこは氷河で覆われていて、誰も入ることができないと「決められている」だけだ。」
「しかし、実際に誰も通ることができないのでは。」
「今日は、ここに黒魔道師が何人いる?」
6人です、とブラッドリーが答えた。若手の冒険者を率いてきたのはブラッドリー、マンゴッド、テラドライブ、ディルファラオ、ティグレット、マリウスである。偶然ながら、いずれも後にPozに参加して歴史に名を残す黒魔道師であった。
「道を閉ざすのは氷なのだから、熱で溶かせばいい」
なんという発想だ、とブラッドリーは驚いた。当の黒魔道師も想像しなかったことを、この吟遊詩人はこともなげに提案してくる。
「どうしても通りたければ、やってみるといい。ここだ。」
ハルネは雪に描いた地図の一点を指した。確かに地理的にザルカバードに一番近いポイントがそこになる。ただ、ザルカバードは今。。と、ハルネは今のザルカバードについて知っていることを伝えた。
 話を聞いて、マンゴッドが口を開いた。
「それじゃあ、行っても無駄かもしれませんね。洞窟のあたりだけ無事ならいいのだけれど。。」
「そういうこと。じゃ、私は帰るから。」
言うと、ハルネはバタリアに向けて歩き出した。サンドリア兵士に通行止めにされたのは気に入らなかったが、この動きをジュノに伝えなければ、という思いのほうが強かった。

 この後、ブラッドリーら一行はファイガの一斉詠唱とフレアで氷河に穴を開けることに成功する。しかしその向こうに見えたのはおびただしい魔物の群れだった。黒魔道師たちは機転をきかせ、今度はストンガとクエイクを一斉に集中させ、今度こそザルカバードへの道を完全に塞いでしまったのである。

「と、まあこういうわけ。」
ハルネが珍しく長くしゃべっていたのに、一同は驚いた。そして同時に「とうせんぼ」されたことに対してハルネがいつになく怒っていると感じた。

「皆、今日から俺たちの敵は少し変わるかもしれない。」
カフィが静かに語りだした。
「今までと変わらないのは、俺たちや友人たち、このジュノや故郷の国々を守るために働くということ。だが今までは、我々の脅威の多くは獣人や魔物だった。しかしこれからは、もしかしたら来週から、もしかしたら明日からは」
「・・・人が相手になると?」
ヒビキが問いかけた。
「あまり考えたくはないが、そうなる可能性が大いにある。今、バストゥークとサンドリアはウィンダスを巻き込んで大きな波乱の渦を起こそうとしている。彼らの渦はこのジュノを巻き込むのは時間の問題だ。ザルカバードでおぞましい悪魔たちが湧き出している今、この人間同士の争いは早く収めなくてはならない。」
少し間をおいて、カフィは続けた
「俺たちは一介の冒険者で自由な集まりだが、この場所と友人たちを守るということは、つまりそうしてせめてくる人間たちを押さえつけることになるかもしれない。もちろん、うまくいかなければ押さえつけられるだろうし、殺されるかもしれない。」
「まだ確実にそうなるとは決まっていないが、覚悟は必要だ。我々の仲間と、友人たちとともに戦う覚悟が必要だ。俺たちは今まで生まれも育ちも人種も違う他人だったのが、ここで集まって友人になり、仲間になった。だからこれからも仲間でいられる保障もないし、どうなるかはわからない。」
「しかし俺はこの仲間でここを守っていきたい。だが、もし国に戻りたい者がいればいまのうちに戻ったほうがいい。ここはまもなく戦場になる。みんなには、今日、守りたいものを選んで欲しい。」
 一同はあっけにとられた。何を言い出すんだろうこの人は。このジュノが戦場になる?この平和なジュノが?しかし各人はいま語られた世界情勢をもう一度頭の中で整理し、吟味するにつれ、その可能性は低くないことを感じ始めていた。カフィは話し終わると、みなの表情を見回し、ゆっくりと教会のドアを開けて中に入っていった。静かに、マツリがこれに従った。
「もともと」
ロックが言った。
「帰る国なんてないしな。」
言うと、ロックは教会のドアをくぐった。
「まあ、行くところもないしネェ」
ユリは、言いながらユータの龍、Sasaviのしっぽを掴みながら教会に入っていった。
「ピギュー!?」
「さ、サザビー!?」
ユータがあわてて後を追った。
「お話、終わったぁ?」
眠そうな目をこすりながら、キララとユメジ、ファイフが後に続く。
「聞いてなかったんですか・・・?」
信じられない、という表情でアレヴィアが続く。
「ひ、人が相手だって・・・?」
エルは少し怖気づいていた。
「何言ってんの!男でしょ!」
イセがエルの背中を蹴飛ばす。エルは足元にいたムアラにけつまずいて、ムアラはサッカーボールのように教会の中に飛び込んだ。
「がははは。そうそう、男だろ!」
ヘイキチは笑いながら教会に入ろうとしたが、何かにつまづいてひっくり返った。
タク、エムニが無言で続く。
「わはは。こんなときくらい少しは話したらどうだい、お二人さん?」
フォレスが茶化しながら続く。
シキとハルネが華やかなマーチを奏で始めた。
サトチ、トシム、オプチ、ラビン、シルバーの5人は既に教会の中に入り込んでいた。シーフ同士、ナイフで遊んでいる。
「まぁ、いっかぁ。。。」
ミヤモトと、ランクが続いて教会に入っていく。
 薄暗い教会の中には、「友人たち」の中の何人かも顔を見せており、ろうそくの炎でやっと表情が確認できるくらいだった。一人ひとりカフィと目を合わせるとそれぞれがうなづき、ある者は手を差し出して固く握手をした。
 誰かが教会のパイプオルガンを弾き始め、静かに力強い音が響き渡った。 

 しばらくして、教会から一人のガルカが抜け出した。騎士の装束に身を包んだそのガルカは、チョコボ厩舎の主人をたたき起こしてロランベリー高原に走り出していった。

ここは夜更けのジュノ上層。多くの住民はそれとは知らずに最後の平和な時を楽しもうとした。

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