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君島三郎・死力回復センターコミュの人は何によって生きるか

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見えないようで見えてくるあなた自身のThe Secret Life。

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暗すぎるというわけではないが、
時代物の調度品が多いせいか
その店内は黒光りがする雰囲気が強かった。
昔ながらの洋食屋というふれこみだったから、
迷わずオムライスを昼飯に注文した。
期待にたがわず昔ながらにうまかった。
出掛けにレジに向かおうとすると
黒眼鏡の給仕が昼食に入ってきた会社員に
「ふわふわオムレツのフレンチトーストはこの10個目で終わりです」
と、すまなそうに頭を下げた。
しまった、それを頼めばよかったと思ったが後の祭り。
レジに向かうと白いYシャツに黒い蝶ネクタイの丹波哲郎が例の調子で
不敵な笑みを浮かべて支払いを待ち構えている。
ご馳走様でした、レシートを渡すと
「あーたは霊界日記のステーキセットを召されましたな」というので
「いや、オムライスだけです」と答えると
「あれはああいう名前とすがたのステーキセットでしてな」とにやりと笑う。
瞬間的にこれはテストだ、と気づいたので
「そういうことであればきちんとお支払いいたしましょう」と胸を張った。
「ライスとスープとステーキになりますからな、
 あとはご自身でお代は計算していただきたい」とほくそえんでいる。
もはやテストは二段階目に突入したと覚悟したので、
「スープはいくらになりますか?」とたずねると
丹波はほかの店員に「おおい、スープはいくらだい?」とのんきなものだ。
金のやり取りが主ではないことはなんとなく伝わる。
そうこうするうちに、後ろに支払いの若いカップルが並んだ。
私は少しあせって合計金額を出そうとするが、
あわてればあわてるほどたった三品の金額が合計できない。
狼狽する私を見て丹波は「あんたのソフトが悪いんだ」
と煙草の煙を吐くようにもらした。
たしかに、私のソフトは悪すぎる。
計算地獄にはまった私に冗談めかして
「私の出た『トカチュートントン』は観てくれたかい?」とまたふかす。
見栄っ張りの私ではあるが、観たことのないものを観たともいえないし、
しかもこれは霊界のテストである。
後ろのカップルの女が
「昭和30年代のニューアクション映画ですよね。ワタシ、あの感じ大好き」
と連れの男にはしゃいでみせた。
そういえば丹波は『怪談』で『耳なし芳一』に
よろい武者の幽霊役で出ていたことを思い出したが口にはしなかった。
それでも時間は過ぎていく。
「後の方を待たせて申し訳ありません。
 私のお勘定は後にまわしてください。
 かならずお代は払います」
と芯から平身低頭した。
「わびてすむことではないが、
 わびなくてもっとすまなくなることもある
 あーたはそれをわびたのだから
 もっとすまなくなることがすまなくなることはもうないだろう」
と威厳に満ちた調子で丹波は私に説いた。
昼休みの時間は終わりに近づいていた。


君島三郎(死力回復センターML●2004.9.26)


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人に道無し、命に根無し。

コメント(1)

片岡さんは財布を持たなくて、前にもどっかで書いたけどお札はクリップ(大)で挟んでました。会計で困ってる姿が目に浮かびますねぇ。。小林正樹監督「怪談」(1965)での丹波はクールで恐すぎます。

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