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科学は愛ですコミュの日本近海にも眠るレアアース資源 東大大学院の加藤准教授に聞く 編集委員 滝順一

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編集委員 滝順一
http://www.nikkei.com/tech/ecology/article/g=96958A90889DE1E4E4E4E1E2E4E2E0E3E3E3E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;dg=1;p=9694E2E4E2E7E0E2E3E2E3E7E5E7
写真説明:左 レアアース泥の分布状況、円の大きいほど濃度が高い。(加藤泰浩准教授提供)
写真説明:右 加藤泰浩・東京大学大学院工学系研究科准教授

東京大学大学院の加藤泰浩准教授らのグループは太平洋の海底に高品位のレアアース(希土類)を含む泥が堆積していることを発見、7月に著名な学術誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に発表した論文が大きな反響を呼んだ。レアアースはハイブリッド車用の高性能モーターなど環境技術に欠かせない素材でありながら、産出地が中国などに偏っているためだ。加藤准教授は日本の排他的経済水域(EEZ)内にも「有望な海域がある」という。

 ――太平洋の海底のレアアース泥は、中国など陸上の資源とは異なる面があると聞きました。

 「レアアースの濃集プロセスが異なる。陸上の資源はマグマの働きで生まれたものだ。マグマ活動でできた、ある種の火成岩はレアアースを多く含む。しかし同時にトリウムやウランといった放射性物質も含む。レアアースを抽出する過程でこうした放射性物質が一種のゴミとして残ってしまい、扱いが難しく、環境や健康問題を引き起こす原因となっている」

 「これに対し、海の生成プロセスでは海水そのものに含まれるレアアースだけが濃集する。トリウムなどを含まない。しかも15種類あるレアアースのうち産出地が中国に偏っている重いレアアース(重希土類)が多く含まれるのが特徴だ」

 「太平洋東部に中央海嶺と呼ぶ巨大な海底山脈がある。そこは地下深部からのマントル上昇で海洋底(海の岩板)ができる場所だ。ここから放出された熱水プルーム中の鉄分を含んだ懸濁物質が海水中のレアアースを吸着する働きを持つ。温泉の湯あかのようなものをイメージしてくれてもいいが、これが広範囲の海底に長い時間をかけて降り積もっている。さらにフィリップサイトと呼ぶ高い吸着能をもつ鉱物もレアアースの濃集に関係しているようだ」

 「この海底の泥を引き揚げて酸で処理すれば容易にレアアースが抽出できる。残土は放射性物質を含まないので、アルカリで中和すれば安全に処分できる。経済的な採掘が可能だ」

 ――資源量は陸上の800倍あるとか。

「分布するのは、大まかに言って中央海嶺から2000〜4000キロの範囲の南東太平洋と中央太平洋の海底だ。堆積するのにちょうど適した範囲があり、それが海洋底の移動とともにベルトコンベヤーのようにゆっくり動いている」

 「私たちは海洋底の国際調査で過去に採取された約70本のコア(円柱状の地層サンプル)を分析して、レアアース泥の分布を推定した。南太平洋のタヒチ島の東の海底地層では表面に近いところに濃度1500ppm(ppmは100万分の1)にも達するレアアースがある」

 「この地域の海底を4平方キロ(深さ10メートル)にわたって開発するだけで日本の年間レアアース消費量の1、2年分を供給できる計算だ。非常に魅力的な資源だが、そこはフランス領だ。日本のEEZにも資源は存在すると見込んでいる。有望海域はすでに絞り込んでいるが、資源戦略上いまはまだ明かせない」

「資源量が陸上の800倍もたくさんあるというだけでは意味がない。大事なのはどこにどれくらい経済的にみて意味のある資源が存在するかを知ることだ。私たちの調査で資源の分布が科学的に推定できるようになったことに大きな意味がある。フランスは今回の発見に強い関心を示していると聞く」

 「現在、中国が世界のレアアースの約97%を生産しており、環境問題や資源保護のため輸出制限に踏み切ったことはよく知られる。今年前半だけでもネオジムやジスプロシウムなどの価格が3〜5倍にはねあがった。海洋底資源を開発できれば、中国の独占を突き崩せる」

 ――日本としてこれから取り組むべきことは。

 「基礎的なデータを集め、本当に採掘可能か実証する必要がある。日本には世界トップクラスの海底掘削調査船がある。これを使って有望海域の海底を詳細に調べたい。併せて、泥を海面上まで引き揚げる技術の実証を進める必要がある」

 「レアアース資源を確保するため、日本はレアアースの使用量を減らす代替技術の開発に力を入れる一方で、製品から回収、リサイクルする技術の開発も進めている。こうした防衛的な技術開発が大切なのはもちろんだが、攻める研究開発も必要だ。レアアース資源を確保したうえで、さらにレアアースの新機能を見つけ出し実用化することで世界をリードしたい」

 ■取材を終えて
 加藤准教授らの発見が画期的なのは、太平洋海底に未知の資源の存在を示したことだけではない。その資源の生成プロセスを地球科学的に説明した科学的発見だからだ。生成の仕組みが推定できているので、レアアース泥の分布も推察がつき、広大な海洋底をくまなく調べなくても良質の鉱床がどのあたりにあるのか予測がつく。加藤准教授は日本のEEZにも「有望海域」があると気を持たせる言い回しをするが、学術誌に載せた地図をみればだいたいの推測はできる。
 できるだけ早く調査して資源を確認し採掘技術の開発に取り組む必要がある。それは単に中国の独占市場に風穴をあけるためだけではない。中国のレアアース採掘は相当に荒っぽい手法で行われている。リーチング(酸浸出)といって、鉱床がある土地に穴を掘り塩酸などの酸を流し込み、土壌中のレアアースを溶かし込んだ酸性溶液を回収。そこからレアアースを抽出する。一種の野天掘りであり、酸が地下水や河川水を汚染するなど、残土中の放射性物質による汚染に加えて、深刻な環境汚染を引き起こしているといわれる。
 日本の環境技術がこうした汚染を起こす素材から成り立つことは極めて残念なことだ。海洋底の資源を環境汚染を引き起こすことなく利用する技術を実用化し、環境にやさしい環境技術の実現を目指すべきだ。

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