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産総研ら、温度差で情報を伝える「ゼーベック・スピントンネル効果」を発見
http://journal.mycom.co.jp/news/2011/07/01/093/index.html

産業技術総合研究所(産総研)のナノスピントロニクス研究センター 湯浅新治研究センター長、半導体スピントロニクスチーム Ron Jansen招聘研究員、齋藤秀和研究チーム長らの研究グループは、オランダ基礎科学財団(The Foundation for Fundamental Research on Matter:FOM)と共同で、熱エネルギーをスピンに変換する新たな現象「ゼーベック・スピントンネル効果」を発見したことを発表した。同成果は、英国の学術誌「Nature」(オンライン版)に2011年6月30日(日本時間)に掲載された。

超低消費電力を実現するグリーンITデバイスの実現に向け、電子が持つ電荷とスピンの両方を活用するスピントロニクス技術が注目されており、Si(シリコン)を用いたLSI技術と融合させたシリコン・スピン融合デバイスを実現することがグリーンIT化の実現に向けて期待されている。

磁性体からシリコン中へのスピン情報の入力(スピン注入)は、シリコン・スピン融合デバイスを実現するための基盤技術となるが、これまでの研究では電流によってスピン注入を行ってきた。しかし、素子に電流を流すと熱が生じてしまうという問題があり、発熱の問題を抜本的に解決するために、電流を用いない新しいスピン注入手法の開発が望まれてきた。

産総研では、これまで電子が持つ電気的性質(電荷)と磁気的性質(スピン)の両方を活用するスピントロニクス技術の研究に力を注ぎ、スピントロニクスを応用した素子を実用化してきた。今回、FOMと共同で、ゼーベック・スピントンネル効果と呼ぶ現象を発見し、この効果を利用して電流を用いずに磁性体からシリコン中へのスピン注入に成功した。

具体的に、ゼーベック・スピントンネル効果の観測に用いた素子は、磁性体(ニッケルと鉄の合金)、トンネル絶縁膜(厚さ1.5〜2nmの酸化アルミニウム層)、シリコンの3層で構成されている。


図1 ゼーベック・スピントンネル効果を観測するための素子の構造。磁性体/トンネル絶縁膜/シリコンの3層で構成される。磁性体とシリコンの間に温度差があると、ゼーベック・スピントンネル効果により磁性体のスピン情報がシリコン中に入力される


これまで、シリコンへのスピン情報の入力は、磁性体とシリコンの間に電圧をかけて電流を流して行われてきたが、今回発見されたゼーベック・スピントンネル効果では、電流を用いることなく、磁性体とシリコンの間に温度差を生じさせるだけで磁性体のスピン情報をシリコンに入力することが可能となる。

ゼーベック・スピントンネル効果は、2枚の電極(この場合、磁性体およびシリコン)の間に温度差があると、上向きのスピンを持つ電子がトンネル絶縁膜を越えて磁性体からシリコンへ流れ、逆に下向きのスピンを持つ電子がシリコンから磁性体へ流れる現象。このため、2枚の電極間に流れる電流は相殺してゼロとなるが、スピン情報は磁性体からシリコンに伝達されることになり、ここでのスピンの上向き/下向きが、デジタル情報の「0」と「1」に相当することとなる

今回の実験では、図2の左に示されるような構造の素子のシリコン内に電流を流して加熱し、シリコンの温度を磁性体よりも高温にした。磁性体からシリコンにスピン情報が入力されたかどうかを調べるために、シリコン面に垂直方向に磁界をかけながら磁性体とシリコンの間の電圧を測定。シリコン中にスピン情報が入力されている場合には、数100エルステッドの垂直磁界を加えると発生電圧がほとんど消失する。この現象はハンル効果と呼ばれ、スピン情報の有無を調べるために標準的に用いられている。


図2 ゼーベック・スピントンネル効果を観測するための素子構造(左)。磁性体とシリコンの間に温度差を与えたときに発生する電圧(右)。磁性体からシリコンにスピン情報が入力されると、電圧が磁界に依存して変化する


一方、図2の右に示されるように、垂直磁界が強くなると発生する電圧が急激に減少したほか、シリコンを加熱するための電流の向きを反転しても、同じように垂直磁界による発生電圧の変化が観測された。これは、測定された電圧はシリコンを加熱する電流により直接的に生じたものではなく、シリコンと磁性体の間の温度差によって生じたものであることを示しているという。これらの結果から、ゼーベック・スピントンネル効果によって磁性体からシリコンにスピン情報が入力されたことが確認されたと研究グループでは説明している。

なお、今回発見されたゼーベック・スピントンネル効果を用いることで、熱を利用してシリコン中にスピンのデジタル情報を入力することが可能であることが示された今回の結果は、LSI中に生じる廃熱を再利用してスピン情報の入力を行う画期的な省エネルギー技術の実現に繋がるものであり、将来のグリーンITデバイスの実現に向けた新たな一歩を切り開く可能性を秘めていると研究グループでは指摘している。

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