参加を強化 アフリカの女性政治家の中には、政党による後援を促進する政治制度への対処を強いられる人たちがいる。そのような制度においては、政治家は選挙民よりも政党内の上下関係から恩義を受けるため、公選されて役職についても政策決定面で実効力を削がれてしまう。 Shireen HassimさんとSheila Meintjesさんは国連のアフリカ関係特別顧問事務局(UN Special Adviser on Africa)の委託による報告書の中で、比例代表制選挙制度は女性にとって有利であると広く信じられてきたが、これまであまり言及されてこなかった「政党に女性を統制するメカニズムを確立」しがちであるという、代償をはらむと指摘している。アフリカ諸国の中で女性割当をいちはやく採用した国のひとつであるウガンダでの研究によると、女性参加の効果は一様ではなく、女性議員が女性運動に恩恵を与える立法を支援するのを与党が妨害することがよくある。モザンビークと南アフリカでも同様な懸念が表明されていると、HassimさんとMeintjesさんは、指摘する。女性議員は、党への忠誠と女性の利益を推進すると思われる政策への肩入れとのバランスをいかにして取るかという問題に直面している。 モザンビークと南アフリカでは女性は、マイノリティ優遇政策のおかげで議会史上で最多数を代表している。けれども彼らは、男性の同僚議員と同様に党を代表するために選ばれたのであり、必ずしも女性の利益を代表するわけではない。「そのため、女性のジェンダーに関わる利害を党の利害およびアイデンティティと区別すべきかどうか、あるいは、いかに区別するかが、課題である」と、HassimさんとMeintjesさんの報告書は、指摘している。 隣国のジンバブエでは、Catherine MakoniさんとTsitsi Matekaireさんが、女性ロビーは、昨年、Joyce Mujuruさんが同国初の女性副大統領に任命されたことを喜ぶべきかどうか、当惑していると報告している。任命は、「政党が手玉に取るゲームのひとつ」と見る人々もいると、この二人の執筆者は、国際的な女性ロビー・グループである「女性環境開発機構(Women’s Environment and Development Organization, WEDO)」の調査報告書の中で、「わが国の歴史のあの時点では[女性を指名することが]・・・好都合だと見なされた」と指摘している。。 さらに、この報告書は、Joyce Mujuruさんを指名した政府が、、反対意見への不寛容さを増すと見られる法律を制定していることに注意を喚起している。南部アフリカ諸国で悪化する生活状態に反対してデモンストレーションを行った数百人もの女性が逮捕されているのだ。
紛争後諸国が順調 武装紛争はアフリカにおいてきわめて破壊的であったが、逆説的に「ジェンダー関係を変え、指導的地位に参入する機会を女性に切り開いた」と、WEDOのニューヨークを本拠地にするリサーチャーである、Doris Mpomouさんは語る。 過去10年間に、世界の武装紛争の3分の1はアフリカで発生し、600万人以上の難民と2000万人以上の国内避難民を生んだ。戦争はインフラストラクチャーを破壊し、開発を失速させ、特に女性をレイプと虐待にさらした。 だが紛争は女性が自分たちの生活を変質させ、ジェンダー役割を再定義するチャンを生み出してきた。紛争の結果、男性が戦争に行き、戦闘で死亡することにより、人口統計に顕著な変化が起こる。これにより男女間の政治的・社会的力関係が自動的に変わるわけではないが、女性の数が男性より大幅に多くなると、女性に機会が与えられる可能性が生まれる。ルワンダでは1994年の大量虐殺後、女性6人に対して男性4人という割合になった。政治、農業、フォーマルな経済など、従来は男性が支配していた領域の役割に女性が足を踏み入れた。ルワンダでは国会における女性議員の割合は現在、最高レベルの記録を保持している。 ルワンダは極端な例だが、紛争中の他のアフリカ諸国は、農村地域での戦闘から逃れて、都市部への大量移住が起きている。そのような大量移住により女性が一家の世帯主になり、他にも従来は男性のものだった役割を担うようになっている。 エチオピアからの独立をめざすエリトリア戦争や南アフリカおよびジンバブエの自由への戦いなどの紛争では、女性は男性と並んで戦い、平等を主張し、紛争後の調停において交渉力を獲得した。戦争が終わると、南アフリカなどで、女性はエンパワーされたと感じ、政府内で権力を握る地位を要求した。 時が経つにつれ、ジンバブエの女性は武装紛争後に得た最初の進歩が侵食されていくのを経験した。だが、その後、北京会議がもたらした勢いに乗って指導的地位への平等な参加に向けて意欲を新たにした。ジンバブエの例は、女性運動が国内の支援に頼るだけでなく、国際的コミュニティを通した支援を通しても勢力を得られることを示している。 国連女性開発基金(UN Development Fund for Women;UNIFEM)は、ルワンダ、シエラレオネ、コンゴ民主共和国(DRC)など多くのアフリカ諸国において和平プロセスへの女性の参加促進および、リーダーシップに向けての女性のトレーニングに大変積極的に取り組んでいる。 1985年に設立されたロンドンのInternational Alertなどの独立機関も重要な役割を果たしてきた。同グループは女性のネットワークと提携して働き、リベリアおよびコンゴ民主共和国における和平プロセスへの女性参加を促進してきた。戦争および移行状況で女性が生み出した進歩が平和時にどのようにして押し戻されることが多いのか、進歩をどのように持続できるかを見出す手助けとなる、より深い調査が必要だと、アクティビストたちは語っている。 アクティビストたちはまた、最終的に両性の政治家が男女をエンパワーする政策を推進する日に向けて努力を重ねている。結局のところ、指導者としての地位は、「ジェンダーに敏感な男性と女性の両方」によって満たされる必要があります。私たちがめざすのは、男女間の肯定的なパートナーシップなのです」と、Lewanikaさんは、締めくくった。 ジェンダー・アクティビストたちは、世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの国際金融機関においてより多くの女性を高い地位につけようと照準を合わせている。政策決定の全領域の中で、女性の代表がもっとも少ないのが経済・金融の領域だと、国際的女性ロビー団体、女性環境開発機構(WEDO)は指摘している。 世界中で経済ポートフォリオを担当する女性大臣はわずか28名にすぎない。その結果、女性の利害、経験、関心は経済的意思決定においてまったく反映されていないか、不適切にしか反映されていないと、WEDOの報告書は述べている。過去20年以上にわたり、世界銀行およびIMFは貧困国の経済改革プログラムを企画してきた。こういった政策構築における女性の不在は、「世界的に実施されている、通貨・金融・貿易政策の大半が・・・ジェンダーを理解せず、その結果、重大な経済的損失を社会全体にもたらしている」とWEDOの報告書は指摘している。 世銀とIMFでは、リーダーシップを取るスタッフ内の女性代表率は約20%であり、両機関の理事会における女性メンバーは、10%以下である。両機関はスタッフのジェンダー構成を変える権限を持っているが、理事会に対してはほとんど統制力を持たない。理事は各メンバー国により指名されている。 世銀でもIMFでもこれまで女性がトップの地位を占めたことはない。IMFは現在、初めてAnne Kruegerさんが女性副専務理事に就任している。 WEDOのDoris Mpomouさんは、今年の女性の地位委員会(CSW)の成果のひとつは、「アクティビストたちが、国際金融機関および学術界への30%割当目標を推進するようなんとかもっていけたこと」だと言う。 CSWで「アフリカ女性幹部会議(African Women’s Caucus)」は、国連がいまだに遅れを取っていると非難した。同グループは60年間の国連存続中に、「女性事務総長はひとりも出ていません」と声明の中で指摘し、特に国連が、組織改革に着手しているいま、トップの地位に女性が着くよう促進するよう促している。 ワシントンの非営利組織である国際女性研究センター(International Centre for Research in Women)の報告書は、国連などの国際機関は女性が組織の階段を上昇する進歩に関してジェンダー分離統計を公表するよう、さらに、国際機関はまた、スケジュール表を作り、もっとも高いレベルにおけるジェンダー平等を促進するよう具体的プランを策定するよう、推奨している。