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今日のかっぱコミュの桜の記憶@Vol.31

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その木の下で@卯月

 久々にユニがやってきた。
 花見帰りだとうそぶいた。

 今日は観音というより、女郎屋の女将のような空気
 を纏っている。

 「贅沢な奴だねー」

 いきなり、そんなことを囁く。
 その色っぽさに思わず、鳥肌が立つ。

 「何の話?」

 「食いもんの話さ」
 
  へ?

 「かっぱのだよ」

  あー、感情ね。

 ユニ曰く、かっぱ族は人間の感情を食べて生きて
 いるらしい。

 「あんた、選り好みし過ぎだよ、かっぱの癖に」

  あんたらと同じにしないでくれ!(−−#

  それに河童にはなれないって悟ったとこなんだ
  から。
 
 「人間にだってね、感情を食う奴はいるんだよ」

 そう言って、いつの間にか火を点けた長いキセルを
 ふーっと吹かす。

 その煙の中に、ユニが言ってる贅沢な感情の原因
 が映し出された。

 「あぁ・・・・」

 言ってることがよくわかった。

 私がこのかっぱ達と付き合っていけるようになっ
 た理由は、私が人間の世界で「人間」として「社
 会性」を持つ必要を、実は感じていないからだ。

 出きれば、早いうちに、社会的な自分というもの
 を捨てて、人身未踏の地を探しに旅にでも出たい。

 感情で繋がることの薄気味悪さを、高校生の時に
 知った。マジ、気持ち悪かった。

 人がそんなもので繋がるという生き物だというの
 を知った瞬間が、あの時、確かに存在した。

 特に、恋愛だとか、嫉妬だとか、自己顕示欲、執
 着というような感情には、なるべく近寄らないよ
 うにしてきた。

 恋愛だけはアクシデントで、何度か経験はしたが、
 あれはもういいや、と思ってる。一度しっかり経
 験すれば思い出したい時にいつでも思い出せる。

 感情の胃袋なんて、牛の胃袋みたいなもんだ。
 何度でも反芻できる。

 そんなスタンスでいるにも関わらず、時々、濃厚
 な感情をこちらに纏い付けてくる奴がいる。

 そういうのが最近増えてきた。

 ひとりだけならまだしも、二人以上となると、こ
 れはおそらく私の方にも原因があるに違いない。

 自分に対して、人間達が持つ感情に、私は時々対処
 に困るのだ。

 私の思考がそこまで回ったのを確認したかのよう
 に、ユニが急に私の顔に鼻を近づけた。いや、嘴
 と言った方がいいか。

 スベスベの、とがった代物だ。

 こちらの匂いをかいでいる。

 「・・・臭い」

 これじゃ、寄られるのは仕方ないね、とユニは視線
 を横から流して、もう一度、キセルを吹かした。

 人間臭くなってるらしい。

 あ。

 おい・・・ちょっと待って、ユニ。

 あんた、何考えてる?

 私の感情を食べようとしてるんだろ?

 ・・・・・フフ。

 笑い声につられて振り返る。

 ユニが消えた後の空間。

 そこには、ユニにしては珍しい、甘ったるい空気が
 淀んでいた。

 「あ、ユニ、もしかして・・・」

 ユニは人間だったことがあるのだ。
 その空気がそう言ってた。
 
 私の人間の匂いが、ユニにそれを思い出させたに
 違いない。

 その空間を眺めていると、そこからユニの意識に
 繋がった。
 
 遠くで歌ってるユニが見える。
 散り始めた桜並木のトンネル。
 
 「桜の花びらって冷たいんだよね」

 ユニが笑った。嘴がなかった。 

 
 

 

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