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空稲 恒コミュの単SSスレッド。さとみるはな

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とぼとぼ…

「はぁ…」

疲れて歩く足取りが、ため息でさらに重くなった。


ガミガミ部長の小泉さんは、色素の薄い僕の髪が気に入らないらしく、なにかに付けて文句を言う。
まぁ…僕も社会人だからね。
その辺は我慢しなくちゃ。


がちゃっ、バタム。
とすん、ごそごそ、しゅるり。




「しーしゃーもー!!!!」

ばっ!
どさんっ!

スーツを脱ぐのも早々に、ベッドに向かって飛込んだ。
枕元には、のへーんとした顔のいつものししゃもがいた。
少し傾げたような感じでこちらを見つめる。
そんなししゃもを捕まえて体をかいぐりかいぐり撫でると、しっぽと耳が垂れ胴がだらっと伸びた。
それが堪らなく可愛い。
しばらくそうして遊んでいた。

「あぁ…今日会社でね……」

言いたくないけど、誰かに言わないと僕が壊れちゃいそうだから、ししゃもに話しかける。
いっつも穏やかな顔をしてるししゃもなら…受け止めてくれそうな気がしたから。

だいぶ楽になってきた。
最後に大きく溜め息を一つ。
そしてししゃもを目の前に抱き上げていつもの一言。

「はぁ…一日でいいからお前と入れ替わってみたいよ…」



その頃。
ポップンワールドでは。

「ん…むむむぅ…ほいっ」

ボワァン。

「そいや、次〜」

ばたばたばた。

「ほいにゃ」

ごとっ。

「わふ〜あと一箱だよ〜」

がらがらがら。

MZDとP-CAT、いぬ千代はぱたぱたと忙しそうです。

P-CATが置く。
MZDが力を込める。
いぬ千代が運ぶ。

「何を隠そう、ここがいわゆる流れ星工場だな。叶える力を込めて夜空にまくと、流れ星になって人の願いを承るわけだ。」

得意気に語るMZDに
「にゃに独り言いってるにゃ」
「もうすぐだからちゃっちゃかやるわふ」
二匹から鋭い突っ込みが入ります。

「へいへい、やりますよ〜……んっ…むむむぅ……ふぁっ…へっぶしっ!」

ポーン!ひゅるるるぅ……

「あ。」
「わふ。」
「にゃ。」

なんと星に流し込む筈の願い玉が地上にとんでいってしまいました。

「あ〜……ちっとまじぃかな…」

ぽりぽりと頭を掻く。

「わふー!!流れ星はみんなの願いを叶えるから一つずつの力は弱いけど…」
「ばか神〜!あんなにでかい願い玉だったら無茶苦茶な願いまでかにゃっちゃうよ!!」

非難を背中に受け、あっけらかんと言いました。

「ま、その瞬間に思ってる願いを叶えるんだ、どーせはらへった〜とか疲れた〜とかだろ。」
「だといいけどにゃ…」
「わふ…」

さらにこう付け加えました。

「ま、大事件になったらどんな罰ゲームでも受けてやるよ!」


地上に舞い降りた願い玉は、ヒューンと素早く飛び、なにかに向かって進んでいきます。

人をぬい、ビルをぬい、やがてアパートの一室に。

「ん…んわぁっ!?」

ししゃもから顔をあげると、なにか見慣れないものがぷかぷか。
眩しいので目を細めて、でもしっかり見てみると…
それは星の形、よく漫画で見るキラキラな星の形をしてた。


次の瞬間。

「うわぁっ!?」

ソレが一際輝いて、僕とししゃもと僕の部屋を明るく塗り潰していったんだ……





「んしょんしょ…よっ…と。」

こつっ、ごとっ。

「ふぅ…んっ、えいっ」

かきっ、がらがらがら、カシャン。カチャッ。


もう暗い帰り道。
私は今日、閉店を任されていました。

「これ…と、ここ…と…んっ、よしっ!」

シャッターの鍵と、お花のしまい忘れが無いのを指差し確認して、ゆっくり歩きだします。

ふぅ…今日はたくさん売れたから疲れちゃった。
でも、なんだかいい気分☆
帰り道は街灯もけっこう多く、見渡しのいい道。
ゆっくり帰りました。

でもふと、道の先を見てみると…遠くに人影のような、ふらふらと近付いて来るものが…

(あう…酔っ払いさんかな…)

やっぱり明るくても怖いです…
私は目をあわせないように、早足で通り抜けようと思いました。
サラリーマン風、髪は少し茶色がかって…

なんだかどうしても気になって、すれちがいざまに顔を覗きこむと…

「……っ!?」

さ…とうさん…!?


佐藤さん…お店の近くに住んでるらしくて、よく猫のししゃもちゃんを探してうちにくるひと…
私のあこがれのひとだったりもするんです。
その人が何故かスーツのズボンに前のはだけたシャツで、こんな時間、こんなとこに…

「あ……あのっ…」

声をかけると、こっちに気付いたみたい…
だけどなんか様子が変…

「…ふに…?」

え…?いつも爽やかな声を放つその口から、聞き慣れない声…というより鳴き声が聞こえてきました。
びっくりして固まってる私に、佐藤さんはふらふらな足取りながらゆっくり向かってきて…

たじ…

思わず一歩後ずさった私に、佐藤さんは構わず鼻の先が当たるくらいまでずいっと顔を寄せてきます。
すると…

「にぃ〜」

またも変な声をだし…なんと私に抱きついてきたの!

「………!!!???」

えっ、えええぇぇぇ!!!
あっ、ちょっ、えっ、さとっ、佐藤さんっ!?
だっ、だだだ抱きついてっ!?

私の思考回路はショート寸前どころか爆発間近にまで沸騰しました。

外っ、外だよ!?
せっせめて家の中とか!
もう何がなんだかわかんない…

もう心配することすら間違っているぐらいで…
真っ赤で口をぱくぱくさせている私に、なおも佐藤さんは頬をすりよせてきました。

こっ、心の準備がっ…

そんな状態の私達には、降るような星空から実際降ってきたお星さまになんて気付かなかったのでした。

しゅぱぁん…

私の肩越しから佐藤さんの頭が、そして体が、ついには私の視界が…光に塗られていきました…


(はっ…はっ…はっ…)

タカタッタカ、タカタカッ

(早くっ…見付けないとっ…)

タッ、スタッ

(あー!もうっ…何処にいったんだ僕っ!)

どんっ!

「んにっ」

べしゃっ。

辺りをきょろきょろしながらの全力疾走は危険だ…
電柱にしてはなんだか柔らかいものに、したたかに打ち付けた鼻をぷにぷにと押さえた。

「あら……ししゃもちゃんじゃない☆」

やっと開いた片目で二本の柱を見上げると、その付け根には…
暗くて良く見えなかったけど、ピンクのようなフリルの付いた三角が写った。

「あら…アタシのパンツ見たいの…?エッチ☆」

声のする方を見上げると、不意に体がフワリと浮いた。

「んーっ☆あんたはいっつものへーっとしてるわねぇ」

ある程度まで上がるとぴたっと止まる。
まっすぐ前を見た。
そこに見えた顔が。

近くの歯科医院のミルクさんだと判断出来たか出来なかったかの瞬間に、不意に視界が流れた。

「うりうりうり〜☆」

頭を撫でられつつ、ぐりぐりとほおずりをされる。
なんだか恥ずかしい様な変な感覚に陥りながらも、頑張って頭を整理した。

(僕がミルクさんに抱きかかえられてるってことは…さっきぶつかったのはミルクさんの足で……んじゃ、さっき見上げてたのは……!!)

ぼふんっ。

そんなとこだけ冷静に事実にたどり着いちゃって、僕の顔は真っ赤っかに染まってしまっていた。

「あら、おしりのほうが汚れてるね…ん☆うちできれいきれいしましょうね〜☆」
「にゃっ!?んにぁ!!」

おっ、お風呂!?
って、て事ははっ、はだ……

ぼふんっ。

またも走り回る思考に押し出されそうな鼻血を肉球で押さえ付け、『ししゃもを探さないと』という理由を武器に自分の理性を奮い起たせる。

…と、心と頭は抗っているが、滑らかな手に委ねられた仔猫の体はもうすでにミルクさんの家へと向かっていた。





「ラブラブのシュガー♪フフフン…」

鼻唄混じりにお風呂を沸かしていく。
それを洗面所でドキドキしながら見ていた。

それというのも、ミルクさんの服装のせいだ。

上には大きくハートが描かれたTシャツを一枚だけ、下にいたってはさっきのフリルの付いた下着だけだった。
それが屈む度、振り向く度に僕の視線をちらつく。
必死に見ないようにしている…つもりでいると、

「ん…そんなに見つめないでよ…☆」

こちんっ、とおでこをこづかれて洗濯機の上に運ばれた。

べしゃっと伏せる。
しっかりと目をつむっていると、何か柔らかいモノをぱさりぱさりと乗せられる感覚がした。

「んにゃっ、んにゃっ」

思わず声が出る。
もそもそと這い出ると、目に映った信じがたい光景で今自分に掛けられた布がなんであるかを悟ってしまった。
またもミルクさんの胸元へと抱かれる。

しかし、今度は『生』だったけど。

お湯につかる前からのぼせあがった僕を連れ、浴室に入る。

ざーっ、ざーっと二回お湯を浴び、
「よっ、と☆」

膝を曲げて屈む体勢で椅子に座るミルクさん。

こっ、この体勢はやばいっ!!
みっ、見え…!!

真っ赤で固まる僕を掴み、あぐらを崩したような格好の脚の輪の中に連れてくる。

「さぁ…覚悟なさい…☆」

両手にボディソープとスポンジを携え、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
しかし僕は…情けないことにまだ釘付けになってたんだ…

「それー☆」

我に返った時にはすでにミルクさんの手がわしゃわしゃと僕の体をまさぐっていた。

「にゃぁぁんっ…」

くすぐったくてくすぐったくて、じたばたと暴れるようになっている僕。
それに合わせてしっぽもぴくぴくと動く。

そして…しっぽが何かに擦れた…

「くぅん…」

突然ピタリと手が止まり、甘い声が僕に届いた。

「あぁん…ししゃもちゃん……えっちぃ…」

甘い声の主は確かにミルクさんで、軽くすすいだ僕をゆっくりとそのとろんとした目の前まで抱き上げたんだ。

「んぅ…ふぅ…じゃぁ……して…くれる…?」

唇同士でついばむ様なキスをしたあと、また脚の間へと降ろされる。
しかし今度はさっきよりも付け根に近い…さっき見えたものが更に間近に写る。

「はやくぅん…いつもみたいに…ね…☆」

置かれている状況と、聞こえてくる声と、見えている景色が頭を掻き乱す。

…その中で僕は、むせかえるほどの甘い…Hな匂いに惹かれるように舌を伸ばしていったんだ……



ぴちゃ…ぴちゃ…

「くぅん…きゃぅ…」

ぺろっ…ぴちゃぴちゃ…

「あ…ぁぁ…ザラザラがぁっ……いいのぉ…」

耐えるように、火照るようによじれるミルクさんの体。
ただ左手だけはしっかりと、僕の頭を誘うように添えられていた。

「えあっ…?…いっ…つも…より……きゃぅっ!……ぃっ…いぃのぉっ…」

僕は夢中で、半ば強引に押し分けて舌を入れていった。

「にぁ…」

奥から…どんどん溢れてきますよ…
そんなニュアンスを込めた鳴き声が届いたのか、きゅっと足が締まりびくびくと震えた。

「あっ…あっ…さとうくぅんっ…!」

顔を埋めながら、ミルクさんが放った僕の名前を不思議な気持ちで聞いていた。
なんで僕の名前なんだろ……ししゃものはずなのに。

そんな疑問すら、お風呂場とミルクさんの熱で遠のいていった。






はぁ…はぁ…あー…マジでいっちゃった…
ししゃもちゃんはなんだかくったりしてるし。
まぁ、お風呂入っちゃおうかな…ざぼっ。

「んっ…んふぅ〜……」

う〜…温かいお湯に入ってみて分かったけど、今日はなんだか変だ。
やけに…うずく。
お腹の下の辺り、奥の方が何かを求めるようにジンジンと震えていた。

「……よし。」

とりあえず決断を下したワタシはお風呂から上がり、ししゃもちゃんを乾かしたあと、出かける準備を始めた。





トントントン…

…………?

規則的なまな板の音に気が付くと、そこは何処かのお家のキッチンでした。

………ん。
あ…れ?エプロン……私…?

ふと手を止め、ぼーっと考えてると、

「おーい、今帰ったよ!」

えっ、えっ!?どっ、どうしよ…

突然の呼び声に何も分からないまま、とりあえず包丁を置いて声のする方へ…


すると玄関には

「ただいま、おまえ☆」

「さっ、佐藤さん!?」

びっくりして立ち尽くす私。

「おいおい、おまえだって佐藤さんだろ?変なこと言ってないで、ご飯にしよう。」

事も無げに上着を掛け、鞄を軽く置きました。
私は一人何ひとつ掴めないままです。
取り合えずキッチンに戻ろうと振り返ると、不意に後ろから…

「あぁ…それよりおまえを食べようかな…☆」

ぎゅっと抱き締められ、そのまま押し倒されちゃったの!
場所はいつのまにかベッドの上…
佐藤さんの唇が私の首筋に迫ってきました。


(おっ、お風呂もまだだから!あっ、汗かいてるしっ!とっとにかく…ダ…)


「ダメーッ!!!」

がばっと起き上がった私。
すると急に違う景色が目に飛込みました。

「あ…あれ…?」

押し返す感触は無く、ベッドはいわゆる夫婦用のツインじゃなくて一人暮らし用の簡素なシングル。
周りも、家族で住む家と言うより独身アパート…という感じです。

「………あう…?」

脳内にいくつも疑問が浮かびます。
その一つ一つを考えようとした瞬間。

「にゃーん☆」

がばっ、どさり。

「えふっ」

不意に何かが飛んで来て、ベッドに組み伏せられる形に。
深く息をしながら恐る恐る前の顔を見ると…満面の笑みの佐藤さんでした。

えっ、あっ、なになに!?
さ…さっきの…夢の続き…?

ゆっくりと笑顔に押されて、ベッドに倒れこんだ二人は…二人は…

きゃーっ!きゃーっ!
頭の中で叫んでも、緊張と興奮で固まった体からは声は出ません。
やがてゆっくり…じゃなく、するっと滑るように佐藤さんの唇が私の首元に。

にゅるっ…

「ひあっ…!!」

さんざん抑えていた喉が出したのは恥ずかしい声でした…
首をせめる佐藤さんの舌は止まらず、私はへんな感触を逃がすように体をよじりました。
それでも休まずにくる『キモチイイ』はやがて口から…

「やっ…やんっ…はっ…さと…さんっ…いっ…」

かろうじて動く指でシーツを掴み体の火照りを我慢していると、急に佐藤さんが顔を上げて、

「………?」

困ったような、問掛けるような目で見つめてきました。

「あ……」

顔が熱くなって…もう…我慢出来なくなって…

「い…嫌じゃ…ないです……続き…して……くださ…ぃ…」

すると佐藤さんは

「にゃっ…」

短く呟いたあと、私に勢いよく抱きついて来ました…

でも、それが悪かったのです……
あんまりの事で動転中の私は、近付く頭を避けることも忘れていました。

ごちんっ!

鈍い音はおそらく私と佐藤さんの頭の中で盛大に響いて…
まぁそのまま気を失ってしまったのだけど。

…思えばこの時から変な予感はしていたのかもしれません…



コメント(9)





ビーッ!
チャイムの音に気が付いて目が覚めた私。

ゆ…め…?

頭は回らず、寝起き特有の目眩がしました。

ビーッビーッ!
立て続けになる音が私を急かします。
飛び起きてドアに走りました。
いつもより少し目線が高いことや、

「いっ、今出ますっ!」

の声が少し低かったことになんて気が付かないまま…

がちゃっ!

ノブに手をかけた途端、ぐいっと引っ張られ前につんのめってしまいました!

やばっ…倒れるっ…!

ぱふぁっ…

え……や…わらかい…?

「あぁん…佐藤きゅん……大胆なのねぇ…☆」

えっ…みっ、ミルクさん!?
な、ななな、なんでこんな時間に…
えっ…あっ、ど…どうしよ…

本来ならミルクさんが訪ねて来るのも変なのですが、
そこまで知恵は回らず落ち着かない頭で私がここにいる言い訳をぐるぐると探していると、

「……さとうくぅん…」

ぎゅぅぅ…

だっ…抱き締められてるぅ…!?

……

…え?
い…いまミルクさんはなんて…?

抱き締める腕から逃げるようにすり抜け、洗面所に飛込みました。

「は…へ……?」

洗面台の鏡にはぽかぁんとした顔の佐藤さんが…
私がぺたぺたとほっぺを触ると、目の前の佐藤さんも私の真似をします。

ま……まさか……

血の気が引いていくのを聞いていると、不意に後ろから

「逃がさないわよぉ……♪」

ぎゅぅぅ…

「むっ…胸が……」

肩の後ろから体重をかけるように腕を回されて、背中に押し付けられました。

「ん…当ててるのよ……興奮したぁ…?」

息がかかるほどの近さで囁いてきます…
誘うような甘い声で耳をくすぐって…

「そんなことっ…」

こうされたら男の人ならイチコロなんだろうな…

でも私は女の人にされて喜んだりなんて…
でも後ろのミルクさんは私の(佐藤さんの)体の変化を見逃しませんでした。

「佐藤きゅんも…ココは…正直ねぇ…☆」

肩に回されていた右腕が、不意に体をなめるようにおりていきます。
そして…

きゅむっ…

びくっ!
「ひぁっ…!」

えっ…なっ…に…?
いま…電気が走ったような…感覚…

「あふぅ…佐藤きゅんたらぁ……そんな女の子みたいに可愛い声で鳴かれたら…」

くいっくいっ…ちーっ…ぎゅむ…くりゅくりゅ…

「んくっ…んっ…ぁっ…!」

この感覚がなんだかはわからないけど…
ミルクさんの指が『ソレ』をもてあそんでいる感触は伝わってきます。
この体は佐藤さんで…でも心は私で…
じゃあこんなに感じてるのは……あぁ…もうわかんないよ……

やがて私の意思なのかそうじゃ無いのかわからないまま、すっとミルクさんの右手に手を添え優しくほどきました。
それから振り返り、肩と足をすくうように抱きかかえます。

「やんっ…」

私の腕の上できゅっと縮こまるミルクさんは、何故か凄く可愛く、それでえっちく見えました…
ミルクさんは肩に絡めた腕を引き寄せ、私は戸惑いながらも誘われるままキスを……
何かを吸われるような感覚を受けながらも名残惜しそうに唇を離すと、更に頭にはもやがかかったみたいになって…

やがてベッドにミルクさんをゆっくり寝かせると、体にまかせてその上に覆い被さりました。

「はふ………あぁん…」

力が抜けていてもスラリと伸びた手足。
その体をを囲うように手と膝をつきその顔を見つめると、少し赤く染まった様な気がして…
その瞬間、さっき触れられた「ソレ」がまるで私に命令するかのように痺れて、気が付けばその手を取り唇を奪っていました。
口の先同士よりも近付く、舌を絡める濃厚なキスをして…

「んあっ…!」

でもそれにばかり気を取られている隙に、悪戯なミルクさんの手は「ソレ」をぐいぐいと刺激してきました。
やり返すとばかりに大きな胸に触れると

「くっ…ふぁ…ん…」

艶のある声を出してきます。
挟むように押さえてみたり、先端をつまんでみたりしていると、
びくびくと震えて刺激する手から力が抜けていくのが分かりました。

「ん…まって…」

いつのまにか夢中になってた私の手を遮るように胸をおさえるミルクさん…
なんだか恥ずかしくなって、バッと体を起こすと、

「うぅん…いいの…そのままで……だけど…こっちの方が…いいでしょ…?」

そういってボタンを外して胸を露にすると、その手で私の頭を掴んで抱き寄せました。

「わぷっ……」

生で見るとさらに凄いなぁ…

そんな変な事を考えながら、顔を押し付けられた先のぷっくりと主張する膨らみに口をつけました…

「あぁぅんっ……佐藤きゅんの…好きにしてぇ……」

ちゅ…ちうちう…ミルクさんのおっぱいを吸ってる私…
体は…違うけど。
客観的にみるとすごく恥ずかしいんだろうけど、そんなの気にならないくらい…
こみあげてくる何かがミルクさんを体を求めていました。

「もっとぉ…」

ミルクさんの右手が、私の左手を空いてる方のおっぱいへと導きました。

「ミルクさん…固く…なってます…」

手に触れた感触をそのまま口に出すと、ミルクさんはますます感じてるようで微かに震えながらもじもじと足を動かします。
ゆっくりとキスをした後、糸を引きながら唇を離してもう一度ミルクさんを見下ろしました。
じぃっと目を合わすと、ミルクさんはしばらく息を整え、我慢しきれなくなったようにいいました。

「ね……スカート…めくってみて……」

こくん…
ゆっくりとうなづいて言われるままにスカートをたくしあげると…
そこにあるはずの下着は無く、代わりにいやらしくしっとり濡れたミルクさんのお口が見えました。

「!?……」

それを見た途端、私は顔が沸騰したように熱くなって固まってしまいました。

「ね…佐藤きゅんに会うからね…下も…上も…着けてこなかったの……」

ソコに釘付けになっている私の手をきゅっと握り、下へ下へと促しながら続けます。

「佐藤きゅんに…いっぱいいっぱい…えっちぃことして欲しくてぇ…濡れちゃったのぉ……んふ…っ…!」

その言葉が終わると同時ほどに誘われた手はミルクさんのソコに触れました。
自分のもあんまり触ったことないのに…
けど…動かす指に合わせるように震える体に、受け入れるように溢れるソコに、
ミルクさんがとっても可愛くて愛しくて……そんな気がして。

ちゅるっ…ちゅるっ…

その入り口をなぞるように上下に動かすと、それにつられるようにあえぐミルクさんの吐息が強く顔にかかります。
しばらくしてから、私は指を止めました。
そして…

「ねぇ…ミルクさん…どうして欲しいですか…?」

「え…?」

「このまま…触れてるだけでいいんですか…?」

「…あ…ぅ…」

私の口からは、私からも、多分佐藤さんからもミルクさんからも信じられない言葉が出ました。
もっと…気持よく…私も…ミルクさんも…


…ある答えを導くように顔を見つめると、ミルクさんは少し戸惑った後…

「外だけっ…じゃ…だめぇっ…!」

いつもの綺麗な顔をくしゃくしゃにして、腕にすがるように抱きついてきました。
愛しくて愛しくてたまらない…最愛の恋人の様に…

「うん…して…あげるよ…」

つぷっ…

「くんっ…ぁぁ…」

華奢だけどちゃんと男の人な指を、うるんだ茂みの先に沈みこませて…

ぷちゅ…くちゅ…

もう指を二本もくわえてるその膣内をひっかくように。

「はぁっ…はぁっ…」

ちゅぽっ…その指を抜いた後は…

ミルクさんには分かってただろうし、私にもおぼろげながら分かりました。
体を重ねた体勢から、膝だちになり…

かちゃ…かちゃ…

「あ…あぁ…」

ミルクさんはもう待ちきれないって感じで…私の手を目で追います。
そして…私はズボンとトランクスをさげました。

「ね…ミルクさん…もう、止まりませんから。泣いたって…」

手を添えて、入り口にぴったりと当てて。

「や…ぁん…おっき……」

すこしじらすようにしたあと、

「許してあげませんからっ…!」

ぐいっ!

「ぃ…ぁんっ…!!…か…はぁ…」

一気に根元まで押し込みました。
息も出来ないような表情で口をパクパクさせてるミルクさん…
その一息つくまえに、抜ける間際まで腰を引いてさらに深いところまで打ち付けました。

「んひゃっ!あっ…くぅっ…あっ…あっ…やめっ…そんなっ…おっきくっ…なっ…ぁんっ!!」

ベッドが軋む音を掻き消すぐらいに淫らなあえぎ声を聞きながらも、私は腰を止めませんでした。
シーツにしがみつき、必死に堪えようとするミルクさんはやらしくて…

ぱちゅんっ…ぱちゅっ…

打ち付ける度に浮くミルクさんの腰を無意識に左手で支えていました。

「はぁっ!はぁっ…もっ…イクっ…!」
「ぅんっ!来てっ…きてぇっ…!!」

どくっ!びゅるっ…ビクン…

私の…佐藤さんの精子が…ミルクさんを満たしました…

「ぷぁ…おなか…あついのぉ…」

えっちなマンガとかに描いてたのは嘘みたい…
だって…一度イッてもまだ…

ぐっ!

「いひゃっ!?にゃ…にゃんでこんなにまだカチカ…ぁぐっ!」

ずりゅっ…

奥まで届くくらい押し込んだあと、耳の側で…

「まだ…いきますよ…」

それに反応したのか、「んっ」ていう小さな声とともに体がぴくんと揺れました。

「抜かずにっ…にゃんてぇっ…やぁんっ…はげしっ…らめっ…らめにゃっ…のっ!!泡立っひゃぅっさっ…きのっ…せーしっ…」


そこからはもう…私もミルクさんも動物みたいに、求めあって…繋がって…

何度目かな…腰が浮くような感覚のあと、急に力が抜けてミルクさんの上に倒れこんでしまいました。
その豊満な胸を枕みたいにして…






………あ…髪留め…ほどけてるや…

アパートに相応な低めの天井を見上げながら、ふっとそんなことが頭に浮かんだ。
少し眩しい蛍光灯の明かりに腕をかざしながら、そのままぐっと伸びをしよう…
…と思うと、胸から下にかかってるずっしりした重みに負け(腰に力も入らないし)体を起こせない。
くっとあごを傾けて見下ろすと…

ああそうだ。
私がくたっと寝てしまう前に感じてた、夢見心地の快感…
その他諸々を思い出した。
それに、今さらっと流したけど、アパートのベッドで寝てるっていうこの状況にも納得がいく。

はぁん…激しかったなぁ…佐藤きゅんてば…うふふ…
でも、なんだか違和感が拭えないのは何故かしらねぇ。
いつもの佐藤きゅんより『かなり』大胆だった(まぁするの自体は二回目だけど)しタフだったし…
まるで女の子みたいな仕草とか攻め方もしてきたし………

ま、気持ちいかったからいっかぁ…☆

スヤスヤ眠る佐藤きゅんの頭をかいぐりかいぐり撫で、それから心地いいくらいの疲労に身を任せた。
ぐるぐる回る思考が紅茶の葉っぱみたいに底に沈んでいく。

でも、ちょうど眠気が襲ってきた頃くらいに、玄関の方で物音がした…



ドスンッ!ばたんっ!

い……てて…ドアの隙間から家に入った瞬間に変な衝撃に襲われた。
僕の家だから僕が一番分かってる筈…
なんだけど、でも玄関はいって右手の洗面所には、すぐに倒れてくるものなんて置いてなかったよね…?

…うん…とにかく体は痛くない。
とりあえず立ち上がって……ししゃもの体では四足が自然だから、前足と後ろ足を突っ張ってみる。

けど…ん、前足が…何か…変だ。
よくよく見てみると、僕の手を突いたはずの場所にはさっきまでのししゃもの前足はなく、人間の手があった。
でもそれは僕のじゃなくて、女の子みたいな手で…少しお花の匂いがして…
な…んだか…目線が…高……!?

も…もしかして……

僕が戸惑っているその瞬間に、頭の上からよく知ってる声が降ってきた。

「は〜な〜ちゃん…?」

いつもと呼ばれる名前は違うかったけど…



「んふ……おとなしいのね…こういうの好きなのかしら…☆」

次に落ち着いた時には、異様な光景の中心にいた。

けど、状況がいまいち飲み込めない…

僕は、僕の家のベッドに寝かされている。
見慣れてる天井だからわかった。
……でもミルクさんに手を、僕に足の方を押さえ付けられて…
まぁ初めて体験する状況だった。

ここまで常識を離れていると、頭は逆に落ち着いてくるらしい。

ミルクさんは……ミルクさんか…な?
そして…僕は…さっきのミルクさんの言葉からするとはなちゃんの体…なのか……?
と、言うことは。
今僕の足を押さえてる僕は…はなちゃん…なのかなぁ…
なら僕の声に応えてくれるはず…!

「ね……んむっ!!」

と、僕の口は…まぁはなちゃんの…だけど、上からきた柔らかいモノに押さえ付けられた。
それと同時に呼び掛けるチャンスも失ってしまった…

ん…ちゅるっ…くちゅ…コクン…え…何だか苦…ぃ…?
今のは…何を……あ…れ…ぇ…?

「んふっ…ぷわ…どぉ…?美味しかったかしら…?」

あ…あ…ぇ…?

「み……るく……ひゃん……?」

お…かしいな…舌が…まだ押さえ付けられてるみたいに上手く動かない…
舌先がピリピリして…見上げたミルクさんはにやりと笑みをかえしてきた。
それを見てやっと今の柔らかいものが、その唇だってのに気が付いたんだけど、今の僕の頭にはそんな余裕がなくなっていた。

「いまのは…ね☆……えっちぃおくすりと…ね、佐藤きゅんの…せーえきなのよん…♪」

ふらふらな感じで視線を移すと、明らかに僕を見ていた「僕」は急いで目をそらした。

「え…あ…ひぁっ!?」

今度は口は押さえられてない…
不思議にこわばる背筋を一本の棒が突き刺さる様に走り抜けた。
少しだけ開かれた足の隙間に何かが触れた…ようだった。

「あ…は……にゃ…んで…すか…?」

不意にキスするくらい近付いたミルクさんの顔を見ようとしても、いつまでも焦点が合わない。
うつろな目で、ミルクさんの右手を辿っていくと…
その指先は…足の付け根と繋がって……指先が…うご…?

「ふぁぁ…んっ!!」

きゅぅぅって、足で手を挟みこんでしまった。
それが悪かったのか、ミルクさんの指はもっと膣内に刺さるように入っていった…

「ひぐぅぅ…!」

力一杯握り締めたはずのシーツは、やがて指からするりと抜けた。

「さぁ…憧れの人の家に乗り込んできた奥手少女は…いますごぉく…いやらしい…はしたない格好よ…この染みはお薬のせいかしら…それとも…せーえきのせいかしら…ねぇ☆」

その時のミルクさんは、僕からは見えなかったけど、「僕」に意地悪そうな視線を送ってたみたい…

「んふぅ〜…☆…『膜』が……まだあるのねぇん…☆」

指で膣内を掻き回され、もうそのまま意識ごと掻き回されてる感じだったから、まったくそこまで気は回らなかったけど。

「んふ…アタシはやさしいからぁ……佐藤きゅんを貸してあ・げ・る…☆」
「ふふぇ…?」

当然、そこまで頭は回らない。
が、次の瞬間に顔が爆発するくらいの衝撃を受けた。
正確には受けさせられた…のか。
僕より軽いはなちゃんの体はミルクさんにすっと持ち上げられ、ベッドに座らされた。
そこから…体育座りの様に膝を持ち上げ、さらに開いた!

「きっ…ひぁっ!!」

全身に力が入らずミルクさんに寄りかかる僕は、ただ開いた脚を『僕』に晒すしか無かったんだ…

「さぁどうぞ…この娘も佐藤きゅんに初めてを奪われるのを待ってるわ…こんなに濡らして…☆」

熱でもあるみたいに真っ赤な『僕』はただ悪戯にいじられる股を見つめ…
小さなあえぎに応える様に詰め寄ってきた。


「はぁ…はな…ちゃん…」

『僕』はそう呟く。
その体は赤く火照りながら、どこか脅えてるように震えてた…ように見えた。
それを見てると、なんだか…やっぱり、変な状況だけど…悪いことをしてる様な気がしてくる。

僕に奪われるのが…はなちゃんの…望み…?
じゃあ…このまま…形はおかしいけど…受け入れるのが…いいの?

…いや。
違うよ…違うよね。気持ちは…気持ちは…大切でしょ…?ねぇ…

「そ…れで…いい…の…?」
「!!」

思わず気持ちが出た。
その、呟く様に飛び出た僕の気持ちはしっかりと『僕』まで届いたみたいだった。
はなちゃんの動きはぴたりと止まり…
…いや、微かに…ほんの微かに震えていたかな…。
やがて、迫ってきていた体を少し引き、膝立ちの格好になった。
うつむいて、僕からは表情が見えなかったけど。

「さ…とう…きゅん…?」

不可解そうに尋ねるその声に、『僕』は応えるようにしゃくりあげた。
やがて崩れた膝立ちの間をパタパタと何かが濡らし、見上げた先では顔を両手押さえて泣く『僕』がいた。

「うわぁぁぁん…ごめっ…んっ…わたっ…わたしっ…ずっ…ずるくてぇっ…ひぐっ…はじっ…はじめてがっ…さとうっ…さんならっ…いいってっ…ごめっ…なさぁぃ…」

確かに『僕』だけど、そこにはか弱くて崩れそうなはなちゃんがいた…様に見えた。
ふっと力が抜けるように倒れこみ、僕はそれを受け止め、ミルクさんは見ていた。

その後…体が溶けるくらいの暖かさと目をつぶるくらいの眩しさと抵抗できない眠さに負けて…
意識は、離れた。





泣いて、倒れて、気を失って。
受け止めて、泣いて、気を失って。

それから二人が起きたんだけど、凄く信じがたい話をしてきた…
それを信じちゃうと、私は一体今日何をしてきたのよ…って事になるぐらい飛躍して不可思議なお話。
平静を装って出てきたわよ…出てきたけどさ…

もう…なんなのよ!!
泣きたいのはこっちだってのよ!
イライラ…するわぁ…
うう…ナンパでもしてやろうかしら…でも…佐藤きゅんがいいよう…

そんなことを考えながら歩いていた。

と。

「あ、ミルクじゃないの。」

ふとのその声にも睨むくらいに振り向くと。

「ハオ!むすっとしてちゃ美人が台無しだわよ?」
「二…ニナ…」

ニナだった。
昔同棲(ホームステイだから実家だけど)してたこともあり、女でなら一番私を解ってくれる相手だ。
何故かその笑顔に今まで溜めに溜めた気持ちが決壊した。

「うわぁぁぁん!さとうきゅんとられたぁぁぁ……うぇぇぇ…」

まぁ夜中は夜中はだけど、いい歳した女が二人抱き合って泣いてる(一方的だけどさ)状況は通常じゃ無いからニナは慌ててたな。
ごめんねニナ;;

でも。

ぽす。
頭に置かれた手の感触で我に帰った。

「ん」

穏やかな、ほんとに穏やかな笑顔を…向けてくれた。

「ニ…ナ…?」

そうか。似てたんだ。
さっきのも、これも。
昔、失恋してヤケになりかけた私を抱いてくれたあの日の笑顔に。

私は、こくりとうなずいて、ニナの手を取る。

「ねぇ…ニナ」
「ん?」
「あの日の夜みたい…だね…」
「ん。」
「私…今日はネコがいい…」
「ん。可愛がるよ…」
「うん…えへへ…」

そんな会話のあと、ゆっくりと優しい唇をねだった。




目が覚めると、僕は『僕』だった。
いや、初めから僕は僕だけど、なんていうか…やっと正常になったというか…
とにかく、僕は僕に戻ったみたいだ。
ゆっくりと体を起こし、下に寝そべるはなちゃんを抱き起こした。
その時にはなちゃんも目を覚ましたようだった…
変な安堵感を感じる間もなく、固まったままのミルクさんにそんな異常な経緯を頑張って打ち明けた。
(その間中はなちゃんはうつむいてたけど…それは仕方ないよね;;)

そうすると、こわばった表情を戻したミルクさんは短く返事したあとゆっくり帰っていった。
強いんだな…そう思いかけた僕に、ミルクさんの目元できらっと光った何かが刺さった。


そして、やっとというか何というか、僕ははなちゃんに向き直った。
所々濡れているシーツにくるまって気まずそうな顔でこちらに視線を返しては、外したりしている。

沈黙を破ったのは僕。

「み…ミルクさんに…謝らないと…ね…」

うう…何を言ってるんだ僕…

「……そう…ですね…」

なんとか会話を繋げようとする…けど…駄目だ…な、なんとか…

「とっ…とりあえずコーヒーでも…」
とか、逃げの一手をうつ。その時、その言葉を遮られた。

「さ…佐藤さんっ!!」
「はっ、はひっ!」

思わず声がうわずるのも恥ずかしい。
でも、そんなことも忘れる位の真剣な眼差しを投げ掛けてきた。

「好き…です…ずっと…ずっと好き…でした…」

はなちゃん…

後ろを向いた僕は向き直ろうとする。
けどはなちゃんは、振り返ろうとする僕をおさえた。

「そのまま…聞いてください…」


「ずっと…見てました…通りかかる時間に…掃除のふりして表で待って…」


「ししゃもちゃんが来た日なんて…一日中嬉しかったり…」


「私…ずるいですか?…でも…今…言わないと……みっ…ミルクさんにぃ……」


「奪って…ください…全部…全部…佐藤さんにあげますから…いえ、私を…貰って欲しい…から…」


僕は何も答えられないまま、その場で固まっていた。

確かに、僕もはなちゃんは好きだ。
だけど、それと同じほどミルクさんも…好きなの…かな…

はなちゃん…僕は逃げてたのかな…
もう…迷ってちゃだめなんだ…

がさがさ。
すっ。

「ごっごめんなさい!!変なこと言って…わ、私帰りますっ!」

たちすくむ僕の脇をはなちゃんが通り抜けて玄関へ向かう。
その動作がスローモーションみたいにゆっくり見えた。


…まるで…チャンスを与えてくれるように…

今…

今じゃないと…駄目なんだ…!

気が付くと僕は、後ろからはなちゃんを抱き締めていた。
僕より少し背の低い、その肩の上から手を回し、頬を出来るだけ寄せて…全身で捕まえるように。


「慰めとかなら…」
「違うよ!…うまく…言えないけど…」

今度は僕が言葉を遮る。

と、その瞬間。

シュパァァン!!

見覚えのある光が部屋を包んだ…

けど今回はなんだか違って…


ゆっくり目を開けると、景色が灰色に染まっていた。

時計は止まり、蛇口から落ちた水滴も空中で球を描いて止まった。

「なっ…!?」

はなちゃんも石の様に動かない。
その不思議な光景の中、目のまえの空間だけが不意に動いた。

「っとぉ…一応…間に合ったか…?」

ゆらぎの中心を切り裂く様に、手が出て、半身が出て…

結局その姿はMZDだった。

「なっ……え……ま…間に合った…って?」

いくつもの疑問が駆け巡り、結局口から出たのはそれだけ。
でもMZDはそんな僕を見透かすように軽く話す。

「いやぁ…なかなか大変な目に会ったみたいだな」

よく分かるなって疑問に思ったけど…それもそのはず。


「…悪りぃ!!」

MZDのせいだったんだから。
少しだけばつの悪そうな顔をしながら話す。
でも、その軽く話す内容が、僕らにとって大変な事態になってたんだからまったく…



「とりあえずだ。やっちまった以上、やれるとこは俺が責任取るわ。で、佐藤。」
「え…あ…はい。」

もう大概のことじゃ驚かないつもりだったけど、MZDの提案は更に突飛なものだった。


「時間を止めてられんのも長くねーから手短に言うぞ。『事実』を消すか?」

「……え……?」
「あぁ。」


MZDの説明によるとこうらしい。
よくこういう場合には記憶を消すんだけど、それは『対象者』が一人だった場合のみ。
今回は三人(と一匹)だし、しかも…その…しちゃってるから、『事実』を消した方が手っ取り早いそうだ。
それから、これは時間に歪みがでる可能性があるからむやみに出来ない、とか謝りながら言った。


「さぁ…俺の都合で悪いが、お前が決めてくれ。三人に聞いて回るほど時間がねぇんだ…すまねぇな…」



「事実を消すのは、全てを消すことだ。今、俺との会話も無かったことになる…やりなおしって訳だが。それにお前たちすら戻ったことに気が付かない…」



「それでいいんだな?…よし、俺はお前の思うとおりにするだけだ。……すまねぇな…佐藤…」








佐藤……さとう…さ……と…う…さん…


「佐藤さん!起きてください!」
「んわっ!?」


え…と…あれ…?
優しくただよう味噌の香りと聞き覚えのある声が僕を揺り起こす。

「もうっ、お寝坊さんですね…☆」

開きかけたまぶたの上を、つんっ、と突かれた。

あ…あれ…?

「はな…ちゃん…?」

僕のその声を聞いたはなちゃん…いつもと違うエプロンを着けてるはなちゃんは、一瞬きょとんとして、直ぐに顔をほころばせた。

「やだ☆…そんなよそよそしい言い方じゃなくて…いつもみたいに『おまえ』ってよんでください…佐藤さ…あ、私も佐藤さんだよね☆」

今度は僕がきょとんとしてしまった。

え…えぇ!?

気が付くと、目を閉じたはなちゃんの唇が迫って…こ…このままじゃ…キ…キスに…!!


「んわっ!?」

ごちんっ!!

「んひゃっ!?」

「つ…つつぅ…ふぇ…」

いきおいよく体を起こした僕は何かとぶつかった…
が、ぶつかったそっちも何故か怯んでいた。

「は…な…ちゃん…?」
「あっ…えっ…起きたんですねっ;;」

どうやら僕は起きた勢いではなちゃんとぶつかったらしく、僕がしてるようにはなちゃんも頭をさすっていた。






僕は、受け入れるのを選んだ。

だって、本当の気持ちが見付かったんだ。

まだ僕はずるいのかもしれない。

それでも…答えが間違えてても…後悔は…ないよ。




「にー!」
「ひゃあっ!」
「わっと!」

ししゃもの鳴き声と共に、ずどっとはなちゃんがかぶさってきた。

「すっ、すいませんっ!すっすぐどきま…」

うん…

ぎゅぅ…

「ひあっ…ぁ…」
「もう…すこしだけ…このままで…いいかな…」
「え…あ……は…はひっ!!」



僕は、見つけた。これからは……前を見て生きよう。









「よっし!調和調和!これで円満だろ!?」

MZDはなかばヤケになりつついぬ千代とP-CATに弁解していた。

「駄目わふ」
「ミルクちゃんはどーするにゃ」

ぴしゃりと押さえた二匹。



ー一方そのころー

「ひーっくちょん!!」
「あらあら、風邪?」

「んー…誰かに噂…されてるのかしら…」
「んふふ…体が冷えちゃったのね…もう一回戦いく?」

「あ…ん…えへへ…うん…ひゃんっ!!」









「ぐむぅ…」

「罰ゲーム!」
「ゲストのディアマンテどうぞ」

「いいのかい?俺は神でも構わずくっちまう紳士なんだぜ?」
「がっ!?」
「やらないか」
「まっ、待て。話せばわっ…あっ……アッーーー!!!」


それぞれの夜は更けていく。ひきこもごも。


「あれ、なんかメモが落ちてるよ?」
「なになに、『ミルク編近日補完』…」
「作者の言い訳にゃね」
「死ねばいいのにわふ」




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