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カナダの歴史と政治コミュの2019年カナダ総選挙

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 トルドーは首相は12月16日、憶測されていた来年早期の解散・総選挙を明確に否定し、法律で規定された10月21日に実施すると考えていいと語った。
 来年早期の解散・総選挙には、自由党内で反対の声があり、首相はこれに配慮してこの問題に決着をつけた。
 カナダ選挙法で総選挙は、最後の総選挙から5年目の10月第3月曜日に総督が実施すると定めているが、それにかかわらず総督は首相の助言を得て下院を解散することができるため、「5年目の10月第3月曜日」は最も遅い投票日を示しているに過ぎず、早期の解散・総選挙も可能である。

コメント(45)

 予定されている総選挙の投票日がユダヤ教の祭日に当たるため、連邦裁判所が日程の見直しを求めていた問題で、選挙管理委員会は7月29日、日程は変更しないと発表した。
 ステファン・ペロー選挙管理委員長は、次のように述べた。
「厳格なユダヤ教徒が投票する権利は、全てのカナダ人の投票機会を確実にすることでつり合いが取られなければならない。」
「カナダほど多様な国において、完璧な投票日などない。投票日に投票できないカナダ人は、常にいる。」
「この遅い時期において選挙の日程を変えることは望ましくないと、私は結論する。」
「これは軽々しく決められる問題ではなく、むしろ多くの人々により広範囲な投票アクセスを提供する視座においての決定である。」
 彼は、投票所を探す準備は2018年初めに始まっていると説明した。全国で13の教育委員会が、学校を投票所として提供し、10月21日を授業のない日と定めている。これらの多くは、投票日が変更された場合、学校を投票所として提供するのは困難だと回答している。
 原告のシャリ・アリエ=ベイン候補とアイラ・ウォルフィッシュさんは、投票日を10月28日に移すよう要請した。だがペロー委員長は、その日はヌナブート準州の投票日だと指摘し、異なる2つの行政区におけるダブル選挙は、有権者に誤解と混同をひき起こすと反論した。
 投票日まで3か月弱、解散・総選挙突入まで約1か月に迫った7月30日と31日、メインストリート・リサーチ社が2463人のカナダ人を対象に実施した政党支持率調査は、自由党と保守党が、そして新民主党と緑の党が並んだことを示した。
 全国では自由党34.5%、保守党34.1%、新民主党11.1%、緑の党11.1%、ケベック連合4.4%、人民党3.3%、その他1.5%となり、2月にSNC-ラバラン問題が発覚してから首位を奪われていた自由党が、ついに首位を奪回した。
 地域別に見ると、東部では自由党38.6%、保守党36.1%、緑の党13.1%、新民主党7.9%、人民党3.5%、その他0.9%と、自由党が保守党をわずかに上回っている。
 ケベックでは自由党34.5%、保守党23.3%、ケベック連合18.6%、新民主党9.3%、緑の党8.9%、人民党4.4%、その他1.0%となり、自由党がかなりの議席を獲得しそうだ。
 オンタリオでは自由党43.2%、保守党30.5%、新民主党12.5%、緑の党9.8%、人民党2.8%、その他1.2%となり、自由党がリードを拡大している。
 マニトバとサスカチュワンでは保守党54.1%、自由党19.9%、新民主党11.7%、緑の党6.7%、人民党3.0%、その他4.6%と、保守党が圧倒的に支持されている。
 アルバータでは保守党56.4%、自由党20.3%、緑の党9.7%、新民主党8.4%、人民党2.9%、その他2.2%と、保守党が圧倒的に支持されている。
 ブリティッシュコロンビアでは保守党33.8%、自由党26.3%、緑の党21.0%、新民主党14.1%、人民党3.6%、その他1.3%と、自由党は前回総選挙から支持率を9ポイント近く下げている。緑の党はブリティッシュコロンビアで信じられないほどの高支持率を集め、その勢いは新民主党を上回っている。

 メインストリート・リサーチ社のキート・マギー社長は、次のように分析した。
「自由党はオンタリオでリードを広げたが、ブリティッシュコロンビアと東部で相当数の議席を失うことになる。これらのデータから、投票日に何が起きるのかを正確に言い当てることは難しいが、自由党が過半数をわずかに超えるか、または2011年のオンタリオ州総選挙でオンタリオ自由党が過半数をわずかに下回ったのと同様の結果になるものと予想する。」
 CBCが8月12日に実施した政党支持率調査は、保守党33.8%、自由党32.8%、新民主党13.8%、緑の党10.8%、ケベック連合4.3%、人民党3.1%、その他1.5%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、自由党157(215〜106)、保守党144(183〜100)、新民主党18(42〜3)、ケベック連合14(29〜0)、緑の党4(11〜3)、人民党0(1〜0)、その他1(1〜0)(定数338議席、括弧内は最大と最小議席)となる。
 自由党は全国の支持率では保守党にわずかに劣っているが、ケベックで大きなリードを保つほか、オンタリオと東部でも保守党をリードしており、議席では上回る見込み。CBCは、自由党の勝率を59%としている。
 新民主党はケベックで支持率が1桁台に伸び悩み、議席の大多数もしくは全部を失う見込み。全国でも議席を半分以上失い、場合によっては野党第4党に転落することもありえる。
 緑の党はブリティッシュコロンビアで支持率18.2%に達するほか、東部で13.8%、オンタリオで10.7%と2桁に達し、初の複数議席獲得が濃厚である。
 ケベック連合はケベック州での支持率が18.4%に達し、公式政党ステイタスの12議席は超えられそうだ。
 新民主党は8月16日、ケベック州ロンゲイユ-サンテュベール選挙区の現職ピエール・ナンテル議員を「他党からの立候補を企図した」という理由で除名した。これを受けて緑の党は19日、ナンテル議員を次の総選挙で候補として擁立することを発表した。ナンテル議員は任期切れまで無所属議員となるが、解散・総選挙が目前に迫っており、連邦議会は総選挙後まで召集されない見込みである。

 ナンテル議員は、地球温暖化に真剣に取り組んでいるのは緑の党だけだと語った。
「気候問題を体現している人は、明らかにメイ党首だけだと思う。私が立候補するのは自分のためではなく、地球のためである。」
 新民主党のメリッサ・ブルーノ理事長は、声明で次のように述べた。
「ロンゲイユ-サンテュベール選挙区の新民主党候補ピエール・ナンテル氏は、他党から立候補する交渉をしていたことが確認されたため、候補から除外した。」
 ナンテル議員は以前にもケベック連合への移籍を噂されたが、5月に断念したという。
 緑の党のメイ党首も、ナンテル氏を擁立すると声明で発表した。
「ピエール・ナンテル氏は気候問題のリーダーで、彼は私が下院で出会った最も情熱的な議員の1人である。」

 ナンテル議員は、新民主党がケベックの79%の議席を獲得し、野党第一党に躍進した「オレンジ旋風」の2011年総選挙で初当選した。彼は2015年にも再選されたが、2位の自由党候補との差はわずか703票、3位のケベック連合候補との差は2298票という僅差の勝利だった。
 政党支持率は2019年の初め、新民主党は15%で、緑の党は7%だった。だが緑の党はその後、プリンスエドワード島州議会総選挙で野党第一党に躍進、ブリティッシュコロンビアの連邦議会補選でも勝利して意気揚々、最近の世論調査では6つのうち5つで新民主党を上回り、残りの1つも並んでいる。
 いっぽう新民主党は、ケベックで人気が振るわない。公共の場では宗教的表示をしないというフランスの「ライシテ」の影響が強く、頭にターバンを巻いたシーク教徒のシン党首が、不評をかっているのだ。新民主党はこのままでは、ケベックの議席の大多数もしくは全部を失うと予想されている。
 自由党はロンゲイユ-サンテュベール選挙区に、ケベック州で厚生・社会サービス大臣を務め知名度の高いレジャン・エベール氏を擁立すると発表した。なお緑の党は同選挙区ですでに、別の候補の擁立を決めている。

 ナンテル議員の行動は、他の新民主党議員たちの士気に大きな影響を与えるだろう。ただし、総選挙直前に緑の党に移籍した議員は過去に3人いたが、全員が落選している。
 自由党のブレア・ウィルソン議員は、総選挙での支出に不明な点があるとして党を除名され、緑の党に移籍して2008年総選挙を戦ったが、得票率は2006年の37.5%に対し、2008年は14.4%の4位で落選した。
 新民主党のブルース・ハイヤー議員は、党の方針に反し長銃登録制廃止法案に賛成投票して処罰され、2012年に離党して無所属となり、翌年緑の党に移籍して2015年総選挙を戦ったが、得票率は2011年の49.9%に対し、2015年は13.8%の4位で落選した。
 新民主党のジョゼ・ニュ=ニェメロ議員は2015年の総選挙で、選挙区の区割りが変わったせいもあり、現職なのに自動的に候補擁立されず、予備選で落選したため、緑の党から立候補した。得票率は2011年の43.3%に対し、2015年はわずか2.4%の5位で落選した。


写真:ピエール・ナンテル議員(左)とエリザベス・メイ党首(右)。
 2015年総選挙の投票率68.3%は、1993年以降で最高の数字で、1770万人が投票した。それは、投票率61.1%だった2011年総選挙より、290万人多かった。
 18〜34歳の投票率は、2011年には42.5%だったが、2015年には57.0%にのぼり、120万人増加した。選挙後の世論調査は、若年層でかなり多くの有権者が自由党に投票したことを示している。政権交代は若年層の投票が原動力になったとみられ、“youthquake”(若者による激震)と言われた。
 いっぽう55歳以上の投票率は、2015年は74.0%で、2011年より140万人増えた。投票した人は、18〜24歳は2011年より55万人多く、75歳以上は38万人多かった。自由党は2015年総選挙で、2011年より420万票多く獲得した。

 2004年、55歳以上の人は人口の31.0%で、有権者の38.0%だった。それが2015年になると、人口の38.5%、有権者の43.0%となり、ウェートが増した。いっぽう35歳未満の人は、人口で2004年の29.0%から2015年の27.5%に低下したが、有権者に占める割合は2015年に23.8%で、2011年より3ポイント増加している。
 ハーパー保守党が三度目の正直で過半数を獲得した2011年総選挙は、若年層の投票率が顕著に低かったことがわかっている。

 最近の世論調査は、自由党と保守党の支持率がほぼ同じであることを示しているが、世代別に見ると、興味深いデータが見えて来る。
 政党支持率は、18〜34歳では自由党35.0%、保守党23.5%、新民主党19.5%、緑の党13.0%。35〜53歳では保守党32.5%、自由党30.5%、新民主党14.5%、緑の党13.0%。54歳以上では保守党38.5%、自由党33.0%、新民主党11.0%、緑の党9.5%となる。高齢になるほど保守党が支持されていることが一目瞭然だが、高齢層は若年層より人口が多いものの、高齢層で保守党が自由党に保つリードより、若年層で自由党が保守党に保つリードの方が大きいことがわかる。
 そこで、もしも各年代層の投票率が2015年総選挙と同様だったら、結果は世論調査が示すようなものになるだろう。しかし若者は誘惑されやすく、投票日に誘われると投票に行かないことがしばしば起こる。もしも各年代層の投票率が2011年総選挙と同様だったら、保守党の得票率は自由党を1ポイント上回るだろう。その結果保守党は、10議席程度多く獲得することになる。ゆえに自由党は、選挙に勝つには若年層の票を掘り起こす必要がある。
 ニューブランズウィック新民主党の元候補14人が、9月3日モンクトンで記者会見を行い、離党して緑の党に移籍すると発表した。
 移籍するのはジョイス・リチャードソン、リズ・ポトバン、ウィリー・ロビショード、アルベール・ルセル、アン・リチャードソン、ジャスティン・ヤング、ジャン=モリス・ランドリー、ジェシカ・ケシー、リナ・シアソン、セシル・リシャール=エベール、フランシス・デュゲイ、ヘイリー・ダフィー、マディソン・ダフィー、ベティ・ウィアの各氏。ジョナサン・リチャードソン大西洋担当執行役員も、移籍する。
 リチャードソン氏は、連邦新民主党のシン党首が就任以来一度もニューブランズウィックを訪問していないことや、連邦議会総選挙まであと50日もないのに、新民主党はニューブランズウィックにある10選挙区のうちの一つも候補を擁立できていない事実を挙げた。
 14人は、連邦緑の党かニューブランズウィック緑の党に移籍するというが、連邦緑の党はすでにニューブランズウィック選挙区の半分以上で候補を擁立しているようで、誰が10月の連邦議会総選挙に出馬するのかは不明である。いっぽうシン党首は、ニューブランズウィック選挙区の候補として、州議会総選挙で落選したこれらの元候補たちを擁立しようとしていたふしがあるが、総選挙を目前に控え候補擁立は暗礁に乗り上げた。

 8月29日にイーコス・リサーチ社が実施した政党支持率調査は、全国で緑の党10.4%に対し新民主党7.2%、東部では緑の党13.3%に対し新民主党10.3%と、いずれも新民主党が劣っている。2018年州議会総選挙で、ニューブランズウィック緑の党が3議席を獲得しキャスティングボートを握ったのに対し、ニューブランズウィック新民主党は2003年総選挙で1議席を獲得したのを最後に、議席を取れていない。8月16日には新民主党のピエール・ナンテル議員が、緑の党からの出馬を表明した。

 連邦新民主党のメラニー・リッチャー首席報道官は、候補擁立は順調だと述べた。
「これらの人々が、シーア党首導いる保守党政権を支えて快適だというなら、それをどう説明するかは彼ら次第である。」
「我々は会議を召集し、10選挙区のうちの6つに、来週末までには候補擁立を予定している。ニューブランズウィックの有権者は誰でも、医薬品保険制度の導入にただちに取りかかり、国民の利益を常に優先する新民主党候補に投票できるようになる。」
 ニューブランズウィック新民主党の15人が緑の党へ移籍したと報じられた件について、そのうち5人が9月5日、報道を否定した。
 メラニー・リッチャー氏は、CBCのインタビューで次のように述べた。
「これは誤報だ。かなりの人数が、同意なくリストに名前を挙げられたことにショックを受けている。緑の党が間違った情報を広めているのは、問題だ。」
 フランシス・デュゲイ氏は、自分が緑の党に移籍するとジャーナリストから聞かされ、驚いたとラジオ・カナダで語った。彼は、緑の党の誰とも接触していないと言う。
「何かが間違っている。全ては土壇場の行動で、我々は何の相談も受けていない。」
 彼は、党移籍についても、緑の党への支持についても同意していないと述べた。
「私はいかなる書類にも署名することなく、名前がリストに載っていると聞かされた。」
 彼はジョイス・リチャードソン氏と2日夜に会い、ニューブランズウィックの新民主党と緑の党の合併について聞かされたと語った。
 ジャン=モリス・ランドリー氏も、今週ジョイス・リチャードソン氏から話を持ちかけられたと語った。
「私が説明されたことは・・・記者会見で新民主党と緑の党の合併を発表するということだった。」
 彼は新民主党の離反者として名を挙げられ、その理由がシン党首への不満だと報じられているのを聞いてショックを受けたと語った。
「私はそのような話に、全く同意していない。」
 だが当のジョイス・リチャードソン氏はCBCに、自分が話したのは緑の党への移籍であって、党合併ではないと明言した。
「それが合併の話でなかったことは、非常に明白である。」
 ランドリー氏、ヘイリー・ダフィー氏、マディソン・ダフィー氏、ベティ・ウィア氏の4人は5日、新民主党を支持する声明を発表した。
「我々の同意なしに名前を挙げられたことは、遺憾である。」
「我々は候補者として、最後の選挙においてニューブランズウィック新民主党を代表したことを誇りに思っている。そして新民主党を、地方においても連邦においても支援することを、誇りに思い続ける。」
 3日に記者会見を行い、14人の元候補が緑の党に移籍すると発表したのは、ジョナサン・リチャードソン大西洋担当執行役員(ジョイス・リチャードソン氏の息子)とニューブランズウィック緑の党のデビッド・クーン党首である。
 リチャードソン執行役員が、シン党首の問題点について述べた際に語った人種差別発言もまた、波紋を呼んだ。
 彼は、党員に会うためニューブランズウィック州を旅して、特に州北部では「多少の」人種差別があると述べた。
「私がアケイディアン半島にいたときから、住民の多くが非白人を多少警戒する地域が多くある。」
「この国には、避けられない人種差別の根が、まだ存在する。」
 このように15人の移籍にまつわる話は、かなり食い違っている。連邦緑の党のメイ党首は、14人の元候補のうち7人はニューブランズウィック緑の党に移籍しているという声明を発表した。そのうえで、リチャードソン執行役員の人種差別発言を一蹴した。
「緑の党には、いかなるたぐいの差別も、居場所は全くない。我々は、いかなるたぐいの性差別、イスラモフォビア、ミソジニー、ホモフォビア、ヘイトスピーチも許容しない。カナダの強さは、その多様性にある。」
「実際に、何人かの人々は人種差別的な理由で新民主党に投票しないという、恐ろしい現実がある。私は、このような態度を非難する。だからといって、新民主党を支持しない人々に向かって、その理由は人種差別だと攻撃するのは、完全に間違っている。」
 メイ党首はさらに、政策的には近いとされる新民主党の党首を、珍しく強い口調で批判した。
「シン氏が党首になって以来、私はニューブランズウィックを3度訪問している。私は実際、この7か月で全ての州と1つの準州を訪問した。私はシン党首にききたい。彼が党首になって最初の18か月は、議席がなく、私より自由だったはずなのに、なぜニューブランズウィックを訪問しなかったのか。」
 彼女はさらに、7月にニューブランズウィック州フレデリクトンで開催された、先住民団体アッセンブリー・オブ・ファーストネーションズの年次総会にも彼が欠席した事実を非難した。
「ニューブランズウィックの新民主党員が失望するのも無理はない。」
「連邦党首は、激務である。あなたには出席する義務がある。」
 新民主党のシン党首は、全ての党首はカナダの多様性を賛美すべきであり、メイ党首はなぜ元新民主党員を入党させたのか説明する必要があると語った。そしてリチャードソン発言については「彼はニューブランズウィックを見限ったのだろう」と述べた。
 新民主党のチャーリー・アンガス議員は、ツイッターでこう綴った。
「宗教の異なるリーダーの下で出馬したくないという理由で、新民主党候補が船を乗り換えるというのは、病的だ。」
 ニューブランズウィック緑の党のクーン党首は、次のように述べた。
「私が聞いたのは、無知で、有色人種や宗教の異なる人に偏見を持つ一部の人々に彼が出遭ったということだ。」
「人種偏見がカナダに存在することは、真新しいニュースではない。我々は立ち上がり、それを根絶するために働く必要がある。」
 彼はニューブランズウィックを定期的に巡っており、「大多数の」州民は寛容だと語った。
 ランドリー氏は、リチャードソン執行役員の発言は不快だが、ニューブランズウィックにはシン党首への「多少の」人種偏見があると認めた。
 ジャスティン・トルドー首相は9月11日、ソフィー・グレゴワール=トルドー夫人とともに総督公邸リドー・ホールを訪問し、ジュリー・パイェット総督に下院の解散を上奏した。総督はこれに同意し、10月21日の総選挙を公示した。第42回連邦議会は、ここに閉会する。解散時勢力は自由党177、保守党95、新民主党39、ケベック連合10、緑の党2、人民党1、CCF1、無所属8、欠員5(定数338議席)。
 法律では次の総選挙は10月21日までに実施しなければならず、選挙期間は最短でも36日以上なければならないから、遅くとも9月15日までに解散しなければならなかった。マニトバ州議会総選挙の投票日が10日だったため、2つの総選挙が同時に進行することがないよう、首相はその終了を待っていたものと思われる。
 新民主党は9月16日、ケベック州ロンゲイユ-サンテュベール選挙区の候補に、ケベック緑の党のエリック・フェルラン元党首を擁立すると発表した。新民主党は同選挙区で、現職のピエール・ナンテル議員の擁立を決めていたが、彼が緑の党に鞍替えしたため除名していた。
 両党は政策的に近いとされるが、同じ有権者を奪い合う関係でもある。両党は全国的に激しい3位争いを展開しているが、8月にナンテル議員の鞍替え、9月にはニューブランズウィックで大量の党移籍があり、両党首も激しい舌戦を繰り広げ、泥試合の様相を呈している。
 今回の動きは、環境主義者にアピールしようとする「裏切り者」ナンテル議員に対し、古巣新民主党が強烈な刺客を放ったと言えるだろう。

 緑の党のメイ党首は「(ケベック)分離主義者(separatist)は公認しない」と公言してきたが、ナンテル候補は12日「私は(ケベック)主権主義者(sovereigntist)だ」と語った。
 「主権主義」とは、レベック元首相が提唱した「主権・連合」論に由来する。それは、主権を持つケベックがカナダと対等のパートナーシップを結ぶという構想で、過去の独立運動はこの路線に沿って展開された。それでいわゆる「(ケベック)独立派」は、自身を「主権主義者」と呼ぶが、独立に反対する「連邦主義者」はこれを「分離主義者」と呼ぶ。「カナダ英語話者のためのオックスフォード・ガイド」は、separatistを「ケベック独立を嫌う人々に用いられる用語」、sovereignist(sovereigntistと同義)を「ケベック独立を支持する人々に用いられる用語」と定義している。
 メイ党首は13日、記者会見で次のように述べた。
「彼は分離主義者ではない。彼はカナダの文脈における、強いケベック人である。」
「この国を解体するために働く候補は、我が党にはいない。」
 緑の党広報も、声明を発表した。
「緑の党には、ケベックの独自の文化に対する最大級の敬意があるが、独立運動を支持することはない。我が党は、投票を強制しない。個々の議員は、この問題に関し独自の見解を表明することが許されている。」
 ナンテル議員は、ラジオでこう語った。
「緑の党は両手を広げ、ケベック国家主義者、ケベック主権主義者などあらゆる種類の人々を歓迎する。なぜなら我々は、次の連邦議会選挙は気候問題に関する国民投票だと考えているからだ。」


写真:ジャグミート・シン党首(左)とエリック・フェルラン候補(右)。
CBCのVote compassです。興味ある方はどうぞ。
https://votecompass.cbc.ca/canada/
 CBCが9月27日に発表した政党支持率調査は、保守党33.9%、自由党33.7%、新民主党13.9%、緑の党10.1%、ケベック連合4.9%、人民党2.8%、その他0.6%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、自由党162(106〜219)、保守党139(97〜182)、新民主党17(1〜44)、ケベック連合15(4〜34)、緑の党4(1〜7)、人民党1(0〜1)、その他0(0〜1)(定数338議席、括弧内は最小と最大議席)となる。
 トルドー首相が、過去に顔を黒く塗った「ブラックフェイス」問題で謝罪に追い込まれたが、支持率に大きな影響はなく、自由党は依然として支持率では劣っているものの最多の議席を獲得しそうで、CBCはその勝率を64%としている。人民党は、ベルニエ党首が議席を獲得できそうだ。

 政策的には近いとされる新民主党と緑の党は、激しい3位争いを繰り広げている。両党は候補者の奪い合いから、党首どうしの激しい非難合戦をひき起こした。そして争いは今、どの党も単独過半数に満たない可能性が高い現状において、どの党といかなる条件で連立を組むかという新たなステージに移行している。
 緑の党のメイ党首は7月、気候温暖化への対策を取るならどの党でも支援すると述べ、9月25日には「パイプライン延伸を推進するなら支援しない」と断言した。いっぽうシン党首は、保守党のシーア党首が2005年に同性婚を非難した映像を見て「シーア党首を総理の座に就けてはならないと、強く確信する。それが正しいと信じるメイ党首とは異なり」と語った。
 メイ党首はあえて保守党を除外しないことで、幅広い選択肢を保持したように見えるが、実際には自由党と保守党のどちらが政権に就いても、パイプライン延伸を覆すことは難しい。いっぽうシン党首が「パイプライン延伸に反対する州に、それを押し付けることはしない」と述べたのは、自党はあくまでも反対するポーズを維持するが、与党による押し付けは黙認する道を残したようにも思える。彼は「少数政権を支える条件として、比例代表制の導入を求める」とも述べたが、選挙制度改革はすでに一度断念しており、トルドー氏が首相の場合は難しいだろう。
 重要なことは、どの党も過半数に達しないことが確定したわけではないということである。いずれかの党が単独過半数になれば、新民主党と緑の党による連立公約合戦は空手形に終わる。さらに政権与党が過半数に達しない場合、過半数に必要な議席を両党が持っていなければ、パートナーになることはできない。
 緑の党の予想議席は4で、最大でも7しかない。緑の党がパートナーになれるのは、政権与党の不足議席が1〜4の場合に限られ、可能性としては低い。新民主党なら、予想議席は17、最大で44あり、パートナーになれる可能性はありそうだ。
 新民主党と緑の党の論争は、表向きは連立パートナーになるための条件闘争だが、実際には左派有権者の争奪戦だから、連立するための条件が自由党もしくは保守党にとって受諾可能かどうかは、問題の本質ではないのだろう。CBCは、両党があまりに無理難題ばかり言うので「犬が尾を振ることはあっても、尾が犬を振ることはあるのか」と報じた。
 新民主党と緑の党がオンタリオとブリティッシュコロンビアで激戦を展開し、無理難題合戦を繰り広げているとき、ケベックだけに候補を立てているケベック連合が十数議席を獲得することが見込まれている。ケベック独立派である同党との提携は、禁じ手とされてきた。だがハーパー政権の1期目は、少数政権だったにもかかわらず案件ごとに提携相手を変える「パーシャル連立」で乗り切り、予算案もケベック連合の合意を得て成立させた。
 自由党と保守党のどちらが政権与党になっても、提携パートナーとして3党のうちよりよい条件の党と組むという選択肢を、保持することができる。
 新民主党の機関紙「プレス・プログレス」は9月30日、同紙アンケートに応じた緑の党候補の半数以上にあたる35人が、妊娠中絶に関する議会での投票は自由で、各個人の信条に基づくものであるべきだと回答した事実に基づき、中絶禁止の法制化に緑の党は本気で反対していないとするレポートを発表した。
 緑の党のメイ党首はかつて、所属議員に院内での投票について強制することはできないと述べ「率直に言って、それはよいことだと思う」と発言した。緑の党から当選したのは長い間メイ党首一人だけで、他党を離党した議員が選挙前に緑の党の支援を受けるため入党することはあったが、それらの議員たちは再選されなかったから、これまで党議拘束は問題にされなかった。
 だが新民主党のシン党首は、その発言に噛みついた。
「それが彼女の発言である。彼女はその発言を、フォトショップで修整できない。それが、彼女が言った実際の発言である。」
 彼は、メイ党首が市場で使い捨てのコップを持っていた写真を、再利用できるコップに修整して発表した事実を皮肉った。
「緑の党は、フォトショップで修整するのが大好きだ。だが彼女らは、言ったことを修整することができない。そして本当のところ、真実は、女性の産まない権利について明確な立場を持たない緑の党の候補がいるということである。」
「新民主党については、何の疑問もない。全ての新民主党員は、女性の選択する権利を確信する。そしてもし我々がそうでないなら、もはや新民主党ではないだろう。」

 これを受けてメイ党首は2日、シン党首があたかも、緑の党は中絶する権利について確固たる信念がないとか、分離主義を容認しているとか、保守党政権を支える用意があるとかの誤ったレッテルを貼ろうとしていると述べ、「彼への忍耐を失いつつある」と非難した。
「新民主党はちょっとヤケになっているようですが、感心しません。」
 緑の党は新民主党に、記事の誤りを訂正し謝罪するよう要求したが、何が誤っているのかについては指定しなかった。またニュースメディア評議会にも苦情を申し入れると述べたが、プレス・プログレスはニュースメディア評議会に加盟していない。
 緑の党広報のジョン・チェネリー氏も、次のように述べた。
「これは、報道の誠意の欠如を示す悪意ある攻撃だ。」
「プレス・プログレスがジャーナリズムとしてではなく、政党のプロパガンダとしての働きを見せているのは、残念なことだ。新民主党がこのような嘘を広めていることに、幻滅している。」
 なお自由党のメラニー・ジョリー議員(観光・公用語・フランコフォニー担当大臣)も、同紙のレポートについてツイッターにコメントを書いているが、緑の党はなぜか新民主党だけを問題にしている。
 オンタリオ州にあるブラントフォードの市民が偉大な背番号99を誇っていたのは、それほど昔のことではない。だがブラントフォード市民は今、もう一つの偉大な99を祝うことになりそうだ。それはブラントフォードに住むジョン・ターメル氏が、世界で最も多くの選挙に立候補した人物として、自身の持つ世界記録を99回に更新しようとしているからである。そして彼はまた、世界で最も多くの選挙に落選した人物でもあり、自身の持つ記録を98に更新することが確実視されている。残りの1回は、立候補していた下院補選が下院解散のため中止になったもので、彼は一度も当選していない。

 ターメルは1951年、ケベック州ルイーヌに生まれた。オタワのカールトン大学で電気工学を専攻するが、ゲーム理論にのめり込み、ポーカーやブラックジャックに夢中になった。彼は賭博に関する法律を学び、法の抜け穴を突いたつもりで私営賭博を開帳した。だが私営賭博は違法であり、懲役刑を受け、大学助手の職も失った。しかし彼は1979年、下院選挙にオタワ・ウェスト選挙区から最初の立候補を果たす。彼が掲げた政策は、ギャンブル解禁、売春自由化、ドラッグ解禁、利息の廃止と地域通貨LETSの導入で、社会信用党からの立候補を望んだが、党から拒否され「無所属社会信用党」を称した。
 1982年には、社会信用党党首選のプロセスに異議を唱えたため除名され、「クリスチャン信用党」を創設し、そこから2度立候補した。だが党は、翌年解散した。
 1984年には、基盤の弱い緑の党のオタワ支部を支配しようと試み、下院選、下院補選、州議会補選、ネピアン市長選とあらゆる選挙での公認を模索したが、得られず無所属で立候補し、85年に党を除名された。
 1985年には「オンタリオ社会信用党」を結成したが、カナダや諸州の社会信用党とは何の関連性もないものだった。彼はそこで3度立候補した。
 1993年には「廃止論党」を設立し、同年の連邦議会選挙で80人の候補を擁立した。これはケベック連合の75人、緑の党の79人を上回り、議席のない党としては3番目に多かったが、得票率0.07%に終わり、全員落選した。党は96年に解散した。
 ターメルは1996年、下院補選に41回目の立候補を果たし、翌年のギネスブックに初めて「世界で最も多く立候補した人物」として掲載された。
 彼は2002年、マリファナ党党首選への立候補を表明した。だがそれが報じられると、党首選は取りやめになった。2003年には、消滅したリバタリアン党を再興しようと試みたが、それを知ったかつての党員たちが「リバタリアン党」の名を再登録して阻止した。
 2011年には「貧民党」を結成した。この党の特長として、アルゼンチンのデ・ラ・ルア大統領に倣った経済政策、特に公務員に国債を支給することが挙げられる。この党はオンタリオ州議会選挙に、候補者を2011年に2人、2014年に3人、2018年に2人擁立し、まだ活動している。

 法廷での証言によると、ターメルは1990年代にはいくつかの違法カジノを経営し、100人の従業員を雇い、年間100万ドル以上の利益を上げたという。2003年にオンタリオ州議会補選でブラントフォードから出馬して以来、この地が気に入り定住している。
 彼は仕事の合間に何度か立候補するが、選挙に立候補するのは人々が思うほど難しくないと言う。かつて立候補には1000ドルの供託金を必要としたが、2017年に違憲判決が出て廃止された。今では、必要とされる推薦人100人の署名を集めて回るだけである。
 候補者や党首の討論が開催されると、彼は戻って来て、自分が招待されない討論会を潰しにかかる。自称エンジニアの彼は、白いヘルメットを被り、ロイヤルストレートフラッシュを表したネクタイを締め、拡声器で大声で話すので、しばしば主催者や警察に排除された。
 ターメルは、こう語る。
「あきらめた者は、決して勝者にはならない。勝者は決してあきらめない。」
  【ジョン・ターメル氏の立候補全記録】
 ※州の記載がないものはオンタリオ州。%は得票率。★は最高記録。
1.1979年5月22日 下院選(オタワ選挙区)(無所属)193票 0.35%
2.1980年2月20日 下院選(オタワ選挙区)(無所属)62票 0.13%
3.1980年3月24日 下院補選(ケベック州フロンテナック選挙区)(無所属)101票 0.31%
4.1980年9月8日 下院補選(ハミルトン・ウェスト選挙区)(無所属社会信用党)88票 0.28%
5.1980年11月10日 オタワ市長選(無所属)1928票 2.21%
6.1980年11月20日 州議会補選(カールトン選挙区)(無所属社会信用党)95票 0.39%
7.1981年3月19日 州議会選(オタワ・センター選挙区) (無所属社会信用党)376票 1.48%
8.1981年4月12日 下院補選(ロンドン・ウェスト選挙区)(無所属)37票 0.08%
9.1981年5月4日 下院補選(ケベック州レビ選挙区)(無所属)172票 0.51%
10.1981年8月17日 下院補選(スパダイナ選挙区)(無所属)69票 0.31%
11.1982年6月17日 州議会補選(ハミルトン・ウェスト選挙区)(クリスチャン信用党) 173票 0.75%
12.1982年10月12日 下院補選(ブロードビュー-グリーンウッド選挙区)(クリスチャン信用党)19票 0.07%
13.1982年11月4日 州議会補選(ヨーク・サウス選挙区)(無所属)66票 0.27%
14.1982年11月8日 グロースター市議会選(無所属)1193票 1.27%
15.1983年8月29日 下院補選(ノバスコシア州セントラル・ノバ選挙区)(無所属)46票 0.15%
16.1983年12月15日 州議会補選(ストーモント-ダンダス-サウス・グレンガリー選挙区)(無所属)97票 0.46%
17.1984年9月4日 下院選(ビーチス選挙区)(無所属)112票 0.31%
18.1984年12月13日 州議会補選(オタワ・センター選挙区)(無所属)90票 0.46%
19.1985年5月2日 州議会選(オタワ・センター選挙区)(無所属)364票 1.33%
20.1985年11月12日 ネピアン市長選(無所属)1405票 7.25%★
21.1986年4月17日 州議会補選(ヨーク・イースト選挙区)(オンタリオ社会信用党)44票 0.17%
22.1986年8月14日 州議会補選(コックレイン・ノース選挙区)(オンタリオ社会信用党)75票 0.74%
23.1986年9月29日 下院補選(ケベック州サン-モリス選挙区)(無所属)104票 0.31%
24.1987年7月20日 下院補選(ハミルトン・マウンテン選挙区)(無所属)166票 0.50%
25.1987年9月10日 州議会選(オタワ・センター選挙区)(無所属)598票 2.03%
26.1988年3月31日 州議会補選(ロンドン・ノース選挙区)(無所属)115票 0.35%
27.1988年11月3日 州議会補選(ウェランド-ソロルド選挙区)(無所属)187票 0.65%
28.1988年11月14日 オタワ市長選(無所属)3123票 3.88%
29.1988年11月21日 下院選(オタワ・センター選挙区)(無所属)152票 0.31%
30.1990年8月13日 下院補選(オシャワ選挙区)(無所属)50票 0.20%
31.1990年9月6日 州議会選(オタワ・センター選挙区)(無所属)160票 0.53%
32.1990年12月10日 下院補選(ヨーク・ノース選挙区)(無所属)97票 0.23%
33.1991年11月12日 オタワ-カールトン区長選(無所属)3574票 1.81%
34.1993年10月23日 下院選(ケベック州フロンテナック選挙区)(廃止論党)195票 0.63%
35.1993年12月2日 州議会補選(エセックス・サウス選挙区)(無所属)84票 0.46%
36.1994年3月17日 州議会補選(ビクトリア-ハリバートン選挙区)(無所属)123票 0.52%
37.1994年11月14日 オタワ-カールトン区長選(無所属)4563票★ 2.35%
38.1995年2月13日 下院補選(オタワ-バニエ選挙区)(廃止論党)46票 0.23%
39.1995年6月8日 州議会選(オタワ・センター選挙区)(無所属)173票 0.61%
40.1996年3月25日 下院補選(エトビコーク・ノース選挙区)(廃止論党)75票 0.28%
41.1996年6月17日 下院補選(ハミルトン・イースト選挙区)(廃止論党)21票 0.08%
42.1997年6月2日 下院選(オタワ・ウェスト-ネピアン選挙区)(無所属)211票 0.39%
43.1997年9月4日 州議会補選(オタワ・ウェスト選挙区)(無所属)201票 0.93%
44.1997年11月10日 オタワ-カールトン区長選(無所属)4126票 2.50%
45.1998年9月14日 下院補選(ケベック州シェアブルック選挙区)(無所属)97票 0.27%
46.1999年4月12日 下院補選(ウィンザー-セント・クレア選挙区)(廃止論党)106票 0.33%
47.1999年6月3日 州議会選(オタワ・ウェスト-ネピアン選挙区)(無所属)94票 0.20%
48.1999年11月15日 下院補選(ケベック州ハル-アイルマー選挙区)(無所属)51票 0.29%
49.2000年9月7日 州議会補選(アンカスター-ダンダス-フランボロー-アルダーショット選挙区)(無所属)80票 0.24%
50.2000年9月11日 下院補選(ノバスコシア州キングス-ハンツ選挙区)(無所属)221票 0.81%
51.2000年11月13日 オタワ市長選(無所属)677票 0.27
52.2000年11月27日 下院選(オタワ・ウェスト-ネピアン選挙区)(無所属)89票 0.17%
53.2001年3月22日 州議会補選(パリー・サウンド-マスコカ選挙区)(無所属)61票 0.23%
54.2002年5月2日 州議会補選(ダッファリン-ピール-ウェリントン-グレイ選挙区)(無所属)120票 0.37%
55.2003年10月2日 州議会選(ブラント選挙区)(無所属)295票 0.66%
56.2003年11月10日 オタワ市長選(無所属)1166票 0.63%
57.2004年5月13日 州議会補選(ハミルトン・イースト選挙区)(無所属)120票 0.50%
58.2004年6月28日 下院選(ブラント選挙区)(無所属)371票 0.69%
59.2005年3月17日 州議会補選(ダッファリン-ピール-ウェリントン-グレイ選挙区)(無所属)85票 0.31%
60.2006年1月23日 下院選(ブラント選挙区)(無所属)219票 0.36%
61.2006年3月30日 州議会補選(ネピアン-カールトン選挙区)(無所属)112票 0.37%
62.2006年9月14日 州議会補選(パークデイル-ハイパーク選挙区)(無所属)77票 0.27%
63.2006年11月13日 ブラントフォード市長選(無所属)226票 0.84%
64.2007年2月8日 州議会補選(バーリントン選挙区)(無所属)90票 0.40%
65.2007年9月17日 下院補選(ケベック州ウートルモン選挙区)(無所属)30票 0.13%
66.2007年10月10日 州議会選(ブラント選挙区)(無所属)272票 0.57%
67.2008年9月8日 下院補選(ゲルフ選挙区)(無所属)解散のため中止
68.2008年10月14日 下院選(ゲルフ選挙区)(無所属)58票 0.10%
69.2009年3月5日 州議会補選(ハリバートン-カワーサ・レイクス-ブロック選挙区)(無所属)92票 0.26%
70.2009年9月17日 州議会補選(セント・ポールズ選挙区)(無所属)51票 0.19%
71.2009年11月9日 下院補選(ケベック州オシェラガ選挙区)(無所属)71票 0.39%
72.2010年2月4日 州議会補選(トロント・センター選挙区)(無所属)67票 0.25%
73.2010年3月4日 州議会補選(オタワ・ウェスト-ネピアン選挙区)(無所属)230票 0.81%
74.2010年10月25日 ブラントフォード市長選(無所属)61票 0.22%
75.2011年10月6日 州議会選(ブラント選挙区)(貧民党)87票 0.20%
76.2012年3月19日 下院補選(トロント-ダンフォース選挙区)(無所属)57票 0.20%
77.2012年9月6日 州議会補選(キッチナー-ウォータールー選挙区)(無所属)23票 0.05%
78.2013年8月1日 州議会補選(オタワ・サウス選挙区)(貧民党)64票 0.20%
79.2013年11月25日 下院補選(トロント・センター選挙区)(無所属)75票 0.22%
80.2014年2月13日 州議会補選(ソーンヒル選挙区)(貧民党)49票 0.18%
81.2014年6月12日 州議会選(ブラント選挙区)(貧民党)61票 0.12%
82.2014年6月30日 下院補選(トリニティ-スパダイナ選挙区)(無所属)141票 0.41%
83.2014年10月27日 ブラントフォード市長選(無所属)133票 0.55%
84.2014年11月17日 下院補選(ホイットビー-オシャワ選挙区)(無所属)107票 0.30%
85.2015年2月5日 州議会補選(サドバリー選挙区)(貧民党)118票 0.46%
86.2015年9月3日 州議会補選(シムコー・ノース選挙区)(貧民党)46票 0.12%
87.2015年10月19日 下院選(ブラントフォード-ブラント選挙区)(無所属)164票 0.26%
88.2016年2月11日 州議会補選(ホイットビー-オシャワ選挙区)(貧民党)11票 0.03%
89.2016年9月1日 州議会補選(スカボロー-ルージュ・リバー選挙区)(貧民党)37票 0.15%
90.2016年11月17日 州議会補選(オタワ-バニエ選挙区)(貧民党)51票 0.17%
91.2017年4月3日 下院補選(オタワ-バニエ選挙区)(無所属)153票 0.50%
92.2017年6月1日 州議会補選(スー・セント・メリー選挙区)(貧民党)47票 0.18%
93.2017年12月11日 下院補選(スカボロー-エイジンコート選挙区)(無所属)145票 0.80%
94.2018年6月7日 州議会選(ブラントフォード・ブラント選挙区)(貧民党)59票 0.10%
95.2018年6月18日 下院補選(シクティミ-ル・フジョール選挙区)(無所属)98票 0.41%
96.2018年10月22日 ブラントフォード市長選(無所属)128票 0.53%
97.2018年12月3日 下院補選(リーズ-グレンビル-サウザンド・アイランド&リドー・レイクス選挙区)(無所属)111票 0.38%
98.2019年2月25日 下院補選(ヨーク-シムコー選挙区)(無所属)64票 0.40%
99.2019年10月21日 下院選(ブラントフォード・ブラント選挙区)(無所属)
 市民団体「リードナウ」は5000人の運動員を動員し、2015年連邦議会選挙において、保守党政権を打倒するための戦略的投票を呼びかけた。彼らの考えは、保守党候補を落選させるため、左派有権者は自由党か新民主党のより有力な候補に票を集中させようというものだった。
 彼らは、戦略的投票は効果があったと主張する。その根拠として、彼らが重点的に運動した11選挙区において、9人の推薦候補が当選した事実を挙げる。

 ライアソン大学で政治学を教えるダニエル・ルーベンソン教授は、オンタリオ州パークデイル-ハイパーク選挙区において、著名な現職女性議員ぺギー・ナッシュ候補が自由党の新人に敗れた事実を挙げ、戦略的投票は予想された以上に自由党の得票を上積みしたと考える。
 彼によると、男性より女性、貧困層より富裕層、低学歴より高学歴、若年層より高齢層がより戦略的投票に走りやすいという。

 だが政治評論家のブライアン・ブレゲット氏は、戦略的投票の与える効果を否定する。彼が2015年連邦議会選挙を研究した結果、戦略的投票を考慮する有権者はせいぜい10〜15%、実際に戦略的投票をする有権者は5%以下であり、新民主党候補は戦略的投票により平均3ポイントしか上乗せできなかったと結論づけた。

 マギル大学で政治学を教えるエリザベス・ギデンギル教授は、有権者がしばしば支持政党の勝率を過大評価する事実を指摘する。彼女は、自分の支持する候補が世論調査で3位か4位につけているとき、その候補の当選可能性について尋ねると、かなり多くの人が「可能性はまだ半々だよ」と言うのを聞いた。
 また彼女は、有権者が党派心を克服することが非常に難しいことを挙げた。心理学者は、フットボールのファンは贔屓チームの勝利に貢献するためではなく、忠誠心を表現するために応援しているという。同様に有権者は、正しい政策を実現するためではなく、支持政党への忠誠心や愛国心を「表現」するために投票しているのだという。その原因として、投票所が非常に近いので投票のためのコストが低く、また1票の価値が極めて低いので誤った選択の与える影響が微々たるものであることから、有権者は自分の投票が死票になることなど実は恐れてなく、むしろ自分の「信仰」に忠実であろうとするというのである。
「それゆえ、たとえ彼らの支持政党が選挙区において、世論調査で3位か4位につけていたとしても、彼らはまだ自分が純粋に支持する党に投票したいのではないだろうか。」
「それは『表現的投票』と呼ばれている。人々は、自分の本当の好みを表現したいのだ。」
大川隆法氏がトルドー首相とシーア党首の守護霊に取材
https://the-liberty.com/article.php?item_id=16357
 CBCが10月16日に発表した政党支持率調査は、保守党32.2%、自由党30.9%、新民主党18.2%、緑の党8.3%、ケベック連合6.9%、人民党2.6%、その他0.9%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、自由党130(87〜184)、保守党130(86〜174)、新民主党38(17〜63)、ケベック連合38(22〜49)、緑の党2(1〜6)、人民党1(0〜1)、その他0(0〜1)(定数338議席、括弧内は最小と最大議席)となる。
 テレビ討論では新民主党のシン党首が高い評価を受け、ケベック連合とともに支持率を大きく上げた。対照的に二大政党は、9月から支持率を低下させ続けている。
 総選挙まであと6日しかないが、どの党も過半数に達しない可能性が非常に高い。CBCは自由党少数政権の確率を48%、保守党少数政権の確率を48%、自由党過半数の確率を8%、保守党過半数の確率を3%と予測した。

 予測では、自由党・保守党ともに過半数に40議席足りない。ところが、それ以外の党はどれも40議席に足りないので、予測より多くの議席を獲らないと安定政権は築けないことになる。
 新民主党は、保守党政権を阻止するため自由党と連立すると公言している。緑の党は「地球温暖化と戦う党ならどことでも連立する」と述べているが、予測で2議席、最大でも6議席にしかならないので、相手にはされないだろう。
 連邦議会に議席を持つ党では、右派政党は保守党と人民党だけで、ほかは全部左派政党である。自由党は数多い選択肢の中から、選挙結果と相手の条件次第で好きなパートナーを選べるが、人民党は保守党を追放されたベルニエ氏の党だから、保守党には組めるパートナーはいない。自由党は保守党に大差をつけられないかぎり、有利な条件にある。
 自由党が第一党なら、過半数割れでも政権続投となる。保守党にパートナーがいない以上、自由党はたとえ第二党でも、他党と組んで過半数になれるなら政権を維持できる。慣例上、与党が敗北したという決定的な結果が出ないかぎり、首相は辞任する必要がない。首相が辞任していない段階で、総督が別人を首相に指名することはない。この場合は、政権続行して議会が召集される。議会冒頭でスローン・スピーチ(所信表明演説)が行われ、その信任投票を行うが、不信任された場合は、理論上内閣総辞職と解散・総選挙の2つの選択肢がある。総選挙が終わったばかりで新たな総選挙は許可されないだろうから、実際は総辞職になるだろう。
 CBCが10月18日に発表した政党支持率調査は、保守党31.7%、自由党30.8%、新民主党18.8%、緑の党8.3%、ケベック連合6.9%、人民党2.6%、その他0.9%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、自由党133(89〜187)、保守党123(82〜171)、新民主党41(16〜65)、ケベック連合38(22〜50)、緑の党2(1〜7)、人民党1(0〜1)、その他0(0〜1)(定数338議席、括弧内は最小と最大議席)となる。CBCは自由党少数政権の確率を48%、保守党少数政権の確率を40%、自由党過半数の確率を11%、保守党過半数の確率を2%と予測した。
 二大政党は2日前よりさらに支持率を下げ、過半数ラインとされる40%を大きく下回っている。情勢は2日前から大きく動いてはいないが、重要なポイントが二つある。一つは、保守党の単独過半数がほぼ不可能になったことであり、連立パートナーがいないため窮地に陥った。もう一つは、左派諸党の予想獲得議席がわずかに増えたため、自由党は新民主党またはケベック連合の一方と提携すれば過半数を得られることである。

 どの党も過半数に達しない可能性が高くなり、記者たちは主要政党党首たちに連立の意向を尋ねた。トルドー首相は連立に関するあらゆる質問への回答を避け、17日にケベック州トロワリビエールで次のように述べた。
「気候変動と戦い、家族に投資する激務を続けることができるようになるための、強力な自由党政権が再選されることに、我々は集中している。選択は、非常に非常に明確だ。」

 保守党のシーア党首は17日、オンタリオ州ブランプトンでインタビューに答え、保守党は他党と連立しないし、自由党は第一党になれなかった場合は連立して政権にしがみつくべきでないと語った。
「我々は、強力な保守党過半数政権を築けるようカナダ人にお願いしている。」
「近代カナダ史においては、最も多くの議席を得た党が政権を築くことになっている。」
「他党もまた、最も多くの議席を得た党が政権を築くという事実を尊重すると、我々は期待している。」
 実際には2017年ブリティッシュコロンビア州議会選挙のように、第一党が与党になれず連立政権が樹立された例はいくつか存在する。連邦政治では連立政権が成立した例はないが、1925年下院選で保守党は第一党となったにもかかわらず、自由党が進歩党の閣外協力によって政権を維持した例がある。
 保守党は支持者に電子メールを送り、「自由党は選挙に勝つことなく政権を握る方法を計画している」「カナダで民主主義を破壊する計略」と警告していたことが判明した。

 新民主党のシン党首は「保守党政権成立を阻止するため、必要なことは何でもする」と述べ、自由党との連立に前向きな姿勢を明らかにしてきた。彼はオンタリオ州ウェランドで、次のように述べた。
「カナダ人の60%以上は、保守党に投票しない。それゆえ、保守党が得票率40%以下で議会の過半数を得られると思うのは間違っている。」
「連立は禁句ではない。」
 「保守党政権成立を阻止する」というのは、決して嘘や冗談ではないだろう。だが彼の本心はむしろ逆で、左派有権者の票が保守党政権を阻止するため自由党に流れて行くことを阻止することであり、自由党との連立を明言することで、新民主党への投票は保守党政権阻止の目的に適うとアピールすることだろう。

 緑の党のメイ党首はバンクーバー島で、連立についてこう語った。
「選挙が終わるまで、連立について語るべきではない。」
「カナダ人のため、議会を機能させる方法について我々は備えていた。そのため、少数政権で議会を機能させる方法を見つけたとシーア党首が言うのは、間違っている。自由党とのみ提携すると言うシン党首は、間違っている。」

 ケベック連合のブランシェ党首は16日、政権支持はケース・バイ・ケースであり、制度的に政権を支援することには興味がないと述べた。
「ケベック連合が制度的に、政権の支援や連立はしないことに疑問の余地はない。」
「それがケベックにとってよいことなら、我々も追随する。保守党が我々の税還付を支持するなら、我々も追随する。もしもケベック連合が炭素税廃止を支持すると保守党が思っているなら、そうはならないだろう。」
ポーランドボールが解説するカナダ総選挙
http://polandball.blog.fc2.com/blog-entry-7430.html
 CBCが10月20日に発表した政党支持率調査は、保守党32.0%、自由党31.8%、新民主党18.0%、緑の党7.7%、ケベック連合7.1%、人民党2.5%、その他1.0%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、自由党136(90〜190)、保守党124(82〜171)、ケベック連合40(21〜50)、新民主党36(16〜62)、緑の党1(1〜6)、人民党1(0〜1)、その他0(0〜1)(定数338議席、括弧内は最小と最大議席)となる。CBCは自由党少数政権の確率を48%、保守党少数政権の確率を37%、自由党過半数の確率を12%、保守党過半数の確率を2%と予測した。

 トルドー首相が議会を解散し選挙戦が始まったとき、自由党と保守党の支持率は33.8%だった。連邦議会選挙では、得票率38.5%未満で過半数を制した例はない。だが新民主党とケベック連合が低迷していたため、二大政党には過半数への望みがあった。しかし選挙戦終盤で新民主党とケベック連合が支持率を上げたため、過半数獲得の可能性は非常に低い。
 保守党は接戦選挙区の全部を獲らないと過半数に達しないのに対し、自由党は過半数獲得の望みをまだ残している。あらゆるデータは、明日の総選挙は自由党が過半数割れながら政権を維持することを示している。
 ケベック連合は、1993年から2008年までケベックの第一党であり続けたが、2011年総選挙で4議席の惨敗を喫し、その後所属議員が多数離党して「数年で消滅する」と言われてきた。だが民族主義を前面に掲げたアピールがケベックの有権者に受け、選挙戦終盤でケベックでの支持率を序盤より10ポイント以上も上げ、かつての野党第二党とケベック第一党の地位を奪回できそうだ。
 新民主党は、シン党首が英語のテレビ討論で高い評価を受け、支持率を5ポイントほど上げたことで、ブリティッシュコロンビア・オンタリオ・東部で議席を上積みし、30議席以上獲れそうだ。ケベックでは依然として苦戦しているものの、一時は全滅と言われていたが、2人程度は当選の見込みが出て来た。選挙期間中に運動せずカジノで遊んで当選し有名になったルース・エレン・ブロソー議員は、今では下院院内総務だが、ケベック州が選挙区である。
 緑の党は、過去の総選挙にはなかった高支持率だが、新民主党とケベック連合の左派2党が支持率を上げたのに対し、一時は2桁あった数字をじりじりと下げ、当選確実な候補は1人しかいない。
 (1) 3つの主戦場
 今回総選挙には、3つの主戦場がある。トロント郊外、ケベックのフランス語地域、ブリティッシュコロンビアのローワー・メインランドである。
 GTAと呼ばれるグレーター・トロント・エリアは、カナダ10州のうちオンタリオとケベックを除く8州より多くの議席を持つ。トロント市内は自由党の牙城だが、トロント郊外は自由党と保守党が近年接戦を続けており、ほんのわずかな風向きで結果が大きく動く。これら接戦選挙区の大多数を自由党が運良く掴むことができれば、過半数への道が拓けて来るが、保守党に相当数の議席を譲った場合、どちらが勝っても少数政権になるだろう。
 ケベックでの政党支持率は、自由党32.9%、ケベック連合30.3%、保守党14.8%、新民主党12.6%、緑の党6.3%、人民党2.4%となっている。ここから導き出される予想獲得議席は、ケベック連合21〜50、自由党23〜46、保守党4〜14、新民主党0〜2、人民党0〜1、緑の党0〜0(定数78議席)である。
 世論調査は、ケベック州のフランコフォン有権者の間で、ケベック連合が自由党に決定的とも言える15ポイントのリードを保っていることを示した。その事実は、ケベック州の大多数を占めるフランス語地域において、ケベック連合が自由党に有意なリードを保っていることを意味する。保守党の基盤であるケベック市ですら、ケベック連合は保守党現職を脅かしている。
 保守党は歴史的にケベックで弱く、過去の選挙ではケベックを捨ててかかることもあった。今回は新民主党の不評とケベック連合の退潮につけ込み、ケベックで自由党に次ぐ2位につけていて、ケベックで重点的に運動したが、ケベック連合は民族主義的政策を訴え、終盤に追い上げた。
 シーア党首は、首相にふさわしい人物として8月末にはケベックで2位につけ、シン党首を13ポイント上回っていたが、今ではシン党首より4ポイント下の3位である。ケベックで支持拡大に失敗した保守党は、過半数獲得は絶望的となっている。
 ブリティッシュコロンビアのローワー・メインランドも、自由党・新民主党・保守党が三つ巴の激戦を近年続けている。自由党が過半数を獲得するには、3つの主戦場の全てを制する必要がある。だが自由党が、ケベックでケベック連合に勝つのは非常に困難と言わざるを得ない。

 (2) 2期目に苦戦する首相
 再選に失敗した首相には、チャールズ・タッパー、アーサー・ミーエン、リチャード・ベネット、ジョン・ターナー、キム・キャンベルの5人がいるが、ベネット以外は総選挙の勝利なくして首相になった人たちである。野党党首として政権奪取しながら、1期で退任したのはベネット首相だけである。ベネット首相は世界恐慌の直撃を受け、そこから立ち直るための政策をいくつか打ち出したが、裁判所から違憲判決を出され頓挫した。
 カナダ史の大多数の前例は、政権交代の機運に乗り政権奪取した野党党首はしばしば圧勝したが、再選時には失望を買い、総選挙で苦戦している。マッケンジー・キング首相は、1925年の2度目の総選挙で18議席減らし、第2党に転落したが、進歩党の閣外協力でかろうじて政権を維持した。ルイ・サン=ローラン首相は、1953年の2度目の総選挙で22議席減らした。ジョン・ディーフェンベーカー首相は1957年総選挙で政権奪取したが、過半数に足りなかったため、10か月後に再度総選挙を行い、265議席中208議席を獲得し圧勝した。だが次の1962年総選挙では92議席も減らし、過半数割れとなった。ブライアン・マルローニ首相は1984年総選挙で、282議席中211議席を獲得し圧勝したが、次の1988年総選挙では34議席減らした。ジャン・クレチエン首相は1993年総選挙で圧勝したが、次の1997年総選挙で19議席減らした。
 トルドー首相の父ピエール・トルドー首相も、2度目の総選挙は苦戦した。1972年総選挙で109議席を獲得し、107議席の進歩保守党に辛うじて勝利した。
 【第43回(2019年)カナダ総選挙の立候補者】
21団体・2146人が立候補する。
(人数は候補数、括弧内は解散時勢力)

・自由党 338人(177)
中道左派の現与党。万年与党と言われる。
・保守党 338人(95)
右派のカナダ同盟が中道右派の進歩保守党を吸収して成立。2015年まで与党。
・新民主党 338人(39)
労働組合に支援される革新政党。
・ケベック連合 78人(10)
ケベック独立を目指し結成された。その後ケベックの利益誘導政党に。
・緑の党 338人(2)
環境政党。
・人民党 315人(1)
保守党を追放されたベルニエ氏が結成した右翼新党。人種差別発言が多い。
・クリスチャン・ヘリテージ党 51人(0)
キリスト教的価値観を訴える復古主義政党。
・(マルクス=レーニン主義)共産党 50人(0)
毛沢東主義を掲げるもう一つの共産党。カナダ共産党とは提携も敵対もしないとされる。
・サイ党 39人(0)
選挙をジョークとして楽しむ。選挙公約は全部ネタ。
・カナダ共産党 30人(0)
コミンテルンに加入した、非合法された唯一の政党。かつては連邦議会や地方議会に、議席を有していた。自由党に次いで2番目に古い政党。
・退役軍人連合党 25人(0)
退役軍人を尊重する復古主義政党。
・リバタリアン党 24人(0)
政府による規制を極力撤廃し、自由放任主義を志向する。
・動物保護党 17人(0)
動物愛護の党。肉税を導入し動物産業の規制を訴える。候補者は全員ビーガン。
・ケベック独立党 13人(0)
ケベック独立を主張。
・カナダの第四戦線 7人(0)
「親カナダ」の党。
・マリファナ党 4人(0)
かつてマリファナ合法化を主張していた。今はマリファナをコーヒー並みに安価で提供することを訴える。
・全国市民同盟 4人(0)
移民の制限、不法入国者の追放、「権利と自由のカナダ憲章」の見直しを主張する極右政党。
・連合党 4人(0)
保守とリベラルの架け橋となる。
・カナダ国家主義者党 3人(0)
ヨーロッパ文化とキリスト教文化に則り、多文化主義を放棄しホワイトカナダを実現する極右政党。
・進歩カナダ党 3人(0)
進歩保守党(PC)がカナダ同盟に吸収され消滅することに反対したメンバーが、「PC」の呼称を残すため結成した。
・ストップ気候変動 2人(0)
気候温暖化を阻止するための徹底的な対策を迫る。
・無所属 128人(8)
10月21日(月)22時00分〜22時40分 NHKBS1
国際報道2019 カナダ総選挙 焦点は温暖化対策
https://tv.yahoo.co.jp/program/64053124/
>カナダ総選挙が21日に行われる。選挙戦では移民問題や対中政策がテーマになる中、最大の争点は「温暖化対策」。連邦炭素税を新たに導入してきたトルドー首相はスウェーデンのグレタさんとの面会後に20億本の木を植える計画を発表、再選をめざす。一方、野党・保守党は経済界の負担が大きいとして炭素税の廃止を訴えている。与野党の支持率がきっ抗する中、カナダ社会を二分する温暖化対策議論の行方を展望する。

日本のテレビでは極めて珍しい、カナダの政治番組!
NHKの番組を見ました。
「争点は温暖化対策」というのは間違いではないですが、自由党と保守党のどちらが勝ってもパイプライン計画はやらねばなりません。つまりトルドー首相は、温暖化対策として炭素税を誇っていますが、パイプライン計画をやめる考えはありません。それで緑の党・新民主党・ケベック連合の左翼諸党とは対立しています。
炭素税導入は石油産業の負担になり、保守党は産油地帯である中西部を根拠地にしていることから、立場上炭素税を容認できないという重要な論点について、NHKは触れていません。古い話ですがトルドー首相の父ピエール・トルドー首相は、「国家エネルギー計画」を導入し地下資源に課税したことがあり、つまり親子二代に渡って中西部に挑戦していることになります。
NHKがサスカチュワン州を「中部」と呼んだのは誤りで、正しくは中西部です。
ブルームバーグ「新民主党と連立か」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-22/PZR8XXT0G1L101
>過半数の170議席には届かず、26議席を得る方向にある新民主党が連立相手となる可能性が最も高い。

こんなこと書いちゃっていいんですかねえ。カナダには連立する習慣はないし、過半数に14議席足りないだけですよ。
私は連立はないと思います。トルドー首相は何も言っていないし、シン党首が連立を公言したのは、票を自由党に取られないための方便ですから。
 10月21日に実施された2019年カナダ連邦議会総選挙は、自由党157、保守党121、ケベック連合32、新民主党24、緑の党3、人民党0、無所属1(定数338議席)でほぼ確定し、自由党の少数政権が確実となった。
 保守党は得票率34.4%で、自由党の33.1%を上回ったが、議席では36差をつけられた。二大政党は直前の世論調査より多くの票を得たが、議席では予想を保守党はやや下回り、自由党は大きく上回るなど、自由党にはツキがあった。
 自由党は、過半数に13足りない小数政権を率いることになる。保守党は内閣打倒するのに最も大きい野党3党の協力が必要なのに対し、自由党政権はそのうちの一つを味方につければ議会の過半数を制することができる。

 事前の予想では自由党は、前回総選挙で全議席を獲った東部で相当数を失うとされたが、実際に失った議席はニューブランズウィックで4つ、ノバスコシアで1つ、ニューファンドランド&ラブラドルで1つ、プリンスエドワード島では全勝し、大多数の議席を維持した。前回圧勝したオンタリオとケベックは、前者では前回80に対し79、後者では前回40に対し35と、ケベック連合躍進にもかかわらず新民主党の不評のため、浅い傷で済んでいる。
 今回総選挙では3つの主戦場があるとされ、一つはトロント郊外、一つはケベックのフランス語地域、一つはブリティッシュコロンビアのローワー・メインランドである。自由党は地盤のトロントの全選挙区を制したほか、トロント郊外でもほぼ全部を制した。ケベックでは地盤のモントリオールでほぼ全勝したが、フランス語地域では苦戦し、州全体では35議席で第一党の地位をかろうして維持したものの、ケベック連合に32議席を取られた。新民主党は、ケベックでわずか1議席に終わった。
 中部2州で絶好調の自由党は、ブリティッシュコロンビアでは苦戦した。グレーター・バンクーバーで保守党・新民主党とほぼ3等分する結果に終わり、ローワー・メインランドでは保守党躍進を許した。バンクーバー島では緑の党が2議席獲得し、自由党は完全に締め出された。
 自由党が過半数を制するには、3つの主戦場全てを制する必要があった。だがオンタリオを制した自由党は、ケベックではケベック連合と痛み分け、ブリティッシュコロンビアでは第3党に沈み、過半数割れに終わった。
 保守党は、ハーパー前首相が前回獲得した議席を上回った。サスカチュワンで全勝、アルバータでは1つを除き全勝し、ブリティッシュコロンビアのローワー・メインランドではうまくやった。だがケベックで浸透できず、主戦場のトロント郊外で大敗した。
 SNC-ラバラン問題が発覚してから、保守党はずっと支持率首位を走って来たが、勝ちきれなかった。シーア党首は40歳で政治歴が浅く、下院議長を務めたが大臣経験もなく、知名度が低かった。
 彼が当選した2017年党首選は、17人の候補が乱立した。メディアは、ベルニエやオリアリーやリーチのようなキャラの立つ候補を取り上げたため、彼は目立つのに苦労した。投票は優先順位付き連記投票で行われ、敵のいない彼は大量の「第2候補」票を集めた。彼が当選できたのは、本命のベルニエがあまりに急進的な改革を主張したため、それを危惧した党員が保守的なシーアのもとに集まったからである。だがそのベルニエは党を追われ、もういない。
 シーア党首は選挙戦でも、減税、炭素税反対といった伝統的な保守党の主張に固執し、真新しさをアピールできなかった。彼はトルドー首相を、SNC-ラバラン問題やブラックフェイス問題などで「統治する道徳的資格を失った」と非難したが、トルドー首相はシーア党首ではなくオンタリオ州のフォード保守党政権を批判した。
 しかし彼自身も、道徳的問題から無縁ではいられなかった。無資格で保険を売っていたことや、アメリカとの二重国籍を暴露された。そして2005年に公開した動画で「同性カップルは『自然な』生殖ができず『本来の外観』を持たない」「犬の尻尾を『脚』と呼ぶことにしたら、犬の脚は何本か」(※リンカーンの格言。尻尾を『脚』と呼んでも、尻尾は脚にはならない。ゆえに同性パートナーシップを『結婚』と呼んでも、それは結婚ではない)と述べ、新民主党がケベックから締め出されたのに、ケベックで支持を拡大できなかった。二大政党党首は伝統的にチャンスを2度与えられることになっていて、一度の敗北では降ろされないものだが、シーア党首の地位は決して安泰とは言えない。

 ケベック連合は、ケベック第一党の地位は逃したものの、全体では野党第2党のかつての地位を取戻し、完全に復活した。新民主党がケベックで喪失した議席は、ほとんどケベック連合が奪い取った。2番目に議席の多いケベックでケベック連合が強い勢力を持つことで、何度選挙をやってもどの党も過半数に達しないという21世紀初めの状況が復活し、弱体政権が続くおそれがある。

 新民主党は、解散前には公式政党(12議席)ステータスの維持すら危惧されていたが、20台の議席を維持し、新しい議会ではキャスティング・ボートを握る。「シン党首では選挙に勝てない」と言われ、総選挙後に引きずり降ろされると思われたが、党首の地位には留まれそうだ。
 シン党首は選挙戦の最後の3週間でトロントを5回訪問したが、全ての選挙区を自由党に取られ、カナダ最大の都市から締め出された。東部では、ニューファンドランドの1議席に終わった。2011年総選挙で躍進したケベックでは、一つを除く全議席を失い、ルース・エレン・ブロソー院内総務も落選した。

 緑の党は、東部で初の議席を獲得。一時は支持率が2桁台に達し、2桁議席も夢ではないと言われたが、得票率6.3%で3議席となり、「主要政党」の仲間入りだ。
 大きく成長した党は、様々な人々を含んだ。オンタリオの候補は反イスラム発言で公認を外されたが、ケベックの候補が反イスラム発言をしたときは、謝罪だけで済ませた。メイ党首は「分離主義」の候補を受け容れ、妊娠中絶に関しても「投票は自由」と述べ、新民主党のシン党首に巧妙につけ込まれた。近親憎悪にも似た激しい非難合戦は、選挙戦終盤で緑の党を失速させ、「仁義なき戦い」は新民主党に敗れた形となった。

 人民党はベルニエ党首が落選し、議席0に終わった。

 法務大臣を辞任し、SNC-ラバラン問題を暴露したウィルソン-=レイボールド氏は無所属で当選。与野党伯仲議会では、台風の目になる可能性もある。
●ウェッジ
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17706
>単独過半数には14議席及ばないことから、連立政権が誕生することとなる

そんなこと言っていいんですか?

>中道右派・保守党は121議席(95増)となる見通し

95は解散時勢力。「95増」は「26増」の誤り。

>保守党とNDPは同国東部で支持を得た

NDPは「東部」では1議席しか獲れていません。

>シン氏は、カナダ初のマイノリティー(人種的少数派)党首

正しくは「ビジブル・マイナリティ」。マジョリティはイギリス系とフランス系なので、それ以外はマイナリティです。

>一方で連立政権は珍しい

「珍しい」のではなく、一度もありません。
名古屋テレビの超絶飛ばし記事
「カナダ総選挙は与野党大接戦 トルドー政権交代か」
https://www.nagoyatv.com/news/kokusai.html?id=000167380

日本時間の11時25分なら、開票始まって約1時間後で、ほぼ大勢は決していました。
いつ書いた記事かわかりませんが、普通の人なら前日には自由党少数政権とわかるし、11時すぎには予想の130議席を超えるとわかります。
https://www.cbc.ca/news/politics/vote-splitting-liberal-conservative-ndp-bloc-2019-election-1.5330440
CBCの記事。左派票分散が保守党を利した例か、自由党と緑の党の分散が新民主党を利した例以外は、論じる意味がないと思いますが。
 トルドー首相は10月23日記者会見で、ケベック連合を含む諸党とともに働き、プライオリティについて話し合っていくと述べ、連立を否定した。
「いろいろな意見があると思うが、私が皆さんに言えることは、公式であれ非公式であれ、いかなる形式の連立についても全く考えていないということだ。」
 新民主党のシン党首は、投票日の10日前になって、連立するための「6つのプライオリティ」について新政権と交渉すると発表した。だが投票日の翌日「プライオリティについて交渉しない」と発表した。
というわけで、私の予想通り、連立政権にはなりませんでした。
 ジャスティン・トルドー首相率いる自由党は、投票率では保守党に劣ったが、議席数では勝利した。このような逆転現象は、1979年以来40年ぶりである。このときは首相の父ピエール・トルドー首相が、得票率40.1%でクラーク党首率いる進歩保守党の35.9%を上回ったにもかかわらず、114議席で進歩保守党の136議席に敗れた。
 その前の例は1957年総選挙で、ディーフェンベーカー党首率いる進歩保守党が、得票率38.5%でサン=ローラン首相率いる自由党の40.5%を下回ったにもかかわらず、112議席で105議席の自由党に勝利した。さらにその前の例は1926年総選挙で、キング党首率いる自由党が、得票率42.9%でミーエン首相率いる保守党の45.4%を下回ったにもかかわらず、116議席で91議席の保守党に勝利した。
 このような逆転現象はそれ自体が稀だが、得票率で劣る方が36議席もの大差をつけたという点においても、稀少な例と言える。このような現象は、なぜ起きたのだろうか。

 自由党議員の4分の3は、多くの議席を持つオンタリオとケベックの中部2州選出である。そしてアルバータとサスカチュワンからは、議員が一人もいない。
 この状況もまた、父ピエール・トルドー首相が経験した1980年総選挙に酷似している。サスカチュワン以西の議員がいない自由党は、国家エネルギー計画で地下資源に課税し、産油地帯である中西部の怒りを買っても、失う議席は一つもなかったのだ。同様に息子ジャスティン・トルドー首相もまた、炭素税を課税しても失う議席はないことになる。
 得票率はまだ正確な数字は確定していないが、自由党はケベックでは2015年の35.7%から約34%に、1ポイント程度の低下で済んだ。議席は40から35へ、5議席減らしただけである。
 オンタリオでは44.8%から約41%に、3ポイントほど低下したものの、保守党には十分な差をつけており、議席は1議席減らしただけだ。決定的だったのは、莫大な議席を持つトロントとその近郊だった。自由党はトロント市の25議席で全勝、主戦場とされたトロント郊外も、29議席中24議席を獲得して圧勝した。

 自由党は2015年総選挙で、アルバータに11年ぶりの議席を獲得したが、今回4つの全てを失った。サスカチュワンの唯一の議席と、ウィニペグ周辺の2議席も失った。それでアマルジート・ソーヒ天然資源大臣と、長老ラルフ・グッデイル公安・非常時対応準備大臣の二人の中西部選出の閣僚が落選した。
 保守党は中西部で圧倒的な強さを示し、サスカチュワンで全勝、アルバータでは一つを除き全勝した。アルバータの保守党候補は、ほとんどが得票率70%以上である。
 だがそれらの票は、保守党の議席を「増加」させなかった。2015年総選挙で、サスカチュワンでは1つを除き全勝、アルバータでは4つを除き全勝していたからである。
 激戦地のトロント郊外で、保守党は自由党に小差で競り負け、大量の死票を出したのに対し、自由党は中西部で保守党に大差で敗れ、わずかな死票しか出さなかったのだ。

 新民主党と緑の党の予想外の低調も、自由党勝利に貢献した。両党は伝統的に、世論調査よりも実際の得票率が少ないことで知られる。保守党政権を危惧する両党の支持者が、それを阻止するため自由党に「戦略的投票」をするからだと考えられている。
 緑の党は、解散時には支持率が2桁あったが、シン党首に近親憎悪ともいえる舌戦をふっかけられ、得票率6.5%に終わった。州議会で躍進したニューブランズウィックとプリンスエドワード島、そして根拠地のバンクーバー島で躍進することを夢見たが、幻に終わった。
 新民主党は、投票日直前の世論調査では、支持率18から19%の間だったが、実際の得票率は15.9%に終わった。
 自由党の最大の懸念は、第一にトロント郊外での保守党の躍進、第二にトロントダウンタウンにおける新民主党躍進であったが、実際にはどちらも起こらなかった。新民主党候補はトロント-ダンフォース選挙区で14ポイント、パークデイル-ハイパーク選挙区で16ポイント、自由党候補を下回った。スパダイナ-フォート・ヨーク選挙区で自由党が勝てば自由党政権、自由党が負ければ保守党政権というジンクスは、今回も的中した。

 自由党は今回総選挙で、カナダのあらゆる地域で議席を失った。それは彼らから、過半数の安定政権を奪った。だがそれは、彼らを権力から引きずり降ろすには十分ではなかった。
 2019年連邦議会選挙での得票率は、自由党33.1%、保守党34.4%、ケベック連合7.7%、新民主党15.9%、緑の党6.5%、人民党1.6%だった。大手世論調査機関14社は、支持率を自由党29〜34%、保守党30〜33%、ケベック連合5〜9%、新民主党14〜21%、緑の党6〜9%、人民党1〜4%と予測した。
 2社を除く全社は、自由党・保守党・新民主党について誤差が3ポイント未満だった。
 保守党と自由党は、ほとんどの社から過小評価された。保守党は全ての社から1〜4ポイント過小評価され、自由党は2社を除く全社から1〜4ポイント過小評価された。
 いっぽう新民主党・緑の党・人民党は、全社で過大評価された。これら中小政党の支持者は、戦略的投票で二大政党に投票したと考えると、説明がつく。
 保守党支持者は高齢者が多く、高齢者は投票率が高いことから、彼らが投票率を押し上げていることがありえる。CBCの調査は、保守党支持率についてアルバータで9.5ポイント、サスカチュワンとマニトバで8.5ポイントと、許容値を大きく超えるほどの誤差で過小評価した。それは全国では保守党支持率を2ポイント押し上げたが、議席増加にはつながらなかった。
 いっぽう自由党は、オンタリオ・ケベック・東部で予想より多くの票を取った。これらの事実は、自由党が少ない票で効率よく議席を獲得したことをある程度説明する。西部・中西部では予想より少ない票しか取れなかったが、それが統計上の誤差なのか、それとも自由党支持者が棄権したのかはわからない。
 誤差が特に大きかった選挙区は、ノバスコシア州のハリファックス選挙区、サックビル-プレストン-チェゼットクック選挙区、オンタリオ州のトロント-ダンフォース選挙区、アカディ-バザースト選挙区、ハミルトン・イースト-ストーニー・クリーク選挙区、ニッケル・ベルト選挙区、サンダーベイ-レイニー・リバー選挙区の7つである。これらは奇妙なことに、全てが2015年まで新民主党が長年保持していた選挙区で、かつ2015年に自由党に奪われたもので、かつ今回新民主党候補の当選が予想されたが自由党候補が当選したものである。うち6選挙区は2015年総選挙で新民主党現職が敗れ、今回新人候補に代わっている。アカディ-バザースト選挙区だけは、現職が2015年に引退し、同年総選挙で新人候補が敗れ、今回別の新人候補に代わっている。
 新民主党は、これらの選挙区で長年務めたベテラン議員を失ったために票を失っている可能性があり、党の勢力はさほど強くなく、過去の当選はベテラン議員の力に負うところが大きかったことを示唆している。
 世論調査は、自由党と保守党の接戦、選挙戦終盤でのケベック連合と新民主党の追い上げと、緑の党の凋落を示した。そして調査は一貫して、支持率に関係なく自由党が保守党より多くの議席を獲り、少数政権を築くことを予測した。世論調査は、信頼性を回復したと言っていいだろう。
 レジェ・マーケティング社が10月22日から24日までに、カナダ人有権者1503人を対象に実施したオンライン世論調査は、カナダ人有権者の3分の1以上が、2019年連邦議会選挙で戦略的投票を実行したことを示した。
 回答者の57%は、投票行動は政治的信念に基づくものであり、候補者の当落の可能性については一切考えなかったと答えた。そして回答者の35%は、投票行動の決定に当たり、自分の投票が他党候補の当選を妨げる可能性について考慮したと答えた。

 ほとんどの回答者は、選挙戦の最後の週まで選択を保留していたことがわかった。
 政党支持者の中では、保守党支持者が投票行動を最も早く決定した割合が高かった。保守党に投票した回答者の50%が、選挙戦開始前にすでに投票行動を決定していたと回答した。対照的に左派政党支持者は、選択肢が多いせいか、選挙戦開始前にすでに投票行動を決定していたのは、緑の党支持者の35%、ケベック連合支持者の31%、自由党支持者の30%、新民主党支持者の22%と低かった。人民党支持者では、31%だった。
 戦略的投票を考慮に入れた35%の回答者のうち、保守党支持者は39%、自由党支持者は43%、新民主党支持者は28%、ケベック連合支持者は18%、緑の党支持者は16%、人民党支持者は24%だった。

 また調査は、戦略的投票は投票行動を決める要因ではあったが、主要な要因ではなかったことを示唆した。
 その党に投票することに決めた主な理由として、37%は「マニフェストが自分と一致したから」、9%は「トルドー自由党政権を打倒するため」、6%は「他党に反対するため」、4%は「選挙区の最高の候補者に投票するため」と回答した。
 総選挙後最初の保守党幹部会が、11月6日に召集された。この席で、リーダーシップチェックを要請する権限を幹部会に与える党則改正が採決され、否決された。これにより、リーダーシップチェックは2020年4月の党大会で実施されることになり、シーア党首はそれまで留任できることがほぼ確実になった。
 シーア党首は総選挙で議席を増やしたが、与党に多くのスキャンダルがあり、得票率1位だったにもかかわらず政権奪取できなかった。特に、議席の多いンタリオとケベックで惨敗したことで、そのリーダーシップを疑う声が大きくなっていた。
 リーダーシップチェックは、全党員が参加できる党大会で実施するのが通例だが、保守党はこの日、幹部会(上院議員と下院議員)の20%の要請があればリーダーシップチェックを実施できるとする党則改正について採決した。これは、シーア党首をただちに引きずり降ろしたいと憤る議員が何人かいることを示している。
 ガーネット・ジェニュイス議員は、この動きを疑問視した。
「私は、この種の問題について幹部会がルールを覆すことは支持できない。次の党大会でリーダーシップチェックがあるから、幹部会のメンバーではない党員たちの意見を尊重すべきだ。」
 だがケベックの上院議員たちは、前日独自に会談の場を設けていた。シーア党首は最初のフランス語討論で、保守党政権になれば妊娠中絶非合法化の議論が再開されるのかと問われると「その問題は『発展したまま』にしておく」などと不明瞭で歯切れの悪い答弁に終始した。ジャン=ギ・ダジュネ上院議員(ケベック代表)は、最初のフランス語討論はケベックの保守党にとって「壊滅的」であり、シーア氏が党首のままではケベックで勝てないと断言した。クロード・カリニャン上院議員(ケベック代表)も、シーア党首を含め執行部が変わらないかぎり、ケベックとオンタリオの主戦場で勝つことは難しいと語った。
「ケベックでは、我々の選挙は最初の週で終わっていた。」
 シーア党首は総選挙に敗北した夜、支持者に語った。
「2004年の、ハーパー党首最初の総選挙を思い出せ。」
「彼はマーチン首相から過半数を奪い、その後10年間の保守党政権への道を拓いた。」
 最大野党党首が最初の総選挙で負けることは、珍しくない。シーア党首は、最初の総選挙に負けた15人目の最大野党党首である。この中には、ウィルフリッド・ローリエやロバート・ボーデンのような、後にお札の肖像になるほどの名宰相たちも含まれる。もちろん、一度も勝利できず総理の椅子を手に入れられなかった多くの人々も含まれている。
 最初の総選挙に負けた最大野党党首15人のうち、1人はケベック連合のジル・デュセップ党首である。ケベック連合はケベック州にしか候補を立てないので、絶対に過半数を獲れない。彼は1997年総選挙で44議席を獲得し、野党第2党に転落したが、ケベックでは第一党を維持し、留任している。
 15人のうち6人は、2度目のチャンスを与えられなかったか、もしくは自ら放棄した。ロバート・マニオン(国民保守党、1940年)、ジョン・ブラッケン(進歩保守党、1945年)、ストックウェル・デイ(カナダ同盟、2000年)、ステファン・ディオン(自由党、2008年)、マイクル・イグナティエフ(自由党、2011年)、トム・マルケア(新民主党、2015年)である。
 15人のうち7人は、2度目のチャンスを与えられた。そのうち5人は、2連敗を喫した。エドワード・ブレイク(自由党、1882年と1887年)、ロバート・ボーデン(保守党、1904年と1908年)、ジョージ・ドリュー(進歩保守党、1949年と1953年)、レスター・ピアソン(自由党、1958年と1962年)、ロバート・スタンフィールド(進歩保守党、1968年と1972年)である。
 3度目のチャンスが与えられたのはわずか3人で、ボーデンは1911年、ピアソンは1963年に三度目の正直で勝利し、総理の椅子を手に入れた。スタンフィールドは1974年に3度目の敗北を喫し、辞任した。
 シーア党首が言おうとしている、最大野党党首として最初の総選挙に敗れはしたが、二度目には勝利した例は、2人しかいない。スティーブン・ハーパー党首は2004年の最初の総選挙に敗れたが、2006年に勝利した。ローリエ党首は1891年、最初の総選挙でマクドナルド首相に敗れたが、1896年に勝利した。
 最初の総選挙に負けた最大野党党首15人のうち、前任者より多くの議席を獲得したのは5人しかいない。彼らは平均で、12議席減らしている。シーア党首と同じくらい多くの議席を増やしたのは、わずかに2人である。ハーパーは2004年総選挙で、カナダ同盟と進歩保守党の合計を21議席上回り、留任した。ブラッケンは1945年総選挙で28議席増やしたが、辞任した。
 シーア党首が獲得した121議席は、野党としてはカナダの歴史上最大である。議席数は後の時代ほど増加しているが、その議席率35.8%においても、今の保守党は1980年以降で最大となる(議席率最大の野党は、1872年の自由党で47.5%)。
 だがローリエやハーパーの状況と、今のシーア党首は大きく異なる。ローリエが1891年に敗れたとき、自由党は17年間総選挙で負け続けていた。ハーパーが2004年に敗れたときも、自由党が11年間政権を握り続けていた。
 カナダ保守党は新党結成して最初の総選挙で、前回はカナダ同盟66議席と進歩保守党12議席だったのを、99議席にまで増加させた。大票田オンタリオでは前回2議席だったのを、24議席に躍進させたことが高く評価された。
 いっぽうシーア党首は、得票率がケベックで16%で、前回の16.7%より減少した。オンタリオでも33.2%で、前回の35.0%より約2ポイント減少している。この2つの数字は、カナダ保守党結党以来最低の数字である。彼は議席と票を増やしたことを誇っているが、増えたのは西部の議席と死票であり、政権獲得に必要な中部の大票田ではむしろ成績が下がっているのだ。

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