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カナダの歴史と政治コミュのトルドー内閣改造

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 トルドー首相は10月26日、大規模な内閣改造を行った。
 彼が初めて首相に就任し、最初の内閣を発表したのは、6年前の晴れ渡ったサニー・デイだった。厚生大臣は医師で、財務大臣はCEOで、国防大臣は叙勲された軍人で、法務大臣は先住民の弁護士で、運輸大臣は元宇宙飛行士だった。
 彼がその6年後に内閣改造を発表したのは、寒い雨の日だった。医師の厚生大臣も、CEOの財務大臣も、軍人だった国防大臣も、先住民の弁護士の法務大臣も、元宇宙飛行士ももういない。

 今回の改造は、大幅な入れ替えが行われているが、見慣れた顔ぶれによるポストのたらい回しであり、初入閣の7人を別にすれば真新しさに欠ける。だがその目玉は、内閣の最も主要な外務・国防・財務の3つのポストが、カナダ史上初めて女性に独占されたことである。すなわち、国際関係大臣にメラニー・ジョリー経済発展大臣兼公用語担当大臣、国防大臣にアニータ・アナンド公共サービス・調達大臣が就き、財務大臣にはクリスティア・フリーランド副首相が留任した。女性の国防大臣は、キム・キャンベル以来28年ぶり2人目である。これについて、サイモン・フレイザー大学のミーガン・マッケンジー教授は次のように述べた。
「これらは3つの主要な閣僚ポストであり、そしてそれらが比較的早い経歴の女性によって保持されている。」
「これらは、自分に能力があることを示した女性たちであり、党で何十年も何十年も何十年も仕えてきた女性たちではない。」
 フリーランド副首相はその地位に留まり、政権ナンバー2の地位を維持した。ジョリー大臣は、10月の総選挙で参謀として貢献し、重量ポストに昇進した。
 アナンド氏の国防大臣就任は、最も困難な任務をあてがわれたと言われる。カナダ軍では性的不正行為が蔓延しており、前任のサジャン国防大臣は、その対処を誤ったとして強い批判を浴びた。
これについて、カナダ国際問題研究所のシャーロット・デュバル=ラントワーヌ研究員は、次のように述べた。
「私は、女性を任命することが問題を解決するとはむろん考えていない。」
「性的不正行為は必ずしも、女性だけの問題ではない。」
 そう述べて彼女は、軍隊で多数の男性が性的暴行を受けている事実を挙げた。

 グリーンピースやエキテールなどの環境団体で活動してきたスティーブン・ギルボー氏は、2019年の内閣改造で民族遺産大臣に任命されたが、今回ついに環境・気候変動大臣に任命された。この人事は当然ながら、物議を醸している。
 彼は2001年、地球温暖化を警告するためトロントのCNタワーに登り、逮捕されている。また2002年には、アルバータ州のラルフ・クレイン首相の自宅の屋根に登り太陽電池パネルを設置するグリーンピースのパフォーマンスにも、関与している。
 産油州であるアルバータ州のジェイソン・ケニー首相は、ギルボー氏の環境大臣任命は「非常に問題のあるメッセージを送ることになる」と批判した。
「アルバータや他の産油州による、何十万もの雇用を失うことにならないような現実的な解決を、建設的に一体となって取り組みたいという要望に、速やかに実際に応じてみせることを、私は明確に望んでいる。」
 これに対しギルボー大臣は、グラスゴーで開催されるCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)に他の州首相は参加するのに、ケニー首相が参加しないことを挙げ「失望する」と語った。

 新任の大臣は、7人である。元ブロードキャスターのマーシー・イェン議員は、女性・ジェンダー平等・青年大臣となる。カマル・ケラ議員は、高齢者大臣となる。パスカル・サントンジュ議員は、スポーツ大臣兼ケベック地方経済発展担当大臣となる。ランディ・ボワソノール議員は、観光大臣兼財務副大臣となる。ショーン・フレイザー議員は、移民・難民・市民権大臣となる。グディ・ハッチングス議員は、地方経済発展大臣となる。ヘレナ・ヤクシェク議員は、南オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣になる。
 ジネット・プチパ=テイラー議員は、公用語大臣兼大西洋カナダ機会エージェンシー担当大臣として再入閣する。

 マーク・ホランド下院幹事長は、下院院内総務に異動する。
 ハルジット・サジャン国防大臣は、国際開発大臣兼太平洋経済開発エージェンシー担当大臣に異動する。
 パブロ・ロドリゲス下院院内総務は、カナダ民族遺産大臣兼ケベック副官に異動する。
 ジャン=イブ・デュクロ予算庁長官は、厚生大臣に異動する。
 モナ・フォルティエ中流階級繁栄大臣兼財務副大臣は、予算庁長官に異動する。
 カリナ・グールド国際開発大臣は、家庭・子供・社会開発大臣に異動する。
 パトリシア・ハイデュ厚生大臣は、先住民サービス大臣兼北オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣に異動する。
 キャロリン・ベネット政府‐先住民関係大臣は、メンタルヘルス・中毒大臣兼厚生副大臣に異動する。
 マーク・ミラー先住民サービス大臣は、政府-先住民関係大臣に異動する。
 アーメッド・フッセン家庭・子供・社会開発大臣は、住宅・多様性・インクルージョン大臣に異動する。
 ジョイス・マレー デジタル政府大臣は、漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣に異動する。
 シームス・オリーガン天然資源大臣は、労働大臣に異動する。
 フィロメナ・タッシ労働大臣は、公共サービス・調達大臣に異動する。
 ジョナサン・ウィルキンソン環境・気候変動大臣は、天然資源大臣に異動する。
 マルコ ・メンディチノ移民・難民・市民権大臣は、公安大臣に異動する。
 ドミニク・ルブラン政府間関係大臣兼枢密院議長は、政府間関係大臣兼インフラ・地域社会大臣となる。
 ダン・バンダル北方大臣は、北方大臣兼中西部経済開発担当大臣兼北方経済開発エージェンシー担当大臣となる。
 ビル・ブレア公安・非常時対応準備大臣は、枢密院議長兼非常時対応準備大臣となる。
 メアリー・ン国際貿易大臣兼輸出振興・中小企業・経済開発大臣、デビッド・ラメッティ法務大臣兼司法長官、オマー・アルガブラ運輸大臣、マリー=クロード・ビボー農務・農産食品大臣、フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ イノベーション・科学産業大臣、ディアンヌ・ルブティリエ歳入大臣、ローレンス・マコーレー復員軍人大臣兼国防副大臣、カーラ・クワルトロー雇用・労働力開発・障碍者インクルージョン大臣は、留任する。

 マルク・ガルノー外務大臣、バーディシュ・チャッガー多様性・包含・青年大臣、ジム・カー無任所大臣は、閣僚から外された。ガルノー氏の処遇については、大使に任命されるのではという噂があるが、トルドー首相は「この内閣が今日のニュースだ」と言って答えなかった。なおベルナデット・ジョーダン漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣、マリヤム・モンセフ地方経済開発大臣兼女性の地位・ジェンダー平等大臣、デブ・シュルト高齢者大臣は、総選挙で落選し閣僚ポストを失った。キャサリン・マッケナ インフラ・地域社会大臣は、総選挙に出馬せず引退した。


写真:グリーンピースのスティーブン・ギルボー氏(右)とクリス・ホールデン氏(左)は、カナダとアメリカが京都議定書に及び腰なのに抗議して、2001年7月17日当時世界一高かったCNタワーに登り、340メートルの高さに「カナダとブッシュは気候を破壊する」という幕を掲げ、逮捕された。
図:産油州であるアルバータ州のケニー首相が面会してくれないので、屋根から降下して会いに行くスティーブン・ギルボー環境大臣。

コメント(8)

 トルドー首相が8月31日に小規模な内閣改造を行うと、メディアが30日に報じた。
 首相周辺からの話によると、個人的な理由で辞任したい閣僚が一人いるのと、フィロメナ・タッシ公共サービス・調達大臣が家庭の事情により異動を希望しているのだという。
トルドー首相は8月31日、小規模な内閣改造を行った。
フィロメナ・タッシ公共サービス・調達大臣は南オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣に、ヘレナ・ジャチェック南オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣は公共サービス・調達大臣になり、両者のポストが入れ替わった。
 トルドー首相は7月26日、大規模な内閣改造を行った。議員たちは夏休み中だが、首相が閣僚たちにオタワに戻るよう指示したことで、発覚した。
 最近の政党支持率調査では、保守党37%に対し、与党自由党は32%に低迷している。新民主党とは2025年6月まで政権を支える協定を結んでいるが、首相は2年以内にある次の総選挙を睨み、支持率回復を狙って改造に踏み切ったものと見られる。

 2021年11月の大規模な内閣改造では、財務・外務・国防の三大ポストの全てが女性となり話題になった。政権ナンバー2のクリスティア・フリーランド財務大臣(副首相)とメラニー・ジョリー外務大臣は留任したが、アニータ・アナンド国防大臣は、軍内部で横行するセクハラへの対処を女性大臣として期待されたものの、成果を挙げられなかった。彼女は予算庁長官に異動する。
 代わって国防大臣に就くのは、ビル・ブレア枢密院議長兼非常時対応準備大臣である。NATOの担当大臣として、ウクライナ問題への対処が注目される。
 ドミニク・ルブラン政府間関係大臣兼インフラ・地域社会大臣は、首相の幼馴染で最側近である。父のロメオ・ルブラン氏も首相の父ピエール・トルドー首相の大臣を務めた。今回は、公安大臣兼民主機構大臣兼政府間関係大臣となった。

 トルドー首相は、引退を表明しないかぎり更迭はせず、降格を好むとされてきたが、前任のマルコ・メンディチーノ公安大臣は、内閣から外された。今回の改造は、彼の更迭のためにあったと言ってよい。フリーダム・コンボイに対する緊急事態法発動は、現行法で対処でき不必要だったとして批判されている。また中国による選挙干渉疑惑についても、対応が遅かった。銃規制のためのC-21号法案については、自ら作成した修正案を撤回し、下院は通過したものの上院では滞っている。2020年のノバスコシア銃乱射事件では、警察の初動が遅かったとして批判された。最近では、43人を強姦し3人を殺して終身刑となった「スカボロー・レイピスト」ポール・ベルナルド受刑者の、より低セキュリティの刑務所への移送に関しても批判された。
 内閣から外された人は、ほかに2人いる。モナ・フォルティエ予算庁長官は、12万人の公務員が参加した2023年春のストライキによって、旅券事務所や移民局の業務が停止したことの責任を問われた。デビッド・ラメッティ法務大臣兼司法長官は、保釈制度改革の遅れを批判された。
 トルドー首相は総督公邸リドー・ホールでの記者会見で、これら3人が留任できなかった理由を問われたが、答えなかった。
「この国とこの内閣で何年もよく勤めてくれた全員に、感謝したい。」
 次の総選挙に出馬しないことを表明した4人の大臣も、内閣から外された。オマル・アルガブラ運輸大臣は、空港での待機が社会問題化したことの責任を問われた。
 ジョイス・マレー漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣は、次回総選挙に出馬を表明していたが、7月24日に突如不出馬を表明した。6月にニューファンドランド沖で起きた、タイタン沈没事故への対応が影響したものと見られている。
 キャロリン・ベネット メンタルヘルス・中毒大臣は、マーチン内閣の閣僚も務めた72歳のベテランだが、下院議員の任期が満了しだい引退する。
 ヘレナ・ジャチェック公共サービス・調達大臣も、新しいポストが与えられなかった。

 内閣から外された7人と入れ替わりに初入閣するのは、以下の7人である。
 トロント選出のアリフ・ビラーニ議員は、法務大臣兼司法長官に就く。
 ケベック州オシェラガ選出のソラヤ・マルティネス・フェラーダ議員は、観光大臣兼ケベック経済開発エージェンシー担当大臣に就く。
 トロント選出のゲイリー・アナンダサンガレー議員は、政府-先住民関係大臣に就く。
 ブリティッシュコロンビア州バーナビー選出のテリー・ビーチ議員は、市民サービス大臣に就く。
 トロント選出のヤアラ・サックス議員は、メンタルヘルス・中毒大臣兼厚生副大臣に就く。
 オタワ選出のジェンナ・サッズ議員は、家庭・子供・社会開発大臣に就く。
 オンタリオ州ミシサウガ選出のレチー・バルデス議員は、中小企業大臣に就く。
 今回の内閣改造では、異なるポストに横すべりした大臣が多いのが特徴で、19人いる。カリナ・グールド家庭・子供・社会開発大臣は、下院院内総務に就く。彼女は現在妊娠中で、彼女の不在時にはスティーブ・マッキノン下院幹事長が代行する。
 パブロ・ロドリゲス民族遺産大臣は、運輸大臣に就く。
 パスカル・サントンジュ スポーツ大臣兼ケベック地方経済発展担当大臣は、カナダ民族遺産大臣に就く。インターネットの巨人GAFAとの戦いの担当として、注目される。
 パラリンピックメダリストのカーラ・クワルトロー雇用・労働力開発・障碍者インクルージョン大臣は、スポーツ・体育活動大臣として、6年前まで務めたポストに復帰する。スポーツ界特にホッケー界で蔓延する性的虐待問題への対応が、注目される。
 ショーン・フレイザー移民・難民・市民権大臣は、住宅・インフラ・地域社会大臣に就く。住宅危機への対応が期待される。
 マーク・ホランド下院院内総務は、厚生大臣に就く。
 ローレンス・マッコーレイ退役軍人大臣は、農務大臣に就く。
 ジャン=イブ・デュクロ厚生大臣は、公共サービス・調達大臣に就く。
 マリー=クロード・ビボー農務・農産食品大臣は、歳入大臣に就く。
 グディ・ハッチングス地方経済発展大臣は、地方経済発展大臣兼大西洋カナダ機会エージェンシー担当大臣に就く。
 ディアンヌ・ルブティリエ歳入大臣は、漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣に就く。
 ハルジット・サジャン国際開発大臣兼太平洋経済開発エージェンシー担当大臣は、枢密院議長兼非常時対応準備大臣兼太平洋経済開発エージェンシー担当大臣に就く。
 アーメド・フッセン住宅・多様性・インクルージョン大臣は、国際開発大臣に就く。
 シーマス・オリーガン労働大臣は、労働・高齢者大臣に就く。
 ジネット・プチパ=テイラー公用語大臣兼大西洋カナダ機会エージェンシー担当大臣は、退役軍人大臣に就く。
 マーク・ミラー政府-先住民関係大臣は、移民、難民と市民権担当大臣に就く。
 ランディ・ボワソノール観光大臣は、仕事労働力開発と公用語担当大臣に就く。
 カマル・ケラ高齢者大臣は、多様性・障碍者インクルージョン大臣に就く。
 メアリ・ン国際貿易大臣兼輸出振興・中小企業・経済開発大臣は国際貿易大臣兼輸出振興・経済開発大臣に就き、中小企業のポストから外れた。

 9人の大臣は、留任した。クリスティア・フリーランド副首相・財務大臣、メラニー・ジョリー外務大臣のほかは、スティーブン・ギルボー環境・気候変動大臣、フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ イノベーション・科学産業大臣、パトリシア・ハイデュ先住民サービス大臣兼北オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣、フィロメナ・タッシ南オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣、ダン・バンダル北方大臣兼中西部経済開発担当大臣兼北方経済開発エージェンシー担当大臣、マーシー・イェン女性・ジェンダー平等・青年大臣である。ジョナサン・ウィルキンソン天然資源大臣は留任したが、役職が「エネルギー及び天然資源大臣」に変わった。
 閣僚は首相を除き、男女19人ずつで同数である。

 保守党のピエール・ポワリエーブル党首は、今回の改造について次のように評した。
「数々の失策について責任のある一人の大臣が、異動していない。その大臣とは、トルドー総理大臣である。」
 クリスティア・フリーランド副首相(財務大臣)の広報は8月22日、副首相がスピード違反で反則金273ドルを徴収されたと発表した。彼女はアルバータ・ハイウェイで、時速132キロで運転したという。
 フリーランド副首相はサイクリストとして知られ、車を所有していないと公言していた。
「私は歩き、地下鉄に乗ります。子供たちも歩き、自転車に乗り、地下鉄に乗ります。それは実際、家族にとって健康的です。」
 338カナダ社が11月5日に発表した政党支持率調査は、保守党40%、自由党27%、新民主党18%、ケベック連合7%、緑の党4%、人民党3%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、保守党205(169〜226)、自由党83(58〜114)、ケベック連合28(23〜36)、新民主党20(12〜34)、緑の党2(1〜3)、人民党0(0〜0)(定数338議席、括弧内は最小〜最大)となり、今総選挙が実施されれば保守党が過半数を獲得するのが確実な情勢である。またレジェ社が10月29日に実施した世論調査では、トルドー内閣支持率30%・不支持率63%となった。一般に支持率30%以下は危険水域とされ、また不支持率63%はありえないほど高い。

 2022年の緊急事態法発動は、現行法で取り締まり可能であり不要だったとする意見が大勢となった。2021年の連邦議会総選挙では、中国による選挙干渉があったと認定されたにもかかわらず、首相の対応が十分でないという批判がある。ジョンストン前総督による調査が行われたが、前総督は首相と親しく、その答申も追及が足りないという声が挙がり、ジョンストン氏は辞任した。新民主党との閣外協力の条件だった歯科保険への対応は、まだ取りかかれていない。次の総選挙は、最も遅い場合で2025年10月20日だが、与党自由党は過半数割れで、新民主党が閣外協力を取り下げればいつ総選挙になるかわからない。

 自由党はあらゆる年齢層において、そしてケベックを除く全ての地域で保守党に差をつけられている。また女性は自由党支持者が多いことが知られているが、最近の調査は女性有権者も保守党を好んでいることを示している。自由党内からは、トルドー党首で次の総選挙は戦えない、辞任すべきだという声も挙がり始めた。
 仮に辞任するとしたら、次の党首は「トルドー政権で唯一有能な人物」フリーランド副首相だろうか。だが彼女はアルバータ生まれで、オンタリオ選出である。
 ケベック州での予想獲得議席は、自由党35、ケベック連合28、保守党14、新民主党1、緑の党0、人民党0(定数78議席)となり、ケベック州だけは自由党が首位に立っている。ケベック出身のトルドー首相を辞任させ、非ケベック人を党首にすることは、ケベックにおける優位を失うリスクと隣合わせだ。たとえ負けるにしても、トルドー党首なら大敗を免れるかもしれない。長く務めた首相が支持率低下のため辞任し、新しい首相に代わった場合、しばしば大敗することをカナダの歴史は示している。ボーデン首相の次のミーエン首相、ピエール・トルドー首相の次のターナー首相、マルローニ首相の次のキャンベル首相がそうだ。
 トルドー首相は、51歳でまだ若い。党首を辞任すればそこで終わりだが、たとえ負けても90議席以上獲れたら、党首に留まれるかもしれない。
 次もケベック人を党首にするなら、メラニー・ジョリー外務大臣や、フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ産業大臣が該当する。だが自由党には左派と右派があり、またケベック人と非ケベック人が交互に党首に就くジンクスがあり、現在は左派でケベック人のトルドーが党首だから、次は右派の非ケベック人になりそうだ。
 もしトルドー首相が辞任するなら、党首選を行う十分な時間を確保するため、2024年春までには決断しなければならないだろう。
カリナ・グールド下院院内総務は産休に入り、スティーブン・マッキノン下院幹事長が1月8日、後任に就く予定である。
 自由党のケン・マクドナルド下院議員(ニューファンドランド&ラブラドル州選出)は1月14日、トルドー党首は信任投票を受けるべきだと語った。
「党として、はっきりさせよう。党員たちが今の党首を支持するなら、それで結構。だが少なくとも、党が進むべき方向について意見を述べる機会を党員たちに与えよ。」
 彼は、トルドー党首は辞任すべきだとは言わなかった。
 彼が叛旗を翻すのは、これが初めてではない。彼は2023年秋には、保守党が提出した炭素税廃止法案に賛成投票している。彼は、温暖化ガス発生は都市の問題であり、ニューファンドランドのような地方が炭素税を課されるのは不当だと述べた。彼のもとには地元有権者から、炭素税に同調するなという電話が殺到し、今ではトルドー首相に対する怨嗟の声すら届いているという。

 自由党の党則は、党首の信任投票を任意に実施できるよう定めてはいない。それは、党が総選挙に負けたあとのみ、実施される。自由党の歴代党首はほとんどが首相に就任したので、党首の進退は本人が決めるのが伝統である。ましてや、現職の総理に信任投票など聞いたことがない。
 自由党幹部会は来週、下院召集前にオタワで開催される。

 閣僚たちは、トルドー党首への支持を表明した。マイケル・マクラウド下院議員(ノースウェスト準州選出)は、トルドー党首を支持するが、総選挙後に信任投票を行うことに反対しないと語った。
「私は、次の選挙もトルドー党首でかまわないと思う。彼が留任したいなら、私はかまわない。だが信任投票したいという考えが幹部会にあるなら、それが問題だとは思わない。」

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