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THE・創作活動コミュのドイツ、無賃滞在 第1章 1

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フランクフルトのエロじじい・1

 来たる6月28日。ついに私の野望を乗せた飛行機は、フランクフルト空港に到着した。大して不安なぞ抱いちゃいなかった。滞在先が決まっていたから。ドイツ語は大学で若干やってたが、ろくすっぽできなかった。でも英語しゃべれるもんねー。ドイツ人ほとんどみんな英語できるもんねー。と、何のためにドイツでワーホリするんだかっつー考えであった。
 その滞在先というのは。前年の夏、フランクフルトに一日だけ滞在したのだが、その時知り合ったおじさん、ジャック。彼の家である。彼はフランスからの移民で、日本語を勉強している。キオスク(日本でいうとこのコンビニ。しょぼいしすぐ閉まるけど)を経営しており、そこに、
「私は日本語を勉強しています。日本人のみなさん、気軽に声をかけてください。」
という、張り紙をしている。今思えば怪しいことこの上ない張り紙。これを見かけた私は、キオスクに入ってみた。日本行きの飛行機出発まで、あと半日、という退屈な状況も手伝った。
 話を聞くと、彼はすでに日本人留学生などをホームステイさせているとか。
「月100ユーロで、ちょっとキオスクを手伝ってくれればいいんだよ。」
当時は1ユーロ143円程度。超お得である。
 それがきっかけで、約一年、ジャックとつかず離れずでメールのやり取りをした。
 そして今回。空港を出ると、おお!ジャックがちゃんと待っていてくれてるではないか!しかもW杯の時期だったので、彼は日の丸に『必勝!』と書かれたハチマキをしていた。…即刻負けたけどね、日本。今思えばこれも悪魔のせいかも…。
 そんな感じで、私のドイツ生活は順調に走り出した。かに見えた。

 まず私は妻のイザベラの指揮下に置かれた。彼女の助力により、無事住民登録を終えた。銀行口座開設も手伝ってくれた。結局開かなかったけど。だって、管理費とかいって、月に7ユーロも払えと。相当ふざけてる。
 ジャック宅滞在中のゆいこさんという人も、
「銀行口座とか別に必要ないよ。私がワーホリしてたときも、全然作ろうとも思わなかったもん。」
と言ってた。なので、開く気をなくした。イザベラは別の銀行も調べてくれたけど。
「こっちの銀行は4ユーロよ。3ユーロも安いわよ。」
でも私は日本人。口座管理費タダは当たり前。そんな国から来た私は、たとえ3ユーロ安くても、とにかく払うのがいや。だいたいさ、4ユーロあったらビールが1.5杯飲めますよ?
「日本は『うちで口座持ってくれてありがとうございます』でしょ?ドイツは『あんたの金管理してやってる』だからね。」
以上がゆいこさんのお言葉。
 さて、ゆいこさんについて説明しておこう。彼女は私のドイツ滞在において、重要な役割を果たすことになる。
 ゆいこさん:年齢不詳。苗字不詳。まずドイツにはワーホリでやって来て、なぜかそのまま滞在し、もう現在3年目。だそうだ。観光ビザを延ばし延ばし、たまーに日本に戻り、で、現在に至る。一応、違法滞在ではないようだが、詳細はやはり不明である。

 イザベラのシフトは午後。なので、私は最初の週、午前中は家でだらだら、午後はイザベラの手伝い、といった感じで過ごした。学校は来週ジャックが安いところに連れて行ってくれるとか。
 はっきり言って、イザベラシフトでは本気でやることがなかった。ゲイのアルフレッドがバイトで入ってたし。午前中はサチコさんというワーホリの女性が、ジャックシフトで入っていた。
 ところで、この時ケイトさんという、やっぱりワーホリの日本人女性が、キオスクに寄り付いていた。滞在はホテルで、キオスクにはタダでネットをしに来ていた。で、ジャックが彼女に半恋状態だったと、後になってゆいこさんに聞いた。表面上はケイトさん、サチコさん、私全員平等に親切ではあったが。

 この事件は、たしか週末だったと思う。ジャックが酔っぱらって、W杯フランス戦の後、キオスクから家に電話をかけてきた。
「フランスが勝ったぞ!!パーティーだ!!今タクシーをそっちに向かわせてるからこっちに来なさい!!」
サチコさんとケイトさんと共にテレビで観戦し、これから夕食って時。
「は?今から?」
「タクシー10分くらいで来るって。」
全員パジャマだったのに、大慌てで着替え、やって来たタクシーに、わけが分からないまま乗り込んだ。
「パーティーって、ドイツ人とかいっぱい来るのかな?」
「イケメン来るかな?」
ちょっとわくわくしつつ、キオスクに向かった。
 そこで待っていたものは。
「いらっしゃーい!こんばんはー!」
キオスクで店番をしつつ、ジャックは私たちに声をかけた。
「店終わってからパーティー行くのかな?」
しばらく待っても店を閉めようとする気配はない。
「パーティーはどこであんの?お腹すいたんだけど。」
しびれを切らした私たちの誰かが聞いた。
「街中がパーティーじゃないか!!」
ジャックは答えた。は?いや、確かに、あちこちで車がクラクションをガンガン鳴らし、フランスの国旗をかぶった若者がビール瓶片手に何かを叫んでいますけど。
「あのー、それはそうとお腹すいたんだけど。」
確かこれはケイトさんが言ったんだと思う。よく覚えてない。
 すると、ジャックはピザの空き箱を見せ、
「俺とイザベラはピザを食ったぞ。うまかった。君たちも食いに行ったら?」
そしてピザ屋の広告を手渡した。
 なんとなくそちらに向かう私たち。家にはゆいこさんが作った夕食があるんだけどなー。なんでこんな無意味なピザに金を出さねばならん?
「え?そこのピザ屋でパーティーがあるから、先に行って待ってろってこと?」
おっと、一人理解していない人がいた。サチコさんだ。
「いや、単にここのピザ屋のピザはうまかったってことでしょ?」
「ああ、食ったって言ってた。」
ケイトさんと私は言った。
「は!?」
その言葉に激怒したサチコさん。
「は!?ピザ買って食べろってこと!?じゃあ帰るよ!!なんのために呼んだわけ!?」
そしてピザ屋方面からキオスクにUターンし、サチコさんはジャックにそう告げた。サチコさん…、私より絶対金あるのにな。この節約精神。
 ジャックは、
「この雰囲気を君たちに伝えたかったんだ。街中がお祭りだぞ。こんなことめったにないよ。」
しかし空腹の女3人は完全にしらけていた。というより、一人は完全にキレていた。結局そのままタクシーに乗って帰宅し、ゆいこさんの手料理を食べた。

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