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お下書房コミュの第参話 幻想のKANSAI

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公園で休養をとった俺たちは再び歩きだした。
ここは難波、目指すは道頓堀だ。
阪神が優勝したら信者が川に飛び込む橋のある、あの道頓堀だ。

この道頓堀、大きな通りが一本貫いている。
その通りはデパートや服屋、飯屋が立ち並ぶ大商店街だ。
ナニワの商魂溢れる商業地だ。

俺たちは女の子しか見ていなかったのだが、
東京の女の子よりもやや派手なお洒落の仕方だった。
こういうのが将来原色大好きケバケバおばタリアンになるのだろう。
しかし今はまだ彼女達は若い。
尻をふりながら関西弁を喋り、道頓堀を練り歩く彼女達。
イイ!これはすごくよい風景だ。
ヤンさんは、「いやー、ギザカワユスなぁ〜」
と言ってイジリー岡田のように舌をだしてベロベロ上下させた。
俺はヤンさんを愛しているが、
こういうストレートなところは直すべきだと思う。
一緒にいて恥ずかしい。

道頓堀に来たら名物である食いだおれ人形と、
かに道楽の看板が目についた。
大阪のおばはんや観光客がこの二つのいわば
大阪の象徴にひざまづいて祈りを捧げていた。
中には熱心に手をすり合わせている祈祷氏もいた。
「食いだおれさま〜、我々を食いだおれさせたまえ〜、
かに道楽の神よ〜、もっと我々に道楽を〜」

人々はこれらの前でこのようなことを
さけんではひざまづいて頭を下げていた。
これじゃまるで何かの狂信者の集団だ。
俺たちは呆れてここを通り過ぎた。

表通りは商店街が続くが少し道をはずれると連れ込み宿、
キャバレー、ホストクラブなど一気に卑猥な建物が立ち並ぶ。
そして客引きの恐い兄さんや化粧の濃い水商売の女たちが
闊歩している。歌舞伎町と何ら変わるところはない。
そういういかがわしいところへはなるべく
行きたいと思っていたので、
俺はヤンさんと手をつないで通りに入っていった。

「・・・入ってきました、ヤクーザさま」
髪の長い二枚目の男が耳からレーダーをはずし、
振りかえって背後の小男に言った。
「リーゼントのでかい男が一人。なかなか男前や。
おっ、こっちは関西からきた奴やな。
何やこいつヤク中か。二人とも若いな」

長髪二枚目男に話し掛けられたヤクーザと呼ばれた男が
目の前の画面に現れた二人の男を見て言った。
「ねぇ、あの二人どうするんや☆」
ヤクーザの膝のうえに座った化粧の濃い水商売風の女が
ヤクーザの耳元でつぶやいた。ヤクーザが答えた。
「ホストー、キャバージョ!
あの二人にここミナミの恐さを教えてやれや!
なめたらあかんで大阪を」

ホストーは目の前のコンピュータの操作をやめて立ち上がり、
キャバージョはヤクーザの膝から飛び降りた。
二人ともヤクーザに向き直り、
「仰せのままに・・・」
「まかしてや☆たらしこんだるねん!」
と宣言して消えた。

暗闇のなか、
たくさんの計器とコンピュータに囲まれた部屋のなかで
ヤクーザだけが座席に座り、不敵な笑みを浮かべた。
「すべての欲望をワイが支配するんや・・・」

俺たちはひと通り淫猥名な通りを練り歩き、
大阪にきたらタコ焼きとお好み焼きというわけで
ひたすら食べまくり、道頓堀の橋の上で一休みして寝転がっていた。

「おい・・・お前達起きろ」
ふいに声がして俺とヤンさんは起き上がった。
「あ、あんたたち誰やねん」
目の前にはホストとキャバ嬢のペアが俺たちを見下ろしていた。
ホストはヤンさんの問い掛けを無視して
ヤンさんの腹を蹴り上げた。
吹っ飛ぶヤンさん。
俺は叫んだ。
「ちょ、待てよ!オマエラいきなりなめんなよ!」
叫ぶ俺の前にキャバ嬢が俺の腕を組んできた。
「兄さん男前やな☆ウチにマンション買うてや」
うっ、この香水の匂いと色気。
腕にあたる胸。
耳元でこう囁かれた俺はうっかり腰が抜けてしまった。
その隙にキャバ嬢は俺を投げ飛ばした。
俺はヤンさんの横に吹っ飛んだ。
「いてて・・・何やねんこいつら」
「いったーっ!なめんなよ」

橋の隅にうずくまる俺たちを見下ろしてホストが尋ねた。
「オマエラ・・・食いだおれ人形を見たのか?」
ヤンさんが答えた。
「見たよ、見たけどそれがどないしたんや!いきなり暴力ふるってきて、いててて」
ホストの顔が凍りついた。
「バ、バカな!あの人形を見て何ともないだと!?」
今度は俺が答えた。
「いてー・・・そうだよ、
おっさんおばはんねーちゃん兄やんが大勢あそこらへんで
ひざまづいて祈ってたけど、ありゃなめんなよ?」

キャバ嬢がへたりこんた。
ドレスの間から見える黒のパンツを俺たちは見逃さなかった。
「嘘や・・・信じられへん。あんたら何者や☆」
キャバ嬢を無視してホストが耳元の通信具に何か言った。
「ヤクーザ様、こ、こいつら。聞こえますか!?」
「・・・すべて聞こえてるで。
あの食いだおれ人形を見て何もないこいつらは何やねん。」
「どうしますか!?」
「とりあえず御堂筋線に乗って動物園前という駅に連れて行き、そこにある通天閣に放り込んでおけ」

ホストとキャバ嬢は俺とヤンさんを起こし上げ、
その通天閣とやらに連れて行った。
無駄な出費は控えたいと俺が言うと切符代はホストが出してくれた。
電車内で俺は必死にキャバ嬢を口説き続け、
何とか携帯番号を手に入れるに至った。

「ほら、ここだ。」
俺とヤンさんは動物園前駅につくや否や、
改札の外に放り出された。
ホストとキャバ嬢の姿は消え、
俺たちのいる通天閣とやらのある大地が浮かび上がった。
俺たちの周囲が大地から切り離され、
通天閣を中心とした大地のプレートが浮かび上がる。

「わっわっ、何だコレは。なめんなよ!」
「通天閣か・・・」
ヤンさんがつぶやいた。「ヤンさん知ってるのか?」
「昔、大阪と東京の間で戦争あったやん?
ほんでな、大阪側の空中要塞が通天閣だって聞いたんや」
俺は頷いた。
「昔の東西大戦は俺も聞いたことがあるからなめんなよ。
それで大阪側の科学力を結集した空中要塞に
東京側はずいぶん苦しめられた。それがこの・・・」
「通天閣や」

俺たちはしばらくそこで押し黙った。
少しして俺から口を開いた。
「で、でも何であのホストたちがこの要塞を
自由に使ってるんだ?なめんなよ」
「そんなん漏れにもわからへん。
ただこんなでかい要塞を再び動かしたということは、
今大阪で何かとてつもないことが
行なわれるかもしれへんってことや」
「ヤンさん・・・」

俺はそれ以上何も言えなかった。
ヤンさんと夢を叶えるためにきたこの一泊二日の予定の旅が
何か大きなことに巻き込まれている。

俺はこの空に浮かぶ大要塞、
通天閣の大地に黙って立ち尽くす他になかった・・・

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