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クトゥルー神話創作小説同盟コミュの水妖祭り投稿作品「不快な臭いがする手紙」

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「不快な臭いがする手紙」

 朝刊を取り出そうとして郵便受けを探った時、下崎秀人教授は、差出人として友人の名が記された茶封筒を発見した。消印から昨日の昼頃に投函されたと思しきその封筒からは、あらゆる種類の汚水が混ざり合ったような、名状しがたい不快な臭いがした。
 一体この臭いは何なのか。教授は疑問に思った。このような臭いが染み付く理由が理解できなかった。少なくとも、友人が住んでいる町には、そのような臭いを放つものなどないはずである。そもそも、これは人為的に作り出せるような臭いではない。何らかの超自然的な慄然たる力が作用している可能性がある。旧友が手紙を書き、封筒を投函し、教授の家に届くまでの一連の過程のどこかで、何らかの異常事態が発生したのかもしれなかった。
 不快な臭いがするというだけでこの結論に到ることの馬鹿馬鹿しさは、教授も理解している。事実、これが何も知らない人間ならば、恐らくは多少、不審に思いながらも、さして気に留めるようなことはしないに違いないのである。或いは、気に留めたとしても、「配達員がどこかの浄水場や工場の近くを通りがかった時にでも臭いが移った」とでも解釈するに違いない。多少の無理があっても特に気にせず、その解釈を受け容れるに違いない。それが「知らないでいる」人間の限界であり、幸福である。
 しかし、教授は「知ってしまった」人間である。彼が「知ってしまった」ことの中には、こういった状況を極めて深刻なものとして受け止めざるを得ない、慄然たる知識がいくつも存在していた。些細な異常からも、何らかの慄然たる力を連想せずにはいられない、憐れな犠牲者なのである。この場合は「この世のものとは思えない信じがたい悪臭」がキーワードである。
 真剣な表情を浮かべ、信じてもいない神に対してこれが単なる手違いであることを祈りつつ、教授は封を切った。
 逆さにして振ってみると、中身が机の上に散らばった。重ねて折り畳まれた数枚の便箋と、裏に番号が振られた八枚の写真、それから錆びの浮いた鍵だった。写真は、教授から真実を可能な限り隠そうとしてでもいるかのように、いずれも裏返しとなっていた。
 適当に写真を捲り、被写体を確認した途端、教授は沈鬱な表情を浮かべた。他の写真にも目を通し、彼は納得と諦観の溜息をついた。
 写真の被写体が「それ」であるならば、写真を収めた封筒に悪臭が染み付いていても不思議ではない。そして、悪臭が染み付いているという時点で、また写真の中の風景が「そう」なっている時点で、全てはどうしようもなくなっている。
 教授の友人は、既に取り返しのつかない状況下に在る。既に死亡しているから取り返しがつかないのか、それとも生存していながらも別の理由で取り返しがつかないのか。そこまではこの時点では判断がつかない。だが、旧友とこれまで通りに言葉を交わすことが最早不可能である、ということだけは確実なように思えた。
 しかし、不思議と悲しみはなかった。慄然たる存在を相手に火遊びをし、その結果、手痛いしっぺ返しを喰らったのであろう友人に対する同情もなかった。あるのは、ただただ無味乾燥とした事実の認識だけだった。教授は自らの心理を、まだ実感が湧かないだけなのだろう、と分析した。実際、こういったものは後々になって響いてくるものなのである。
 八枚の写真の内、六枚の写真の被写体は同一のものだった。一つの物体を上下左右と前後の六方向から撮影したものらしかった。残りの二枚は数百年の歳月に蝕まれた廃屋めいた屋内を写したものだった。
 六枚の写真の被写体は、比較用として並べられたのであろう煙草の箱から察するに、それはおおよそ人間の新生児程度の大きさの人形だった。
 ただし、それを「人」形と表現して良いものかは微妙な問題だった。それは一応、頭部、胸部、腕部、腹部、脚部によって肉体が構成されているといった、人間型生物の特徴を具えてはいる。しかし、奇怪にねじくれた骨格に不気味に隆起した筋肉を纏い、表面を粘液質の鱗で覆い、手足の指に気色の悪い水掻きを具え、魚類或いは両棲類めいた生理的嫌悪を催す顔つきをした、半魚人めいた生物である。そのようなものを象った像を「人の形」と表現するのは、人類に対する冒涜とすら思えた。
 教授は顔を顰めた。しかしそれは、被写体のあまりの醜悪さに嫌悪感を催したためではない。
 この醜い像が何であるのか、理解できなかったからである。クトゥルフ、ダゴン、深きもの――いくらでも例を挙げることはできたが、しかし、いずれもこの像と完璧に合致した存在ではなかった。
 教授の心中に湧き起こった最初のものは、苛立ちと驚きだった。しかし、それはすぐに、好奇心と興奮に変化した。慄然たる存在に関する権威の一人である彼の知識を以てしても判別不能なのである。象られているのは、或いは未だ知られざる神性かもしれない。そして、もしそうであるならば、これは世紀の大発見である。
 知りたい、そして発表したい。それは未知の事象に遭遇した場合、研究者ならば共通して抱く、普遍的な願望である。そして、教授は教導者である前に、一人の研究者だった。
 教授は、被写体に関する説明、それと友人を見舞った出来事に関する説明を求めて、便箋に手を伸ばした。


   * * * *


下崎秀人くんへ

 まず、同封したものが全て揃っているかを確認して貰いたい。
・玄関の鍵
・一から八までの写真
・四枚の便箋

 君のことだから、これを読む前にだいたいのことは見当が付いていることだろうと思う。だから、僕が助けを求めて手紙を送ったのではないことはわかっているだろう。頼みたいのは、僕の救済ではなく、僕がしでかしたことの後始末だ。なお、電話ではなく手紙で連絡しているのは、既に僕の喉が嗄れてしまっていて満足に言葉を発することができなくなってしまったからであり、携帯電話やパソコンその他の電子機器が壊れてしまったからであり、最後の拠り所である使い魔達が既に全滅してしまったからだ。
 ただ働きをさせるつもりはない。報酬は支払う。僕の財産の内、オカルト関係の権利は全て君に譲る。
 妻はともかく、娘、それから弟夫婦が文句を言うかもしれないが、君も何度か会ったことのある安田弁護士に託した遺言書と、君一流の神をも欺く交渉術とで何とかできるだろう。ただ、何につけても万全を尽くす君のことだから心配はいらないだろうが、一応警告しておく。くれぐれも油断しないでくれ。娘以外はあの品々の価値を理解できないだろうが、あの品々の価値を知る者に買取を打診されないとも限らない。そうなった場合、彼らは強硬に娘と妻が持つ相続権を主張するだろう。僕としては死後の財産の行方など基本的にはどうでもいいのだが、それでも彼らのローンの支払いに充てられるよりは、君のような本物の研究者に役立てて貰いたいと、そのくらいのことは思う。なお、仮に娘が研究目的で僕の遺産を求めるようなことがあった場合に関しては、君の善意に期待したい。君ならば、良いように計らってくれるかはともかく、悪いようにはしないだろうと僕は思っている。
 とはいえ、散々大袈裟なことを書きはしたが、それほど期待して貰っても困るのも事実だ。何しろ家にある財産は、七番と八番の写真を見ればわかって貰えるだろうが、今回のことが原因で何から何まで駄目になってしまった。本、電化製品、更には建物、土地までも(正確なところを述べると、現在僕が立てこもっている書斎はパソコンが湿気でやられた以外の被害はないが、いずれ守りを破られて結局はそれ以外の本や棚、家具を台無しにされてしまうに違いない)。だから、既に君を含めた友人一同に貸し出していたおかげで難を逃れることができた一部の品くらいしか、価値のある品物は残っていない。それでも、君がわざわざ頭を下げて僕から借り出すくらいの価値はあるだろうから、見くびって貰っても困るが。
 さて、本題に入ろう。あまり時間がない。それに、日頃、パソコンを使って楽をしていたせいか、久々に万年筆を握ってみると非常に手が疲れる。人生最後に送る手紙なのだからもっと時間をかけたいが、あまり長々と前置きをしているわけにもいかない。
 たぶん、君が気にしているのは僕の安否ではなく、僕の身に何が起こったのかということだろう。だから、そのことについて述べる。
 同封した写真に写っているのは、二ヶ月ほど前に渡米した際、アーカムに住むグッドウィンという古美術商から購入した神像だ。
 君のことだから、写真だけを先に見て知られざる神性の存在を疑ったかもしれない。だが、そんなことはないから、期待しても無駄だ。
 もしかしたら博学な君は既に知っているかもしれないが、一応、わかったことを記しておく。
 これはもともとはインスマスのマーシュ家の所有らしい。だが、別に彼らが大いなるクトゥルフを崇め奉るために製作した品ではない。特定の神性を象ったものではなく、海に棲む大いなる存在全般との交信に用いるため、普遍的な水棲種族を象徴的に象ったものだ。
 つまり、地上で活動する信者達は、これを使ってクトゥルフやダゴンといった者達と連絡を取っていたのだ。また、偉大な存在の魂を受け容れる寄り代としての機能も持っているらしく、或いはかつてクトゥルフやダゴンといった存在が意識だけをこのちっぽけな像に封入し、信者達に託宣を下していたのかもしれない。
 ここまでは、文献などを参照して判明した事実だ。この調査結果の根拠については、この手紙を書き終えた後、別の覚書を残す予定だ。しかし、それだけの猶予があるかも怪しいし、仮に猶予があったとしても君が見る前に覚書が失われてしまう可能性があるから、済まないがあまり期待しないで欲しい。
 さて、ここからは、僕が独自に知った事実を書く。これが本題なのだ。
 この像は、水に関連した連中を強く惹き付けるという機能を持っているらしい。もしかしたら見当外れなことを述べているのかもしれないが、どうもクトゥルフのような水の神性(君と同じく、僕も神性に水や土といった属性を割り当てる理論には懐疑的だ。しかし、その存在が親しむ環境、好む環境、有する能力といった意味での「属性」ならば、カテゴライズの一助とするに吝かではない)に限らず、水に関連した妖魔、霊魂の如き下等な連中にも強い影響力を持っているらしいのだ。
 気づいた時には手遅れだった。気づいた時には既に連中は招かれていた。事態は、どうにもならない、一秒たりとも目が離せない状況にまで陥っていた。
 無論、僕も全くの無防備のままに像を弄繰り回していたわけではない。無知な学生でもあるまいし、そこまで無謀にはなれない。海の勢力を始めとした恐るべき者共による外部からの強烈な働きかけに備えて、きちんと結界を構築しておいた。外部への備えは万全だった。大言壮語が過ぎるかもしれないが、外なる神々以外にあれを破れる者はいないはずだ。だから、あの無貌の使者による気紛れな介入のような、半ば天災めいた偶発的事象を除けば、外部に関しては全く恐れる要素はなかった。そのことは今でも断言できる。
 僕の誤算、失敗は、内部に対する警戒を全く怠っていたことに起因する。像それ自体が外部に向かって働きかけるという可能性を、全く考えていなかったのだ。
 そして、像は水のものども(厳密には違うが、便宜上、水妖と呼ぶ)に対して呼びかけ始めた。これは単なる推測だが、恐らくは我が家に働きかける種々の力、そして僕が集めてきた種々の品が秘めた力の影響を受けて、像の機能が復活したのだろうと思われる。そうでなければ、僕の前にこれを所有していたグッドウィンが、この像から何の影響も受けなかったことの説明がつかない。
 今となっては単なる言い訳に過ぎないが、僕がこの呼びかけの開始に気づけなかったのは仕方のないことだ。結果だけを端的に述べれば、拾った無線機に電源が入ってしまったことに気づけなかったという、実に馬鹿馬鹿しいことになる。しかしこの場合は、無線機を拾った人間が無線機のことを全く理解していなかった、という前提条件が存在するのだ。その辺りの事情も、できれば慮って貰いたい。
 ともあれ、僕が像の性質に気づいたのは、既に家の中に水妖(とは言っても、河童や魚人といった連中が大挙して押し寄せてきたわけではない。我が家を占領したのは、形を持たない、気配だけの下等な連中だった)が侵入してきたその後のことで、全てが手遅れになった後のことだった。真の原因に気づいたのは、押し寄せる水妖が数と力を増し、特別な道具や呪文を準備しなければ到底対処不可能な(そして僕にはそれだけの時間も知恵もないから実質対処不可能な)状況になり、遂には書斎を除いた全てが占領されてしまった後のことだった。
 僕は最初に訪れた水妖を撃退した後、結界に何らかの不備があるのではないかという全く見当外れの推測に到った。結界の点検をしたのだが、一応、異常はそこにあった。主に水回りの結界に、綻びとも穴ともつかない、隙間が生まれていた。
 僕はそれを修繕した。しかし、何度修繕しても翌日になれば既に綻びが生じており、そこからは水妖が這い出してきていた。結局、僕は結界の綻びの原因調査と並行して、水妖の撃退と結界の修繕を行った。
 思えば、その時点で像が原因であることに思い到っていれば、このような事態にはならなかったに違いない。つくづく、結界の異常を含めた数々の見当違いな推論に時間を費やしたことが悔やまれる。妻と娘を脱出させることに成功したこと、そしてこの手紙を君が読んでいることが、せめてもの幸い、この救いがたい事態における唯一の救いと言えるだろう。
 増殖しきった連中は、連中なりに僕の家を居心地のいい場所にしようとしたのだろう。奴らは僕の家に侵入するなり融合を始め、そうして力を増していき、湿気を振り撒き、空気を腐らせ、以前に二人で足を踏み入れたレン高原のおぞましい湿地帯が行楽地か何かのように思えてくるほどの、辺境地獄めいた環境を作り出し始めた。君が開いたこの手紙に染み付いているのだろう悪臭(既に嗅覚が破壊されてしまったのか、僕にはよくわからない。ただ、これを投函するためには反吐が出るような空気の中を突っ切らないといけないから、ポストまでは厳重に密封した容器に入れて運ぶ予定とはいえ、多少は臭いが染み付くに違いないと推測する)を万倍も強くしたような臭気が家を満たしている、と言えば、多少は僕の置かれた状況をわかって貰えることと思う。また、床、壁、家具調度は湿気とそれに付随する異常な力によって腐蝕を始めており、また土地自体も徐々に湿地帯めいた様相を呈してきていると言えば、更によくわかって貰えるだろうと思う。そして、僕の身体自体も少しずつ腐り始めていると述べれば、これ以上ないほどにわかって貰えるだろう。
 さて、これらのことを踏まえた上で、僕の頼みを聞いて貰いたい。
 一刻も早く我が家に来て、然るべき処置を取って欲しい。
 猶予はほとんどない。一応、敷地外への侵蝕を防ぐために結界を構築した(これはかつてトラペゾヘドロンから現れた奴の化身を封じ込める際に、君と僕とで作ったものと同じ奴だ。それにしても、あの時はハッチンソンとハワードには気の毒なことをした)が、ありあわせの材料と道具を使ってその場しのぎのために構築したものだから、長くは持たないだろう。天候の変化で破壊されるか、動物の行動で破壊されるかはわからない。僕は、既に身体が腐り始めていて到底助かる見込みもないことだし、結界の維持と補強のために可能な限り敷地内に留まるつもりでいる。しかし、明日まで生きていられるかどうかも怪しいから、とにかく、結界について保証できるのは数日中だ。
 結界が破壊されれば、集団と言うよりは群体と化した巨大な水妖が溢れ出して際限なく力を増し、この辺りの土地全てを飲み込んでしまうに違いない。可及的速やかな対処を望む。
 具体的に何をして貰うかという話に入る。君には水妖の駆除と像の破壊を頼みたい。水妖は先述した通り、敷地内全体に満ちている。像は例の地下室に安置してある。
 いや、別に駆除しなくても、破壊しなくてもいい。とにかく、手段を問わず、これらを何らかの手段で無害化してくれさえすればそれでいい。もし可能だと言うのであれば水妖を使い魔にしてしまっても構わないし、君の方で像を保管してしまっても構わない。その辺りは君に一任する。

 以上が僕が君に送る最後の手紙だ。君と僕との利害で結びついた友情、そして君の類稀なる知性と有り余る行動力、そして適度な強欲さに対し、前以て感謝の言葉を贈る。

国田一郎

追伸

 先述した通りに僕の身体は腐り始めている。これは水妖が変質させた空気によるものだと思われる。何らかの対策を講じないと君も僕の二の舞だ。くれぐれも気をつけてくれ。
 

   * * * *


 この日から一週間に亘り、下崎秀人教授の講義は全て休講となった。教授の講義を受講している学生達のほとんどが、一切の事情説明のない臨時休講の理由を訝った。
 この件に関してある勇気ある学生がどこか意気消沈した様子の教授に抗議し、事情説明を求めたところ、教授はこのように語ったという。
「友人が急死したという連絡があって、その関係で急に呼ばれたんだ。……彼は私の研究仲間でね、研究関係の遺品の処分を私に一任するという趣旨の遺言書を遺していたんだ。その処理をしていて大学に出られなかったんだよ。……そうだ。確かに君の言う通り、遺品の処分は講義と並行することもできた。だが、そうするわけにいかない事情もあったんだよ。実は故人の家の大掃除をする際、酷い汚れが見つかってね。特殊な薬品を使うことになったんだが、その臭いが身体に染み付いてしまったんだよ。そう、酷い臭いだ。バキュームカーとゴミ捨て場の悪臭を足して三を掛けたような臭いで、とてもではないが、人前に出られるような状態じゃなかった。電車に乗ったら、化学兵器を使ったテロか何かと間違えられかねないくらいだった。……そんな状態で講義に臨むのは、流石にまずいだろう?」

コメント(6)

どうも、一応は古参の部類に入る割に作品投稿数はそれほど多くなく、イベントもこれが初参加というシモダです。
今回、神話においては伝統的なジャンルである「書簡」に挑戦してみました。しかし、ただの書簡ではつまらないとも思ったので、魔術師ないしは「ある程度わかっている」研究者同士の書簡という形を取ることにしました。
内容に関しては、自分で言うのも何ですが、無難過ぎて少し物足りない感じがします。折角日本が舞台なのだから、もっとこう和風の水妖の一つでも出せばよかった、或いはクトゥルフ勢力と日本勢力の関係性の一つでも描けばよかった、と少し後悔しています。
拝見しました。
思えばシモダさんの作品を読むのは久しぶりなような、、、
ついでに・・・どうやらこのイベント、ロケットダッシュは私とシモダさんの二人だけのようですな。笑

書簡スタイルといいますか、こういうタイプは御大HPLも大好きだったスタイルのようですが、いざ書こうとすると意外とやっかいなものですよね。なんせ、事件がすでに起こっていて(あるいわ起こりそうな感じ)で、かつ書き手は文章を書くくらいの力は残っていて、それでいて小説のストーリーにのせて読み進ませたいわけですから。
そういった意味でも、この作品は良作であると思います。
また、随所で登場する四大元素論の否定などは、生粋のラヴクラフティアンなら思わずニヤリというところでしょうか。私も読みながら「うんうん」と同意してました。
 いや、上手いですね……。

 便箋の文体が落ち着いて上品で実に良い感じです。
 書かれてある内容も具体的で、リアリティがあって、よく考えられているなあ……と感心しました。
マンガや映像の作品がこれだけ発達している時代に、小説が対抗できるのは「想像力」を刺激する点だと考えています。
そして、想像力をリアルに掻き立てるのに、「臭覚」を使うのも一つの手段だと考えてきました。
「匂い・臭い」と言うものは瞬時に生々しい記憶を蘇らせてくれるものですからね。
その意味で非常に興味深く読ませていただきました。

「わかっているもの同士」の高踏的衒学的雰囲気が、格調高かったですね。
願望を言えば、もうちょっと「クライマックス」が欲しかったです。あふれ出す強烈な臭気とおぞましき水妖を。
どうも多忙の中ですっかり返信を忘れ去っておりました。
今更ながら、お返事を致そうかと思う次第です。申し訳ありません。

>見越入道氏
お褒めいただきありがとうございます。
ええ、書簡は確かに難しいです。現代を舞台としている場合は特に。通信網が発達してしまったおかげで、メールやら電話やらの「リアルタイムな連絡手段」を潰すことから考えないといけないので。

>旅雨氏
ありがとうございます。
そう言っていただけると、あれこれと書簡集などを読み返し、参考にしてみた甲斐があるというものです。

>槐@アクア氏
お褒めの言葉、ありがとうございます。
悪臭については、これまでに自分が嗅いだことのある「水に関連した嫌な臭い」を思い出し、何とか混ぜ合わせてみました。悪臭として受け取っていただくことができて、非常に嬉しく思います。
後始末は、一応、書こうとも思いましたが、その辺りは主題ではないような気がしたので省くことにしました。どうにも、こういった小説は肝心な部分を謎にしておくのがセオリーなように思うもので。

>龍3氏
コメント、ありがとうございます。
ない知恵を絞って必死に考えた悪臭が、想像力を刺激するだけの存在感を具えるに到ったのだとしたら、作者としては非常に嬉しいです。
クライマックスについては確かに私自身もそう感じています。ただ、あまり具体的なことを書いてしまうと、私の筆力ではむしろ読者が醒めてしまうのではないか、という危惧があります。恐らく私の筆力では、仄めかし、肝心な部分を読者の想像に委ねるのが精一杯で、とても具体的描写で読者の心を沸き立たせることはできないでしょう。
精進あるのみです。

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