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クトゥルー神話創作小説同盟コミュの短編小説:ある晴れた午後の出来事

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「暑いなぁ・・・」
 私は一人、ダラダラと歩いていた。やっと梅雨が明けたと思ったら、ここ数日は本当に暑い日が続いている。もう、夏は目の前だ。
「雨でも降らないかなぁ・・・」
 ブツブツと独り言をつぶやく。雨が降り続けば晴れがいいと言い、晴れが続けば雨がいいと言う。我ながら、自分勝手な女だ・・・。などと思いながら相も変わらずダラダラと歩き続けていた。
 私は家に帰るため、学校の裏山を抜けようとしていた。家まで、こっちのルートのほうが近いのだ。それに道は土が剥き出しであり、アスファルトに比べたら熱の反射はマシだ。まあ、それでも、暑いものは暑いんだどけど・・・。
 そうこうするうちに、裏山に広がる雑木林へと入る。やっとここでひと息つけた。密集した木々が作る影のおかげで多少暑さがマシになる。しばし、立ちつくし、この清涼感を堪能すると、再びダラダラと歩き出す。
「うわぁ〜〜、いやだなぁ・・・」
 数メートル先に雑木林が切れ、再び太陽の当たる一画が見えた。流石にそこを回避することは無理だ。ため息を一つつくと、イヤイヤながら、太陽の当たる灼熱地獄の一画に足を踏み入れる。
「ぎゃ〜〜、あつい〜〜、太陽のばか〜〜」
 もうこうなると文句しか出てこない。
 
 陽光を嫌々浴びながら歩いていると、ふとなにげに右の方向へと目を向けた。そこには雑草に囲まれた沼があった。太陽が光を降り注いでいるが、その濁った水面は一切反射させることはなかった。さすがの私でもここで水浴びをしたいと思わなかった。もっとキレイな水だったら、喜んで飛び込むのになぁ・・・。
 こんなくだらないことを考えるのは、もう暑さでグタグタになった脳のせいだろう。早く家に帰って涼みたい。その一心で足を動かす。
 数メートル先に、また雑木林が見えた。そこにいけばちょっとはマシになるだろう。
「がんばれー、わたしー」
 と、自分で自分を応援したものの、動作はあまりにも緩慢である。一歩一歩が重い。
「あーあ、雨でも降らないかなぁ」
 今日、数十回目のセリフを言う。すると、一匹のカエルが鳴き出した。どうやら、沼に住んでいるカエルのようだ。
「おお、お前も雨が欲しいのか」
 私は沼にいる姿の見せないカエルに言ってやった。それに続くかのようにニ、三匹と鳴き出し始めた。それはさらに続き、数匹になり、数十匹へと増えた。急に鳴き出したカエルに不自然さを感じ時だった。ポツリと頬になにかが当たった。まさかという思いで、私は空を見上げた。太陽はまだ、その存在感を誇示している。雲など一つもない晴天。なのに、ポツリポツリと連続して雨が降って来たのだ。
「おお、キツネの嫁入りかぁ」
珍しいモノを見た。私の祈りが天に届いのだ。降ってきたのは小雨程度だったのだが、これで家に帰るまでの英気を養うことができる。私は、嬉しさのあまり躍ってしまいたい気分だった。
 しかし、それで終りはしなかった。数十匹のカエルが異常なほどに鳴き声を高くしていき、大合唱となった。突然のことで、私は面食らった。その大合唱に合わせるかのように雨足がさらに強くなってくる。これは流石に喜んでいる場合ではない。鞄を傘代わりにし、とりあえず先にある雑木林の中で雨をしのごうと思った。その矢先、沼に影が見えた。「なんだろう」と考えている暇もなく沼の水面が盛り上がり、それは現れた。
 白無垢の衣装を着たカエルだった。
 背丈は私と同じぐらいある。ただのカエルというよりもカエル人間と呼ぶべきなのだろうか。しかも、出てきたのは一匹ではない。その手を引いているカエル人間もいた。こちらは、紋付袴で正装している。その後ろに同じ格好をしたカエル人間がさらに4人いた。見るからに、花嫁とその連れ添いといった感じのするカエル人間の一団だ。
 もう、私にとっては悪夢のような光景だった。晴天でありながら、どしゃぶりの雨の中、カエルの大合唱をBGMに、カエル人間の花嫁とその一団が、沼からでてくる・・・。
 今日、掃除をさぼったのがいけなかったのだろうか。
 
 私が呆然とその光景を見ていると、あろうことか、こちらに歩み始めたのだ。私は、慌てて前方の雑木林へと逃げる。もうちょっとという所で、目の前にいる人物を発見し、私はその場で凍りついてしまった。雑木林の入口に、一人の立派なカエル人間が立っていたのだ。その後ろには、従えるようにさらに6人ほどの人影も見えた。
 先頭に立っていたカエル人間はその立派ないでたちからして、花婿のように見える。その花婿が私に向かって急に走り出した。私は、恐怖に駆られ、身動きがとれないまま、思わず目を閉じてしまった。
 しばらく、緊迫した時間が流れる。しかし、いくらまっても、何も起こらない。恐る恐るまぶたを開いてみた。そして、私は目の前の驚くべき光景を見た瞬間、年頃の娘でありながら、だらしなく口を大きく開けてしまった。
 花婿カエルと花嫁カエルが、私の目の前で、接吻を交わしていたのだ。しかも、かなり濃厚で、その状態はたっぷり三分間は続けていた。満足したのだろうか、どちらともなく離れると、花婿カエルは花嫁カエルの手を取り、しずしずと元来た雑木林の方へと歩き始めた。そして、二人を囲むように他のカエル人間達が取り巻くと雑木林の奥へと消え去ってしまった。

 私がやっと自分を取り戻した時には、そこには誰もいなかった。カエルももう鳴いていなかった。あれほど降っていた雨もやんでいた。ただ、青い空で太陽がこれでもか、っていうぐらい輝いているだけだった。そういえば、この雑木林を抜け、少し行った所に小さい湖があるのを思い出す。
「あーーーー、キツネの嫁入りならぬ、カエルの嫁入りだったのかなぁ?」
 私の疑問に、もちろん誰も答えてくれる人物などいなかった。ま、当然かぁ・・・。

今日はホントに暑い日だ。この調子ならずぶ濡れになった制服も下着もじき乾くだろう。
「もう、家帰って、寝よ。うん、そうしよう」
 私は、誰に言うのでもなくつぶやくと、鞄を持ち直しダラダラと歩き出した。そう、何事もなかったかのように・・・。
 

コメント(2)

え〜、久々の投稿ですw
なので、上手くできてるか心配です^^;

イベント用に、ネタを考えてる途中に突発的に思いつきました。折角、思いついたんで投稿してみましたw

自分で書いていて、変な話だなぁ、こんなんでいいのかなぁと思いながら仕上げてみましたw ですので、読んでいただければ嬉しいです^^
丁度、時節柄のタイミングでこの小説を読むことが出来ました。
「私」の独り言も可愛らさがさることながら、行間に初夏の憂鬱な暑さがしっかりと伝わってきました。うんうん、分かると。

そしてやはり特筆すべきは話のテーマでしょう。読み進めていくうちに何となくオチは想像つくのですが、余りの花婿、花嫁のキュートさに読み惚れました。
場面自体を想像するとオエっと思うのですがなぜだか、微笑ましい。
果たして、夢か現実か?
こういう奇妙な味テイストのお話大好きです!

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