マイケル・デ・バレス64歳、すっかりTVシリーズや映画の俳優として落ち着いたかと思っていたら、原点回帰というか悪ガキ青春時代に戻ってSilverhead再結成。1974年の来日公演から38年ぶりに凱旋公演って、普通に考えてありえないことだ。まして、仮にそれが叶ったにせよ、その38年前のメンバーから一人も欠けることなく5人のロッカーたちがやってくるなんて、まさしく奇跡であり魔法だったとしか言葉にならない。 もちろん、メンバーたちのロックバンドに対する思いと意地もある。今回ある意味のリーダーはドラムのピート・トンプソンと奥様のアンジーだ。おそらくは、「このまま人生が終わったら死にきれない。俺たちは最高にいかしたロックンロール・バンドだった」と。不運もあって2枚のレコードを残して2年で解散。しかし、いい曲を残したという自信はあったに違いない。日本では受けたのだ。まして、「日本からは未だにSilverheadがどうたらとの連絡もある」という。2001年には突如として『熱狂のライヴSHOW ME EVERYTHING』なるライブ音源がインディーからCD化されていた。 他のメンバーたちも同じだった。ギターのロビー・ブラントは、ロバート・プラントとの活躍以降も、セッションの方で尊敬されていたものの近年はシーンからお呼びがかからなくなっていた。しかし、Hello New Yorkで幕を開けたセットは、Heavy Hammer、Rolling with my Babyと続いて、ロビーのスライドギターがうなりをあげ、英国一流のロック・ミュージシャン健在であることを見せつけてくれたのだ。3曲目は故ケヴィン・ダブロウも2004年のソロ作『In For The Kill』でカバーしていた。 そのロビーは今回、まさに来日してホテルにチェックインしたその時、お母様が亡くなったことを告げられている。しかし、Show Must Go Onなのだ。More Than Your Mouth Can Holdは、俳優業と並行してロック歌手活動を続けているマイケル・デ・バレスが、今でも現在のバンドとのギグで取り上げたりしている、「お口にほおばれないでっかいナニ」についてのHな歌詞の佳作。しかし、YouTubeで聞ける2010年のバージョンは今風にアレンジされてしまっていて、原曲の迫力に欠けると思っていた筆者などは、またしてもロビーのスライドギターがギンギンに迫る今回の演奏に涙がこぼれた。
Silverheadは1972年『恐るべきシルバーヘッド』と題された処女作でデビュー。レコードの帯には「我が兄弟の悪魔の栄光をシルバーヘッドの頭上に!」という、故・今野雄二さんによる叩き文句が踊り、Music Life誌などに掲載されたグラムロックなビジュアルと合わせて筆者らの世代を直撃した。 マイケルはメロディーメイカー誌にメンバー募集の広告「求む エロティックでリラックスしたミュージシャン」を告知、「ロック界のルドルフ・ヴァレンティノ(サイレント映画時代の美貌俳優)」だと1974年レインボー・シアターでの『電撃ライブ』MCで紹介されたロッド・ロック・ディヴィスら、マイケル曰く「僕が鏡を買ったとき奴等が抜け出てきたんだ」というハンサム面子が集結した逸話がある。 先に不運と記したが、なにか腐して論評するのが専門家の仕事とばかりに、「デビューに際しては持ち上げすぎた」から、「LIVEは荒削り」みたいな活字だけが長年残ってしまい、誤った印象を持たれてしまったことが残念でならない。ローリング・ストーンズだって演奏はそこそこな部類だったし、今でこそ修正版DVDなどが出回っているが、ジミー・ペイジはミスを連発していた。確かにレコードと寸分たがわぬ再現をこなすバンドは同時代から存在したが、観客への煽りとノリで楽しいステージを繰り広げる系統は、主眼が違うとしか答えようがない。 実際、超カッコいいジジイたちの熱狂ロックンロール・バンドというのは、今回もう、とにかく凄いとしか表現がなかった。舞台にせよ音にせよギミックなんかまったくなく、いわゆるキーボートなしのストレートな剛速球でゴリゴリ押してくる。このシンプル編成は約40年前から完成形を迎えているが、60歳代のバンドが肝心のノリを今もなお維持して魅せられるというのがどれだけ画期的なことか。マイケルのエンタテイナーとしての並外れた才能とフロントマンとしての仕切りが大きいにせよ、ノリを出せるかどうかは演奏再現力の上手い下手とは別次元である。 2日連続のLIVEにせよ、どうしても粗を探したい評論家なら、唯一のバラード曲Only Youでロッドのギターがロブで合ってない箇所があった等の指摘は可能ながら、2日目にはちゃんと修正されていた事実もあった。この名曲は、そのロッドのメロディに、マイケルが歌詞を乗せたものだが、初日のみ「最初の妻に捧げます」というMCが入り、すかさず客席から「パメラ!」(元祖グルーピー)の声が飛んでいた。 マイケルは「ジャンキー」だと相槌していたゾ。ロッドは音楽業界から消えてしまったにせよ、白髪になってもハンサムは変わらず。なにより数多くの名曲がまったく色褪せなかった驚愕への貢献は絶大だ。 当時まんまのベスト選曲じゃファン・サービスにならないと考えたのか、ハリウッド俳優ネタはJames Deanだけじゃないとばかりに、「新曲やります。いや、当時作ったものだけど」と、Marilynを披露したのも素晴らしい。雑誌インタビューでは「マリリン・モンローの曲もある」と公言されていたものの、現在残っている音源にはいずれも収録されていない幻の作品。長年追いかけてきた者を大いに喜ばせた。 ベースのナイジェル・ハリソンは、Uriah Heepのゲイリー・セインと並んでメロディックなリード・ベースラインで知られ、のちにブロンディに迎えられた。当時はRock Out Claudette Rock Outの歌詞にあるように、バンド内でからかわれる年少者的な扱いだったのに、今回はメガネ姿でなにか一番老けて見えたかも。
Hello New York Heavy Hammer Rolling with my Baby Sold me down the River Ace Supreme More Than Your Mouth Can Hold Marilyn Rock Out Claudette Rock Out Long Legged Lisa James Dean Bright Light 16 & Savaged
映画『The Man from Elysian Fields』(2001) なぜか邦題は『エゴイスト』
アンディ・ガルシア主演・制作 ミック・ジャガーがエスコート・サービスの親玉役、売れない作家で金のないアンディがお仕事にハマっていく作品なんだけど、パメラ繋がりもあるのか、アンディの先輩エスコートにマイケル・デ・バレスが・・・。