ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

宇宙より。コミュの第1章 サトシ、宇宙人と遭遇

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
僕はサトシ。名古屋市の郊外で、
寂れたラーメン屋の雇われ店長をしている。
今日も深夜2時に店を閉め、家路に向かうその時・・・

コメント(60)

・・・・・・・・・

大きな月が見える。
草むらに仰向けで、サトシは目を覚ました。
萌える匂いで、さっきまで目にしていた
超現実が夢であったとサトシは感じた。
「はぁ・・勘弁してくれよ!
明日は早番なんだから!
一体どうしちゃったっていうの〜」
訳が解らない自分に呆れる、と同時に
なんだか笑いが込み上げて来た。
「ふふふふっあははははは」
するとサトシの顔を覗き込む者がいた。
「わっ!!」
サトシは驚き跳ね起きた。
「な〜んだ・・こぎたねぇガキかぁ〜」
そこには、白髪交じりの男が立っていた。
「草っ原が光りだして、こりゃ竹取の
爺さんとこみたいに大金持ちになれると思って
とんでくりゃ、変なワラジ履いた汚ねえガキが
寝転んでやがって・・・損したわい!」
「ワラジ?」
「天下泰平って言ったって、泰平は
侍だけ。百姓は飢えてポクポク死んどりゃ
あ〜あ腹減った。」
「えっ爺さん・・・天下泰平って?」
「なにゆうとるの、尾張の殿様の代だがや」
「はぁ・・えど・・・
えーーーっ!!江戸〜っ!!」
見渡してみれば、信号もなければコンビニもない。
少し遠くに人が歩いているが
洋服姿ではない。
しかも行灯なぞ手に持っているではないか。

「あ、もしかして映画村とか?」
・・・爺さんの話す言葉は名古屋弁である。
自力でなんとかなる事態ではないことを悟ったサトシは
爺さんに全てを委ねることにした。
江戸時代でも百姓でもいい
ただ生きていたい。
サトシは爺さんの後を追いかけた。
「あの〜撮影ではないですよね?」
「さ・つ・え・い・・・・?
なに訳の解らんことゆうとりゃ〜す!
ちょぉついてこんといてぇや。」
爺さんは足を速めた。
「ちょっと教えてください!
お願いします。
今、何月何日ですか?」
サトシは取りあえず時間が知りたかった。
「・・・・ふ〜ん」
爺さんは、サトシの足元をチラッと見て
少し考えてから
「その変なワラジを、わしにくれ!!
よこしたら教えてやるわ!」
サトシの黄色に黒のラインのはいった
スニーカーが気になったのか
足元を見るとはこのことだ。
「えつ!このスニーカー?
・・・・いいですよ。」
その時!
「ダメだ!!そんなことをしたら
帰れなくなるぞ!」
という声が聞えた。
ス、スニーカーから聞える・・・・
・・・もしかして
これを手放すと、もう二度と元の世界には
戻れないのかも・・・
気が遠くなるような恐怖を感じたサトシは
「こ、これはですね、大変汚い履物ですので」
そう断った。
「ふん。じゃええわ。うちは子供もおらんし
畑仕事を手伝ってもらえたら飯くらい食わせてやろう
思っとったがのう」
ここで見放されては身動きの取れないサトシは
慌てて言った。
「あ、あの、ちょっと待ってください!」
「その、これは渡すことができないんです。その、本当にすみません・・・」
サトシはうつむき、涙ぐんでしまった。
爺さんはその様子をみてフッと息をついた。
「童(わらし)ぁ、家どごだ?ないんか?ないならワシんとこさこいやぁ」
「え?」
サトシは爺さんの顔を見つめた。
「ん?」
爺さんは優しく微笑んでいる。
サトシの瞳から大粒の涙がボロボロと流れ出た。
自分でも気づかなかった不安が爺さんの優しい顔を見たとたん一気に溢れ出したのだ。
「爺さん〜〜〜」
「あぁ、泣くな泣くな。男が泣くもんじゃない」
爺さんがなだめた。
さとしは、密かに「この、ゴウツクじじぃが」と思っていたことを恥じ、爺さんに抱きつきワンワンと泣いた。
予想外の展開に少し戸惑いながら爺さんの後を歩く。
「取りあえず爺さんの家に暫く厄介になるか。
ところで、さっきのあの声は?・・・」
するとまた聞えてきた!!
「オイッ!どんなことがあっても
オレから離れるんじゃないゾ。」
「オレからって、君はスニーカーだろ!」
「しゃべる必要は無い!オレは直接お前の脳と会話している。ああ、型で言えばそう呼ぶのだが、まぁ平たく言えば
お前のナビゲーターだ!!」
「ナビゲーター?」
「そんなことはどおでもいい。
いいか、お前は実際に戻るべき時間をオーバーラン
してしまった。どうもお前は調子が悪いみたいだ。
この時間は徐々に速度をあげて戻ろうとする。
従ってお前との間に歪が出来て色々な障害が起こる。
気をつけろ!!」
「気を付けろって・・・
ねぇ今は江戸時代なの?」
「江戸じゃぁない!!織田だ!織田信長の時代だ」
「はぁまたベタな所にきちゃったなぁ・・・」
ぶつぶつ言っているうちに
「ほれ、小僧着いたがや。」
爺さんが言った。
その家は、茅葺で今にも崩れそうだった。
崩れ落ちそうな屋根を眺めつつ、サトシは中に入った。
・・・本当に時代劇で見た庶民の暮らしだった。
囲炉裏があり、少しの食器や鍋、着物がある
だけで、爺さん一人の為かこれといって何もない家だ。
どこに座ったらいいのか、何をしたら良いのか
見当もつかないので、しばらく土間にぼんやりと
佇んでいた。
すると、
爺さんは筵のような布団をひいて
「ほれ!明日も早いで、早く寝ろ!!
お前の布団は無いから好いたところで
寝やぁせ。」と言って明かりを消した。
暗くなった部屋に、月の明かりが
隙間から差し込んでいる。
柱に寄りかかりながらサトシはしゃがみ込んだ。
「ワケわかんねぇなぁ。」
深く長くため息を吐いた。
その時、
外で、ガサガサと物音がする。
「も、もしかして熊?とか狼とか?」
サトシは怖くなって、爺さんを起こすことにした。

「爺さん!外になんかいるんだよ!」
「・・・動物だ。気にせんでええから寝ろ」

そう言うとまた眠りこんでしまう。
そんなことを言われてもこの家では
熊に押しつぶされそうな気がする・・・
サトシは一人あたふたしている。

と、急に静まり返った途端
外から小さな声がした。
「サトシくんでしょ?開けて」
サトシは耳を疑った。
爺さんにさえ自分の名前を言ってもいないのに
なぜ名前を呼ばれるのか?
「サトシくん、開けてよ!」
ほんの少しだけ調子が強まって
再び声がした。
サトシは迷った・・・
すると今度は
(ダメだ!!開けてはいけない!
君を知っている人間に異なった
時間で会うのは危険だ!)
と、スニーカーの声が聞えた。
(だって・・ボクを呼んでいる)
(ダメだ!!その人間が
どの様な手段、状況でここに居るのか
わからない以上、危険だ!!)
(でも・・)
サトシは、なぜかしらその声に
不思議な懐かしさを感じていた。
そしてその戸を開けずにはいられない
衝動がドンドンとサトシの心を叩いた。
「なるようになるさぁ!!」
サトシは跳ね起き
戸を開けた。
・・・・・・・・
「き、君は!!」
・・・そこにはサトシが店長をしている
ラーメン店のバイトのジュンコが立っていた。
バイトの分際で店長であるサトシを名前呼びし、
叱り付ける生意気なフリーター女だ。

「だ〜から店長って呼びなさいって何回・・・」
「そんなコト言ってる場合じゃないでしょ」
確かにそうである。

「あのさ、あたし携帯を店に忘れてて
取りにもどったらサトシくんの靴が道路に落ちてたんだよ」
靴を拾った途端、気を失って
目が覚めたら爺さんとサトシを見つけ
ここまで追ってきたという。

・・・それにしても何故この女なのか・・・
他にも人間はいるというのに
よりによってジュンコとは!
せめて憧れのサトミであれば
江戸時代でも我慢できそうなものだ。
そんな思いを読み取ったのか
ジュンコがサトシに詰め寄ってきた。
「ちょっとさ〜早く帰りたいんだけど。
しかもアンタ、なんでお前なんだとか思ってるでしょ」
「店長って呼べ!!」

あまりの騒がしさに爺さんが起きて来た。
「オイ!!何ごそごそやっとるんだぎゃ」
手元の行灯に火をつけると
サトシとジュンコが浮かび上がった。
「この野郎〜女なんか引っ張り込みやがって!」
さすがに百姓!爺さんでも力がある。
サトシの胸倉をグイッと掴むと
右手の握りこぶしを高く振り上げた。
「わっわっ ち・違う違う!!
よく見てガキだ!ガキだよ!」
「あ〜ん、ガキだぁ〜?・・・」
爺さんは、ジュンコを頭の天辺から
つま先まで眺め
「なぁ〜んだ。ガキきゃぁ・・
て、何でここにおるんだ?」
「何でって・・・えーっと、えーっと」
サトシは焦った。
「えーっと、えーっと、イモ、イモ
イモウト、そう、妹です。」
苦し紛れに出たのが妹かぁ〜
なんだかチョーベタだなぁ
と、サトシは思った。
そしてチラッとジュンコを見てみると
笑ってる・・・
ジュンコは
にこにこ笑ってやがる!!
「ごめんなさい!兄がお世話になってるみたいで・・・
なんでもしますので 私達ここにおいてもらえませんか?」
「野良仕事はしんどいぞ ええんかい」

はあ???なんで俺を差し置いて話が進んでるんだ?
しかも爺さん、隣に家を建てたらとか
喜んでるじゃないか!
・・・いつの時代も若い女は得なんだなぁ。
 百姓の朝は早い・・・・
一番鶏が鳴けば、もう起き出す。
「こら!いつまでも寝とる!!」
と、爺さんはサトシの尻を蹴り上げた。
「いててっ」
土間に転がり落ちてサトシは目を覚ました。
ジュンコはと見ると、釜戸に火を熾し
湯を沸かし、お茶の準備をしていた。
「妹のほうは働き者だぎゃ!
お前は畑で野良仕事だぎゃ。」
爺さんはサトシの耳を引っ張り
外へと連れ出した。
(なっなんで?オレだけ?)
「オレ、飯まだなんですけど」
「とろくさいわ!働きもせんで!!」
(くっそ〜!エロジジイめジュンコの
幼児体型にやられたなぁ)
まだ陽も昇らない畦道をジジイに文句を
言われながらサトシは歩いて行った。
「お前は昼までにここ全部やっとけや」

言われた方を見ると
とてつもなく荒地である・・・
サトシは唖然としながらも 鍬を持つ手を動かした。

しばらくするとガツンと手ごたえがあり、
サトシは手を止めた。
大きな石があるのかと、手で掘り起こしてみると
そこには・・・
みかん箱位の木の箱があった。
鍵が掛けられており、妙に重たい。
サトシは持っていた鍬で抉じ開けた。
すると、
大判、小判が・・・・
サトシは、ハッと爺さんを見た。
離れた畦で煙草を吹かしていた。
(やったぁ〜!大金持ちだぁー!
爺さんも気付いていないし。
これで不自由無く暮らせるぞ!)
サトシは、そっと土の中へ埋め戻し
何食わぬ顔で耕し始めた。
「オイ!!手を付けてはダメだ。」
と、スニーカーの声が聞えた。
「バカヤロ!何でだよ!
これさえあれば、あんなジジイに
ペコペコしなくってもいいんだぞ!」
「お前は何もわかっていない。
本来の時間ではないところに居るんだぞ!
出来るだけ関わる影響は少ないほうが
いいんだ。」
「アホくさ!!」
すると、爺さんが
「こら〜何ぶつぶついっとるだぎゃ!
手休めるなぁ!!」
「すいませ〜ん」
(へへっ何にも知らんと
よ〜し。今晩脱出だぁー)
振るう鍬にも力が入る。
と、遠くのほうからジュンコの声が・・・
「おにいちゃ〜ん おにぎり持ってきたよ!」

く、来るな!
サトシは念じたが、もちろん伝わらず
ジュンコはどんどん駆け寄ってくる。
「畑を耕してたら大判小判がザックザクとかだといいねえ」
・・・何故、女ってやつは勘が鋭いのだろうか・・・
「何これ?もしかして落とし穴?はは〜ん」
サトシが折角埋めた穴を
ジュンコは嬉しげに手で掘り返している。
数秒の内にあっけなく箱は見つけられてしまった。

「うわああああ何これっ!爺ちゃんちょっと来て!」
馬鹿!何で爺さん呼ぶんだよ!
・・・・・・・・・
黄金色に輝く爺さんの顔!!
笑って開けた口の前歯の無い顔が
無性に腹立たしい。
ジュンコは・・・・
な、なんで・・・・
一緒になって笑っている。

サトシの野望は一瞬にして潰えてしまった。
サトシはジュンコの手を引っ張って
そばに寄せ、小声だが強い調子で
「バカ!なんで爺さんを呼ぶんだよ。」
と、叱った。それでもジュンコは笑いながら
「エーッ!だってみんなで見つけたんだもの
みんなの物じゃん」
「オレが見つけたんだ!!オレが!!
黙っていれば独り占めできたのに。」
「独り占め?!」
「・・いや、勿論おまえと山分け
と、言う意味だ。・・・」
「へ〜、や・ま・わ・け??」
「な、なんだ!う、疑っているのか?」
「べーつに・・・」
横目でチラッと見ているジュンコの眼は
わ〜完全に疑っている眼!!!
サトシは考えた。
その64ビットのコンピューターを
フル回転させて(ファミコンですなぁ〜)
「よし!逃げよう!!」
サトシは爺さんを突き飛ばし
小判を5〜6枚鷲掴みにして
ジュンコの手を引いて走った。
「こら〜ドロボウ〜返せ〜」
後ろから爺さんが鍬を持って追いかけてくる。
「ジュンコ、走れ!!」
すると、道の向こうに穴が見えた。
と言うより空間に穴が見えた。
「次元の隙間だ!!」
スニーカーが叫んだ。
「よし!飛び込もう!」
サトシはその穴に向かって
突進した。
「あっ!」
その時、石につまづき
左のスニーカーが脱げ、そして
ジュンコの手が離れた・・

隙間に吸い込まれていく
サトシが見たのは
脱げたスニーカーを手に持ち
泣きそうな眼をして見送る
ジュンコの顔だった。
・・・サトシは また目覚めた。
今度こそ、平成でありますように!

しかし残念ながら希望は叶わなかったようである。
行き交う牛車や人々の姿を見ると
どうやら平安時代のような感じだ。
「もっと昔に来ちまったのかよぉ」
サトシはヘロヘロと座り込んだ。

通りに目をやると・・・
なんとジュンコが駆け寄ってくるではないか!
サトシは更に脱力した。
「スニーカー履いたらさ、畑に穴が空いて落っこちたんだ」
「おまえ江戸に居たらよかったじゃん・・・」
「何でよ!」

そこへ一人の若い僧がやってきた。
「そこな二人。・・・・
陰陽師とお見受けいたしますが!」
唐突に話し出した若い僧。
「違う違うゼーンゼン違う。」
サトシは、はなから相手にしていない。
頭の中は、どうやって元の時間に
帰るかで一杯だ。
でも、ジュンコは興味津々!!
ジロジロその若い僧を観察している。
そんなジュンコにサトシは
「コラ!関わるなよ。」
と、釘を刺したが、
「どーしてよ。なんか面白そうじゃない。」
と、僧に近づき
「私たち、陰陽師じゃないけど、
どうかしたの?」
ニコニコしながら話しかけた。
・・・この女の好奇心は一体何処から
沸くのだ。て、いうかこの状況下で沸くか?
サトシは思った。
僧は、ちょっと目を伏せ少し
頬を赤らめた。
よく見ると、なかなかのイケメン・・・
と、ジュンコは思ったらしい。
目がキラキラしている。
「いや、陰陽師が、とか言うわけでは
ありませぬが・・・・
何か食べ物をお持ちではないかと。」
(なんだよ!コイツ!!)
サトシは少しイラついて
ジュンコのほうを見ると
ジュンコはジュンコで下げてるポシェットを
探っている。
「オイ!ジュンコ!やめ・・・」
止めようとするサトシを手で払い
「はい。これでよければ
どうぞ〜」
と、キットカット差し出した。
「バカヤロウ!そんなんあるんだったら
おれにもくれ!!」
「あっ最後の一個」
「冗談じゃないぞ!!
なんでこんな坊主に最後の一個を
やるんだ!!オレなんか二日も
何も食べてないんだぞ!
オレとその坊主と
どっちが大事なんだよ!!」
「イケメンのお坊さん!!」
さらりと言うジュンコ!
あふれる涙で前が見えないサトシ・・・

「いや、このような食べ物は
初めて頂きました。ありがとうございます。」
「チョコレートと言うものですよ」
「甘くておいしゅうございました。」
楽しそうに話している二人に
イライラしているサトシ。
「オイ!!オレは行くぞ!」
と、言葉を残し歩き出した。
「ちょっとーなに怒ってんのよ」
「怒ってない!!」
「その言い方が怒っている」
「怒ってない!!」

暫く歩いてるとサトシは
妙に歩きにくいことに気付いた。
「あっオレの靴。」
サトシのスニーカーはジュンコが
持っていた。
「靴 よこせよ」
サトシは手を差し出す。
でもジュンコは渡さない。
「オレの靴だぞ!よこせ」
取り上げようとすると
ジュンコは、サァッと逃げた。
「ダメよ!!この片方は私が履くの!
代わりにコレ履いて。」
と、よこしたのはジュンコの
白い左のスニーカーだった。
「バカ!そんなんおかしいだろ。
オレには小さいし。」
「ダメよ!だってコレ渡したら
離れ離れになっちゃうモン。」
「−−−−」
(おー!キミはすごいよ!
かしこいよ!たくましい!
・・?あれ・・・?
小判が・・・・
あ〜あのポシェットねぇ〜
いつの間に)
にこにこ笑いながら後を
ついて来るジュンコ。
片方づつのスニーカーを履いた
奇妙な二人は
取りあえず都を目指すのであった。
延々歩き続けたサトシとジュンコが足を止めた。
というより行き止まりである。
とてつもなく大きな塀が広がり、その向こう側からは
琴の音色が聞こえてくる。
「ねえねえ光源氏とかいるんじゃないの?見に行こ!」
・・・やっぱりバカなのか・・・
「あのさ、あれは架空の・・・」
すでにジュンコは塀に手を掛け登りはじめている。
サトシは片方のスニーカーを人質?に盗られているので
ついていくしかないのであった。
ズルズルとなかなか登れないジュンコの
足を持ち上げるサトシ。
ジュンコはようやく塀の上の瓦に手を掛け
這い登った。
「わ〜きれ〜」
そう言ってジュンコはボッテと
飛び降りた。
「オイ!!コラ!
独りで行くな」
サトシの声が聞え無かったのか
「すご〜い」
と言うジュンコな声が
遠くなっていく。
「あいつ、独りで・・・
どうすんだよ!!」
サトシは焦った。
もし警護の役人に見つかったら
う・ち・く・び〜
「打ち首!!」
必死に塀を登ろうと瓦に飛びつこうと
していると
「きゃ〜」
と、ジュンコの声がした。
「ジュンコー!!」
サトシは茫然と塀を眺めた。
こんなことしている場合ではない。
あいつを追いかけねば!
猛然と塀をよじ登ったサトシが見た光景は
意外なものであった。
十二単の姫君を見つけたジュンコは
「百人一首!紫式部!」
と大喜びだ・・・
やっぱり馬鹿はどんな時代にも適応できるんだろうか?
サトシは一瞬ではあるが
心配した自分を悔やんだのであった。

「そなたは誰じゃ?」
姫が言った。嬉々として答えようとしたジュンコを
遮ってサトシが答えた。
「あ、あのですね僕達は・・・」
口を塞がれてジタバタもがくジュンコに
気をとられ、つい
「通りすがりのものです。」
と、言ってしまった。
アホや〜アホでんがなぁ〜
通りすがりのものが、塀を乗り越えて
くるかっちゅうの!もうダメだー!!
「さようか・・」
(えっ!!なんで?)
意外な姫の言葉にサトシは
目を丸くした。
(すげー!さすが姫。
おっとりしていると言うか
世間を知らないと言うか・・・
いや!!
ジュンコ並みだぁ〜)
いつの間にかサトシから逃れた
ジュンコと貝遊びをしている。
しかし、何かおかしい。
警護のものもいなければ
御付のものもいない!
「ところでお姫様。
御付の方はいらしゃらないんですか?」
サトシの質問に姫は不思議そうに
答えた。
「何をいやる。そこに居るではないか。」
・・・はぁ?ジュンコ並みかぁ〜!!
おかしいぞコレは!!
すると、スニーカーの声がした。
「姫がおかしいのではない。
君達と姫の時間が歪んでいるんだ。
周りには、確かに警護のものも
御付の方もいる。
僅かな隙間から確かに見える。
当然、向うもキミとジュンコは見えない。」
「あら、ラッキー」
「バカ!時間が歪んでいると言うことは
不安定な状態ということだ。
いつまた何処かへ飛ばされるかも
しれないと言うことだ!!」
「と、言うことは
今のうちに楽しめってことか〜」
ジュンコは・・・・
十二単を着ていた。
「姫さん、おいちょかぶ、弱すぎー」
お、お前ら賭けとったんかい!!!
「ねえねえ、携帯で写真撮ってよ!超自慢できるって〜」

・・・携帯電話?そうだ俺のジーンズの後ろポケットに
あるはずだ。もしかしてこれで平成の時代の誰かに
電話をかけたら帰れるのでは?!

サトシは姫とジュンコに背を向け、親友のシュンに
電話をかけてみた。
ジュンコは何も知らず姫と遊び続けている。
「へっへ〜お前なんて平安時代に置いてきぼりだバーカ」
ニヤニヤしながら携帯電話の画面を覗いてみると・・・
プツッという音と共に何も映らなくなった。

サトシは慌ててジュンコの方を振り返る。
と、ジュンコの影がみるみる薄くなり、姿も消えかかっているではないか!
「次元振動だ!!」
スニーカーが叫んだ。
「次元振動?」
「そうだ!次元同士は非常に密接に
くっついているんだ!ナノ以下の薄さで。
それぞれの次元には決められた原子の数が
あり安定している。ただその均衡値には
幅があり、全く整ったバランスではない。
が、ピークになるとほんのちょっとした事が
原因で振動が起きバランスを戻そうとする。
おそらく君が今掛けた携帯の電波が引き金に
なったのだろう。」
「えっ!携帯が!!」
「そうだ!だからジュンコはバランスを
とる為に戻されようとしているのだ。」
「えっジュンコは戻れるのかー!
ちぇっジュンコだけかよ!」
「ばか!!質量の話をしているんだ!
形ではない!」
「えっどう言う事?」
「だから!!次元は質量の均衡さえ戻れば
いいのさぁ。形ではない。
従ってジュンコは形として戻るのではなく
質量として戻る。バラバラだ!」
「とっ待てよ!このくそスニーカー!!
じゃジュンコはジュンコとして戻るんじゃなくて
単にジュンコ分の原子が移動するってことかー!!
冗談じゃねぇぞ。こらーなんとかしろ!!」
「なんとかしろって!あれほど影響を与える
事をするなと言ってあったのに、
通じるはずも無い携帯なんかを
掛けるから悪いんだ。」
「じゃオレのせいなのか!?
頼むなんとかしてくれ〜!!」
「・・・・う〜ん出来るかどうか
解らないが、等価交換しかないなぁ。」
「等価交換?」
「ああ、要するに移動する分を
何か代わりのものに差し替えるのさ」
「わ〜何か代わりのもの!代わりのもの!」
サトシは辺りを見渡すと、一匹の豚が・・・
「コレだ!!」
サトシはその豚を脇に抱えジュンコに走りより
引き寄せ、代わりに豚を放り込んだ。
豚は光の粒になって次元に消えてった・・・

サトシは力がぬけヘナヘナと座り込んだ。
そして
「ほー」と、息をはく。
横には、豚と等価交換した
ジュンコが笑っていた。・・・
「あのさ、姫が私達を離れに住まわせてくれるって!」
豚と等価なジュンコが大喜びで言う。
・・・コイツ人が心配してるなんて思ってないんだろなあ。
仕方が無いので嬉しげなジュンコと姫の後を追い、離れについて行くサトシであった。

「ここにはわらわの猫を飼うておるのじゃ。世話を頼むぞよ」
外では姫がいないと騒いでいる。姫は、後で食べ物を持ってくると小さな声で言い残し出て行った。そして小さなトラ猫とサトシとジュンコは、薄暗いが小綺麗な座敷の奥に遠慮しがちに座った。和菓子と抹茶が運ばれて来ると信じているジュンコを尻目に、サトシは自分の未来を案じたのだった。
せめて、電気のある時代に行きたいよな・・・
「コラ!!勝手に触るな!」
チョコチョコと動き回って
やたら触りまくるジュンコを
サトシは叱った。
「え〜っだって珍しい物ばっか!
わ〜コレなんか高そうー」
違い棚に飾ってある茶碗を
ジュンコは持ち上げた。
「わーバカ!止せ!!」
止めようとしたサトシの手が
茶碗に当たり
「ガシャン」・・・・・
「うわ〜〜!!」
真っ二つに割れた茶碗を
言葉も無く二人は暫く見ていた。
「・・・わたしじゃないよね・・・」
おー言うか!そう言うか!
「お、お前が持たなきゃ・・」
「でも彼方の手に当たったんでしょ!!」
「い、いや持ったのはお前だろ!」
「手に当てて落としたのは彼方ね!!」
「だから・・」
二人の言い合いは続いた。
そのうちサトシは妙な違和感を
感じた。
茶碗の件から寂れたラーメン屋の
待遇やら次々と繰り出すジュンコ。
そのジュンコが、なんだか
少し薄い感じがする。
スニーカーの声が聞えた。
(あー少し成分が、向うに行っチャたかな?)
(えー行っちゃたかなって・・
大丈夫なのかぁ!!)
(解らないけど・・本人見れば
元気そうだし。大丈夫じゃない?)
(って、いやに砕けた言い方!!
そんな性格だったかぁ?)
(ははっお前ら見て学習した!!)
(ンなぁこたぁどうでもいい!
ジュンコ・・・大丈夫か?)
急に心配になってきてジュンコを
マジマジ見た。
まだ喋っている。
「何よ!!ちゃんと聞いてるの?」
「ジュンコ!大丈夫かぁ?」
「何、変なこと言ってんの!!
あー疲れた!お腹すいた!
ご飯まだぁ〜。」
はぁー全然
大丈夫そうですなぁ・・・・。
ほっと一息ついたのも束の間、ジュンコが猫を捕まえて
なにやらケラケラ笑っている。
嫌な予感・・・!
「見てみて〜猫もスニーカー履くんたぞ」
なんと、サトシの大事なスニーカーを、例の不思議なヤツを
猫に履かせているではないか!
予感は的中、二人と猫は歪んだ空間に飲み込まれていった・・・


今までと違ったのは、今回この時代への到着が乗り物の中だったことである。大きな振動と煙と音の中でサトシは目覚めた。
「で、電車?汽車?」
今度こそ昭和くらいに戻れたのではと期待に胸を膨らませていたサトシを、網棚の新聞は裏切った。
右上の日付欄に書かれていたのは明治5年・・・。
「文明開化かぁ?」
サトシの居た時代では考えられない位の
轟音を響かせながら蒸気機関車は止まった。
燕尾服を着た紳士たちがサトシを不思議そうに
見ながら降りて行く。
スッキリしない寝起きのようにサトシも
車内から出ると、そこには金髪の外人が
ウヨウヨ歩いていた。
「ああっ横浜の居留地かぁ?」
ボーッとする頭を振りながら
辺りを見回すとジュンコが居ない!!
サトシは焦った!
乗客やら見物人やらでごった返すホームを
探し回ったが何処にもジュンコは居ない。
すると一匹の猫が擦り寄ってきた。
その猫はスニーカーを銜えている。
サトシは理解した。
あの時ジュンコが猫にスニーカーを
履かせていた。
「ああ。バッカヤロウだなぁ!!」
猫からスニーカーを取り上げサトシは履いた。
そしてジュンコの白のスニーカーを
ジーパンの後ポケットに突っ込んで
「あいつ裸足でどーすんだろ。」
と、意味の無いことを考えていた。
猫を連れてしばらく横浜らしき港を歩いたサトシは、
昔の映画に出てくるような蒸気船が停泊しているところへ来た。そしてその光景に仰天した。
「な・・・?なんで姫まで??」
船上の紳士淑女達に紛れてジュンコと先程平安時代で会った
姫君がいるではないか!
何故にアイツはここまで強運なのだ・・・もしかすると
俺の運命の女性だったりして?などと考えているうちに、
猫はどうやら飼い主である姫君を発見したらしく
サトシの腕をするりと抜け出して走り去った。
慌てて猫を追うサトシ、とその時・・・
サトシは後ろから二人の男に
両脇を抱えられた。
「わっ!!」
男たちは、驚き声を上げたサトシを
建物の陰へと引きづって行った。
「フゴフゴ」
口を押さえられたサトシが
見た男たちの顔は
サトシだった・・・・
黒いスーツを着て帽子を深く被っているが
その顔はまさに、あの夜見た銀色のサトシだった。
(なぜ?オイ!!スニーカー!!なぜだ!!)
(・・・・・)
スニーカーの反応はない。
(これ以上、違う次元でグズグズするな!!)
銀色のサトシからの声だ!!
(やはりお前は壊れてしまったのか!
どうする?)
(連れて帰って、プログラムを組み直さなくてはなぁ)
・・・連れて帰る?
(さぁ行くぞ!!)
銀色のサトシたちは腰の辺りにある
スイッチを押した。
「ブーン」とゆう低い音がした。
「オイ!待ってくれよ!ジュンコもいるんだよ!」
(それは我々には関係ない事だ)
「バカ!じゃぁ置いていくって事か!!」
(我々には関係ない!)
身体が少しづつ光り始めた。
「冗談じゃねぇぞ!!」
サトシは、思い切り二人の手を振り切って
離れた。
(待て!!)
と、言う声と同時に銀色のサトシは消えて行った。
「あっぶねぇ〜。少し成分が抜けたかなぁ。ははっ
と、早いことジュンコを探さないとまずいぞ!」
サトシは、さっき見た船へと走り出した。
普段の不摂生で息が上がりゼイゼイ言いながら
ジュンコを探すと、
ジュンコは真っ赤な顔をして
他の乗客達と踊っている。
「ジュンコ」
サトシが大声で呼ぶと気付いたらしく
大きく手を振りながら
「おーい!早くおいでよー」
と、叫んだ。
(暢気な奴じゃ!ホントに状況把握が
出来ん奴だ!!)
いまさら思っても仕方のない事だが。
困った奴だ!いや、寧ろ羨ましい!!
って、言う時間は無い。
焦るサトシは船へと乗り込んだ。
「いや〜サトシ!ハローハロー」
「お前、酔っ払っているのか?」
「そうだよ!悪い!」
「わかったわかった。いいからこっちへ来い」
サトシはジュンコを引き寄せた。
「姫は何処にいる?」
「どっかそのへん」
「理由は後で説明するけど
目立つとこはダメだ。逃げるぞ!」
「なんでよ!私わるいことしてないもん
お酒飲んで何が悪いの!!」
「いいから、オレの言うことを聞け!!」
サトシはジュンコの手を引きながら
姫を探した。
その後ろに新たに近づく影があることに
気付かず・・・
さすがに横浜は、この時代でもお洒落な街並みで
歩いていても飽きない。
サトシとジュンコと猫は、中華街をあてもなく歩く。
猫も空腹らしく、サトシにやたらとニャーニャー訴える。
「そんなこと言っても金ないしさ〜」
サトシが猫に謝ると、ジュンコはジーンズの後ろポケットに
手を突っ込み、紙幣を数枚サトシに手渡した。
「お・・・お前ついに人様の金を!」
「違うって!」
ジュンコの自己申告によると、船上パーティに居た外人が
もう帰国するので日本の通貨は要らないのだと言い
渡されたのだという。
・・・怪しいが、空腹には勝てなかった。
2人と1匹は、露店の立ち並ぶ通りに駆け出した。
日本国、東京、年号は明治。
廃刀令が発せられ、もう5、6年。
かつて、この道を闊歩していた
「サムライ」と言うものは見当たらない。
しかしまだまだ江戸である。
ちょん髷は見当たらないが
威勢のいい江戸っ子は生きている。
やはりいつの時代でも民衆は其処にいて
時代を見つめ、時代とともに生きていく
ものなのだ。
たとえ、牛の頭が鶏に代わったとしても
生きる力が、大きな「うねり」となって
動いていくのである。
などと、サトシは考え深く悦に入っていた。
「てやんでぇ〜ちしょ〜!!ソバおまちー!!」
あ〜〜〜江戸っ子だぁ〜〜〜。
見ると、ジュンコがソバを食べている。
「わぁージュンコ!オレのは〜?」
「もごもご、うん、サトシも頼みなよ」
って、注文してねぇのかよ!!
「おーいオヤジ!ソバ一丁」
「あいよーソバ一丁!てやんでぇ〜」
温かいソバで身体中が満ちていく。
満たされる空腹は生気と思考を取り戻す。
「オヤジー!もう一杯!!」
「あいよー!てやんでぇ〜」
今度いつ食べれるか判らないから
サトシは死ぬほど食べた。
餓鬼のように。
「ご馳走さん!」
満腹になった腹を抱えてサトシは席を立った。
「おう、待ちねぇ〜にいちゃん。勘定!!」
「あっ勘定は、そこの・・・」
居ない!!ジュンコが居ない!
「あれ〜ここに居た女の子が〜」
「冗談じゃねぇぞ〜ガキ!食い逃げたぁ
いい根性でぃ!!」
「いや、ちがいます!!」
「しゃらくせい!!こっち着やがれ!」
サトシは耳をオヤジに引っ張られ
裏へ連れて行かれた。
「このただ食い野郎!!払えねぇんだったら
この薪、全部割りやがれー」
「とほほほほ〜ジュンコ〜」
その頃ジュンコは、キラキラ瞳を輝かせて
飴売りの後をついて歩いていた。
泣きたい気分で薪割りをこなしていくサトシだったが、
気付くと例の猫がサトシの後ろで静かに座っていた。
「おお、なんだオマエはバカ女と一緒じゃなかったのか」
「早く追いかけないとあの娘だけ平成に戻っちゃうよ」
「だって食い逃げするわけにいかんだろ」
???
「あと1束も割れば許してくれると思うよ」
・・・ね、猫しゃべってる・・・
「あ、多分兄ちゃんその靴履いてるから俺の言葉わかるんじゃね?まあいいじゃん。飴売りについて行ったみたいだから早く!」
全然まあいいじゃんという話ではないが、サトシは薪割を
スピードアップした。折角満腹になったはずなのに
すでに消化しているだろう。勿体無い・・・。
・・・・・・・
「オイ!!ネコ!!
全然、許してもらえねぇじゃねえかよ!」
「みたいだね〜」
「みたいだね〜って、ばかたれ!!」
結局、サトシは薪を全て割った。
蕎麦屋のオヤジはなんとか許してくれて
一目散にジュンコを追った。
「おい、ネコ!どっちの方に行ったんだ?」
「こっちだよ」
猫は通りを駆け出して神社の鳥居のほうへ
向かった。
賑わっていた通りから少し離れただけだが
神社の境内は人っ子一人居ないかった。
「う〜ん、この辺までは匂いが残っているんだけど・・」
「もうー何処行ったんだ!!!」
サトシがイライラして辺りを見回すと
大きな杉の木の傍に何か落ちているのを
見つけた。
「ジュンコのポシェットだ!!」
すると、猫がサトシを呼んだ。
走って猫のほうへ行くと
そこには飴売りの衣装が脱ぎ捨ててあった。
「えっつ!誘拐かー」
頭の中が真っ白になった。
(どうする どうする!)
「ジュンコーッ」
サトシは叫んだ!!
しかし、呼び声は虚しく
人気の無い境内に飲み込まれていった。
と、サトシの背後に人の気配がした。
次の瞬間バシッと肩を叩かれた。
「うわあああ!!!」
「何よ大きな声で〜」
ジュンコだった・・・
しかも悠然とサトシの目前で飴売りの衣装に着替え始めた。
「ち、ちょっと・・・?」
「飴売り屋さんの店ごと買い取った。」
見ると、小さな移動式屋台もある。
「オマエなあ、俺は食い逃げで捕まってエライ目に遭ったんだぞ!」
「アハハハ〜面白いって!ラーメン屋が蕎麦屋で食い逃げかあ。でも飴売りなんて珍しくない?どうしても欲しくなっちゃってさっ」
ジュンコが美味しいから食べてみろとしきりに勧めるので
サトシは仕方なく手を伸ばす。飴は種類毎に仕切られそれぞれ名前が付いていた。鎌倉、弥生、平成・・・?
サトシはふと気付いた。平成の飴を食べたら戻れるのでは?
ジュンコに伝えようとして顔をあげると、すでにジュンコは「昭和」を口に運びつつあった。
「まて!!」
サトシは大声でジュンコを制した。
ジュンコはビックリして飴を落とした。
「も〜急に大声を出すから落としちゃったじゃないの!」
「だから、お前は少し軽率すぎるぞ!」
「なんでよ。」
「あのさぁ、昭和、平成とかまだ存在しない時代の
単語があるっておかしくない?」
「だから?」
「少しは疑えよ。何か作為的な感じがしないか。」
「例えば?」
「まさかとは思うけど・・その名前の飴を食べたら
その時代に行くとかサァ」
「えーーーっ」
「いや、オレもまさかとは思うよ。
思うけど無いこともないだろ」
サトシは今までに起きた一連の出来事を
思い起こしていた。
「いいか、せいの〜っで、二人同時に食べるんだ!
わかったか?」
「うん」
ジュンコは頷き飴を取り出しサトシに一つ渡した。
「いいか!!せいの〜っ!!」
二人は一緒に口の中へ飴を放り込んだ。
甘い飴の味が口の中いっぱいに広がった。
ジュンコは目を細めて
「う〜ん。あっまーい!!
あ〜っサイダー味なんだ!昭和は!!」
「うん!確かにサイダー味だ!!昭和は!!。
・・・昭和・・・なんで???」
「なにがー」
「ジュンコちゃん!なんで昭和なの??」
「なにがって!昭和が食べたかったんだもの!」
「・・・ジュンコちゃん、お兄さんの話
ちゃ〜んと聞いていたかなぁ??」
「うん、聞いていたよ」
「じゃぁ!!なんで昭和なんだよ!!」
「だから!!食べたかったっていたでしょ!」
「ああっ・・・・・・」
涙でにじむサトシの視界が
渦を巻いて吸い込まれていくのは
錯覚ではなかった・・・・・・・。
そして、やはり2人と1匹は昭和にやって来た。
しかも・・・昭和30年代の終わり頃らしい。
ただ街を行きかう人々は妙にお洒落に見えるのは
流行は巡っているということなのか。
テレビはカラーが当たり前なのにやたらと
「カラーテレビで○○見よう!」等と宣伝している。
下駄履きの人も居れば変なブーツの人も居て
おまけにどの店先にも「祝 東京オリンピック開催」の
ポスターが貼られている。
サトシもジュンコもまだ生まれる前の時代ではあるが
平成に近いというだけでも安心した。

と、突然ジュンコに誘惑が忍び寄った。こんな
デパートやら高級店に紛れて駄菓子屋の看板が
「ここ左折」と出ている。
もちろんサトシが危惧した通り、ジュンコは駆け出した。
「そんなの罠にきまってるだろ!待てよ!!」
「なあ、ジュンコを囮にして奴等の正体を暴くってのは?」
猫が言った。
サトシ達のスニーカーが目当てなのではと推測する猫の
あまりに理路整然とした口調にサトシは圧倒されるのみ
であった。

その頃ジュンコは「くじ引き」に熱中していた。
しゃべった猫にチョット驚きつつ、
ものの流れとして二人は・・いや
一人と一匹は少し離れた物陰から
ジュンコを見ていた。
「スカ」を引いて悔しがるジュンコの
仕草がとても面白かったので、
一人と一匹は笑いを堪えるのが
たいへんだった。と
猫はどう笑うのかと見たら
普通に笑いをかみ殺して
「ぷぷぷっ」と、吹いていた。・・・・

そのうち
「ガラ〜ンガラ〜ン」
と、鐘が鳴り
「大当たり〜っ!!」
と、店のおじさんの大声が響いた。
「やったー!!」
ジュンコは大はしゃぎしている。
「はい!一等は特大キューピーちゃんだよ!」
「やった!やった!」
セルロイドで出来たジュンコの背丈ほどもある
キューピーを抱えて喜んでいる姿を見て
猫とサトシは
「アホか〜」と、つぶやいた。
ジュンコは特大キューピーを抱え
ニコニコしながら歩き出した。
「猫!追うぞ!!」
「にゃぁー!」
・・・猫と息が合うのはチョット複雑・・・

キューピーを引きずるようにして歩いていると
ざあます奥様がジュンコを引きとめた。
「お嬢チャン!そのキューピーをこの子に
譲っては下さらないざあますか?
この子が、どうしても、そのキューピーが
欲しいって言うざあますの!」
ジュンコは少し考えた。
「勿論!!只とは言わないざあます。
この東京オリンピック最終日、国立競技場
S席入場券二枚と、どうざあまずか?」
少し考えてから
「しょうがないなぁ!少し惜しいけど・・」
と、名残惜しそうに返事をした。
て、どう考えたって得だろーと
猫とうなずき合った。複雑なサトシ。

ジュンコは交換した入場券をかざしながら
歩いていると、
「どーん」と何かにぶつかった。
「いたたたたぁ」
顔を上げると、身なりのいい
太った初老の男の人が立っていた。
「お嬢さん、大丈夫かね。
よそ見をして歩いていてはいけないよ。」
と、やさしく手を引いて起こしてくれた。
「ごめんなさい!」
誤るジュンコを見て、その男の表情は驚きに変わった。
「お・お嬢さん!!!その手に持っているものは・・
もしかしてオリンピックの入場券!!!」
「うん!もしかしなくてもオリンピックの入場券!」
「ああーなんと言うめぐり合わせー
なんと言う強運!!」
「なんのこっちゃ?」
「お譲さん!どうかその入場券を
この私に譲ってはくれないかな!」
「????」
「勿論、只とは言わない。
ほらこのペルシャの壷と交換ではいかがか?」
「えーーーーっ!!
ハクション大魔王の壷みたいな奴と!!」
「よろしい、それではチューイングガムも
・・・・つけよう!」
子供だましか!!
「ウン!いいよ!」
子供だ!!!!
猫と呆れる複雑なサトシ。

ジュンコはガムを噛みながら壷を見つめていた。
いきなり太陽を カッと見た。
ま、まさか・・・・
「はぁーはぁーハクショ〜ン」
やっぱり・・・・
猫と顔を見合わせる複雑なサトシ。
「ん・待てよ!これって〜
もしかして・・・
わらしべーーーーーっ!!」

ログインすると、残り20件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

宇宙より。 更新情報

宇宙より。のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。