小林秀雄の「本居宣長」について、寺田透が批判していたということを桶谷英昭が書いていて、小林秀雄もけっこう怪しいものだと思ってグーグルしてみましたところ、小谷野敦さんの名前がひっかかりました。
平凡社新書で「評論家入門」という本があり、そこで小林批判をしているのは小気味いいのですが、一方で、ｐ７３に、ちょっと気になる表現がありました。
「小林に近い『日本浪漫派』に属していた批評家の保田與重郎は、小林以上に難解な書き方をして、当時の若者たちに人気があったが、大東亜戦争のイデオローグとみなされたため、戦後、ほとんど沈黙し
てしまった。」
この文章の中には、いくつか疑問があります。
１ 保田は小林に近いのか
２ 保田は批評家か
３ 保田は小林以上に難解か
４ 保田は戦後沈黙していたのか （これは明らかに間違い）
保田コミュの皆様は、小林秀雄をどうみておられるのでしょうか。興味があります。もしよろしければ、率直なコメントをいただけますか。
小谷野さんは、保田の何を読んでこのように書かれたのか。我々に
とってデタラメに見えるこの記述の根拠が知りたいと思いました。
平凡社新書で「評論家入門」という本があり、そこで小林批判をしているのは小気味いいのですが、一方で、ｐ７３に、ちょっと気になる表現がありました。
「小林に近い『日本浪漫派』に属していた批評家の保田與重郎は、小林以上に難解な書き方をして、当時の若者たちに人気があったが、大東亜戦争のイデオローグとみなされたため、戦後、ほとんど沈黙し
てしまった。」
この文章の中には、いくつか疑問があります。
１ 保田は小林に近いのか
２ 保田は批評家か
３ 保田は小林以上に難解か
４ 保田は戦後沈黙していたのか （これは明らかに間違い）
保田コミュの皆様は、小林秀雄をどうみておられるのでしょうか。興味があります。もしよろしければ、率直なコメントをいただけますか。
小谷野さんは、保田の何を読んでこのように書かれたのか。我々に
とってデタラメに見えるこの記述の根拠が知りたいと思いました。
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コメント(3)
私の知っている範囲で答えます。
１保田は小林に近いのか
単純に近いとは言えませんが、１９４２年に「文学界」という小林の文芸誌で、『近代の超克』という座談会がなされました。そこには、１小林を代表とする「文学界」グループ（近代主義者）、２保田を代表とする「日本浪漫派」（保田は出ていない。日本的な、ロマン的な過去を翼賛する）３西田幾多郎を中心にした「京都学派」（西田は欠席、その弟子が出席、近代主義をもっと進め、未来志向型で、大東亜共栄圏へつながる思想あり）。この三者が一堂に会したことは有名です。いずれにしても、「近代」は日本の場合、西欧化として進められてきましたから、「近代の超克」は「近代」＝西欧の超克が含意されています。（当時、西欧では「西洋の没落」という本が出ています）それを共有できる座談会だったと一応見なすことができると思います。座談会自体はたいしておもしろいものではありませんが、一堂に会することができる地平があったことが「近い」と言えます。私自身は、１小林が「過去→現在」指向型（近代主義者）、２保田（現在→過去）指向型（ロマン的なイロニー）、３京都学派（現在→未来）志向型であり、三者は直線的な（過去→現在→未来）という時間、均質の時間軸を共有しているという点で、方向は異なるものの同じ地平に立っていたと考えています。（私の考えなので、御意見、ご指摘をください）
２保田は批評家か
保田はそれにドイツロマン派に影響を受け「万葉集」や「芭蕉」などを論じている批評家です。いうまでもなく。しかし最近の研究では、若い頃左翼運動にもかかわり、後年まで中野重治の文章の剽窃ともとれる形で書いていたことが分かっています。（かなりポストモダンなことをやっていたともいえます）。渡辺和靖の保田研究を読んでください。
３保田は小林以上に難解か
この質問にはお答えできません。読む人によるからです。
４保田は和歌山県にいたはずですね。書かなかったのではなく、世間的に書けない状況にあったのではないでしょうか（ここは詳しくしりません）
小谷野さんの文章は読んでおりません。
いろいろ書きましたが、御意見を頂ければ幸いです。私が読んだ範囲での意見ですので、限界があります。
１保田は小林に近いのか
単純に近いとは言えませんが、１９４２年に「文学界」という小林の文芸誌で、『近代の超克』という座談会がなされました。そこには、１小林を代表とする「文学界」グループ（近代主義者）、２保田を代表とする「日本浪漫派」（保田は出ていない。日本的な、ロマン的な過去を翼賛する）３西田幾多郎を中心にした「京都学派」（西田は欠席、その弟子が出席、近代主義をもっと進め、未来志向型で、大東亜共栄圏へつながる思想あり）。この三者が一堂に会したことは有名です。いずれにしても、「近代」は日本の場合、西欧化として進められてきましたから、「近代の超克」は「近代」＝西欧の超克が含意されています。（当時、西欧では「西洋の没落」という本が出ています）それを共有できる座談会だったと一応見なすことができると思います。座談会自体はたいしておもしろいものではありませんが、一堂に会することができる地平があったことが「近い」と言えます。私自身は、１小林が「過去→現在」指向型（近代主義者）、２保田（現在→過去）指向型（ロマン的なイロニー）、３京都学派（現在→未来）志向型であり、三者は直線的な（過去→現在→未来）という時間、均質の時間軸を共有しているという点で、方向は異なるものの同じ地平に立っていたと考えています。（私の考えなので、御意見、ご指摘をください）
２保田は批評家か
保田はそれにドイツロマン派に影響を受け「万葉集」や「芭蕉」などを論じている批評家です。いうまでもなく。しかし最近の研究では、若い頃左翼運動にもかかわり、後年まで中野重治の文章の剽窃ともとれる形で書いていたことが分かっています。（かなりポストモダンなことをやっていたともいえます）。渡辺和靖の保田研究を読んでください。
３保田は小林以上に難解か
この質問にはお答えできません。読む人によるからです。
４保田は和歌山県にいたはずですね。書かなかったのではなく、世間的に書けない状況にあったのではないでしょうか（ここは詳しくしりません）
小谷野さんの文章は読んでおりません。
いろいろ書きましたが、御意見を頂ければ幸いです。私が読んだ範囲での意見ですので、限界があります。
2008年に出版された木田元著『なにもかも小林秀雄に教わった』（文春新書）を先程読了いたしました。タイトルと違って、同書の内容は、木田教授の読書遍歴を小林秀雄とハイデッガーを軸に書いたものであります。
ところで、同書第14章で木田教授は「小林秀雄と保田與重郎」をテーマに語っておられます。特に興味深かったのは、冒頭で自身の修学期（青年期）の読書歴の中で、保田與重郎が決定的に欠落していることを率直に述べている箇所です。
木田教授は昭和3年（1928年）の生。旧制中学から昭和20年（終戦直前）に海軍兵学校に入校しているが故に、昭和2年生以前の旧制高校生が保田から受けた影響の圏外にあり、且つ、終戦直後の激しい保田排斥の影響で「耳目に全くふれてこなかった」（木田教授談）との事。木田教授の回顧談から、改めて終戦直後の保田批判と、当の保田の徹底した「沈黙」が想像されます。
小林秀雄と保田與重郎の思想的近似性等について、木田教授は具体的には語っておりません。そもそも、本書自体が学術書ではなく、軽快な筆致で書かれた随筆です。ただ、次の木田教授の言葉には、両人の文学・思想に於ける影響力の大きさを感じさせられます。
「（若き頃に）保田の著作に出会う可能性があったかなかったかは問題になりうる。保田與重郎から読み始めるか、小林秀雄から読み始めるかは、その後の読書傾向を決定する重大事であったように、私には思われるのだ。どう違うかだって？いや、それが分かれば苦労はない。いまはそれを考えようというのである。」
ところで、同書第14章で木田教授は「小林秀雄と保田與重郎」をテーマに語っておられます。特に興味深かったのは、冒頭で自身の修学期（青年期）の読書歴の中で、保田與重郎が決定的に欠落していることを率直に述べている箇所です。
木田教授は昭和3年（1928年）の生。旧制中学から昭和20年（終戦直前）に海軍兵学校に入校しているが故に、昭和2年生以前の旧制高校生が保田から受けた影響の圏外にあり、且つ、終戦直後の激しい保田排斥の影響で「耳目に全くふれてこなかった」（木田教授談）との事。木田教授の回顧談から、改めて終戦直後の保田批判と、当の保田の徹底した「沈黙」が想像されます。
小林秀雄と保田與重郎の思想的近似性等について、木田教授は具体的には語っておりません。そもそも、本書自体が学術書ではなく、軽快な筆致で書かれた随筆です。ただ、次の木田教授の言葉には、両人の文学・思想に於ける影響力の大きさを感じさせられます。
「（若き頃に）保田の著作に出会う可能性があったかなかったかは問題になりうる。保田與重郎から読み始めるか、小林秀雄から読み始めるかは、その後の読書傾向を決定する重大事であったように、私には思われるのだ。どう違うかだって？いや、それが分かれば苦労はない。いまはそれを考えようというのである。」
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