ジャック・ドゥミコミュの『ローラ』

ジャック・ドゥミ監督のデビュー作。
　この作品にはまだドゥミのおとぎ的話要素が入っていず、主人公ローランは八年間思い続けたヒロインのローラと結ばれることなく終わってしまう。このような終わり方は『シェリブールの雨傘』の恋人達との愛の終結につながり、ドゥミは若い頃からの恋愛は結局結ばれないという考えを持った人なのかもしれない。ただ、『シェリブールの雨傘』では結ばれなかった二人はお互いに幸せを得るのであるが。
　そんな暗く終わった映画ではあったが、この作品では登場する主要人物たちはみな恋をする。それは主人公のローランは幼馴染のローラに恋をして少し生きがいを見つける。またそのローランと知り合った14歳になる娘を持つデノワイエ夫人はローランに恋をする。そして、その娘はアメリカ人水兵のフランキーという青年に恋をする。更に、そのフランキーはローラに恋をしているという、この映画は恋をするでそれぞれの人物関係が結ばれているといっていだろう。そして、その姿が実に皆イキイキとして素晴らしい恋模様となっている。
　この作品は、フランスヌーベルバーグの部類に入るが、この映画のような恋の描写はフランス映画の古くからあり、またフランス映画だから似合うのである。多分、ドゥミはゴダールのような撮りかたをしているのだろうが、恋の描写は旧来のフランス映画と美しく撮っている。だから、ドゥミの映画はゴダール、トリュフォーなどとは違ってた路線でい異色の映画を撮り続けることができたのであろう。
　また音楽はミシェル・ルグラン。彼の音楽はドゥミの演出を上手く盛り上げていた。デビュー作でいきなり、ジャック・ドゥミとミシェル・ルグランのコンビが完成したといってもいい。