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Baja1000 (バハ1000,SCORE)コミュの2008 BAJA500 参戦Report 03 -ジョニ男の場合-

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<前回まで>
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RM 91.5-210 / CheckPoint1 - Borrego / 冷静と情熱の間
 
  コツコツとフロントタイヤが左右に弾かれる度に、ハンドルを握る手に力が入る。
 はっきり行ってガレ場は苦手だ。綺麗に乗れていない証拠だろう。
 このサミットというセクションは、長らくレースで使われていなかった場所で、まぁ一言で言えばガレ山。
 プレランできたときには何度か転倒し、息も絶え絶えにキックした場所だ。
 体が嫌な記憶を覚えている。
 とはいえ、セクション自体の難易度はそれ程でもなかったりする。
 日本で、いつものKTMに乗っていればなんて事もないだろう。気の持ちようかも知れない。
 前後にライダーはいない。落ち着いて、確実にこなしていこう。
 トコトコと、レース中とは思えないペースで走っていると、いきなり派手な歓声が飛んできた。
 ――こんなトコまで人がいるのか。
 いったいどうやって上ってきたのか分からないが、普通に車とキャンパーがいる。
 まったく彼らの行動範囲には驚かされる。
 仕方が無いので少しペースを上げて一気に上りきった。
 上りは、ほんとタダです。
 僕の体が覚えている嫌なセクションというのは、これから待ちうける下り。
 下りながらアクセルを開けることが出来ない僕のようなライダーにとって、長々と続くガレ場の下りは腕上がりを誘発する困った場所なのだ。
 バイクは重いし。
 恐る恐る――かえって疲れるのは分かっているんだけど――下り始めると、プレランの時には無かったコースマーカーが一つ、崖下を差していた。
 確かにここはツヅラ折れですよ。直滑降したほうが速いですよ。しかしまさか。
 まさか、と思いつつも様子を伺う。
 やめた。落ちる。
 何本かタイヤの跡がしっかり残っていたけど、ここは堅実に行きたい。
 フロントブレーキを握るたびに、岩に前輪が引っかかる。
「うー」
 なかなか終わらない。腕も、大分疲れてきた。
 ――なんかプレラン初日の巻き直しみたいだ。嫌な予感。
 転倒はしていないため、体力的には余裕があるんだけどここで腕が疲れると後々問題がある。
 極力フロントブレーキを使わないように、残りの坂をヘロヘロと攻略。
 ちょっと、休憩しよう。
 道端でクアッドが休んでいるのを見かけて、自分も少し開けた場所で休憩することにした。
 メットを脱いで、手をプラプラ。
 水を飲み過ぎたか、誰も見ていないのを良い事に「自然が俺を呼んでいる」(辞書をひいてね)。
 序盤の貯金があるから、まだそんなに急がなくても良い。
 ややあって、先ほどのクアッドが先行していった。
 装備を整えて再出発しようをした時に、ふと真っ青な空が目に入った。
 ――そろそろなのかな?
 パラパラと飛び回るヘリコプターを幻視して、レース前の打合せでサミット越えた辺りでヤツラがやってくるかもしれないと話していたことを思す。
 バイクから遅れること三時間。スタートラインをきった化け物たちはどこまで迫ってきているだろうか。
 ヘリコプターの幻をパタパタと振り払って前へ。
 ――というかXRの音ってヘリにそっくりなんだよー。

 意外なほどアッサリとサミットを超えてしまった印象だけど、この辺りから少し疲れを自覚。やっと1/4走りきったか。
 下り終えた僕を待っていたのは、またしても川砂。
 重く、絡み付く砂だけど、ガレ場にこたえた体には優しさすら感じられた。
 、、、フラットな間は。
 やさしい路面はあっという間に過ぎ去って、ここからまたフープス連打。
 連打。連打。
 プレラン初日は完全にコレにやられたんだ。今日は絶対に負けない。
 なるべくスピードを落とさないようにして、出来ることなら2個まとめて飛んでしまう。
 まだ押さえがきく間にここを走り抜けてしまいたかった。
 まだかいな、と思い始めた頃、路面が徐々にフラットに。
 気付けばドライレイクのど真ん中だ。
 周囲には360度何もなく、冗談抜きで地平線が見える。
 行こうと思えは何処まででも全開に出来る!そりゃ怖ェよ!!
 既に何台ものマシンが通ったであろう轍をトレースする。
 ――間違いない。疲れてきている。
 ちょっとしたギャップが気に掛かるようになってきた。
 足を棒に伸ばして楽チン体勢。腕と腰を休ませる。
 楽な路面でのんびり生きたいけど、時間を稼いでおきたいので出来るだけワイドオープンだ。
 多分100km/hは越えていたんだけど、後続のライダーは楽勝で追い抜いていくんだ。これが。しかも座ったまんまで。
 もちろんXRだと座ってられません。くぅ。
 アクセル開けるのがダルくなった頃(!)、コースマークがいきなり右折を指示。90度。
 (プレラン時はコレを見逃してうっかり直進。遭難しかけた。)
 広大な眺めはそのままに、路面は再度ザクザクの川砂に変化していった。
 ギャップも深い。
 またしても「うー」なんて呟きながら、少しでもギャップの浅いところを探っていく。
 日本のエンデューロライダー的な思考の一つに「誰も通ってない所は荒れていない良い路面だ」というものがあると思う。
 マディの横にある誰も走っていない草むらの中はグリップするものだ。
 なので、僕も自然と轍のない場所を選んでしまう。
 右側通行のメキシコにあって、ひたすらキープレフトを貫いていたのもそんな理由からだ。
 でも、BAJAでは少し事情が違うみたいだと、ここまで来てようやく気付き始める。
 轍のないところは、通らないんじゃなくて通れないんだ。
 ギャップを避けて避けて端までたどり着いたけど、一見まっ平に見えるそのラインはザックザクでバッフバフ。
 あっという間に後輪が半分埋まってしまってあえなく転倒。
 ウリャッとマシンを起したけど、キックペダルが下までおりません。
 こりゃまいった。大人しく轍に沿ってギャップのある場所をトレースするしかないかー?
 何とかエンジンをかけて、ヨロヨロとコースリボンに近い掘れたギャップに挑みかかる。
 延々と続くフープスを一つ一つこなしていると、視界が狭くなっていることに気付いた。
 いつの間にか、隣にホンダのマシンが追いついて来ている。
 彼が調子良さそうに上手いことラインを選んでいくものだから、自分も後についてペースを上げていった。
 やがて姿は見えなくなったのだけど、ペースは一つ高いところで固定されている。
 良い感じだ。
 いつの間にか路面はフラットになりはじめており――砂は深いが――楽に走れるようになってきた。
 轍も少なくなって、、、、き、た。
「へ?」
 何で何で何で!?
 プレランの時はこんなんじゃなかった。
 この辺はもっとギャップだらけで、こんな気持ちよく走れるコトなんてなかったよ。
 一瞬で血の気が引いた。
 マシンを止めたら、エンジンも止まって立ちゴケしてしまった。足、着きません。
 汗を流しながらマシンを起す。暑い。もう日は昇りきっている。
 少し乱れた自分の呼吸以外、まったく音が聞こえない。
 さっきのホンダは!?何処行った?
 耳を澄ますが、無音。また少し呼吸が乱れた。
 周囲は360度、変わり栄えのしない荒野。何処を見ても同じ景色だ。
 よく考えたらコース幅がキロメートル越えてるもん。
 うー。プレランの時は何で迷わなかったのか。
 焦る。
 ――とにかく、少し戻ってみよう。
 このままでは埒があかない。
 エンジンのかけて再発進――した所でまたこけた。
「だ−!!」
 レース始まって最初の叫びだった。
 とにかく暑い。ネックブレースを外してザックに括りつけた。
 ちょいゴケにもかかわらず、エンジンが中々掛からない。
 そして無音。
 焦りは大きくなるばかりだ。
 ややあってエンジンはかかったが、果たして自分は本当に来た道を戻っているのか。
 今度はそんな疑問が鎌首をもたげてきた。
 相当不安になってきている。
 轍は少ないものの、方向はまちまちで、新しいものと古いものの区別もつかない。
 景色はアテにならない。
「カンベンしてくれ!」
 逆走――してると信じたい――しながらコースマーカー、リボンを探すけどまったく気配がない。
 そりゃそうだ。こんなだだっ広い所で木の枝一本見つけられるはずがな――。
 バフっ。
 、、、しばらく、起き上がらなかった。
 マズイマズイマズイ。大変にマズイぞ。
 もう序盤の貯金は使い切っただろうか。
 つーかこんなところでリタイア?
 ――それは良くない。
 自分は絶対にリタイアしない。しかし、どうする。
 とりあえずマシンを起して、水を飲んで、用を足した。
 「困ったときには小便でもして落ち着け」なんてどこかの本で読んだことを実践しながら思い出した。
 マシンはそのままに、日陰に入って座り込む。
 仕方がない。最悪、トロフィートラックが来れば多少コースから外れていても気付くだろう。
 ヘリが来るし、音もダストもバイクの比ではないはずだ。
 そこから挽回が出来るかわからないけど、無駄に動いてさらに大きくコースから外れるよりは、きっと正解――。

 ――――――――――――。
 ――――――――――――――――――――。
 ――――――――――――――――――――――――――――。
 ――――――――――――――――――――――――――――――――ボボボ、、、。
 
「!?」
 バイク来たー!!!
 遠くから一直線にこちらに向かってくるCRFが一台。
 思わず立ち上がって、お出迎え(笑)。
 何となく分かってたけど、そのライダーは案の定、僕を見つけるなり肩をすくめて叫んだ。
「I got lost!!」
多少ガッカリしたけど、少なくとも彼が来た方向が、僕の戻るべき方向には違いない。
「この先は、違う。僕は、あなたが来た方向に、戻ってみるよ」
 少し元気が出てきたのでメットをかぶり直してバイクに跨った。
 後ろからCRFの男性もついてくる。
 しばらく走ると、大きな轍のあるラインにぶつかった。
 コースリボンは見当たらない。
 僕はまたマシンを止め、耳を澄ませた。
 何も聞こえない。
 ――こんな感じの路面だと思うけど、、、。
 しばらく、立ったまま様子を伺う。
 一緒に待っていたCRFだったけど、「この道を、行ってみる。間違ってたら、戻ってくる」と言い残して走り去っていった。
 遠くなるエンジン音。
 しばらくして彼が戻ってこなかったら、自分も後を追ってみよう。
 暑さによる疲労と、時間が削り取られる不安から、少し消極的になっていたのかもしれない。
 数分後、別の方向からやって来たバイクが、先程CRFが走り去った方向を指差しながら通り過ぎていった。
 助かった!ほぼ間違いない。
 走り出してすぐに、オレンジ色のコースマーカーを見つけた。
 くそ。一体何分ロスしたのか。

 ここから先は我慢の走りだった。
 暑さと、予想外のミスコースに体力を奪われ、ペースが上がらない。
 結果としてギャップ全てをなめて通過することになり、さらに体力を消耗する。
 やっとの思いで川砂のギャップ地獄を脱出すると、今度は軽くガレた赤土の路面が姿を現した。
 ここでも連続するギャップが僕の腕、腰、膝にダメージを与え続ける。
 まったく当初のペースでは走れなくなってしまった。
 情けない。
 コースはまたまた川砂の中へ入り込み、グワングワンと僕とXRを弄ぶ。
 ガレ、砂、ガレ、砂。
 特徴のあるガレたステアケースを、歯を食いしばって駆け上る。
 ここは覚えていた。
 もうすぐ、フォレストのスタッフが待ってくれているボレゴの国道とクロスするはずだ。
 ――ピットに着いたら休める。ロックスター飲める。
 残る体力を振り絞って、本当に情けないスピードでピットを目指す。
 
 オレンジ色でひし形な、BAJA PITのサインを見て、僕は大きく息を吐き出した。
 ガス補給の間、何も言えずに受け取った水を無心で飲んだ。
 ショーイさんにバイクを渡して、フォークが捻じれていることを伝える。
 座りたくなかったけど――根っこが生えちゃうからね――体力的にきつかったのでどっかりと椅子に腰を下ろした。
 本林さんが新品のゴーグルとロックスターを渡してくれた。
 後、バナナ。
 やっぱバナナっすよ。ホント。
 アメリカンな栄養ドリンクとバナナで緊急チャージを行っていると、周囲が俄かに騒がしくなってきた。
「トロフィー!!」
 誰かが叫んだ。
 バラバラバラバラ……。
 幻聴ではなく、ヘリが空を飛んできた。
 
 ――来た!!

 2台のトロフィートラックが、並んだままとんでもないスピードで目の前を走り抜けていった。
「、、、ほ?」
 大歓声をよそに、僕は座ったまま (・。・) 状態。
 走ってたら轢かれてたよ。
 ちょうど良いタイミングだった。
 動けない。
 隣でテントを張っていた別チームのクルーたちが日陰に案内してくれた。
 「ソロなのか」と、驚いたような呆れたような表情。この先も同じようなリアクションに多く遭遇する(笑)
 こちらも嬉しいような恥ずかしいような、だ。
 500マイルとはいえ、二輪のソロ参戦は少ない。
 少しでも上の順位を狙うならばソロはないもんね。
 グローブを外して、インナーグローブを交換する。
 左手に大きなマメが出来ていた。
 水を頭からかぶって冷却。気持ち良い!
 ヘルメットの中も水浸しにしてもらった。
 うーし。そろそろ動かなきゃいけない。
 ミスコースで大分貯金を使ってしまったけど、まだゴールできない時間じゃない。
 ここから先は国道沿いの固い路面だから、走りながら体力を回復することが出来るはずだ。
 椅子から無理矢理体をはがして、XRに跨った。
 
 しばらくは、四輪のトップ勢をやり過ごしながら走る事になる。
 BAJAシリーズの真の恐怖が始まるわけだ。
 轢かれれば一発。
 気を引き締めていこう――。 
 

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RM --/ Equipment? /本当に必要なものは?

 閑話。
 日本を出発する前日になってもジョニ男は悩んでいた。
 レース前日になっても、まだ悩んでいた。
 レース中に携帯する工具、部品についてだ。
 プレラン中はパンクに備えてのスペアチューブやタイヤレバー、空気入れ。
 レバー、ペダルなどのスペアパーツ。果てはチェーンカッターを持って走った。
 しかし、そこから学習したことは荷物は1kgでも軽い方が良いということだった。
 本当に必要なものは何か。
 本番ではムースタイヤを使用する。
 パンクはしない。パンク修理リセット、タイヤレバーが消えた。
 今時チェーンが切れるなんてパリダカでも聞いたことがない。
 チェーンカッターが消えた。
 、、、国内のエンデューロとまったく同じ装備になってしまった。
 なんてこった。
 結果から言えば、実際に使用した工具はガムテープとTレンチだけだった。
 勿論、ジョニ男をアベレージスピードが低かったためにクラッシュしてもダメージが少なかったということもある。
 でもまぁ、深刻なトラブルがあった場合はどちらにせよピットまで行かないと手が出せないんじゃないかな。
 逆に言えばピットまで行けば工具はあるってことだし。
 
 以下、ジョニ男が持って走ったモノ一覧。

・キャメルバック 何はなくとも水分!
 ↑にピカピカ光るLEDライトを取り付けて夜間走行時の安全灯とした
 念のためタイヤレバーを1本忍ばせてみた

・ツールバック
 Tレンチ 6mm、8mm、10mm
 メガネレンチ 6-8mm 10-12mm、11-14mm
 +−ドライバ
 ハサミ
 ロッキングプライヤー
 ガムテープ
 エポキシパテ

・食料
 パワーバーという高カロリー食品
 
 これで何とかなりました。
 エアフィルタもダストカバーをつけたものを使用して、1回交換しただけでOK。
  、、、クラッチ板のスペアとか、要らん物沢山買ってしまった(笑)
 
 乗り方次第では、意外なほど身軽に参加できるレースですね。

コメント(2)

左右レバーとシフトペダルの予備も持って走りました。
考え方は、次のピットまでもたせられる最低限の装備でよいのぬ。
1グラムでも、軽くしたいでしょ!
ハンディGPS貸してあげればよかったねグッド(上向き矢印)

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