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フェイバリットディアコミュの当時メルマガに掲載されていたお話その2

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ディレクターさんから当時メルマガに掲載されていた
ショートストーリー第2弾をいただきましたので、掲載
します。

<想い>
 どうして、また戦うことになってしまったのだろう。
 彼女は踊り疲れ、少し酔った頭で考えていた。
 ひっそりと静まりかえった町の小さな広場。
 そのほぼ中央にある噴水兼水汲み場の縁に腰を降ろして、
 彼女はぼんやりと暗い町並みを見つめている。

 天使に関わることは二度としないと誓ったはず
 なのに……。

 闇に包まれ、窓から漏れる光もほとんどない夜更け。
 色彩のないその世界は、いまのナーサディアにとって
 はぴったりだった。
 満月から注ぐ光だけが彼女のまわりで揺れている。

 死ねる肉体に戻してもらうために?
 彼女は自分に対して問い続ける。
 どうして、どうして……もう、あんな思いはしたく
 ないのに。

 「そうっと、そうっとだよ、ラッシュ。誰かいたら
  大変だからさ」
 彼女の耳に、小さなささやきが聞こえたのは、同じ
 問いを幾度も繰り返したあとだった。
 「このへんには川がないから、困っちゃったよね。
  でも、もう大丈夫だよ」
 子供の声? こんな時間に?
 ナーサディアは、そっと声のする方へ顔を向けた。
 最初に目に入ったのは、頭には鹿に似た大きな角を
 持ち、白と青のすばらしい毛並みの狼に似た得体の
 知れない大きな獣だった。その獣の隣りに、緑の格子
 模様のざっくりとした布でできたポンチョのような
 ものを羽織った茶色の髪の少年がいて、いっしょに
 歩いてくる。
 少年と獣は真っ直ぐに噴水に近づくと、急に獣は足を
 止め、まわりの様子を探るように首を巡らした。
 「どうしたの? ラッシュ?」
 「きっと、私のことが気になるんでしょうね」
 ナーサディアは、彼らから見ると噴水の裏側から
 立ち上がった。
 「え!? マズイ! 人がいた!!」
 少年はナーサディアの姿を見るとすごく慌てて、
 もと来た方へと走り出そうとするのを見て、
 「大丈夫よ」と彼女はやさしく言った。
 「のどが渇いているのでしょう? このあたりからだと、
  当分川には辿り着かないわよ」
 彼女の言葉に少年と獣は一瞬顔を見合わせたが、水を
 飲むことに決めた。
 ごくごくとのどを鳴らして水を飲み、少年は革の水筒
 にたっぷりと水を入れた。
 「ありがとう」
 少年はナーサディアにぺこりと頭を下げた。
 「水は私が用意したものじゃないわ。お礼を言われる
  筋合いはないけれど」
 「でも……」
 彼女はにっこりと微笑むと、また噴水の縁に優雅に腰を
 降ろした。
 「ねえ、怖くないの?」
 「なにが?」
 少年が彼女の隣りに腰をかけて聞いた。
 「ラッシュのこと……」
 おずおずと少年は訊ねた。
 こんな会話をしないで、この場から立ち去った方がいい
 のかもしれない。でも、この女の人はラッシュを見ても
 表情も変えない。
 それがとても不思議で少年は彼女と話したくなったの
 だった。
 「この大きな獣はラッシュって言うのね。あなたの
  友達?」
 そう聞かれて、少年の方が驚いて目を見開いた。
 「そうだけど、どうしてそう思ったの? フツーの人は
  ラッシュのことを怖がるし、僕と友達だなんて絶対に
  思わないよ」
 「ふふ……」
 ナーサディアは、やさしく笑った。
 「怖いなんて思わないわ。あなたを見る眼はとても
  やさしいもの……。それに、綺麗よ、とっても……」
 月の光に照らされているラッシュは、たくましく、光が
 滑っていく毛並みの輝きは美しかった。
 「さあ、そろそろお行きなさい。この町にもまだ起きて
  いる人がいるわ。酒場には酔っぱらいもたくさん。
  誰かがここにこないとも限らないから」
 「うん、わかった」
 少年は元気にそう言うと、立ち上がった。
 まだ小さい、茶色の瞳がくるくるとよく動く可愛らしい
 男の子……。
 ナーサディアは、久しぶりに感じたとてもあたたかい
 気持ちで、彼と獣を見送った。
 「気をつけて行くのよ」
 「うん、ありがとう」
 少年はにっこりと笑うと、獣といっしょに町の外へ
 向かう道を転がるように駆けていく。

 「ふう……今度の天使も無茶をやるものね……」
 小さくなる少年の姿が、町並みに隠れて見えなくなる
 まで見送ってから、ナーサディアはため息混じりに
 つぶやいた。
 「神獣といっしょにいる男の子ね……天使の勇者に
  されてもしかたがないと思うけれど……」

 あんな小さな子供までが戦わなくてはならない世界……。

 「自分の悲しみにばかり浸っているわけにはいかない
  わね」
 彼女はひとり苦笑すると、ゆっくりと、しばらく自分を
 雇ってくれている酒場へ向かって歩き始めた。

 歩きながら「どうか無事で……」と、彼女は心から
 祈っていた。
 そして「あの子を傷つけたら承知しないわよ、新米
 天使!」とも思っていた。

コメント(4)

素敵なショートストーリーですね!私はメルマガで読んでいなかったので、ここで見れてとても嬉しいです♪
ナーサとヤルルとは、リュドとビーシアより意外な組み合わせかも?と思いました。お姉さんで優しいナーサが良いですね。ヤルルも可愛い♪
この後の天使は大変そうですけど(苦笑)
せつなさん>ナーサディアとヤルルも新鮮です。
ゲームであまりかかわりのないキャラが会話するのを
見るのは楽しいです。
ショートストーリーほんと素敵ですよね☆
もう一本送っていただいたので後でアップしますね。
相模さん>私もメルマガを見ていなかったので、毎回
送っていただくのを楽しみにしています。
子供に優しいナーサディアが素敵です☆
男天使だったら、この後ひどい目にあわされそうです
よね(笑)。

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