ぶつくさ映画論コミュの兄弟は神であるの巻

うわー、観て来ました皆さん、コーエンブラザース新作「Burn After Reading」！

ジョージ・クルーニー、フランシス・マクドーマンド、ジョン・マルコヴィッチ、ティルダ・スウィントンにブラッド・ピット。

「このキャスティング」を「コーエン兄弟」が、って、駅構内のポスターか何かで見掛けちゃった日にゃあ、どういう事になるかって言うと、電車乗ってからもニヤニヤ笑いが止まらないわ、下手すりゃ吹き出しそうになっちゃうわ、って寸法だ。　非常に危険だ。

公開初日の先週金曜に、待ち切れず新聞評を一つだけチェキしてみたんですが、アラアラ、そこにはあらすじが殆ど書かれちゃってるじゃありませんか皆さん。　「何じゃこりゃ」って思いながら読み進んでみたら

　　　「。。と、ここまでが冒頭約20分間に起きる出来事である」

だって。　よっしゃ（笑）。　「『ビッグ・リボウスキ』的プロット」とも評してあったけど、似て非なるもの。　てか、そうとしか絶賛のし様がないよな。　この進化の仕方っぷりがすごい兄弟。

特筆すべきは。。って、apothekeop評では毎度おなじみ、もう「全員って言ったら全員」ではあるのですが、ブラッドとジョージの「怪演」は今回、コレ、本気で見もの。　この人達が出てるから、って理由で映画を選ぶ事の無いapothekeopが言うのですから、コレ、相当よ。

ブラットに関しては、ゴシップ誌なんかに「彼の髪にも白いものが。。」っなんて、書かれ始めているのがウソみたいな年齢不詳っぷりで、目を疑います。　この役は、無名の若手か何かにやらせる事も出来たはずなのに、わざわざピットで、ってトコがミソ、そのチャレンジが、結果めちゃめちゃ活きた、その様に号泣です。

そして世界中の女をブイブイ言わせ続けるジョージ。　「どこがいいのさクルーニー」っなんて思い続けている貴兄（それは俺だが）まで、ここでの彼の「いいオトコ」っぷりが快感になっちゃうんだから、オモシロイ。　この人はもう、ここまでの人生ずっと「いいオトコ」でい過ぎちゃって、「いいオトコ」をギャグで演じちゃえる余裕があるんだろう。

一度でいいから舞台で見てみたい、マルコヴィッチの「宇宙一エレガント」なキレ芸、マクドーマンドの、ナイーブだけど、深くて深ーい私利私欲も憎めない。　マクドーマンドの上司を演じたリチャード・ジェンキンスという俳優の「とてもコーエン的な演技」も、素晴らしかった。
　
映画そのものは言うまでも無く、もう非の打ちどころの無い、完璧に完全な完璧で、既にこの世のものとは思えない。　一晩経った今も、未だ自分の身に何が起きたのか、良くわからない。　何だか、とんでもない詐欺か事故にでも遭ったみたいな心境だ。　転がって転がって、どんどん取り返しがつかなくなっていく展開は、どちらかと言えば「ファーゴ」か。　神達の真髄だ。　編集の人ってば、もう天才。

観てる最中の

　　　「（いくら何でも）もうここまでだろう」　　　「（もうどうか）ここまでにしておいて欲しい」

という、我々のささやかな願い（？）を無残に叩きのめし、打ち砕く兄弟。　恐怖映画じゃないっつーのに、満員の館内は、口から色んなもん飛び出しちゃう人、続出だ。　心臓とか。

ヒッチコックが「ヒトは、本当の恐怖を体験する時、笑い出してしまうものなのです」って言ったのは有名ですが、昨夜がまさにそんな感じ。　「きゃあ！」っとか「オゥ！」って言ってる横で、誰かしらが「アハ、アハ」みたいな。

終演後は、誰も自分の状態をコントロール出来なくなっちゃってて、皆、顔が弛緩状態。　笑いたい訳でも、何か気の利いた一言でも言おうとしてる訳でもないのに「ハ、へ（ぺろん、ぺろん）」って音が口から漏れて来ちゃってるよ、あの人もこの人も！

それにしても至福の時間って、短いですね皆さん。　ぐるぐるぐるぐる迷い込ませてくれるこのプロット

　　　「もう、懲り懲り！」

っと思いながら映画館を後にする人が多い中、打ちのめされ脱力、弛緩しつつも「もっとやってくれもっとくれもっともっと」っと思い続けてたapothekeop。　コーエン、もう毎日でも新作発表してくれー。　ドラッグ中毒みたいな心境だ。

ベッドに入ってから、タイトルの意義を考え出したら、またまた止まらない眠れない。　裏の裏の表の裏の意味がありそうで！

音楽も素晴らしく効果的で、「弛緩剤」の役割をものすごく果たしていたのでした。　エンディングの「C.I.A. Man」って、妙にマヌケなスカ・ソングが、頭クラクラ、ショック状態で家路に着く人々を、ちょっと小バカに見送ってくれてる感じがやけに良かった（笑）。

では皆さんも、シ、アイエ、マーン♪　シ、アイエ、マーン。。