昨年11月にPWL時代のアルバム4作品がデジタルリマスター版としてリイシュー(日本盤のみ)されたことを冒頭に取り上げながら、PWL時代の楽曲に対する話題には一切触れられていない。 PWL時代をすっ飛ばして、「大人になったカイリー」について長々と語られているのですが、その中で Better The Devil You Know(邦題:悪魔に抱かれて)について何故か一押ししている部分もある。 Better The Devil You KnowはSAWオリジナルによるもので、KYLIEは作曲に関わっておらず、むしろ SAW典型EURO-POPの中でも後期に当たる作品。 更に聞き捨てならないのは、PWLサウンドを「打ち込み歌謡」などと罵った。 「あくまで私はKYLIEのファンであって、PWLに興味がある訳ではない」という強い主張のようにも聞こえるが、それにしても訴え所がシックリこない。
収録曲はPWL作品5曲を含む、全16曲集。 1曲目は爽やかで伸びのある歌声が光るAll The Loversでスタートし、3曲目に収録となったのが、 Better The Devil You Know。 アレンジは、生音ピアノを主体とするバラードに仕上げられていますが、ボーカル部分を含めオリジナルイメージは然程崩されていない。 例えるならば、CARPENTERS / (They Long To Be) Close To You(70年作)のような哀愁感に近く、まっさらなSAW曲として聴かせてくれるものがある。
続くHand On Your Heartの方は、オリジナルイメージはほぼ取り払われた。 こちらは、アコースティックギターを主体としたカントリーテイストなタイプで、歌い回しもまたジャンルに合せたものになっており、サビ部分も伸ばさずに小刻みに切りながら、静かに聴き入るバージョンに仕上げられている。
The Locomotionは、60’Sサウンドをそのままとした原曲イメージ。 以前に取り上げた、幻の名作HI-ENERGYを作り出した名プロデユーサー、ROB DAVISによる大ヒット2作品(CATHY DENNIS共作)Can't Get You Out Of My Head・Come Into My Worldも収録されており、中でもUK・USともに大ヒットを放ったCan't Get You Out Of My Headは、楽曲本来のアップなノリをキープしたオーケストラバージョンに仕上げられている。 力強いストリングスに合せながら、KYLIEのしゃくり技術ひとつでもっていくあたりはオリジナルイメージとの違いを不思議と感じさせない。
Come Into My Worldは、原曲イメージというよりはFiner Feelings(S&Wオリジナル)のような JAZZY-POP風に切り替えられているが、シンプルに聴くことのできるバージョン。 Finer Feelingsは、びっくりする程にS&Wオリジナルイメージがほぼキープされている。 主となるストリングス・ピアノ・ドラム全てがSTOCK & WATERMANソングを蘇らせているのが聴きどころ。
今回アルバムで初めて収録されたのがFlower。これはいい。
I Should Be So Luckyの方は、完全なバラード・バージョンとなってしまった。 初めて聴いた時、正直馴染めず、ちょっとガックリしてしまったが、全く別の楽曲として捉えてみると、 違和感なく聴くことができる。 但し、オリジナルイメージが取り払うことが難しい人にとってはちょっと厳しいかも知れません。 個人的には、やはりアップテンポで軽快に歌い上げる、まっさらなKYLIEの歌声も聴いてみたい。 例えば、The Locomotion同様に60’Sサウンド風にしてみるとか..。
Never Too Lateは、哀愁あるピアノコードを主体とするAメロ部分はほぼオリジナルに近いイメージとなっていますが、やはり基本はバラードに切り替えられている為、サビ部分は囁くような歌い回しになっている。 しかし、SAW原曲アピール度は充分にあり、ファンにとっては嬉しいところ。
逆に、当時バナナラマの「WOW」のライナーを書かれている山田道成さんなどは、元々70年〜80年のニュー・ウェーヴがご専門でウルトラヴォックスなどでは名文章を書いてある方ですが、彼はピート・ウォーターマン氏への電話インタビューなども敢行し、これらのサウンドの素晴らしさや「I HEARD A RUMOUR」の顛末など詳細に書かれていて、それくらい熱くて素晴らしいライターが多かったものです。