SAW生誕25周年という記念すべき今年2009年は、様々なスペシャル企画CDがリリースされる中で、この10月には「SINITTA- The Hits + Collection 86-09」が発売となりました。 ということで、今回もまた、「SPECIAL-EDITION」アルバムについて検証してみたいと思います。
ファンにとって最も注目すべき楽曲はどれか? それは勿論、「How Can This Be Real Love (12'' Mix)」でしょう。 (そうでなきゃイカンでしょう)
アルバム解説の中にも記載されてはいますが、この作品は「I Don't Believe In Miracles」と同時期となる、88年に作られたモノでした。 しかし解説を読まなくとも、「Turn it into love」(HAZELL DEAN)、 「I Don't Believe In Miracles」といった同系リズム・サンプルが使用されているので、ファンならばすぐに分かるところ。
この状況から、以前にも取り上げた「メガヒットを意識しないSONG−WRITEワーク」という楽曲コンセプトのなかで、上記2作品が候補として取り上げられ、最終的には「I Don't Believe In Miracles」がラストシングルとして、よりキャッチーという面で選ばれたのでしょう。
それにしても、88年らしい実にミディアムなソングイメージたっぷりな「How Can This Be Real Love」もまた、「Maybe」、「Love, Truth & Honesty」のような、聴けば聴くほどにジワジワと魅力ある「ソング&アレンジ」を上手く絡ませており、SAWの得意技とも言える、「PWLラッパ音」によるメインフレーズを活かした見事なアレンジワークを感じさせており、5分23秒というバージョンタイムも調度いい。
更に同時期に作られたもう1曲が、「Do You Wanna Find Out (12'' Mix)」である。 解説によると、これは12インチミックス・オンリーということだが、これも納得させられるモノがある。 楽曲タイプからすれば、恐らくシングル候補としてではなく、カップリング12インチ用として、SAWが「R&B-FUSION」なポップサウンドを取り入れたかったのですが、いくらなんでもインストでは、ということで「R&B-FUSION」に負けない「黒人ポップ・ボーカル」である「SINITTA」で実現させたのでしょう。
「MATT AITKEN」による技術志向に偏ることのない、正に「GOOD-MUSIC」を追求したギターフレーズをはじめ、ベースライン、パーカッションという、これぞSAWのもうひとつの音楽センスを魅せた 1曲。 当然ながらこれは、「HARDING & CURNOW」とは比べモノにならない、「バンド・セッション」という 経験とセンスが発揮された「STOCK & AITKEN」と、「R&B-GROOVE」の要となる「WATERMAN」による3人ならではの世界が堪能できる。 若干キャッチーさに劣る「How Can This Be Real Love」がもしも採用されていたとしたら、 恐らくカップリングとして収録されていたに違いない。
そしてもう1曲、意外と見落としている人も多いと思われる、DISC2-3曲目。 「Cross My Broken Heart (12'' Euro Remix)」である。 なんとなく聴いてしまった人は気付かなかったのかも知れませんが、こちらも未発表バージョン。 ここでもまた、以前に取り上げた「ベースラインで検証するSAWサウンド」のテーマに匹敵する注目すべきバージョンがここに存在した。
「Cross My Broken Heart」のセカンド・ミックスとなったのは、 ご存知「EXTRA PULSING BEAT-MIX」でしたが、以前にも説明したとおり、1小節前半にベースラインとビート・リズムを寄せ集め、あえて1小節毎にノリに止めた個性ある別バージョンに仕上げられた。 一方「12'' Euro Remix」の方では完全な「タテノリ」で、どちらかと言うとこちらの方が馴染みやすいイメージがあるが、このパターンは、「I SHOULD BE SO LUCKY」、 「LOVE IN THE FIRST DEGREE」において既に採用された「EURO-TYPE」であり、 「PETE WATERMAN」としてはワンパターン・イメージを避けたかったのでしょう。
そんなお蔵入りとなってしまった「12'' Euro Remix」ですが、この中にもSAWならではの細かい12インチトラックへの技術がありました。 それは、1コーラスと2コーラスの間に追加された「4小節分」のブレイクビート。 これは正に「タテノリ・サウンド」を強調させる繊細なアレンジ効果となる技術。
今回アルバムでも、オリジナル12インチは「G.T.O(Modina's Red Roaring Mix)」のみで、 「TOYBOY(The Original Mix)」は「Extended Bicep Mix [Vers 2]」の前半1分をカットした 「EDIT」バージョンとなっており、楽曲本来である、キラキラとしたインスト・アレンジが入るオープニングの重要部分が全てカットされてしまった。 「I Don't Believe In Miracles(Club Remix)」はこちらも以前に語った、SAW監修が疎かとなったと思われるセカンド・ミックスの方で、やはりなんと言ってもオリジナル 「MERLIN’S MAGICAL-MIX」でなければ意味が無い。 またしても「PETE WATERMAN」の決して安売りしない、強い拘り姿勢がみられた。
また最近では、「PETE HAMMOND」によるレトロ・ミックスが多くみられますが、本アルバムでも 「The Day You Said Goodbye (Pete Hammond's Empire Strikes Back Mix)」 なる「レトロ・バージョン」が収録された。
ちなみにネット上による「Empire Strikes Back Mix」の評価については、「PWL全開サウンド!」 などというコメントを多く目にするが、私から言わせれば全くその逆だ。 よく聴いてみてほしい。 当時と同系サンプルを使用したのはリズムトラックのみで、ベースラインは嘗てと同パターンとなっているものの、音色のチューニングが少し違うし、またそれ以外の音は全て最近のサンプル音源となっている。 これは、「PETE HAMMOND」が以前と全く同じサウンドを再現したのではなく、ファン向けに懐かしいサンプルを流用しながらも、現在の彼の活動をアピールしたに過ぎない。 純粋に、「The Day You Said Goodbye」はDISC-1収録のオリジナルの方が遥かにいいし、 「TOYBOY(Reloaded)」の方もリメイクバージョンとして見事に手掛けたプロデューサー 「NATHAN THOMAS & CARL M COX」を評価したいところである。