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Dream Will(c) 実験版コミュの長いですが気が向いたら読んでください(管理人の日記から抜粋)

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6日。朝8:30に合格発表。
ついで、すぐに鳴り始める「合格」を伝える電話。電話、鳴りっぱなし。

一番はじめに来た電話。偏差値が5も足りないけれど突っ込んでいった「特攻隊」からの電話。
「受かっちゃいました〜♪」
思わずガッツポーズ。

電話はジャンジャンかかってくる。


でも僕が一番気にしていたのは、最下位クラスで県立単願であるにも関わらず、出願校変更締め切りまであと5時間あったにも関わらず、学校の先生に「時間がないから諦めて」と言われてムリヤリ受けざるを得なかった一人の女生徒。
待てど暮らせど、電話が来ない。ダメだったか。二次募集、どうだろうか。講師生活最後にして「高校浪人」を出すのか……。
電話が来たのは実に一時間後、9:30だった。
「○○ですが。」
クラスでは一番騒がしい生徒だったのに、相変わらず声に張りがない。レベルの違う学校を受けざるを得なくなった時からずっとそうだった。心が明らかに折れてしまって、ずっとふさぎ込んでいた。それでも発破をかけ続けた、励まし続けた。
落ちてしまったら、慰労会どころではない。すぐ二次募集の準備にかからなければ鳴らない。覚悟した。

「先生のおかげで、受かりました!」

どうしようもなかった、声が出なかった、涙が止まらなかった。


咲くサクラもあれば散る桜もある。僕が関わった生徒48名中、数名不合格。合格者の中には、たとえば偏差値が10足りず、それでもこけの一念でうけた生徒が合格するというようなミラクルがたくさんあった。
それでも、一人不合格を出すとそれも相殺される。悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。

昼前に不合格を出してしまった生徒の親御さんに電話をした。

「○○教室の榊です、このたびは私どもの力及ばず、不合格ということになってしまい、お子さんには辛い思いをさせてしまいました……」
「そんなことないですよ、うちの子は榊先生にずっと面倒をみてもらったことを喜んでいましたよ。本当にお世話になりました」

電話口で泣くわけにもいかず、ことばを失い、歯ぎしりする僕。
追い打ちをかけるように……
「明日にでもご挨拶に伺いたいんですが、先生はいらっしゃいます?」
「はい。」
こういうのが精一杯。


午後になって、慰労会の準備。正午辺りから生徒が集まり始める。みんな満面の笑み。
合格者と不合格者が一緒に塾のドアを開けて入ってくる。何と言っていいか分からず一言「お疲れ様」とだけ。すると落ちてしまった生徒の方が
「先生のおかげでここまで頑張れました」
握手したまましゃがみ込んでしまった。


2時から慰労会が始まる。まずは1時間、記念撮影やなんかで使い、その後、一回のロビーに全員集合。
講師陣からのねぎらいのことば、それから出し物。

ウケをネラうものが並ぶ中、僕は直太朗の「さくら」を歌った。
ぐちゃぐちゃに混じり合った気持ちを全部突っ込んで歌った。ウケなんて一切いらない、本気でやった。一クラス分以上の生徒が泣いてくれた。


慰労会が終わってからは、8時くらいまで各自好きに使う。すぐ返ってしまう生徒もいたが、大半は教室で過ごす最後の時間を楽しんでいる。

ここで恒例行事が始まる。講師に適当な紙を渡し、それに一言書いてもらう、というものである。次々に生徒が紙を持ってくる。僕は毎年、一人ひとりの名前をそれぞれの句(初句、二句、三句、四句、結句)のはじめに冠した和歌を詠むことにしている。持ってきた子は20名以上、今年もすべてやりきった。もちろん、せっかく詠むのだから卒塾、進学のお祝いのメッセージとして。


夜8時過ぎ。二人の生徒が僕を待っていた。直前期、ずっと理科と社会を付きっきりで教えていた二人組だ。適当なタイミングで渡せば良かったものを、僕の手が空くのをずっと待っていたらしい。最終面接の時に同じクラスを担当する他の講師から「榊は明日、大事な試験があるから、応援メッセージを書こう」と誘われて書いてくれた二人だ。まだ、内ポケットにそのメッセージは入れてあった。
「受験、お疲れ様。ホントにわがままで疲れる生徒だったけれど、一番楽しかったよ。」
そう言うと、二人とも泣き出してしまった。ちょっとびっくりした僕。ふと、専任としての就職を思い出し、
「そうそう、君らの鉛筆(湯島天神の鉛筆を入れた封筒にメッセージを書いてくれた。)のおかげでさ、僕も試験受かったよ。新年度からはそこのデスクに座るんだ」
と告げた。
「専任の試験だったんだ。おめでとうございます」
ちょっとはにかむ僕。




7日。午後1:45。与野(大宮市)にある教務本部へ。
雇用契約書のサインと、専任のみがつけている、社員証たるバッジをいただきに。
契約書にサインをした後、バッジは人事課長(IP)が自ら付けてくれた。思わず背筋を伸ばしてしまう僕。左肩が変に重く感じる。責任の重さ。

本部を出て出てすぐに、バッジを携帯の写メで撮った。両親にやっと正社員になれたことを報告するため。メールに載せて送った。


7日付けで正社員入社が決定。ただ、そんな喜びに浸っている暇はない。実質もう色々な業務は始まっており、教室に帰ってすぐテキストの検品にかからないと、5時からの新中学一年生の授業に間に合わない。


駅から自転車を飛ばして、教室に駆け込むと、デスクの上には名刺が2箱。無造作に投げ出されている。きっと教室長さまが置いたんだろう。案外(いや、最も)、こういうところがいい加減。
埼玉県オンリーだし(系列は都内にもあるけれど…)、モノトーンでデザイン性もいまいちだし、肩書きもパンチのないタダの紙切れ。
しかし、持ち上げたその二箱はずっしりと重かった。とうとうここまで来た、やっとスタートラインに立った、そんな実感が急に湧いてきた。

○○(塾名) □□教室
副室長
 榊 槐

これしか入っていない名刺。後は教室の住所と代表電話の番号が入っているだけ。
なのに、重かった。


「お、帰って来たか、待ってたよ。これ。なくさないでね。」
教室長さまが講師室から顔を出す。
渡されたのは教室のカギ。これを持つことも専任の証。なくさないようにすぐに自分のキーホルダーに付けた。


さぁ、仕事。デスクの上には新規入塾の際に受けるテストの答案用紙が山積み。優に10部は超えている。すぐに採点、偏差値の割り出し。リストへの転記。タバコを吸う間もなく一気に片づける。リストを閉じたところへ講師が二人やってくる。


「こんにちは。テキスト手伝ってくれるんだっけ?」
前日に手伝ってくれるよう根回ししておいた先生たちだ。
「ガンガン行きましょう!」
気合い十分。
「じゃあ、5分後にかかりますか」
「はい!」

本当に助かる。


5時から授業。4時半まで作業していたので、全く予習していない。さて、どうする。とりあえず、今日話すネタだけはカリキュラムを見ながらチェック。それから、漢字テストの印刷。テキストを3分前にテキスト部屋からピックアップして眺める。何とかするしかない。

授業開始。
まずは積み上げられたテキストを配布。15分。教室のルールについて話す。一番新規入塾生が多いクラス、ここでちゃんと話しておかないと向こう3年間、グダグダのクラスになる。これで20分。

さて、授業内容の開始。
塾講師歴9年間の蓄積。やっぱりそれは強い、我ながら。本文を音読しながらポイントになる文を探し出す。「こんなストーリーだね」とか解説しながら、今日の要点を絞り込んでいく。

「じゃあ、この文章に出てくる少年は、どんな人なんだろうね?」

今日のメインとなる「人物像」のとらえ方に関する質問。当てずっぽうな適当な返事が返ってくる。

「この少年、どんなことを言ってる? どんなことをしてる? どんなことを考えてる? 今どんな境遇? 家庭は裕福? なんで太ってるの? 僕になんて言った? 学校から帰って普通と違うことをしてるよね?」

マクロな発問をどんどんミクロな発問に切り替えながらまくし立てる。もちろん一度に全部答えることなど期待していない。
考えたって答えは出ない。しかし、答えはすべてテキストの文章に書かれている。生徒たちは次第にテキストのことばを思い出し、気付けば必死の形相でテキストを読み返し始める。

「○○君、今なんで、テキスト見たの? □□さん、なんで今、テキスト見たの?」
「なんか、書いてあったような気がして……」
「そうだよ、全部テキストに書いてあるんだよ、答えが。じゃあさ、文章をもう一回自分で読み返してみて、この少年がやったことや言ったこと、考えたことが分かるところを全部、線引いてみようか」

……ここまでやってしまえば、あとはこっちのペースに持ち込める。答えはすべてテキストの中に書かれている、人物像はその人物に関する情報をピックアップすれば自ずと見えてくる、そういう結論に至るまで一気に行ける。


授業後、体験入塾で来ていた生徒を呼び止めて、感想を聞く。

「どうだった? 毎回こんな感じで進んでくんだけれど」
「学校とすごく違ってびっくりした」
(よし、いただき♪、心はつかんだ!)
「前にどこか塾に行ってたことはあるの?」
「○○……、でも今日の方がおもしろかった」
「そうかぁ」
(内心ガッツポーズ!)


この後、もう一つ授業をして、夜。

昼間採点したテストの家へ結果を伝える電話。個別指導の方の事務処理。テキスト部屋の片づけ(一気に検品だけしたため包み紙や何かが放置状態…)。予定表ボード書き。などなど。


帰ってきたら2時過ぎ……。
うちに着いて、昨日卒塾生たちからもらった10数通の手紙を読む。
「こいつらともお別れか。」
つぶやく。

いや、これは忘れたくても忘れられない。
この生徒のことと自分のことと、天秤にかけながら、両方捨てずに突っ走った一年間は忘れられない。そんなことをふっと思った。


で、この日記。


塾ってやっぱり面白い。

コメント(11)

本当に長くてすみません。
パソコンの問題も解決しましたので、また、夢解き、再会します♪
ちょっと、一緒に感動してしまいました。
榊さんの人柄が目に浮かぶようです。
専任講師のお仕事、大変そうですが、やりがいばっちりですね。
がんばってくださーい!
思春期のころに、
いい大人と出逢える子どもは、しあわせですよね。
榊さん、これからもがんばってください!!
おめでとうございます。

塾の先生も大変なんですね。沢山の生徒さん受け持って、いろんな子がいますもんね。そして最近の親御さん、なかなか大変な方もいらっしゃるみたいで・・・

がんばれ、榊さん\(^o^)/
ただいま帰宅しました♪
みなさん、コメントありがとう。なんだか元気をもらっているみたいで感謝感謝です♪

>まくおさん
名刺、まだ一度も使ってないです。受け付け対応とか、わけが分からなくて……、教室長に任せっきりです。涙

>まさちんさん
やりがいはばっちりです!でも今は毎日ミスばっかりで教室長の足を思いっきり引っ張ってます。指示を出すって大変です。

>□ことも□さん
先生から見ても生徒は忘れられません。毎年、受験を題材にした感動のドラマを見ているようです。

>うどんさん
確かにそれは感じています。このくらいの頃に出会った大人は人生の「大人像」を決める存在だと思っています。

>としきぴさん
すてきな桜、ありがとう♪としきぴさんの住んでる方の桜はもう咲いてるのかな…?

>SHAMAさん
生徒も色々、保護者も色々。明日はごご3時から保護者会です。専任着任の挨拶が待っています。がんばれ〜、オレw。
榊さん。
まずはおめでとうございます!
なんだか、私までぴっと背筋の伸びる思いで読ませていただきました。
・・・そうかあ。塾の先生方ってこんな気持ちで
発表の日を迎えているのか・・・。

私も日々、自分の授業に悩んでいます。
テストをして
「わかってなかったんじゃないかあぁぁぁあ!」
と頭を抱えたり・・・。

保護者会。
一番緊張するときだったりして!?
(私はそうです ^^;)
頑張ってきてくださいね!
>よーこせんせい
お久しぶりです♪それからありがとうございます♪
やっと今日、二日間の保護者会が終わりました。クタクタです。でもこれも生徒の笑顔を作るためのもの♪

授業中分かっていそうで、テストをするとさっぱり、というのはよくあることですよね、僕はまじめに話を聞いている生徒もそうでない生徒も、ジャンジャン指名し、まずその場で理解をかくにんするようにしていますよ♪

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