映画が好きコミュの「少年Ｈ」

万人向けの良い映画ですが観客の大部分は年配者で　若い人はチラホラぐらい･･･これはやはり若い人に観てほしいですネ

戦前・戦中・戦後を生きた市井の家族の物語で　戦争には直接かかわらなくても銃後の国民として戦争を感じ　空襲を体験し　敗戦の中で必死に生きたそんな姿を　少年の目を通じて語られる真面目な映画で･･･

少年Ｈは神戸の洋服仕立業を営む父を見て育ち　土地柄・仕事柄　外人にも接する機会が多く　小学生も高学年の彼はいつも父の後をついて外人宅に行き　そこで満足に外国語も話せない父はゼスチャーでいつも乗り切って　気持の問題だと父はさり気なく云うが　米人・独人・仏人相手に決してひるむことなく堂々と対処するその姿は見事で･･･

それゆえに父の考え方は大らかで開放的で　彼もまたそんな父親に感化されて頑固な正義感の強い少年に育ち　何となく戦争の不穏な空気が漂いだした時代に対して拒否反応をおこし　それは中国戦線から米国へと戦火が移ったことで　米国事情をある程度知る彼にとっては最悪の事態を予感させて･･･

そして神戸大空襲によって周辺は焼け野原となるが　何とか少年の家族は命だけは助かって　やがて敗戦となり一時腑抜け状態になった父親だが　少年が焼け跡から見つけたミシンの断片によってやっと立ち上がり　狭い共同住宅で営業を開始するが　１５歳になった少年は旅立ちを親に告げて　了解した親を離れて好きな絵を勉強するために看板屋に就職を･･･

妹尾河童の自伝的なお話ゆえに恐らく事実に沿っての成り行きと見ながら　時代背景の設定模様はいかにも緻密で思わずタイムスリップかいなと思い　バケツリレーや銃剣訓練に頷きながら焼夷弾攻撃や焼け野原風景に憤激して　ＣＧとは解っていてもやはり年配者には微かに味わった時代風景でもあり　大方の観客がそうであるように暫し在りし日を思い起しながらの鑑賞で　されど物語的に盛り上がらないのはそんな禁欲的な趣旨かいなと思ったりしての･･･