映画が好きコミュの「ヘヴンズ ストーリー」

長い長いこの日本映画は４時間３８分もあって　その分料金も大人が２５００円でシニアは１８００円という割高で　しかしながらただ単に長いだけでなく　そこに込められた熱気ある主張によってその料金以上の価値は充分に感じられる作品かと･･･

少女は両親と姉を同時に殺されて　その後犯人は自殺した為に恨むべき相手を失って　宙ぶらりんの気持を抱えたままに過し　そんな時にテレビの会見で見たのは　若い男が妻と幼子を殺され　捕まった未成年の犯人に対して　出所したら絶対に復讐するという慟哭のような叫びで･･･
少女はその男を希望の星としてその復讐を待ちわびるが　犯人が出所しても一向に動かない男に業を煮やして様子を見に行って　その男に新たな妻と子供も出来たことを知り　裏切られた気持を男にぶつけて復讐を促して　男は再びその時の心情を思い出して今の妻と幼い子供を捨てて復讐の為に行動しだして･･･
犯人は親に捨てられ放浪の旅のような生活をする中で　ある日川原で遊んでいた若い主婦と幼子を衝動的に殺して収監されるが　そんな犯人に興味を持った人形作家の女が面会に来て　何度か会って話す内に心が救われるような気分になり信頼して　だがそんな中で人形作家の女の若年性認知症が進み出して　犯人の男は彼女の介護も含めて早い目に出所して養子のような関係に･･･
警官は男手ひとつで息子を育てながら副業もして稼ぎ　それは復讐代行屋として依頼された人間を殺して報酬を得て　その金を誤って死なせた家族の娘が成人するまで渡し続けて　未亡人は断るがもはや大人になった娘はさっさと受け取って･･･
この五人を中心にその枝葉を広げながら　深く深刻な関係とさり気無い出会いを見せて　それぞれの憎しみと愛のあり方の終焉を描いて･･･

実に壮絶なる人間の復讐ドラマが延々と奏でられて　復讐すると誓った男が復讐を忘れた為に復讐を催促されて　それは少女が復讐を果たす男を確認して復讐の疑似体験を果たそうと･･･
だが復讐する犯人の恩人を殺してしまった事で自身にも復讐がきて　復讐の連鎖によって見えてくるものは果てしない戦い以外の何物でもなく　復讐が復讐を呼ぶ事で人間の飽くなき空虚な生き地獄を晒しての･･･
更にそれによって破滅する家族は双方全く同じ様相を見せて　殺される側の家族崩壊は勿論の事ながら殺す側もまた然りで　復讐する事で再生も阻まれ余りにも失うものの多い事を･･･
だからこそ金銭で復讐を請け負う復讐代行屋に焦点当てられ　自らの手を汚さず更に家庭崩壊も防ぎながら復讐を遣り遂げ　そこには何ら感情も無くせっせと依頼者の代行する仕事振りを皮肉と嘲笑でもって･･･

ここに描かれる膨大にして荘厳なるテーマはこの世の永遠の課題で　罪と罰と復讐を　生と死と神と天国を　家庭と社会と生活を　老いと病と介護を　再生と挫折と変革を　愛と憎悪と信頼を　まさに腹いっぱい詰め込んで目いっぱいの時間をかけて描き　ちょっと類の見ない悲しくも狂おしくもいとおしい作品にと･･･

実に壮大なるお話が為に多数の登場人物が入れ替わり立ち替わりと　２０人以上の関連人物が何らかの形で復讐劇に関与して　そして彼らのお顔の執拗なるアップによって更に印象付けて　それはまるでみんな主役のような重要性を強調するかの如くに　その場での主役を各自が見事なる凄さで演じきって･･･
その熱演者は吹越満　菅田俊　光石研　柄本明　嶋田久作　片岡礼子　佐藤浩市　津田寛治　江口のりこ　渡辺真起子と　彼ら彼女ら曲者役者陣によって更に作品の重みと深みを与えて･･･

寉岡萌希は純真な強かさを秘めた美少女を爽やかな力強さで演じて
長谷川朝晴は嗚咽から幸福から苦悩とその遍歴模様を巧みに演じて
忍成修吾は朦朧から再生から怒りの果ての復讐までを淡々と演じて
村上淳は醒めた警官を父親顔と殺し屋顔と欲求不満顔晒して演じて
山崎ハコは認知症の人形作家を格調高い雰囲気の中で見事に演じて
瀬々敬久監督はこの凄い作品を凄い時間かけて観客を金縛りにして
天国のお話を地獄絵図でもって懇切丁寧に復讐の復習を紹介しての