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イラスト・ノベル『ふたつ月』コミュのキノの旅〜軍人の国〜

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  プロローグ

苦しさが胸を縛る・・・。

呼吸はみだれ、頭がいたい・・。
もう、自分が何をしているのかもわからない。
風が頬を叩いた。

薄れる意識の中、それでも力を振り絞る・・。

誰かが言った。
限界は始まりであると・・。


(そんなの!知るか!!)


疲れと。怒りと。孤独と。虚しさで、かすむ視界の中。
光を求めて突き進んだ・・。



でも・・・・


ある人は言った・・。



「もう、走れません・・。」・・と・・。



  

 



  第一章  入国

この国の300m離れたところで、キノとエルメスは数人に囲まれました。



キノは十分に警戒しながら、ボクたちに何か用ですかと質問します。
すると、年長と思われる男が口をひらきました・・。


「お前に質問をする権利などない!!こちらの言うことに従えばいい。お前は何者だ?!」
キノは「旅人です」とすぐに答えます。
「ふん。即答だな。なかなか良い心がけだ。答えは素早く簡潔でなければならん。お前のような低い身分の者には、言葉の前後にサーを付けさせるとこだが・・・まぁいい。」
男は、訳の分からないことを言っています。



そして、どこから来たのか、武器は持っているか、仲間はいるか、何の用で来たのかなど、たくさん質問されました。

キノは西から来たこと、武器は持っていること、仲間はエルメスだけであること、休息のために来たことなどを告げました。

何でも、彼らはキノ達の向かっている国の調査隊らしく、自国に近づいてきた者たちを調べているのだそうです。
キノ達が入国したいのだと告げると持ち物検査をされ、入国の許可が出ました。
そして、一人の軍人(戦闘員のことをそう呼ぶらしい)が国まで案内してくれることになりました。



城壁に着くと門番が「関所」と書かれた部屋からあわてて出てきます。
出てくるなり、門番はは敬礼をしました。
それは英雄に向けるような、機敏な敬礼でした。あまりにも勢いがよすぎて、自らの頭にチョップした形になっていました。
とても痛そうです。
門番の目は少し涙目になっていました。

それには構わず軍人は「条約を。」と言いました。
「はい。わたくしは門番NO、09802。S1部隊の予備兵でもあります!わたくしは日々体を鍛え、命に代えてもこの城門を守るしだいであります!!」

まず自分の体を大切にね。とエルメスは小さく呟きました。
キノも心の中で同意します。



それにしてもと、キノとエルメスは顔を見合わせます。
この国変だよと目で合図しあいました。
しかし、もう逃げることは・・・できません。

(困ったなぁ・・・。)
と、キノ達が戸惑っている間に、話は済んでしまいました。


そして、入国している間は、一般人という名札を必ず付けていることを義務付けられました。
何の意味があるのかはよくわかりません。

「キノー。この国の評判とか聞いてないのー?」
「・・・んーと。それが、不思議なんだ。この国のことになると、みんな口を閉ざしてしまうんだよ。それが気になって来てみたんだけど・・。」
「・・・失敗かもね・・。」
「・・・そーだね・・・。」


そして、ギィィィィィーーと重そうな城門が開かれました。



・・・その時気付くべきでした。10人は必要そうな城門を
たった一人がそれも片手で開けているという状況に・・。



しかし、それには気付かぬまま、キノとエルメスは入国します。
重々しい扉と変な国民たちに促されながら、足を進めました。







これから、暗黒の3日間が始まるとも知らずに・・・・。














  





コメント(6)

入国してまずホテルを探すことにしました。
そして安くてエルメスを置けるスペースのあるシャワー付きのホテルはないかと案内してきた軍人に尋ねました。

「安くてモトラドが置けるスペースがあってシャワーの付いているホテルだと?貴様!ホテルを選ぶのならもっと重要な条件があるだろう!!」

「は?」

「何が重要なの?」

「何が重要かわからないだと!?信じられん!これだから国外の人間は!お前は自分の命が惜しくないのか!!」

キノは冷静に言葉を選びながら尋ねます。

「何が重要なのかボクにはわかりません。それに命の危険があるのでしょうか?よろしかったら、教えていただけますか?」

軍人ははぶつぶつ文句を言いながらも説明し始めました。

「いいか、まず建物の構造だ!どの程度の攻撃に耐えられるか。設備のいいホテルは地下にシェルターがある。これなら空爆を受けたときもすぐ逃げ込める!窓はもちろん狙撃の可能性を考慮して防弾ガラスでなくてはならない!それから…」

以下軍人の講義は延々と続きました。
キノはとてもがんばってこの苦行に耐えました。
空が赤色に染まります。
鳥が巣へと帰ることを告げるようにカァーと鳴きました。
全てが赤に変わる頃、キノ達は長い話からやっと解放されたところでした。

「はぁ〜疲れた。あんなに保身について語るなんて、この国は治安が悪いのかな?」

「そーかもね!でも、もし襲われてもキノには武器もあるんだし。きっと大丈夫だよ!!」

「エルメスは楽観的すぎるね。」キノはクスリと笑いました。

「そうかなぁ?いつでもギネス思考じゃないと旅なんてやってられないよ!」
・・とてつもなく大きい目標です。


「・・・・え〜と・・プラス思考??」
「そうそれ!!」
「・・・。」

キノの心配はつきませんでしたが、
国の中は荒れている様子もなく、とても綺麗でした。
その上たくさんの森に囲まれている穏やかな国でした。

森の中にある一本道をキノとエルメスだけが歩いていました。
そよそよっと風が葉を揺らしたり、飛ばしたりしています。
幻想的な気分でその道を歩いていると、急にひらけた場所に出ました。

その場所は何百人が一度に集まることが出来る程の広さがありました。
中央付近には噴水付の泉があり、入り口付近には訓練所という看板が立っていました。
この広場以外は森に囲まれているので、光があまり届かず少し暗いイメージを受けます。

その時、

「キノ!!!あれ!!」

キノは素早く、エルメスの指示した方向を睨みます。



それは砂埃と友にやってきました。

「なっ・・なんだ、あれ?!」
キノの驚きにエルメスが冷静に答えます。

「人だよ!」

そうです。それは人でした。
何人もの人が寝そべり、曲げた足と腕で必死に移動してきます。
「あっ・・あれは?」キノはまだ混乱しているようです。

「歩腹前進。」
「え??」
「あれは歩腹前進だよ、キノ!
人間が外敵から身を隠しながら前進する方法。」

確かにそれは歩腹前進に見えます。
「だけど・・。」

「うん。あれじゃすぐに見つかるだろうね。」
凄い地響きと砂埃で自らの位置を示しています。

「それでも逃げ切れる自信があるんじゃない?」

キノもそれで納得できました。
彼らはものすごい速さで移動していたからです。
その上砂埃が煙幕の役割をしていて姿を確認しづらくしています。

しかし、

「気持ち悪。」

キノとエルメスは、またしてもこの国での滞在に不安を感じたのでした。
キノとエルメスはしばらくの間、呆然と訓練風景を見ていました。
空は徐々に赤みを失い、深い藍色へと変化しようとしています。
このままでは日が暮れてしまうので、とりあえず今見たことは必死で忘れようとしました。とにかく訓練所を後にし、ホテルに向かうことになりました。

「……………」
「……………」

二人とも訓練所で見たことで頭がいっぱいで、ホテルに着くまで何も話しません。

そして教えてもらったホテルに着いたときでした。
いきなりフロント係の男の人に質問されました。

「旅人さん、あなたは狙われていますか?」

キノは一瞬言われたことがわかりませんでした。

「…………は?」
「いやぁ、実は一階と二階の部屋が使えないんですよ。改装中でね。もっと安全性を高めようと思いましてね」

「…安全性ですか?」
「ええ、ご利用になるお客様からもっと安全にすべきだと言われましてね。特に一階と二階をね。三階しか使えないんです。でも狙われているとなると、すぐに脱出できる一階と二階の方がいいですからね」

「………………えっと、別に狙われていないので、三階の部屋でかまいません」
「そうですか?いやぁ、ご迷惑をおかけしてすいませんねぇ」

「じゃあ、302号室を使ってください」
キノはフロント係が差し出した鍵を受け取ります。
「何かありましたら、フロントまでご連絡ください」
「わかりました」

三階に行くためのエレベーターの中で

「……キノ…やっぱりこの国おかしいよ…」
「…うん……そうだね。…でももう入国したし……」
「………………」
「………………」

早くもこの国に入国したことを後悔し始めました。
エレベーターの中はいたって普通でした。
白い壁に1枚ポスターが貼られています。
キノはなんとなくそのポスターに目をやりました。

そこには、
  今すぐ外に出てロープで移動せよ!
               と書いてありました。

「・・・・・・。」


その時、
エレベーターが無事に3階に到着しました。
キノは胸を撫で下ろします。
ここに着てから何だか用心深くなっているなぁと思いながら、エレベーターから降ります。

「302号室・・・・ここだね。」
「何が出るかな!!」
エルメスは楽しそうです。
キノはこれでもかとエルメスを睨みつけると、ため息をついてドアのノブを回しました。

「!!!!!」




・・部屋は普通です・・。



でも、何だか・・(血の匂いがする・・。)
「へー綺麗なへやじゃん」

そういうエルメスを乱暴に部屋に押し込むとキノは食べ物を探し始めました。

「早く食べてすぐに寝よう!!」
キノは何だか焦っているようです。

「う〜ん。このキノを焦らすとはなかなかやるなぁ。」
キノは必死に食べ物を探しています。

んん〜!!マッチョ族め〜!!!

などと意味の分からないことを叫んでいます。
エルメスはさすがに心配になりました。

「・・・え〜っと・・あの、キノ?」
「あああああああったぁぁぁーーーー!!!!!!!」

キノの歓声にエルメスは身を震わせました。

「なぬううぅ!!」
完璧にキノではなくなっている気がしつつエルメスは尋ねます。
「・・・ど・・どうしたの??」

キノが見つけた缶詰めには

これであなたもマッチョに!!!!
      ー筋肉のためなら命も捨てられるー

キノはわなわな震えだし
「捨てレルカーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
と缶詰めを窓に向かって投げ放ちました。
「もう寝る!!!!!」
といってこっちを振り返ったキノの頭に、缶詰が激突しました。
どうやら窓についていた鉄の格子に缶詰が跳ね返りキノに当たったようです。

キノは頭から煙を出しながら深い闇がもたらす眠りへと落ちていきました。


エルメスは
「・・・おやすみ・・。」
とだけ言い、その状況を眺めていました。
朝が来ました。といってもまだ日が上っていないので外は真っ暗です。

昨日缶詰が頭にあたって倒れたキノはそのまま寝ていました。
いつもならそろそろ起きるはずですが、今日はなんだかうなされていて起きる気配がありません。キノが

「う〜ん…マッチョが………」

というあやしい寝言をつぶやいたときでした。
突然外からすさまじい音量で何なのか分からない音楽が聞こえてきました。
キノとエルメスはびっくりして飛び起きます。

「なんだろう…以前他の国で見た宗教儀式みたいなものなのかな、エルメス?」
「さあ?…せっかく寝てたのに」

キノが窓からのぞいて見ると、どうやらこの音楽は外にあるスピーカーから聞こえてくるようです。そしてどこからか、人が集まってきます。このホテルからも人が出て行っているようです。
人はどんどん増えていきます。

コンコン

誰かがドアをノックしています。
キノはカノンを右手に用意し、慎重にドアに近づきます。
そしてドア越しにたずねます。

「どちらさまですか?」
「おはようございます、ホテルのものです」

ホテルの人の話を要約するとこういうことになるようです。
あの大音量の音楽はこれからこの国の日課である体操がはじまります、という合図らしい。この日課の体操はこの国の伝統で、体操に参加できない事情(病気等)がある者以外は国民全員が参加することになっているらしい。
そして…

「どうです?旅人さんも参加しませんか?」

キノは迷いました。なんだかいやな予感がしたからです。
そうしているうちにもう一人誰かきました。見覚えのある軍服を着ています。

「貴様!そこで何をしている!!もう他の国民は集合しているぞ!!」
「えっ!?すいませんっ!!今、昨日入国された旅人さんを体操に誘ってたんですっ!!!」
「何っ!?…それはなかなかいい考えだ。遅れたことは許してやろう。今すぐ集合場所へ行けっ!!」
「はいっ!」

ホテルの人は猛ダッシュで外に走っていきました。

「貴様も参加することを命じる!さっさと用意して外へでろ!!」
「え?参加ですか?でも…」
「貴様!上官に口答えする気か!!とっとと外へでるんだ!!」

軍人はキノを片手で軽々と持ち上げるとそのまま有無を言わせずそのまま外に連れて行ってしまいました。

「うわぁ〜〜!!」
「キノ〜、がんばってね〜」

強制参加させらることになったキノは、太陽が昇るころやっと部屋に帰ってきました。なんだかすごく疲れた顔をしています。

「お帰り、キノ」
「ただいま、エルメス…」

ベッドに倒れこんだキノがつぶやきます。

「なんなんだ…この国は…………」

キノは入国一日目で出国したくなりました。
青空が広がっています。
白い翼の鳥がバタバタと窓に降り立ちました。


  

    ばしっっっ!!!!!!




・・・・・・鳥が落ちていきました・・・・・・



「・・・なにが?」

もう質問すらまともに出来ないほど疲れているキノは室内にいました。

「鳥が窓の外に張り巡らされた鉄柵にあたって感電したんだよ」
エルメスはめんどくさそうに答えました。

「つまり外には電気の柵が走ってるってこと?」

「うん」

「・・・・・・・」
キノは涙を流しました。
久しぶりの涙です。
「涙で前が見えないんだ・・・」

もうキノは限界にきていました。

「キノ、気持ちはわかるけどずっと部屋にいるのも疲れたよ。
町に出て気分転換してみたら?なにか美味しいものがあるかもしれないよ?」

美味しいものには惹かれます。

「でもやっぱり嫌な予感がする・・・・」


どうしようかと考えていたその時、




ごぅぅぅぅぅぅ〜〜〜



「?」





どかーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!










「うわぁぁぁ〜」
エルメスが倒れそうなほどの衝撃がホテルをおそいました。


[なっ!!何ごと!」
キノは急いでカノンをかまえました。

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